リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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週一投降中です。次回は6/9予定


ミッション3-1 同年代の仲間と連携がんばろう!

 

 挫折からの再出発。

 順風満帆とはいかないのが人生であり、ゲームでもある。

 

「……かと言って、これは!」

 

 発射したグレネードを、敵機が即座に正確なビームバルカンの斉射で迎撃する。

 愛機、キャプテンZのモニターを爆炎が埋め尽くす。

 敵機のあまりに正確無比な反応速度に、ハサウェイは操縦桿を握り、思わず舌打ちした。

 即座に接近警告のアラートが響く。

 あわててハイメガの先端にビームの刃を形成し、振りかぶる。

 爆炎を裂いて飛び出してきた真紅のガンプラが、ビームジャベリンを鋭く突き込んできた。

 

「俺は、グエル・ジェタークだ!」

 

 ビームの刃同士が交錯し、激しい鍔迫り合いエフェクトが発生する。

 突く、払う。ハサウェイは何度も白兵攻撃を振るうも、完璧に敵機が対応する。

 ここはGBNの乱入不可バトルエリア、決闘エリア:荒野(水星の魔女)だ。

 

「ダリルバルデに最強グエル……高難度はほんと伊達じゃないな!」

 

 モニターに映る真紅の敵機を睨み、ハサウェイは自分を奮い立たせるように叫ぶ。

 ハサウェイの前に立ち塞がるのはミッションボス、最強グエルAIが操る、初期型ダリルバルデだ。

 ガンプラの精度はメイジンクラス、反応速度はチャンピオンクラスだろう。正直、並のダイバーより遥かに強い。

 白兵武器に鍔迫り合いで対処を続けたダリルバルデが突如、ハサウェイの薙ぎ払いにバックステップで対処を変えた。

 銃剣の大振りで体勢を崩したところに、ダリルバルデの頭部ビームバルカンの猛射が打ち込まれる。

 

「しまっ……!」

 

 激しいダメージ警告、キャプテンΖが大きくよろける。

 すかさずダリルバルデがビームジャベリンを振り上げ、唐突にダリルバルデが素早くスラスターをふかし、飛び退る。

 急な回避行動をとるダリルバルデを追いかけるように、上空からビームの連射が降り注ぐ。

 

「ハサウェイ、苦戦してんじゃーん?」

「次は、こっちが相手です、グエルさん!」

「助かった、ロウジ、セセリア!」

 

 上空から舞い降りたセセリア作ガンプラ、ルブリス・ジェミニがビームライフルとガンビットでダリルバルデを追い立てる。

 ハサウェイは二人に早口で礼を言い、滲んだ手の汗をぬぐい、操縦桿を握り直した。

 情けない。完全にバッサリやられるタイミングだったぞ、オレ!

 ハサウェイが自分を叱咤する間にも、モニターではダリルバルデとルブリス・ジェミニが激しいチェイスを展開していた。

 ルブリスがガンビットで追い込み、ビームライフルを撃ちこむ。

 確か今日はロウジが主操縦者で、セセリアがガンビット担当だったはずだ。

 見事な連携だ。ハサウェイは舌を巻く。ダリルバルデがジャベリンや両肩のシールドで防御に回っている。

 だが、グエルの守りは堅牢だ。命中してはいるが防御され、まともなダメージは一発もない。

 こんなの、1ON2の数の利なしじゃどうしようもない。

 ビームバルカンとドローン攻撃で反撃に出たダリルバルデに、ルブリス・ジェミニが大きく下がる。

 ハサウェイはグレネードをダリルバルデに打ち込み、ロウジ達の後退を支援した。

 

「ごめんハサウェイ、挑戦2度目だけど、アレ確かにヤバいね!」

「デスルター搭乗のグエルさん並の反応だね。

 迂闊に突っ込んだら多分猛烈なカウンターが来るよ!」

「なら、それを誘えばいいな。

 ロウジ、オレが突っ込む。任せた!」

「う、うん!」

 

 ロウジとセセリアに最小限の連携指示を行い、ハサウェイはキャプテンΖを得意の上空からの攻撃に移させた。

 相打ちなら、安い! 牽制のビームバルカンを掻い潜り、ハイメガを構えて突撃する。

 

「とった!」

 

