リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

33 / 98
次回は6/23(日)更新します

ちょっとずつ書き溜めて、文章量の貯金を取り戻してきました



ミッション3-3 自分と向かい合ってみよう!

 

 ボクのガンプラが弱くても、ボクはロウジの傍にいられるだろう。

 けれど、そんな未来で、ボクは胸を張っていられるだろうか?

 

「ルブリス・ジェミニはいいガンプラだけど……か」

 

 セセリアの感傷的な呟きが、誰もいない部屋に響き渡る。

 学校の生徒指導室ぐらいの小さな小部屋に、上品なソファと机の応接セットが置かれている。

 セセリアはソファに深く背を預け、ぼんやりと天井を眺めた。

 ここは運営さんの使う応接室兼小会議室、時刻は夕ご飯を食べ終えたばかりの平日の夜だ。

 運営さんとロウジ達の打ち合わせ予定の日、セセリアはだいぶ早くログインし、この部屋に通して貰ったのである。

 

「まー、ボクがマフティーとやりあったの、すごいきつかったもんなあ。

 ガンプラの性能の違いは戦力の決定的な差だよ、ウンウン」

 

 セセリアのおどけた台詞が、誰もいない小部屋に虚しく響き渡る。

 あのデストロイガンダムには、ルブリス・ジェミニでは勝てない。

 あの時。ロウジは確かにそう言いかけていた。

 

「相手はおそらくメイジン級の、プロのガンプラビルダー、かぁ……」

 

 ソファを握るセセリアの手に自然と力がこもる。

 ロウジに乗ってもらうために、ロウジと一緒に楽しく遊ぶために。

 そう思って、セセリアは真剣にルブリス・ジェミニを作り上げたつもりだった。

 確かに自分はまだ、子供で、学生で、アマチュアだ。

 ならこのまま、大人で、社会人で、プロになれば追いつけるのか?

 今のセセリアにはまるでわからなかった。

 

「プロとアマ、ボクのガンプラ、ナニが違うんだろ……?」

「お困りのようやな、かわいこちゃん!」

 

 いきなり死ぬほどうさんくさい関西弁のしゃべりが響き、セセリアは目を見開いた。

 いつの間に部屋にやってきていたのか、壁際にすっごく格好つけたポーズでたたずむダイバーが一人。

 正直超びっくりしながら、ソファを立ちあがってセセリアは”そいつ”へ指を突き付ける。

 

「ちょい! 立ち聞きとかノーマナーじゃんよー」

「すまんすまん、1000億プリチーさを誇るうちのかわいさに免じて許してや」

「おっけー、許す。ボクのかわいさは宇宙一だもんね」

 

 関西弁ネイティブな身にはすごく慣れ親しんだノリだ。

 セセリアは驚きを忘れ、軽妙な台詞のキャッチボールを始めてしまう。

 掴みかからんばかりの勢いの歩調を緩め、壁際の”そいつ”の目の前で立ち止まり、

 セセリアはおどけたポーズで元気いっぱい、挨拶を叫ぶ。

 

「初めまして、セセリア・ドートでっす!」

「奇遇やな。ウチもセセリア・ドートっちゅーねん」

 

 まるで鏡のようにポーズをとり、”そいつ”も自己紹介を返してきた。

 そりゃまあボク、びっくりもするよ。

 何せ”そいつ”は、水星の魔女本編終了後、秘書姿のセセリアのアバターだったんだから。

 背の高さも同じ、CVも同じ。”そいつ”はまるで鏡でも見てるようなレベルでそっくりだった。

 

「ややっこしー!? どーすんの? 格ゲーみたいに色分けでもする?」

「そこは大丈夫。ウチのダイバーネーム見てみ?」

 

 にやりと笑って”そいつ”が通信ウィンドウを開く。

 そのダイバーネームを見て、セセリアは豪快に噴き出した。

 

「”エ”セリア・ドート! パチモンじゃん!」

「どーも、関西弁をしゃべるエセっぽいセセリアちゃんや。

 エセリアちゃんって呼んでな☆」

「ぷぷー。似合ってるよ。エ・セ・リ・アちゃん☆」

 

 エセリアがかわいこぶってポーズを決め、握手を求めてきた。

 セセリアはかわいく煽ってやりながら、手をがっしり握りしめる。

 

「感謝せーや? 運営権限でウチがリネームしたったんや。

 まあ、こっちはイベント用のサブアカウントやからな」

「ええー……まさかと思ったけど、マジで運営なんだ」

 

 運営さんの部屋に出没する時点で、運営さん側だとはセセリアも思っていた。

 ただ、こう。プロでメイジン級のビルダーなら、それらしいたたずまいとかもっとあるじゃん?

