リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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次回は7/28(日)予定

オリジナルガンプラまみれになると説明が大変になります(自業自得)


ミッション3-8 挑め、エキシビジョンマッチ!

 あっという間の一週間だった。

 頼れるフォースメンバーに、今の自分達で一番いいガンプラ。

 今やれることは全部やりつくしてここにきた。

 プロとのガチバトルなんて、ラッキーで得られた貴重な機会、失うものなんて何もない。

 自分達らしく、せいいっぱいを楽しんでやるだけだ。

 

 

 

『それでは、ごらんください!

 今回の挑戦者、フォース“デミダイバーズ”の皆さんです!』

 

 まばゆいライトに照らされながら、セセリアは”デミダイバーズ”の名を背負い、決戦の舞台へと先頭で入場した。

 大型モニターにはロウジデザインのフォースエンブレムがでかでかと大写しされていた。

 先頭がセセリア、真ん中にロウジ、転んだら手助けできるように一番後ろがハサウェイだ。

 緊張で足元のおぼつかないロウジが目立たないように、セセリアは撮影カメラの方へと愛想よく手を振ってみせる。

 

『見ての通り、大変フレッシュなメンバー揃い。

 実際にGBN歴も浅いダイバーさん達ばかり。

 特にリーダーのロウジくんはなんと三ヶ月未満!』

 

 司会進行を務めるトロンの声が広い空間に響く。

 ここは運営がGBN内へ用意したイベント開催用の小型スタジアムだ。

 中央の広場に設置されたガンプラを設置するためのGPベース目掛け、セセリアは堂々と歩いていく。

 フェンスを挟んで一段高いところにある観客席が空っぽなのは、ロウジの人見知りを考えるとラッキーだろう。

 

『フレッシュな挑戦者がいったいどのような戦いぶりを見せるのか、

 バトルの行方に乞うご期待です!』

 

「ビビらず、よう来たな、挑戦者諸君!

 ガンプラ心形流のエセリア・ドートがお相手するで!」

 

 その中央広場では、セセリアそっくりの顔をしたプロのガンプラビルダーが待っていた。

 初対面というていで、エセリアが胸を張り、声を張り上げてくる。

 セセリアはロウジを真ん中、ハサウェイと反対側から挟んで立つ。

 ロウジは、やっぱりまだダメか。顔色がやや青いロウジを見て、セセリアはハサウェイと頷きをかわす。

 セセリアは小さく一歩踏み出し、ロウジの代わりにと予定通りの台詞を読み上げる。

 

「ボクら3人、フォース、”デミダイバーズ”!

 胸を借りに来たよ、エセリア・ドートさん!」

 

『ただいまより、公式エキシビションマッチ、第4回“フォースで挑戦、大型機を倒そう!”を開催いたします!』

『Gun-PlaーBattle combat mode stand up!』

 

 エセリアがうなずき、大型モニターからトロンが高らかに宣言する。

 システム音声が響き、コロシアム中央のバトルシステムが起動した。

 

『挑戦者、ターゲット、準備を開始してください!』

 

 トロンの合図で、セセリアは三人で円陣を組んだ。

 まだ緊張が抜けないロウジの肩をぽんと叩き、セセリアはゆっくり語り掛ける。

 

「ねー、ロウジ。プロってさ、すごいんだよ。

 死ぬほど頑張って強いガンプラを作り、

 死ぬほど頑張ってトーナメントを勝ち残り、

 ようやくたどり着いた場所で戦えるような相手なんだ」

 

 どれほどの努力を重ねて、エセリアはあそこにいるんだろう。

 正直、心から尊敬する。にっこり笑い、セセリアはさらにロウジに語り掛ける。

 

「今日はすっごいラッキーで5年10年スキップさせてもらったんだ。

 ビビってなんかいたら、もったいないぞっ」

「……うん。ありがとセセリア、もう、大丈夫」

 

 ロウジが声を出し、おずおずと円陣の真ん中に掌を差し出す。

 セセリアが、続いてハサウェイが続いて掌をその上に重ねていく。

 

「敵の対空兵装を警戒し、地上を進行して接敵するよ!

 ボクとハサウェイがコンビ、ロウジはソロで挟撃!

