リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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次も6/7日曜日の19時予定です


ミッション3-5 挑戦者達を支えよう!

 

 自分がスーパーエースなんだって、昔は無邪気に信じてた。

 夢は必ずかなう。努力に見合うだけの結果が出る。そんな全能感、確かにあった。

 けれど残念ながら、自分はアムロみたいなスーパーエースなんかじゃなかった。

 随分昔に思い知った、どこにでもいるモブの量産機乗りなのだと。

 今もときどき、いやおうなしにそれを思い知らされる。

 

 

 

 黒煙上がる都市を背景に、デストロイガンダムが雄々しく立つ。

 さすがデストロイ。正確で重厚な対空放火だ。

 08小隊のホバートラックを模したモニターや計器に囲まれ、エニルはバトルを観戦していた。

 モニターに映る都市は、GBNのバトルフィールドの一つ、ベルリン(SEED DESTINY)だ。

 GBN内で行われている一つのバトル状況を、エニルはオペレーターモードで見守っていた。

 エニルが見守る中、モニターに映る空を白い一機のガンプラが駆ける。

 デストロイが白いガンプラ目掛け、重厚なビームの対空砲火を撃ち放った。

 

「いくら対空砲火が、分厚くったって!」

 

 正確だが、それだけだ。それではロウジには通じまい。

 ロウジの駆る白いガンプラ……ガンダムXが叫びと共にきりもみ降下し、対空砲火をかいくぐる。

 近接のイーゲルシュテルンの猛攻を盾でいなし、ガンダムXの大型ビームソードが横薙ぎに払われる。

 並みのMS相手なら上下に真っ二つ、必殺となるはずの一撃だ。

 だが、ビームの刃はデストロイの胸部スーパースキュラの一つを破壊し、そこで止まる。

 

「イヤぁ! 死ぬのは嫌ッ!!」

 

 デストロイがステラの声で悲鳴をあげ、反撃の猛烈なビームの輝きが全身で膨れ上がる。

 ビームソードの刃を消し、ガンダムXは素早いステップで緊急回避へ移る。

 至近距離では回避しきれない。再び距離を取り、猛烈なビームの嵐をなんとか避ける。

 このデストロイは、ダイバーの操る相手ではない。

 SEED DESTINYの高難度ミッション、ベルリン防衛戦の高難度バージョンなのである。

 

「大型ビームソードが直撃したはずなのに……

 さすがデストロイ。なんて耐久性!」

「プロビルダーのデストロイは、間違いなくこれよりさらにタフだぞ!

 CPUデストロイにすら倒せないようでは、勝利は夢のまた夢だな」

 

 舌を巻くロウジに、エニルはオペレーター気取りで通信を入れる。

 高難度とは言え、相手はグエルのようなAI搭載型CPUではない。

 高難度補正のかかったデストロイは確かに強いガンプラだ。だがプロのガンプラはさらに強い。

 ガンプラの完成度の差は、耐久性とジェネレーター容量で顕著に表れる。

 よりタフで、エネルギー切れを気にせず強烈なビーム兵装を使用できるのだ。

 

「やってみせます!

 エニルさんのガンダムXなら……!」

 

 ロウジが叫び、再びガンダムXが対空砲火への突貫姿勢をとる。

 エニルはその勇姿をモニターで眺め、満足気にうなずく。

 ロウジが駆るあのガンダムXはエニルの最新作、もっとも完成度が高い出品用のガンプラだった。

 

「やって見たまえ、ロウジ。

 キミならば、ガンダムのポテンシャルに負けはしまいさ」

「はい!

 これで勝てたら……僕、神様、信じます!」

 

 大丈夫。キミはきっとエースになれるさ。

 ガロードのセリフを真似るロウジをサムズアップで激励し、エニルはGBNのオペレーター機能の使用を中止した。

 臨場感たっぷり、狭く薄暗いホバートラックだった周囲の景色が、ただのGBN内オブジェクトへと戻る。

 ここは”GM-ARMS”のフォースネスト、そこに設置された特設オペレータールームだ。

 ホバートラックの硬いシートから這い出し、エニルはアバターの身体に大きく背伸びをさせる。

 ロウジが優勢にバトルを進めるモニターに背を向け、エニルはオペレータールームを後にした。

 じっくり見てやりたいところだが、エニルが面倒を見ねばならない相手はロウジだけではない。

 

 

 

「ガンプラ心形流の門下生、ホームページにのってるのは全員だな。

 つまり、エセリアの正体は……この中の誰か!」

「お調子者で関西弁ネイティブ、そしてガンプラへの造詣は確かな相手だよ!

