リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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お盆ですが、次回は8/11(日)19時予定です



ミッション3-10 僕らが望んだ戦闘だ

 

 自分よりとっても強い相手、自機よりとっても手ごわいガンプラ!

 ただこの戦場を夢中で駆けるうち、雑念が消えていく。

 プロだから強い。アマチュアだって弱くない。

 エニルさんのガンプラの強さを証明する。

 そんな思いは心の内側に沈んで、ただ必死で操縦桿を握りしめる。

 

 残り時間480秒、残り時間のカウントがモニターの片隅で点滅していた。

 モニターの背景で、アフリカ、オルドリン自治区の街並みが夕焼けに赤く染まっていく。

 

「……さぁ、頼むよ。ジェガン・D!」

 

 ガンプラのコクピットで愛しげに呟き、ロウジはダイバーギアの操縦桿をしっかりと握りしめる。

 ブーストゲージに余裕たっぷり! 機体機動の切り返しが軽やか! さっすがエニルさんのガンプラだ。

 モニターの真正面、ウルトラデストロイを睨み、ロウジは挑戦的に笑みを浮かべる。

 ぐいと操縦桿を倒し、まだ遠いデストロイ目掛けてスラスターをふかす。

 途端にロックオンアラートが複数、凄い勢いで鳴りまくった。

 ウルトラデストロイの胸部からスーパースキュラが放たれ、全身からミサイルが勢いよく撃ち放たれた。

 

「当たるもんかっ!」

 

 叫びと共に、ロウジはスラスターをふかして横っ飛びに回避機動を取る。

 ビームを横にすかし、低空軌道のミサイルランチャー目掛けてハイパーバズーカの散弾をぶちまける。

 スラスターを切って、自由落下。上から降ってくるミサイルから距離を稼ぎ、バズーカの散弾をもう一斉射。

 ミサイルの迎撃を終え、遮蔽物の影へ飛び込むと同時にバズーカのマガジンを交換する。

 距離が縮まれば、それだけ弾幕の密度も上がる。余裕で回避とはなかなかいかない。

 

「やるやん、ロウジくん。

 スタークジェガンタイプのカスタム機か!」

「はい。ジェガン・Dはすごいでしょう!」

 

 エセリアの通信に、ロウジは明るい声で返答する。

 確かにエニルはジェガン・DがガンダムUCに出てくるスタークジェガンが基本と言っていた。

 両肩にそれぞれ三連ミサイルランチャー×2を装備し、各部に増加装甲とスラスターを装備している。

 手持ち火器がライフルでなくハイパーバズーカの散弾弾頭なのはミサイル迎撃に用途を絞ったものだ。

 

「おしゃれやな、その頭部ジムスナイパー2の狙撃バイザーか?」

「クールでしょ!

 でも狙撃が目的じゃないです。

 なんのためかはお楽しみに!」

 

 エセリアの誉め言葉に、ロウジはオープン回線で笑って言葉を返す。

 ジェガン・Dの頭部を覆うゴーグルは、狙撃モードへ切り替えるためではない。

 コクピットのモニターは視界の狭い狙撃モードではなく、ごくオーソドックスなものだ。

 

「ロウジ、こっちが気を引く!」

「さんきゅー、任せる!」

 

 ハサウェイの頼もしい声が小隊内通信で響く。

 おしゃべりは別に、ただ時間を無駄にした訳ではない。

 バトルフィールドの日が落ち、街並みがライトに照らされる。

 夜と昼の切り替わる瞬間だ。地形の見た目がまるで変わる。

 モニターが暗視対応の演出に切り替わり、明るさの変化に目が慣れる。これを待っていたのだ。

 さぁ、会話は終わりだ。操縦桿を握り直し、エセリアにオープン回線で言葉を叩きつける。

 

「さぁ、お月様が昇ったところで、仕切り直しです!