 ボクらを囮にロウジを放り込み、うまく崩せたから遠距離からドカン!」

 

 方針を短くまとめ、口に出す。ロウジとハサウェイがうなずいて、最終確認は終了だ。

 ハサウェイが静かな声で、ロウジを見つめて声を張り上げた。 

 

「さあ行こう、ロウジ。

 オレ達みんな、半人前のダイバーだ!」

「ボクらは二人で一人前、三人なら一人前半!」

「僕ら、三人揃ってデミダイバーズ!」

 

 三つの手のひらと言葉に熱がこもる。声をそろえ、デミダイバーズが高らかに宣言する。

 

「「「デミダイバーズ、ゴー・ファイト!」」」

 

 もう大丈夫、思いと力の限り、このバトルにぶつけてやろう。

 円陣をほどき、セセリアはロウジとハサウェイと共に、それぞれのGPベースへと向かう。

 

『Please set your Gun-Pla』

『各人、ガンプラをGPベースへセットしてください!」

 

 ダークブルーのジェガンを前に、ロウジが戦士の顔になった。

 

「ロウジ・チャンテ、ジェガン・D、起動!」

 

 ハサウェイが唇を引き結び、決意の顔で叫ぶ。

 

「キャプテンΖ、ハサウェイ・ノア 行きます!」

 

 セセリアは仲間達を見やり、明るくおどけて呟く。

 

「はぁい。セセリア・ドート、ルブリス・ジェミニX、出るよー!」

 

 声と同時にアバターの転送が始まる。

 視界がぼやけ、セセリアの周囲のテクスチャが分解されていく。

 

「よーく見さらせ、これがウチの秘蔵のガンプラや!

 エセリア・ドート、ウルトラデストロイ。おいでませ!」

 

 視界正面、エセリアの手元のガンプラはもう見えない。

 にやりと笑うエセリアの宣言と共にセセリアの視界がブラックアウトした。

 

 

 若干の浮遊感がすぐに終わり、セセリアの足裏と背中にしっかりした感触が戻って来た。

 セセリアの周りには全天周囲モニターとリニアシートが広がる。

 ここは愛機、ルブリス・ジェミニのガンプラ操縦コクピットだ。

 戦闘開始まで60秒の文字が正面モニターで点滅する。

 まだ周囲の景色は見えない。セセリアはモニター下部のコンディションモニターに目を走らせる。

 ガンプラの全機能が使用可能の緑色を確認、セセリアは僚機への通信回線を開く。

 

「ガンプラ、ウェポン、アーマー、ブースト、オールグリーン!

 こちらセセリア、各機状況知らせ!」

「キャプテンΖ、ハサウェイ。

 メインアーム、サブアーム共にグリーン!」

「ロウジ、ジェガン・D、オールウェポン、EXモードおっけー!」

 

『バトルエリア、アフリカ・オルドリン自治区(FREEDOM)、バトル時間900秒。

 挑戦者の勝利条件、制限時間内に大型機を撃破。

 大型機の勝利条件、挑戦者の全滅もしくは制限時間の経過による時間切れ。

 挑戦者が大型機をロックオン時点でムービーシーンが挿入されます。

 ムービーシーン中はガンプラ操作不可。タイムカウントも停止。

 その他各種バトル条件は公式レギュレーションに準じます!』

 

 トロンちゃんの読み上げと同時に、レギュレーションがモニターへ提示される。

 要するに、死ぬほど頑丈なプロのガンプラを、制限時間内に削りきれってことだ。

 そして、カウントが0秒を刻み、戦闘開始の文字が赤く点滅する。

 

『時間です。各機、バトルエリアへ転送開始!』

 

 ぐん、と視界が高速で後ろへ流れて行き、止まる。

 周囲を囲むMS輸送コンテナが左右に立ち割れ、日差しと共に周囲の景色が見えてくる。

 ガンプラごとに設定された出撃演出が終わり、セセリアは大きく深呼吸を一つ。

 

『Battle start!』

 

 モニターに戦闘時間900秒のカウントが始まる。

 セセリアはダイバーギアの操縦桿を握り締め、叫んだ。

 