 該当者は……大体がそうじゃん! なんで写真、皆でお揃いのダブルピースしてんのさ!?」

 

 真剣な顔で何をしているかと思えば……

 入室するなり聞こえてきた、ハサウェイとセセリアの大騒ぎに、エニルは思わず天を仰いだ。

 

「……ハサウェイ、セセリア。

 やめておけ、中の人を勘繰るのはノーマナーだぞ」

 

 エニルは、ため息まじりにハサウェイとセセリアをたしなめる。

 どうやら子供たち二人が、エセリアの正体クイズを行っていたらしかった。

 運営とロウジ達との打ち合わせが終わり、次の日の夜。

 ここは”GM-ARMS”のフォースネストの、応接スペースだった。

 

「あ、エニルさん、ばんはーっす!

 事情はボクが送ったログの通り!」

「すいませんエニルさん、

 このバカのせいで勝利はさらに難しくなりました」

「ちょっと待ってハサウェイ、そろそろボクの言い分聞いてよ!」

 

 笑顔で指さすハサウェイに、セセリアが悲鳴を上げる。

 このやりとりも、じゃれあいみたいなものなのだろう。

 ずいぶん距離も近くなったものだ。エニルはしみじみそんな事を思う。

 

「まあ、待つんだ、ハサウェイ。

 冷静に、セセリアの立場になって考えてみてほしい」

 

 食い下がるセセリアを手で制し、エニルはハサウェイに優しく言う。

 エニルに、セセリアへの怒りはまったくない。

 そもそも今回の目的は、ロウジ達に歯ごたえあるバトルに挑戦させてやりたいというものだ。

 勝利した時、GM-ARMSのフォースイベントを宣伝するのは方便みたいなものだ。

 

「まず、運営の人に自信満々に、バトルをしようと誘われたのだ。

 他の挑戦者さんも同じように練習試合をしたと思っても仕方ないとは思わないか?」 

「それは……そうかもしれないですね」

「それもあるし、そもそもボク、私物の別ガンプラ相手だと思ったもん。

 プロなら、イベント用と別にタイマン用のガンプラくらい持ってるしょ!」

 

 まあ、その結果が、運営の人、なーんも考えてませんでした! だったのだが。

 確かにプロが所有するガンプラが、公式大会用の隠し玉であるガチ機体一機と言うのはまずない。

 手の内がバレてもいい一般公開用のガンプラを1機ぐらいは持っているものだ。

 正直なところエニルは、セセリアを考えなしだと責めるのも酷だと思う。

 

「……うん。ごめんなセセリア。

 もうこのネタでいじるの、オレは封印する」

「やっぱり、わざとやってたんかーい!

 もうキミとは、やっとられませんわー」

 

 関西の漫才みたいなノリで、セセリアが華麗に裏手でぺしりとツッコミを入れる。

 そのままその手でハサウェイと仲直りの握手をかわしあう。

 やれやれ。エニルはクールな顔を作り、拍手して二人の注意を引き付けた。

 

「さあ、切り替えよう! キミ達で今から一緒に強大な敵を挑むんだろう?

 今、ロウジはガンダムXの習熟中だ。

 普通のデストロイならば、あの機体で問題ない……そう思っていたのだが」

「そう。ところがぎっちょん!

 ボク達の挑む相手は豪華にワンランクアップ!

 プロビルダーのガチカスタマイズ、ウルトラデストロイとなります」

「セセリア、すまないが会議はマジメモードでいこう」

「あい。すいませんっした」

 

 セセリアを軽くたしなめ、エニルは応接室のソファへと腰を下ろす。

 セセリアが眼鏡アクセを装着し、きりっとした顔で居住まいを正す。

 背後の大型モニターへ、ネットに掲載されたアニメとGBNのデストロイガンダムのデータを映し出す。

 エニルの操作で、モニターに“ウルトラデストロイ対策会議”の文字が点灯する。

 こうして、たった三人のささやかな対策会議が始まった。

 さっそくハサウェイが挙手し、質問を投げかける。

 

「まず、エニルさん。

 オレはあまり詳しくないんですけど、プロのガンプラって、当然すごく強い相手が出てくるんですよね?」

「そうだな。デストロイガンダムの完成度から、ビルダーとしての実力は明らかだ」

 

 まったく、ほれぼれするような出来だ。賞賛と羨望のため息をかみ殺し、エニルは説明を続ける。

 間違いなくプロで、それも世界大会で活躍するレベルのガンプラビルダーだ。

 自分みたいなモブとは違う、このビルダーは各戦線を任されるようなエース級だ。

 デストロイを作ったプロの実力をたたえながら、思わずエニルは内心で自虐する。

 