 

「そう、ウチはガンプラ心形流のプロビルダー、エセリア・ドーテ!

 ジブンらの対戦相手を務めるデストロイガンダムのパイロットや」

「ってことはボクよりだいぶGBNのベテランさんだね?

 よろしく、エセリアパイセン!」

 

 ネットだと話を盛る人が多いが、さすがに、運営応接室で嘘はないだろう。

 セセリアは素直に敬意を払い、笑顔で頭を下げる。

 

「ってより、セセリアちゃんも確かに総ログイン時間短いみたいやけど、

 フォースメンバー、のきなみログイン時間エライ少なない?

 名前も仮決めっぽいし、ずいぶんフレッシュなメンバーばっかのフォースなんやな」

「えへ。ボクは最近アバターごとアカウント作り直した経歴詐称の復帰勢です。

 リーダーのロウジなんかはマジのガチでフレッシュだよ」

 

 ハサウェイもプレイ歴は長いらしいのだが、家庭環境や時間制限もあり、あまりログインしていないらしい。

 フォースの中では、結果的にセセリアが一番古株のベテランなのである。

 

「ほぉ……それなのに手ごわいバトルイベント挑戦するなんて勇気あるやん!」

「えへ。実は知り合いのベテランダイバーさんから挑戦権利を譲ってもらっちった」

 

 しかしこう、エセリアパイセン、セセリアは凄く波長が合う。

 この会話のノリ、リアルでも多分お調子者の関西人系キャラなのだろう。

 自然と話は盛り上がり、気付けばセセリアは気軽に色々話してしまっていた。

 

「ほら、あのデストロイ、プロビルダーの作っためっちゃ出来のいいガンプラじゃん?

 シショーがいるとはいえアマチュアのボクが自作したガンプラじゃ、手も足も出ないだろーなーって」

 

 15分近くも世間話の末、打ち解けたセセリアは、思わずそんな本音を吐露していた。

 

「なるほどなぁ、それで”プロとアマのガンプラ、どう違うのか”っちゅー訳か。

 ……けど、ジブン、ほんま運がええで」

「運がいい?」

 

 本音を聞いたエセリアが真面目な顔で小さく頷き、得意げににやりと笑い、何かを取り出す。

 それは、GBNのサーバー上で、現実そっくりに再現された1/144デストロイガンダムのガンプラだった。

 

「予定よりまだ30分ほどあるやん。

 ガンプラバトル、どや?」

「……よろしくお願いします!

 さんきゅーエセちゃん。話が分かるぅ」

 

 セセリアは表情を輝かせ、ダイバーギアを操作し、模擬戦の申し込みを送信する。

 一も二もない。今の自分とプロビルダー、どれほど差があるのか確かめるチャンスだ!

 ダイバーギアの操縦桿を握るリアルの手にも、力がこもっていた。

 

 

 そして、300秒が経過した。

 

「……ダーメじゃん、これ。まるで相手になってない!」

 

 モニター越しに見上げる空が、とても青い。

 セセリアの愛機、ルブリス・ジェミニは被弾で墜落し、無様にビルの残骸に埋もれていた。

 ダメージアラートの鳴りやまないコクピットで、セセリアはやけっぱちの叫びをあげる。

 握りしめた操縦桿は、手汗でベットベトだ。

 

「敵の防御はカチカチ、火力は精密。

 ルブリス自慢の大型ビームライフル、豆鉄砲扱いとかさー!」

 

 バトルフィールドはコロニー・ヘリオポリス内部だ。

 遠距離、よーいどんで始まったガンプラバトルだが、ここまでの展開は終始一方的だった。

 セセリアの攻撃はデストロイの前にまるで通じず、正確で圧倒的な火力を前に近づくことさえ出来ない。

 背中のガンビットランチャーは喪失しており、全身も無傷な部位を探すのが難しいぐらいだ。

 

「……どや? プロとアマの違い、感じるとこはあったやろ」

 

 いやまったく。思い知りました。エセリアの通信に、セセリアはふっと息を漏らす。

 デストロイのコクピットから響くエセリアの声におごりはない。むしろ優しいぐらいだ。

 追撃を入れてこないのは、多分こちらが方針を決めるのを待ってくれていたのだろう。

 

「プロだから強いんやない。プロになるぐらい努力を重ねてきたから強いんや

 セセリアちゃんはガンプラ作りの筋ええで。バトルの腕もまあまあや。

 けど、ウチとタイマンで勝つにはジブン、ちょーっとばかし早かったな」

 

 間違いない。この人はきっとプロだ。セセリアはバトルを通じて確信した。

 いったい、どれだけガンプラ作りを重ねてきたのだろう。

 いったい、どれほど濃密なバトルを体験してきたのだろう。

 とても今のセセリアには想像できない。この人は、それぐらい強い!

