リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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ラストミッション さぁ、楽しもう

 

「パーメットスコア……4!

 行け、ガンビット!」

 

 セセリアの全身がパーメットに青白く輝き、愛機がドローン兵器を雲霞のように吐き出す。

 セセリアの操るドローン兵器がいっせいに敵機へ蚊柱のように群がり、ビームを嵐のように吐き出す。

 火器で散々抵抗した敵エース機も、さすがの数の猛威には抗しきれず、機能を停止した。

 

『戦闘ミッション:フォルドの夜明けの掃討を達成しました』

 

「いぇーい、加古川ミッションクリアっ!

 さっすがボクのルブリス・ジェミニ!」

 

 システムメッセージの祝福と同時、難関ミッションの俗称を叫ぶ。

 セセリアは、愛機、ルブリス・ジェミニのコクピットで得意げにピースサインした。

 

「グエルは逃したけどオルコット落としたじゃーん。

 さっすがロウジ、ボクの見込んだエース様!」

「アド・ステラの空……キレイだね」

 

 複座改造した愛機のサブシートで大はしゃぎし、メインシートのエース様を称える。

 だがそのエース様はというと、敵機が消えた空を食い入るように魅入っていた。

 

「抜けるように青い空、って言うんだよね、こういうの」

「まぁ、キレイだよな。空」

 

 これで、ボクより強いんだからなー。

 ぽやぽやしたロウジの横顔を眺め、セセリアはぼやく。

 初めて乗ったガンプラで大立ち回りした人物とは、まるで思えない。

 

「セセリアのルブリス・ジェミニも……さすがだね!

 ルブリス量産試験型を回収したブリオン社がちGUND-ARMの解析のため、ひそかに修復。

 ガンビット運用のパイロット負担を鑑み、複座改修したものなんだね、きっと!

 なんといっても飛行可能なのがいいね! 大地を駆けるのと、見える景色がまるで違う……!」

 

 せっかく褒めてくれたと思ったら、またジェガン女を思い出してる!

 エニルに嫉妬し、思わずセセリアは反射的に提案していた。

 

「別に、ルブリスは歩行だって出来るんだよ!

 せっかくだし、戦闘エリアを散策してみる?」

「いいの?ありがとセセリア!」

 

 勝った。無意味にエニルに勝利宣言しながらセセリアは特殊コマンドを打ち込む。

 飛行モードから歩行モードに切り替え、ルブリスのスラスターを緩やかに噴射し、ゆっくり着地させる。

 ロウジが繊細な操縦で、アニメで見た戦闘フィールドゆっくりゆっくり散歩し始める。

 ロウジが目を輝かせては、戦闘エリアの景色にいちいち叫び声をあげる。

 そんなロウジの横顔を、ずっとセセリアは微笑ましげに眺めていた。

 

「フォルドの夜明けのあの基地視察ってさ、やっぱり元学校なんだね!」

 

 ロビーに戻っても、ロウジの興奮は収まる様子がなかった。

 二人並んで壁にもたれかかり、ミッションの感想を言い合う。

 だいぶ、上機嫌みたいだ。

 ロウジの様子を見計らい、セセリアは慎重に話題を切り出す。

 

「あの、さ。ロウジ、今日はほんとごめん」

「何が?」

 

 きょとんとした様子でロウジが返してきた。

 この顔に騙されたらいけない。セセリアは神妙な顔を崩さない。

 ここが肝心だ。長い付き合いのセセリアには判る。

 

「ボクがキミを一人にしちゃったことだよ!