「デストロイに実弾武装を追加したとなると……近接信管仕様の対空兵装を搭載してくるだろう。

 また、近接ガンプラに懐に潜り込まれないための近接防御火器も増やしてくる可能性が高いな。

 あの高火力のデストロイ、下手にいじれば並のビルダーなら武装と設定の過積載でむしろ弱体化する。

 だが、相手はあのメイジン級のプロビルダーだ。

 ビームだけでなくバランス良く実弾火力を増強し、堅牢な防御力と高火力を兼ね備えた恐ろしいガンプラとなるだろう」

 

 セセリアもハサウェイも、自分のような才能の底が見えたモブじゃあない。

 光るものがある原石である三人が、バトルで心折れるような結果となってはならない。

 いい勝負になれるようはからうのが、経験浅い三人をけしかけた責任というものだ。

 

「それだけ聞くと、オレらの勝利は割と絶望的に思えるんですが……」

 

 エニルが発した怒涛の情報量をようやく飲み込んだのか、ハサウェイが少し遅れて難しい顔でぼやく。

 

「無策ならもちろん敗北は必至だ。

 だから作戦を練るのだ。まずはデストロイの特性を共有していこう。

 セセリア、まずはキミに出題していた課題の提出を頼む」

「はぁーい、せんせー。では行きます。

 ”デストロイの防御の要、陽電子リフレクターについて”のレポートぉ」

 

 どうやら不良学生セセリアも、今回は夏休みの宿題を忘れるような事はなかったようだ。

 眼鏡セセリアがきりっとした顔で立ち上がり、模擬戦のバトル映像を背景に説明を開始する。

 

「めちゃめちゃカチカチだね、アレ!

 ビーム射出タイプのガンビットじゃぺちぺちって感じだった。

 中距離からのルブリスの大型ビームライフルの全力射撃すらケロッとしてたから、

 ボクらの最大火力、キャプテンΖのハイメガランチャーさえ、真正面からじゃフィニッシュにはならないかも!」

「GBNの対射撃バリアは、どれも距離が遠いほど高い防御力を発揮するからな」

 

 セセリアの感想を、エニルがシステム面から補足する。

 大型機特有の鈍重さを、大型機の出力を生かしたバリア能力で守る。大型機運用の定番だ。

 

「大型機あるあるだな……ビグザムが搭載したIフィールドバリアとはまた違うのか?」

「似てるけど、ちょっち違うね。

 ビグザムと違って、マシンガンやバズーカ、ミサイルなんかもバリアー!しちゃう」

「その分、普通は対ビームのバリアよりは防御力が劣る。

 ただ、今回の相手に限ってはガンプラの完成度できっちりフォローしていると考えた方がいい」

 

 ハサウェイの疑問にセセリアが答え、エニルが補足する。

 ハサウェイが頷くのを確認し、セセリアが次の解説に移る。

 

「デストロイの陽電子リフレクターは……合計三つ!

 両手にそれぞれ一つずつ、フライトユニットに一つ内蔵されてます。

 有志の調査結果によると、バリア発生器の場所はそれぞれここ!

 ダイバーギアに情報入れとくから、チャンスがあれば破壊を目指したいね」

 

 恐らく、GBNのダイバーが集めた有志データだろう。

 デストロイの画像で、左右手の甲に一つずつ、フライトユニット中心部に一つ、赤くポイントされる。

 正解だ。エニルは頷き、セセリアを促す。

 

「では、セセリアくん。

 発生器を破壊するために、デストロイに有効な攻撃手段を三つ答えなさい」

「はい。ずばー! すどん! ごつん! でっす!」

「……具体的に言語化しなさい」

「高火力の近接攻撃と、大火力ビームの接射、シンプルな質量攻撃です!」

「よろしい、正解だ。

 各種ビームサーベル、ハイメガの零距離射撃、ガンダムハンマーなどがそれぞれ相当する」

 

 クールな笑顔で、きちんと言い直したセセリアを称賛する。

 もう一つ、火力の飽和攻撃で強引に陽電子リフレクターを突破すると言うのもある。

 だがそれは、主に格下相手に使えるごり押しだ。今回のデストロイには難しいだろう。

 

「では最後に、今までの情報を元に、キミ達のフォースがとるフォーメーションを提示しなさい」

「はい、基本は前衛がロウジ、後衛がハサウェイ。ボクは火力を捨てて盾によるカバー役かなー。

 ボクを盾にロウジを至近距離へ送り届け、白兵攻撃でダメージを狙います。

 チャンスがあれば機動力のつおいハサウェイのキャプテンΖが前にドギャン!