「各機、大型機の熱源反応へ移動開始!」 

「ハサウェイ、了解!」「ロウジ、らじゃー!」

 

 さあ、ひのき舞台の始まりだ。小気味よい二人の返事に、気分がアガる。

 高揚した気分のまま、セセリアは操縦桿のブーストゲージを全開でふかすのだった。

 

 

 

 

 あっという間の一週間だったのは運営側も同じだ。

 この舞台を整えるのに、ずっと駆け回っていた。

 気をもんで、走り回って、偉い人にはずいぶん頭を下げた。

 もちろん、成果も賞賛もひのき舞台に上がる演者達のものだ。

 報酬はどうか、たっぷりの笑顔でお支払いください。

 

 

『さぁ、各ガンプラ、バトルエリアに転送完了!』

 

 トロンは口元の実況マイク目掛け、高らかに宣言した。

 メインカメラが作動し、手元のメインモニターにバトルエリアの様子が臨場感たっぷりに映し出される。

 

『いよいよ、公式エキシビションマッチ、第4回“フォースで挑戦、大型機を倒そう!”、バトル開始です!』

 

 メインモニター片隅に映るトロンのSDアバターが、実況マイクの叫びを拾い、キーボード操作でアクションする。

 アバターの動きに問題がないのを確認の後、トロンはサブカメラを操作する。

 脇のサブモニターが次々切り替わり、バトルエリア各地の様子を映し出していく。

 トロンの周囲には、リアルに設置された贅沢な音響機器と各種コンピューターがある。

 ここはとあるガンプラベースに併設されたGBN運営の関西拠点、そのGMルームだった。

 

『さぁ、現在挑戦者は、マップに表示された大型機マーカーまで全速力で移動中です!

 まずはカメラを挑戦者側に移しましょう。挑戦者側は2機と1機に別れ進行する模様!』

 

 ヘッドセットのお高いマイクがトロンの声を拾い上げ、GBN内のモニターから響かせる。

 トロンはイベント中、ダイバーとしてのアバターは使用しない。

 どうしても視点がアバターからに寄ってしまい、隅々まで目が行き届かなくなるからだ。

 

『メインカメラ、2機側のガンプラに寄せます!

 セセリア選手のルブリス・ジェミニ、そしてハサウェイ選手のキャプテンZです。

 キャプテンΖがウェイブライダーに変形しないのは、大型機の対空兵装や、孤立を警戒してのことか』

 

 その判断、大正解。トロンは心の中で挑戦者に賞賛を送る。

 メインカメラをさらにガンプラに寄せ、視聴者への解説を挟む。

 

『司令塔役を務めるセセリア・ドート選手のガンプラは、ルブリス試作型を改造したルブリス・ジェミニX!

 手にした盾はディバイダー、背面のスラスターはガンダムXのものか。

 その機体名のXはアドステラとアフターコロニーの融合の証か!?』

 

 ルブリス・ジェミニXが手にする大型盾はスラスター兼ビーム砲兼シールドのマルチウェポン、ディバイダーだ。

 背面上部に大型のガンビットランチャーを背負い、背面下部にガンダムXのものらしいスラスターを増設している。

 恐らく模擬戦の敗北に伴い強化したのだろう。トロンはこっそり苦笑する。

 

『ハサウェイ選手の役割は後衛アタッカーでしょうか!

 キャプテンZは、HGのZガンダム頭部にスナイパーサイトを装着し、砲戦能力を上げています。

 今回は自慢の大型ビーム砲、ハイメガランチャーは背中にマウントし、

 おそらくミサイルと陽電子リフレクター対策のサブウェポン、ショットランサーを携行しています!』

 

 ハサウェイのキャプテンΖは、右手に大型ランスを携えていた。

 クロスボーンX2やベルガ・ギロスが使うヘビーマシンガン2門を備えた射出型質量兵器だ。

 レンタル武装だと言うのに、きちんと色も塗り替え、本体の塗装と合わせている。実に丁寧な仕事だ。

 

『さぁ、ギリギリ解説は間に合ったか。

 2機がバトルエリア中央の外縁、駐留ザフト軍基地施設に突入する!』

 

 ルブリス・ジェミニとキャプテンΖが、ザフトマークの入った大型基地施設へと侵入する。

 敵勢力のガンプラと間違えないよう、NPCガンプラは出て来ない。ただガンプラが身を隠せる遮蔽物の豊富な地形と言うだけだ。

 

「こちらセセリア、予定ポイントに到達!」

「こちらロウジ、全速移動中、

 予定ポイントは多分、もう間もなく!」

「ロウジ、気を付けてね!