 必中距離でハイメガを叩き込んだつもりだった。

 だが、ダリルバルデはそれすらドローン制御の武器でそらし、頭部のビームバルカンを打ち返してきた。

 避けられるはずない!モニターが真っ赤な染まり、続いて激しい衝撃音と警告音が響く。

 捕まった!? ダリルバルデの足についた伸びるワイヤー武器、シャクルクロウがキャプテンΖの左腕をシールドごと掴みとっていた。

 ロウジ、今だ! ハサウェイは拳を握り快哉を叫ぶ。タイミングドンピシャ、ダリルバルデの背後上方、ライフルを構えて突撃するルブリス・ジェミニが見えた。

 

「……とったぞ、グエル・ジェターク!」

 

 だが、ルブリス・ジェミニはライフルを跳ね上げ急制動、不自然に攻撃を停止した。

 叫んだ姿勢のまま、ハサウェイは呆然と固まる。そしてモニター画面で天と地がひっくり返る。

 ダリルバルデがシャクルクロウでキャプテンΖを大きくぶん回したのだ。

 

「う、ああーっ!?」

 

 モニターに、逃げるルブリス・ジェミニの背面が大きく迫る。凄まじいパワーでそのままルブリス・ジェミニにキャプテンΖが叩きつけられる。致命的なダメージ音と共に、モニターがブラックアウトした。

 また、負けた。ハサウェイは脱力してダイバーギアの操縦桿から手を離す。

 

「ガンダムなんか……もう、乗るな」

 

 真っ暗なガンプラコクピットに、AIグエルの特殊勝利台詞が響き渡る。

 かくして、ハサウェイ達の最強グエル撃墜チャレンジは、2度目の失敗とあいなったのであった。

 

 

 

「くっそー、フォース結成記念に、勝利ですっきり終わりたかったなー!」

 

 アーガマの艦内MSデッキに、セセリアの叫びが響く。

 まったく同感だ。ハサウェイも心の中で同意した。

 GBNでダイバーが集まって出来たチームが“フォース”である。

 ハサウェイはロウジとセセリアと共に、フォースを発足した。

 名前もまだない仮設フォースだが、初戦を勝利で飾りたかったのはハサウェイも同じだった。

 

「なんだよあの反応速度! あのサギ臭い硬直キャンセル、あの無駄にいい声!」

「あの最強グエル討伐、公式調べでクリア率16%だからさ……」

 

 奇声を上げて跳ねまわるセセリアをなだめようと、ハサウェイは声をかけた。

 ここはハサウェイのガンプラハンガーだ。

 セセリアが無言のままハサウェイの手を払い、ハンガーを見上げる。

 セセリアの視線の先では、大破判定を食らったとルブリスジェミニとキャプテンZが、

 仲良く出撃不可時間のカウントを刻み始めていた。

 

「……次はゼッタイ勝とうね。リーダー!」

「うん。次こそ、絶対勝とう!」

 

 息を長く長く吐き出し、セセリアがロウジの手を握りしめる。

 ロウジはリーダーらしく、力強く宣言した。

 

「んじゃハサウェイごめん、ボク午後は予定通り課題を終わらせるまで魔王の呪いで遊べないから!」

「気にせずちゃんと宿題済ませてきなよ」

 

 なんとかセセリアの発作は収まったらしかった。

 いつもの明るい笑顔で振り返り、セセリアがハサウェイへ言ってくる。

 まぁしかし、家族を魔王だの魔女だの言うのもすっかり定着してしまった。

 ハサウェイは苦笑いしながら、セセリアを見送る。

 

「魔王さまによろしく!

 昨日のおやつ、美味しかったよ」

 

 ロウジも笑顔でセセリアを見送る。

 まぁ、悪意の欠片もないのはわかる。

 ハサウェイは言葉を飲み込み、セセリアのログアウトを見送った。

 セセリアのログアウトと共に、セセリアの所有するルブリス・ジェミニがガンプラハンガーから消失する。

 

「さて……動けるガンプラ無くなっちゃったし、今日はどうしよっか?」

 

 我らがフォースリーダー、ロウジがあっけらかんと言う。

 メンバーはわずか3人、作りたてで名前も決まってない仮設フォースのつらいところだ。

 戦力も人手もない! まあ、それも仕方ない。

 

「まだ、デコトレーナーは使用自粛中なのか?」

「うん、運営さんからの調査結果がまだ返って来てないらしくってさ」

「そこまで大事になってるの?」

 

 軽い問いにヘビーな回答が帰り、ハサウェイは眉根を寄せて考えこんだ。

 あの決闘以来、ロウジがデコトレーナーを使用するところを見ていない。

 最初はロウジがハサウェイに不要な遠慮でもしているのかと思ったものだ。

 