 そのままズガン!ってデカいのを叩き込んでもらいまーす。

 ボクの立ち回りは、ロウジの機動力、キャプテンΖの火力を維持出来るようフォロー!」

 

 うん、素晴らしい。エニルはきっちり提示した課題を調べてきたセセリアにおしみない拍手を送る。

 プロビルダーの弟子を自称するだけのことはある、確かな分析力だった。

 

「お疲れ様、セセリア。

 しっかりしたプランニングだ。一夜漬けで良く考えたな」

「はい! ガッコの授業中、寝ずに考えました」

「こら! ……学校の授業はきちんと聞きなさい?」

「……はい。すいません。

 後でロウジにノート写させてもらいます」

 

 前言撤回。得意げな不良学生をエニルは笑顔で叱りつける。

 まったく、言葉選びがずいぶんアホそうだと思ったら!

 どうやら知識の詰め込み過ぎでセセリアはナチュラルハイになっていたらしい。

 

「さて、ハサウェイ。

 疑問質問があれば……どうした?」

 

 エニルは言葉少なにセセリアを凝視するハサウェイを不審に思い、水を向ける。

 

「いや、セセリアが真面目に事前調査してきたことにびっくりしまして……」

「ハサウェイ、ひどくない!?」

 

 普段のアホの子ぶりからすれば、さもありなん。

 セセリアの抗議を聞き流し、エニルはハサウェイに苦笑しながら心の中で同意する。

 だが、セセリアはこう見えて三人の中で一番GBN歴が長いのだ。

 

「だってさー、ボク、純粋なバトルじゃロウジに勝てないかんね。

 こういうとこで頑張らないと」

「ロウジに戦術的なひらめきはあるが、事前の戦略的な分析は苦手なフシがある。

 セセリアがそこをフォローできれば鬼に金棒だな」

「では、エニルさん。オレは何を担うべきですか?」

 

 生真面目に挙手し、ハサウェイが尋ねて来た。

 

「ハサウェイはびゅーんでずがーんだね。頼りにしてる!」

「……セセリア、キミには聞いてない」

「ハサウェイのキャプテンΖは、フォース随一の機動力と火力を備えた遊撃アタッカーだ。

 強敵相手にロウジと二人でかかり、ロウジと戦う相手の背後を突く。

 もしくはキミが注意を引いてロウジが裏をとることになるだろう」

 

 セセリアの擬音に苦笑いしながら、ハサウェイの立ち回りを具体的に言語化してやる。

 ハサウェイはガンプラ作りこそまだ素人だが、バトルの腕前はなかなかだ。

 ハサウェイのガンプラは素体をプロ並のビルダーが作ったものだ。

 素体の完成度だけなら間違いなくエニルより上、単純火力だけならデストロイとも恐らくそう劣るまい。

 

「さて、後はロウジのガンプラ次第なのだが……」

 

 ささやかな作戦会議の議題は出尽くした。

 気付けば、随分時間がたってしまっていた。そろそろ会議もお開きだろう。

 後は実際にバトルを通して覚えていく方がいい。

 

「んー、ガンダムX、ボクが見てもさすがの完成度なんだけど……」

 

 セセリアが真顔で、言葉を濁した。

 

「キミのルブリスを蹴落とせるほど圧倒的とは思えないか?」

「いえ、エニルさんのガンプラ、さすがだと思います!

 追いつくには後5年ぐらい待ってほしいかな」

 

 意地悪な言葉選びだったが、セセリアの返答は生真面目だった。

 前向きなようでエニルは安心する。

 

「ただ、やっぱり背中のサテライトキャノンの重量があるし、あんまりフォワード向きじゃないなぁって」

 

 言いたい事はよく判る。エニルは無言でうなずいた。

 あのガンダムXはイベントでの出品用に、一番丁寧に作った品だ。

 誰の元に行くか判らないため、近接、射撃、砲撃、どこもバランス良くプレーンに仕上げてある。

 それだけに特化した能力がなく、強敵相手となると決め手に欠けると言いたいのだろう。

 

「うむ……だが、あのガンダムXがアタシの最新作だ。

 アレより完成度の高いガンプラとなると、手元にはもうないな」

「ディバイダー装備タイプに換装とかどうっす?」

「考慮しよう。手持ちの武装なら色々と用意してある。キミ達も使うといい」

 

 ロウジを含めた三人のダイバーギアに、貸し出せる武装のデータを送信する。

 同時にエニルは応接室の机に武装リストを実体化させ、二人に見えるよう置いた。

 だがセセリアはそのリストを見もしようとせず、真剣な顔である方を指さした。

 

「……ねぇ、エニルさん。ジオラマのアレ、使えない?