 一人で知らない人いっぱいとか、一番苦手なことじゃん」

「うん、最初は散々だったね!」

 

 笑顔のまま、ロウジがあっさりと言ってくる。

 冗談なのか怒っているのか、まだわからない。

 凄く内向的な性格だが、それだけに一度怒ったら、そう簡単には許してくれないのがロウジなのだ。

 

「初めてのGBNを悲しい思い出にしちゃって、マジごめんって思ってる。

 絶対埋め合わせをするから、許して!」

 

 渾身のごめん!をセセリアは投げつける。

 ロウジが黙り、無表情になった。

 びくびくしながらセセリアも黙り、ロウジの審判を待つ。

 

「……それでも、楽しかったんだよ。初めてのGBNは」

 

 ロウジがにこりと笑い、そう言ってくれた。

 

「僕は知らない人に助けられて、知らない人に色々教わって。

 知らないミッションを受領して、知らない人とバチバチにガンプラバトルした。

 このGBNって世界は、僕に優しかったんだ」

 

 返そうとしたセセリアの言葉は、宙で溶け消える。

 内弁慶で人付き合いが苦手な、セセリアが知っているロウジとはまるで違う。

 長い付き合いのはずなのに、セセリアの知らないロウジがそこにいた。

 

「次は、エニルさんのこと、君に紹介するよ。

 だから……ごめんじゃなくて、ありがとうって言ったげてくれるかい?」

 

 誇らしげなロウジに、セセリアは思わず見とれる。

 GBNがロウジに、いったいどんな経験を授けてくれたのだろう。

 本当に、良かった。キミがこの世界を嫌いにならないでくれて。

 

「ロウジ……なんか、背伸びた?」

「ばっかだな、セセリア。アバターの背が伸びる訳ないじゃん!」

 

 思わずこぼした間抜けな言葉に、セセリアがおかしそうに笑う。

 どうやら許してくれたらしい。セセリアはこっそり安堵した。

 大事な友達の笑顔に、自然とセセリアの心も明るくなる。

 

「よっし、じゃあ次のミッションだね!

 ロウジを連れてったげたい場所、いっぱいあるんだ」

 

 ロウジの手を握り、強引に引く。

 今日ロウジがであったどんな経験にも負けないものを、見せてやるのだ。

 

「実は、僕、行きたいとこがあるんだ……?」

「いいよ、どこへだって。キミと一緒なら!」

 

 おずおずと言い出したロウジに、セセリアは笑顔でサムズアップ。

 一人じゃない。僕達はつながっているんだ。

 そんなフレーズと曲が、セセリアの中で踊る。

 

「ガンダムベースのカフェ、明日から始まる限定ベアッガイラテマキアート。

 飲んでみたいな。セセリアのおごりで」

 

 とびっきりに悪戯っぽい笑顔で、ロウジが言う。

 はめられた!財布の中身を思い出し、セセリアは悲鳴を上げる。

 

「やっぱキミ、怒ってるよね、ロウジ!?」

「誠意ってものを、見せてほしいなあ、セセリア?」

 

 やかましく言いあいながら、セセリアはロウジと歩いていく。

 

 そんな一幕も、このGBNにはどこにでもいるダイバー達のような、ごく普通の光景に過ぎない。

 それでも手を握り共に歩く当事者達にとっては、誰よりも輝いて見えたことだろう。

 

 第1話:”わたし”はガンプラが作れない。

 

 ~おわり~

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・限定ベアッガイラテマキアート。

 ”わたし”と”その子”が住む近くの大型模型店ガンダムベース79号店のカフェが始める限定飲料。

 ベアッガイクッキーとベアッガイコースターがついてくる泡立てミルクのコーヒー。

 ”わたし”は次の日の放課後、たっぷりを砂糖を入れたものをおごってもらった後、

 パパにもらったお小遣いを握りしめ、”その子”をガンプラ探しにつき合わせた。

 ルブリス・ジェミニ用武器パーツセットのお金が吹き飛び、セセリアは血の涙を流したという。




文章量、30000文字あまり。
ハーメルン利用は初なので、見にくいところがあれば申し訳ない。

それにも負けずにここまで読んでいただいた皆様、
本当にありがとうございます。


第二話:あの子はガンプラを直せない。

プロット作成しつつぼちぼち作成中です。

ロウジ作のオリジナルガンプラが登場します。
愛機でロウジが挑むミッションはいかに!
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