 ハサウェイ! ロウジが到着次第、大型機と会敵するよ!」

「ハサウェイ了解!」

 

 セセリアとハサウェイの会話を拾い上げ、トロンは笑顔でうなずく。

 

『挑戦者側は、遮蔽物に隠れて仲間が挟撃位置につくのを選んだ模様。

 それは果たしてうまくいくのか!?』

 

 サブモニターの光景をちら見し、トロンは実況に声を張り上げる。

 同時に、メインカメラのマイクが、打ち上げ花火のヒュルヒュルした音を凶悪化した音を拾い上げる。

 

「飛来物接近アラート!?」

 

 轟音と共にルブリスとΖ、2機のガンプラへ頭上から恐るべき砲撃が降ってきた。

 近くの建物に砲撃が着弾し、凄まじい破壊音。あっという間に基地設備が瓦礫となる。

 

「この距離まで届くような曲射の間接砲撃ぃ!?

 ……バッカじゃないの?! マジでバッカじゃないの!?!?!?!?!?」

 

 叫ぶ間に、次々と飛来した砲弾が周辺基地施設へと凄まじい破壊をふりまいていく。

 凄まじい破壊力だ。明らかに規格外、大口径の巨砲による間接砲撃だ。

 セセリアの叫びに、トロンは意地悪く笑って叫ぶ。

 

『そう、普通なら安全な距離だよね。

 けれど、相手は普通かな? いいや、相手はプロだ、普通の枠には収まらない!』

 

 実弾のキャノン型兵器による、大きな弧を描いての砲撃だった。

 遮蔽物に隠れた相手だろうと、頭上から降り注ぐ破壊には隠れる術はない。

 

「この地形、罠だよ! 基地施設を放棄、前進開始!」

『おおっとセセリア選手、素早い判断で防御地形を捨てた。

 迷いのない判断に、踏んできた場数がにじむ!』

 

 実況しながら、トロンはにっこり笑顔を浮かべる。

 判断は正しい。間接砲撃とは地形目掛けて撃つ攻撃だからだ。

 慌てて基地施設から飛び出したルブリスとキャプテンΖの背後に続け様に巨大砲弾が着弾する。

 激しい破壊音に続き、基地からひときわ大きな爆発音と共に黒煙が吹き上がる。

 恐らく基地弾薬庫に誘爆してしまったのだろう。

 

「タッチの差だったな……」

「ハサウェイ、このまま大型機と会敵し、牽制の攻撃を仕掛けるよ!

 こんな攻撃がロウジの方に飛んだら合流どころじゃない!」

 

 基地の外はしばらく何もない荒野が広がっている。

 セセリアのルブリスが先行し、ハサウェイのキャプテンΖが追いかける。

 弾切れか故障か、砲撃がいったんやみ、静かな時間がわずかに続く。

 2機のガンプラの前方にオルドリン自治区の街並みが見え始めた。

 

『さぁ、順調に歩を進めた2機の前だが、そうは問屋がおろさない!

 大型機から第二の試練とばかりに無数のミサイルが降り注ぐ!』

 

 メインモニターに、2機のコクピット同様の激しいロックオン警告と、飛来物警告が鳴り響いた。

 トロンはメインカメラを拡大、街並みの影から打ち上がる無数のミサイルを捉える。

 

「当然のように相手はロックオン可能距離も規格外だしぃ!」

『情けない悲鳴とは裏腹、セセリア選手の対応は冷静だ!』

 

 セセリアの悲鳴と共に、ルブリスが保持したディバイダーを構えた。

 ホーミングし、降り注ぐ軌道のミサイル目掛け、ディバイダーから発射され帯状のビームが突き刺さる。

 正確な迎撃によりミサイルは上空で誘爆し、届かない。 

 続くミサイルの第二波、第三波も挑戦者達はビームとマシンガンで迎撃しきってみせた。

 

『挑戦者がミサイルをしのぎ切る!

