リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。 作:ゼラチナマスター
NOW LOADINGが終わり、視界が一気に広がる。
ロウジが立つのは、簡素な手すりのキャットウォーク。
天井は高く、30m級の大型ガンプラすら入れそう。
「ここが、ガンプラハンガー……」
初めて来たはずなのに、その光景すらどこかで見覚えのある場所だった。
「すごい、オーブの地下みたい!」
「正解。モルゲンレーテの雰囲気に惚れてね」
思わず叫んだロウジに、クールに笑ってエニルがサムズアップ。
他のダイバー達の姿はない。
ここは個々人用のパーソナルサーバー、ガンプラハンガー。
自慢のガンプラを他人に披露できる格納庫風のエリア、らしい。
「それで、お姉さんのガンプラは?」>エニル
溢れる期待を抑えきれず、ロウジは弾んだ声で問いかける。
先を歩くエニルが立ち止まり、ロウジへにやりと笑ってみせた。
「ここだとも。
……さあ、存分にご観覧あれ!」
芝居がかった仕草でエニルが指を鳴らし、ロウジの眼前でガンプラハンガーが勢いよく開く。
スポットライトにまばゆく照らされ、中のガンプラが輝いた。
まさしく本物のMSさながらの、20m級の大型のHGタイプのガンプラがロウジの眼前に現れる。
「わぁ……!」
ダークブルーに塗装された装甲の仕上げの丁寧さがロウジの目を引いた。
のっぺりしたバイザーで、ショルダーアーマーやスカートは簡素で飾り気がない。
背面に大型のコンテナを背負い、武装はサーベルとライフルぐらいだろうか。
「これ、ガンダムXシリーズの機体じゃ……ないですよね?」>エニル
「ごめん。そこはアタシの趣味だね」
かすかに苦笑し、エニルは申し訳なさげに仕草で謝ってきた。
もちろん別に、ロウジも悪いと言いたい訳ではない。
「ダークブルーはエニルさんのパーソナルカラー!
つまりこのガンプラは、腕利きのMS乗りであるエニルさんが
現地で拾った量産機を自分用にカスタマイズしたって設定?」
興奮した口調のロウジの台詞に、エニルがふっと息を吐き、明るい笑顔を浮かべた。
「宇宙世紀150年代、民生転用されたジェガンを拾い、運び屋仕様に改修した。
そう、この機体は名付けて……ジェガン・C(キャラバン)!」
「なるほど! 武装は最低限に、あの背中の大型コンテナで物資を運ぶんですね!」
「ああ。むしろあのコンテナが本体とも言えるね」
目をきらきらと輝かせながら、ロウジはエニルと語り合う。
軽やかに口笛吹き、笑いながらエニルがロウジに指を突き付けた。
「坊や、設定とか語るの……結構、イケる口だね?」
「……あ、ごめんなさい。僕ばっかり、こんな」
一瞬でロウジの顔から血の気が引く。
空気も読まず、教室で早口に語ってしまった時の同級生達の顔がよぎる。
あなた、気持ち悪いわ。無慈悲に”わたし”が言われた台詞をロウジは思い出す。
「大丈夫。アタシも設定、作り込む方だ」
穏やかに微笑むエニルの顔が、トラウマに沈みかけたロウジの心をすくい上げてくれた。
「GBNは、色んな人たちの”好き”が集まって出来たゲーム」
エニルの掌が、ロウジの肩に置かれる。
体温なんて感じないアバター同士なのに、なぜかロウジの心は温かい。
「他の人の”好き”を否定しない限り、どんな”好き”も自由。
……だから、気にせず喋ってくれ。キミの”好き”なものを」
言葉が、じんとロウジの心に染み入る。
「……ありがとうございます」
うつむいたら、アバターが涙をこぼしてしまいそうな気がして
ロウジは思いを言葉に絞り出しながら、目の前のガンプラを見上げる。
「さあ、ガンプラの紹介も終わった。さっそく遊ぼう!」
エニルの手がロウジの背中をあやすように叩く。
「どのガンダムの世界を、歩いてみたい?」
「それなら……」
もう、遠慮はしない。
ロウジは胸を張って、自分の”好き”を告げるのだった。
●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説
・ガンプラハンガー
ガンプラを持ち込んだダイバーに与えられるパーソナルスペース。
ガンプラの持ち主以外は入れないが、フォースを組む、臨時の小隊を結成する、個人指定で同行許可するなどした相手は入場することが出来る。
ロビーや、非戦闘エリア内の転送ゲートからワープ移動で入場が可能。
ハンガーの設置場所はアナハイムラボ、ホワイトベース内部、フリーデン内部、モルゲンレーテ、アスティカシア学園など、様々な設定が運営によって用意されている。
もちろん、どこに設置しても機能には差がない。
ガンプラの反映パラメータや破損状況チェック、装備の変更、ミッション報酬の装備、ガンプラ自慢などに自由に使おう!