「セセリアと二人大騒ぎしたけど、結局インベントリにもブラスターロッドは見つからないし。

 ”赤い彗星の人”がリアルで作成したはずのブラスターロッドさえ、やっぱり消失したまま見つからないらしくって」

「……うわぁ、何それ意味わかんねぇ」

 

 気味が悪い。ハサウェイは思わず顔をしかめた。

 ゲームのダメージが現実にフィードバックされるなど、そんな事例、GBNにあっていいはずはない。

 

「オカルトすぎるよね。

 だから、運営さんの回答来るまでデコトレーナーは使用自粛するよ」

「それが良さそうだな」

 

 ロウジの言葉にハサウェイはうなずく。

 しばらく沈黙が続く。今日はいますぐの予定はなかった。

 黙ると、モヤモヤがハサウェイの心に溜まってくる。

 しまい込むか、ぶちまけるか。ハサウェイは後者だった。

 

「……なあ、リーダー。

 今日のグエル戦、聞きたいことがある」

「あ、うん。何?」

 

 ハサウェイは休憩用の椅子に腰掛け、ロウジに声をかける。

 ロウジが明るく聞き返してきた。

 

「グエル相手に、キャプテンZが足クロー捕まった時、

 ルブリス・ジェミニが後方強襲したろ?

 ライフルねじ込めんで、勝った!と思ったんだけど、アレ何? 弾切れ?」

 

 ロウジがリーダーであることに異存はない。だが、それとこれとは別だ。

 ハサウェイには、あの行為はみすみす勝機を逃したようにしか見えなかった。

 

「あ、えと……うん、弾はあったよ。

 けどね……?」

「じゃあ、なんで?」

 

 ロウジの顔が曇り、途端に口調が怪しくなる。

 理由がわからない。ハサウェイの語調が自然と強くなっていた。

 

「……あ、あのね?怒らないで聞いてほしいんだけど」

「……うん。わかった」

 

 よっぽど自分は怖い顔をしていたのか。

 ロウジのおどおどした台詞に、ハサウェイは慌てて居住まいを正し、笑顔を浮かべて頷いた。

 

「まず、僕は僚機との連携、セセリア以外だと初めてなんだ」

 

 少々意外ではあった。

 マフティーだったハサウェイ相手に食らいついた強引さをイメージすると、野良チームを組むのも平気そうに見えた。

 とはいえ、不慣れならば仕方ない。ハサウェイは頷き、ロウジに先を促す。

 

「昔、知り合ったばかりの男の子と、GBNじゃない別のゲームで協力プレイした時にさ。

 僕、舞い上がっちゃって、めっちゃ攻め攻めだったんだ。

 そのゲーム慣れてたし、僚機が戦ってる敵機にも後ろから攻撃ねじこんでさ」

 

 それは判る、実際敵として戦ったロウジは強かった。ハサウェイは納得顔で頷いた。

 多分、それが本来のロウジの攻め方なのだろう。

 

「で、結果として『お前と遊ぶのつまんねー』って言われちゃった。

 ……だから、その、獲物奪うの、良くないかなぁって思ってさ」

「あー……うん。判る、言うヤツいるよね」

 

 とても、身に覚えがある。ハサウェイは苦い顔で深く頷いた。

 ハサウェイの場合は同年代の男子相手に遊んだ時だった。

 ボヤいた相手からの助言によると、男子は女子より下手だと思うとプライドが傷つく小さな生き物らしい。

 

「あと、うっかり誤射したらどうしよう?

 フレンドの絆にヒビが入っちゃう!って頭の中がわぁぁってなって」

「ロウジ、ごめん、オレが悪かった」

 

 ハサウェイは頭を下げ、ロウジの懺悔を止めた。

 本当に、ロウジは裏表のないいいヤツだ。

 今回の件はトラウマによる連携失敗、そして連携経験の不足が原因だ。

 

「……オレはああいう時、撃って欲しいし。

 最初は誤射もあって当然だ。

 こういう相談、先にフォース内でするべきだったよな。本当にごめん」

 

 そして、ハサウェイのコミュニケーションの失敗だ。

 

「キミは強い。フレンドとして、フォースリーダーとして、オレはキミを頼りにしてる。

 失敗したっていいさ。練習にもつきあうし、出来るならオレがフォローする。

 だから、少しずつ一緒にやっていこう?」

「うん。ありがとハサウェイ、僕頑張るよ。

 ……君こそ、本当に強いよ。僕こそ頼りにしてる」

 