 さぁ、ロックオン可能距離も間もなくだ!

 いよいよ大型機と初の会敵だ!』

 

「ハサウェイ、手はず通りいくよ!」

「OK、覚悟は決めた!」

 

 キャプテンΖが素早く、手にしたショットランサーと背面のハイメガランチャーを交換する。

 ショットランサーを背面に装着し、ハイメガランチャーによる撃ち合いモードだ。

 ルブリス・ジェミニXとキャプテンΖの2機が頷き合い、最後の遮蔽物を飛び出す。

 メインカメラが、バトルエリアの中央に鎮座する大型機をついに捉えた。

 

『Start Movie Scene』

『挑戦者と大型機が会敵!

 全機へムービーが挿入されます』

 

 トロンはシステムで割り込みをかけ、バトルを一時的に中断、同時に戦闘時間のカウントを停止した。

 これは、エキシビジョンマッチ用のボス登場演出だ。

 バトルエリアでは遠く離れたロウジにも同じムービーが表示されている。

 

「よう破損なしでここまで来たなぁ、挑戦者諸君!」

 

 悪の幹部めいたワルそうな顔で、エセリアの顔が大写しになる。

 さぁ、ヒール役の見せ場だ、頼んだよ。

 そう呟きながら、メインカメラをターゲットの大型機へと最大に寄せる。

 同時に、轟音と共に大型機の背面から白い煙が激しく立ちのぼった。 

 馬鹿げた規模の排熱だ。陽炎で、まるで夏のアスファルトのように遠くの風景が揺らいで見える。

 そして、放熱の白煙の間から、ゆっくりと漆黒の巨大なガンプラが姿を現す。

 それは間違いなくHGデストロイガンダムであり、ただのデストロイガンダムではなかった。

 

「フライトユニットと左腕がない……まさか、映画に出てきた半壊デストロイ!?」

 

 セセリアの驚きも無理はない。

 それは確かに一見、劇場版SEED FREEDOMに出て来た半壊状態のデストロイだった。

 

「ご明察やセセリアちゃん、だがもちろんただの破損加工やない!

 見ぃや、これがウルトラデストロイの姿やで!」

 

 得意げなエセリアの叫びと共に、部分的なミラージュコロイドが解除され、半壊デストロイが隠していた部位を露わにする。

 セセリアとハサウェイが叫びをあげた。

 

「尻尾の生えた……デストロイガンダム!?」

「あれはドッゴーラの大型テールユニットか!?

 スタビライザー代わりに使っているのか、なんて異形のガンプラだ……!」

 

 まさしくそれは異形のガンプラだった。

 失われた背面のフライトユニットの代わりに、背面下部から大型の尻尾、テールスタビライザーが伸びている。

 背面上部では排熱用の大型冷却ファンが鈍く輝き、熱気を白煙となって吐き出している。

 失われた左腕部位には巨大な白兵用クローアームと、四連装イーゲルシュテルンを備えたシールドが増設されている。

 左右非対称のフォルムは、まさしく異形の怪物のようだ。

 

「ミケール大佐のブルーコスモスにファウンデーションが密かに援助を行い、半壊デストロイの改修を行った。

 拠点防衛を目的に機動性を犠牲に、補充しやすい実弾兵装を増設する事で火力の増強を図った訳やな!

 もちろん現地改修やからクソみたいな欠陥もある。それが排熱問題。

 背面に大型冷却ファンを増設し、無理やり放熱する事でその辺を何とかした訳や!

 デストロイを超えるデストロイ……こいつが、ウルトラデストロイガンダムや!」

 

『肩部に対空ミサイル! 腹部に多連装ミサイルランチャー!

 近接防御用のイーゲルシュテルンが合計8門! 実弾兵器まみれの恐るべきガンプラだ!』

 

 地球温暖化で環境破壊まっしぐら。蒼き清浄なる世界はどうしたんだブルーコスモス。

 冷静な実況を行いながら、思わずトロンは心の中でツッコミを入れる。

 もちろん仕事の手は止めない。カメラをさらに寄せ、肩部に装備された長大な武装をモニターで大写し。

 エセリアが満足げに胸を張り、大きく腕を振って声を張り上げた。

 

「そして最大のチャームポイントがこいつや!