 一番いい出来の、あのコルレル。

 たぶんロウジも好きそー」

「……そうだな。何もアタシのガンプラだけにこだわる必要もないか」

 

 セセリアが指さした、白く細身の軽量近接特化ガンプラを

 エニルは、ゆっくりと呟き、その後、ゆっくりと首を横に振った。

 

「だが、あのコルレルはダメだ。すまない。

 あのコルレルは、当時既にプロだった仲間に、ジオラマ展示のみを条件に許可を貰ったものなんだ。

 だから、バトルへの使用は許可出来ない」

「え、そーなの!?

 一番いい出来だって言ってたから、てっきりエニルさんのものだとばっか思ってた!」

 

 それはさすがにかいかぶりだ。セセリアの言葉に、エニルは内心で苦笑する。

 あのコルレルを使わせてやれれば良かったのだが。

 プロになった仲間がいる。今もプロを目指し続ける仲間もいる。

 エニルはプロになれず、プロになるのを諦めた半端者に過ぎない。

 

「となると、ロウジの機体はガンダムXを基準ですか……?」

「ひとまず、ロウジ当人の意見を聞いてみるさ。

 今日はいったん解散しておこうか」

 

 ハサウェイを手で制し、会議の解散を宣言する。

 ドアの向こうで、こちらに向かって駆けてくるやかましい足音が聞こえ始めてきた。

 

「エニルさん、ダメです。僕はやっぱりガロードにはなれません!!!」

 

 悲鳴と共にロウジが飛び込んでくる。

 その手にはエニル作、HGガンダムXが握られていた。

 

「あ、ロウジ。おかえり!

 ……じゃ、エニルさん。ロウジと相談任せちゃってもダイジョブ?」

 

 慣れた調子でセセリアが悲鳴をさらっと受け流す。

 エニルの方は笑みをかみ殺しながらセセリアへ鷹揚にうなずいた。

 

「あ。ごめんセセリア、ハサウェイ!

 ボク一人だけ打ち合わせさぼっちゃって!」

「どんうぉーりー! ボクらのエースのガンプラ選び、一番大事だよ」

「遅くまで時間を割いてくださって、ありがとうございます。エニルさん」

 

 セセリアがロウジにサムズアップしながら、武装リストを手に立ち上がる。

 確かにそろそろ、ハサウェイもログアウトの時間だ。

 セセリアも昨夜遊び過ぎた分、そろそろログアウトした方がよいだろう。

 

「セセリア、ハサウェイ、お疲れ様。

 明日からはいよいよ実際にバトルで武装のテストだ。体調管理はしっかりな」

 

 セセリアとハサウェイが、日付が変わるだいぶ前にきちんとログアウトしていった。

 しっかり休めよ、才能の原石達、寝る子は育つのだから。

 きちんと夜の睡眠時間を確保する良い子二人を、エニルは笑顔で見送るのだった。

 

 

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・武装と設定の過積載による弱体化

 

 ガンプラは選んだ機体によって様々な特殊能力を持つが、ガンプラの完成度によってはその機能を発揮出来ない。

 アッガイの静音性や水中適応能力などは素組でもおおよそ能力を発揮するが、モビルファイターのスーパーモード、トランザム、∀ガンダムの月光蝶などは素組では発揮出来ず、ある程度以上の完成度が必要とされる。

 実際に特殊能力が発動するかどうかはGBNのシステムがガンプラの出来などから判断を行うため、作成後には想定通りに動くかどうかのテストが非常に重要になる。

 また、使用するガンプラに内蔵武装や様々な設定を盛り込むことも可能だが、ガンプラが元々持っている特殊能力同様、ガンプラをしっかり作り込まないと性能を発揮出来ない。

 腕のいいビルダーは設定にあわせてきちんと細部を作りこみ、設定に説得力を持たせた上で、不要な武装や機能をオミットして、総合力を保持する。

 例えばモビルトレースシステムを搭載し、スーパーモードを発動させるシャイニングアッガイを作成したとする。

 素組みの無塗装だった場合はスーパーモードの発動は出来ず、射撃武器がまっすぐ飛ばず、水中に潜れば浸水するような二流のアッガイファイターとなってしまう。

 シャイニングガンダムのカラーに塗り、コアランダーを背面に装備し、射撃武器をオミットすることにより、明鏡止水のキング・オブ・ハートのアッガイファイターが完成するのだ!

 

 

 

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