 言わずに判るなど、ニュータイプでもあるまいし。

 フレンドになれば全て通じあえるなど、幻想だ。

 ロウジに優しく声をかけながら、ハサウェイは自責の念で拳を固く握りしめた。

 とりあえず、グエルより楽な相手で連携練習することを約束して、初のフォース反省会を終わらせる。

 いつの間にか、出撃不可秒数は三桁にまでカウントを減らしていた。

 

「ところでさ、ロウジ。

 もしかして、さっきのノンデリ台詞の犯人ってセセリア?」

「違うよ!」

 

 何気ない問いに、強い否定が返って来た。

 ハサウェイは思わず二度三度とまばたきを繰り返した。

 

「そうなのか? あ、ごめん今のなしなし。

 そもそもそいつ男の子って言ってたや」

「ほら、セセリアは……脳みそぷーの単純おバカだから細かいこと気にしないし。

 デリカシーはないし、調子乗りだけど、優しいから……」

 

 凄く熱く語られ、ハサウェイの好奇心がむくむくと頭をもたげてくる。

 

「セセリアとは良い連携してたよな。

 付き合い、長いんだ?」

「……うん。ほら、僕、凄く人見知りで距離感取るのヘッタクソでさ。

 だから、リアルではセセリアに手を引いてもらってばっかしなんだ」

 

 すごく優しい笑顔で、ロウジが熱く語る。

 ハサウェイもつられて微笑み、頷いていた。

 

「GBNに誘ってくれたのもセセリアなんだよ。

 ロウジ君が自分に似てる気がして、すごい感情しちゃってさ。

 やるならロウジ君だ!ってあいつと話してたんだ。

 いざ僕がやるまでは結構時間かかったけど、『コンビ組むならセセリアだよね』って、

 わざわざアバターをセセリアにして、待っててくれたんだよ」

 

 もうなんて言うか、すごく良くわかった。

 ハサウェイは思わず聞いてしまう。

 

「……好きなんだ?」

「ち、違うよ! あいつはただの幼なじみで!

 ぶきっちょな僕に歩幅あわせてくれるくらい優しいだけで……」

 

 ごちそうさまです。ハサウェイは心の中でそっと手を合わせた。

 ぼふっと擬音がしそうなほど、みるみるロウジのアバターが頬から耳まで真っ赤になる。

 ハサウェイは真剣な表情で、ロウジの顔を覗き込む。

 

「でも、好きなんだよね」

「……うん」

 

 ハサウェイの追撃に、ロウジが真っ赤な顔で身悶えしてうつむく。

 たっぷり一分ぐらい黙ってから、ロウジは観念したように首を縦に振った。 

 なにこの超かわいい生き物、おうちで飼いたい。

 

「セセリアは知ってる?」

「知らないよ。言ってないもん」

 

 にっこり微笑み、ハサウェイはそっとロウジへ小指を差し出す。

 

「……わかった。絶対ナイショにする。

 だから、頑張れロウジ!」

「……うん、ありがとハサウェイ」

 

 指切りげんまんし、男同士の約束と相成った。

 絡めた指を見ながら、二人してくすくす笑い合う。

 いつの間にか、キャプテンZの出撃不可カウントは消えていた。

 

「じゃ、さ。ロウジもリーダーらしくセセリアにいい格好したいだろ?

 早速連携練習しようぜ!」

「……うん! じゃあちょっと待って、パパに借りたガンプラ呼び出すね」

 

 ロウジと二人、簡単なバトルミッションをこなしながら、セセリアとの仲良しエピソードをたくさん聞かせてもらった。

 ヤバい。この二人、超推せる。

 リアルのハサウェイは、多分ずっとにやけっぱなしだったろう。

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・高難度ミッション 最強グエルを討伐せよ!

 

 ボス補正によってメイジン・カワグチ作のガンプラ並みに超強化されたHGダリルバルデを、

 AIグエルが恐るべき反応速度と戦術組み立てによって操る、GBN公式が用意した高難度ミッションの一つ。

 グエルは1体だが、同時出現するシュバルゼッテも厄介で、CPU戦の中では、最高難度ミッションの一つとして名高い。

 本文ではロウジの攻撃が決まれば勝っていたとハサウェイは言っているが、半壊するとグエルが底力を発揮するため、

 カウンターから訳の分からない初見殺しコンボを決められ、逆転負けしていた可能性が高いだろう。

 クリア率もとても低いミッションだが、バトルガチ勢のフォースではグエル撃破のタイムアタックも盛んらしい。

 ガンダムタイプで挑戦して敗北すると特殊台詞が聞けると言う事で、ガチ恋勢による1日1チャレンジもあるとか。

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