 HGUCザメルの680㎜カノン砲をさらに倍! 両肩にそれぞれ1門ずつ連装砲として装着。

 1門だけすっさまじい反動もさらに倍! その反動を殺すためにテールスタビライザーを設置した!

 しかもこいつは撃つだけで砲身が凄まじく加熱し、撃ちすぎるとなんと弾薬が過熱して自爆する!

 名付けて、”ウルトラデストロイキャノン”!」

 

 GBNでもめったに見る事のない超大口径のキャノン砲、ルブリスとZを襲った間接砲撃の正体はこいつだ。

 砲撃後から60秒近くが経過しているというのに、今なお砲身が赤熱し、凄まじい蒸気の白煙を立ち上らせている。

 

『武装にデメリットを設定して、無理やり威力と射程を伸ばす。

 武装のデメリットを踏み倒すために機体を最適化する。まさしくプロのテクニック!』

 

 エセリアのセリフを、トロンは実況でフォローした。

 実際大したものだ。設定にそったカスタムを行い、GBNで設定通りの性能を発揮させている。

 

「か、かっこいい……!」

「あ、アホの考える機体じゃん!?」

「こんな複雑な機体を扱いきれるのか……!?」

 

 思わずと言ったロウジの叫びをマイクが拾った。

 セセリアが感嘆半分、呆れ半分の叫びをあげる。

 ハサウェイがぞっとした顔で呟きを漏らす。

 実際、恐るべきガンプラだ。三者三様の反応に、トロンは笑いを嚙み殺す。

 巨大MAの大怪獣感を強調した、まさしくレイドボス風のガンプラに仕上がっている。

 

「おおきにセセリアちゃん、アホは関西人にとって最大の誉め言葉や!」

 

 にやりと笑い、エセリアがトロンへ向け、合図を送る。

 トロンはうなずき、ムービーシーン終了のカウントを開始した。

 

『Movie Scene Finish Count30』

『ムービーシーンは30秒後に終了、同時に戦闘時間カウントが再開され、

 同時にガンプラの戦闘行動が解禁されます!』

 

「さぁ、かかってきぃや、挑戦者諸君!

 ウチのウルトラデストロイでけちょんけちょんにしたる!」

 

 バトル再開を前に、エセリアが小学生並みの語尾で挑発した。

 胸を張るエセリアは、とても演技に思えない楽しげな笑みを浮かべている。

 

「デミダイバーズ、戦闘準備!

 半人前パワーを見せてやれ!」

「ハサウェイ了解!

 大怪獣相手にモンスターハントだな!」

「ロウジ、らじゃ!

 部位破壊ならまっかせて!」

 

 セセリアが先導し、ハサウェイが続き、ロウジが笑う。もっとも、ロウジはまだこの場にいないが。

 緊張の面持ちの挑戦者達も、実に楽しげだ。

 

『10,9,8……』

 

 システムのバトル再開までの秒数カウントを聞きながら、トロンもまた笑顔を浮かべた。

 才能の原石たちよ、その輝きを我らに見せてくれ。

 素晴らしい才能が発揮されることこそ、我ら裏方の喜びなのだから。

 

『バトル、再開ですっ!』

 

 カウント0と同時にトロンは渾身の叫びでバトル再開を告げる。

 冷静になれ、視点を広くとれ。熱くなる自分に言い聞かせながら、トロンは実況席に深く身を沈め直すのだった。

 

 

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・ムービーシーン

 

 戦闘を中断して差し込まれる特殊な演出シーンのこと。

 サイコフレームの使用などによって起きる他、今回のエキシビションマッチのように、運営が事前に提示してシステム側で挿入する。

 今回はターゲットである大型機の脅威アピールの演出に使用された。

 ムービーシーン中はガンプラがあらゆる操作を受け付けず、戦闘時間も経過しない。

 時間経過に伴うエネルギーの自然回復や放熱などももちろん行われない。

 存分にガンダムっぽい会話をぶつけあい、ロールプレイを楽しもう!

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