 

「ギブアップしてもええで、セセリアちゃん」

 

 優しい声でそう言われ、セセリアは強気に笑ってみせた。

 たとえ今、届かない相手だとしても、一歩踏み出すことを諦めたつもりはない!

 

「ジョーダンきついよエセリアちゃん!

 もう少しだけ、遊んでもらうかんね!」

「いよっし、その意気や。来ぃや、セセリアちゃん!」

 

 お願いジェミニ、もう少しだけ頑張って!

 愛機、ルブリス・ジェミニのボロボロのスラスターにむち打ち、セセリアは愛機と共に空へと舞い上がる。

 コロニーの大地に仁王立ちするデストロイから、大型のミサイルが迎撃に打ち上がる。

 コロニーの人工太陽を背負うような位置にまで舞い上がらせ、スラスターをカット。

 ミサイルの迎撃に頭部バルカンをフルオートで放ちながら、自由落下の速度にスラスターを乗せ、デストロイへ突貫する。

 

「真正面、カモネギ、ごちそうさまやな!」

 

 デストロイ右手の指5本、ビームが正確に対空迎撃に飛んで来る。

 機体を半分持ってかれたっていい! 愛機を半身に捻り、右腕のライフルを盾にする。

 収束した5本のビームが、ルブリス・ジェミニのライフル、右腕、右半身をごっそり持っていく。

 ダメージは多大、それでも愛機はまだ動く。

 致命的な損傷と引き換えに、距離は詰めた。

 ダメージアラートで真っ赤に染まるモニターで、デストロイの頭部が至近、白兵距離で大写しになる。

 

「届けぇ!」

 

 せめて一太刀! 叫びと共に、ウェポントリガーを引き絞る。

 ルブリス・ジェミニに残る左腕が腰の後ろでサーベルを引き抜き、サーベルを真正面へ思い切り突きこむ。

 だが、懸命なその一撃でさえ、届かなかい。

 サーベルはデストロイが構えた太い左腕に突き刺さり、半ばを半壊させたところで止まってしまっていた。

 

「……くっそ、ダメか」

 

 これが、今の実力差だ。爽やかな笑顔で、セセリアは敗北を受け入れる。

 

「惜しかったやん、セセリアちゃん」

 

 デストロイの口元、ツォーンMK2のビームが発射姿勢に移る。

 けれど今日のこの挑戦が、無駄だったなどとは思わない。

 セセリアが敗北を覚悟し、操縦桿から手を離した瞬間だった。

 

『はい、ストッープ!!』

 

 強制的な割り込み通信と共に、ガンプラの動きが止まる。

 バトルフィールドがぼやけ、ポリゴンが分解されるようにふわーっと消えていく。

 セセリアはこの現象を知っている。権限を持つ誰かさんが、バトルを強制切断したのだ。

 

「あ。ちょ、トロンちゃん。せめてあともう少し!」

『もう少しじゃありません!

 いったい全体、何をなさっていらっしゃいますの、アナタ達?」

 

 高い声で、お叱りの言葉がきんきん響く。

 ……え。ボク、ひょっとして何かやらかした?

 セセリアは困惑の表情を浮かべたまま、じっとり浮かんだ冷や汗をぬぐうのであった。

 

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・模擬戦

 

 エキシビションマッチの一種で、ダイバーが対面でいる場合に行う事が出来る限定バトルのこと。

 戦歴には含まれず、ガンプラの大破による出撃不可時間が存在しないが、通常通りの実弾を使ったバトルが行われる。 

 複雑な設定は出来ず、使用出来るバトルエリアは一部の限定されたフィールドのみとなっている。

 公式戦ではないため、バトル映像はバトル当人以外には閲覧できない。

 対CPUも可能だが、敵機は汎用量産機しか選べないため、CPUの練習には適切なバトルミッションを使われる

 主に作ったばかりのガンプラの性能テストなどに使用されるが、野良アッガイ使い同士のダンスバトルなどにも使用される。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。