 ジェガン・Dのもっとすごいところ、今からいっぱいお見せしますよ!」

「やってみぃや、デミダイバーズ!」

 

 警戒しながら遮蔽物から飛び出し、ライトに照らされた街路でウルトラデストロイに向き直る。

 ロックオンアラートはならない。飛び出した瞬間、ウルトラデストロイが左腕を後ろに向けるのが見えた。

 夜の闇をまばゆいビームが引き裂く。ハイメガがウルトラデストロイへ着弾する。

 ビームが陽電子リフレクターを貫通し、ウルトラデストロイの腰アーマーを焼いた。

 

「やるじゃんハサウェイ、マジで大金星!」

 

 軽微だが、敵機へ確実にダメージを与えてる。

 ロウジはにっこり笑顔で叫んだ。

 一基陽電子リフレクターを失い、ウルトラデストロイの遠距離防御力が確実に低下している。

 ウルトラデストロイが怒りに全身を震わせるように肩部のミサイルを吐き出し、背面から無数のビームを発射した。

 敵機の注意がかなりキャプテンΖに向いている。

 今がチャンス! ロウジは操縦桿を前に倒し、小隊内通信で叫ぶ。

 

「ハサウェイ、今度は僕が行くね!」

「……了解! いったん回避に専念する!」

 

 ウルトラデストロイが吐き出すビームとミサイルに、キャプテンZが追われている。

 それを横目に、ロウジはサブウェポントリガーを引き絞る。

 ジェガン・Dの両肩部ミサイルランチャーから六発のミサイルを発射。

 同時にブーストボタンを押し込み、操縦桿をさらに深く倒す。

 まるでミサイルすら追い越せそうな速度でジェガン・Dが翔ぶ。

 ミサイルと二手に別れての一人同時攻撃、さぁどっちを迎撃する?

 デストロイの頭部がジェガン・Dへ向き直り、ロックオンアラートが猛烈に鳴り響く。

 胸の三連スーパースキュラが来る。腹部のミサイルも同時に放たれた。

 

「やっぱし全部こっちか!」

 

 スラスターを全開、さらに飛行軌道を上へ!

 足をかすめるようにスーパースキュラを避け、散弾を敵のミサイルめがけ、ぶちまける。

 同時に敵ビームの迎撃をすり抜けたこちらの中型ミサイルの半分がウルトラデストロイへと炸裂した。

 三つの小爆発は陽電子リフレクターに阻まれ、有効ではない。

 それでも一手、敵が止まる。

 

「入った、近距離白兵間合い!」

「ウルトラデストロイの近接火力、舐めたら血ぃ見るで!」

 

 ミサイルが炸裂する間に、スラスターを切ってジェガン・Dを無防備に自由落下させる。

 ハイパーバズーカを腰後ろに戻し、白兵武器を引き抜く。

 膝を曲げて着地、衝撃を殺す。

 夜の闇を照らす爆炎の向こう、ウルトラデストロイが地上からジェガン・Dを睨んだ。

 ウルトラデストロイの口部が光る。

 200mmエネルギー砲 ツォーンmk2の速射、同時に頭部イーゲルシュテルンが猛射だ。

 ロウジは素早く操縦桿を切り返し、ジェガン・Dが軽やかに横ステップ、そして前へダッシュする。

 

「喰らえや、4連速射砲!」

 

 それを待ち構えていたようにウルトラデストロイが左腕に装備された4連イーゲルシュテルンを構える。

 構うな、前へ! ジェガン・Dが構えた左腕にビームの光が輝く。

 

「ビームシールドやと!?」

 

 ジェガン・Dの左腕に展開したビームシールドが、銃弾の嵐を軽やかに受け流す。

 エセリアの叫びがロウジの耳に届いた時には、もうデストロイは目の前だった。

 

「吹き飛べ、おチビちゃん!」

 

 左腕部のクローアームが、横薙ぎに振り払われる。

 スラスターをふかし、その一撃を飛び越える。

 ウルトラデストロイが口から放つツォーンのビームを機体をひねって増加装甲で受け流す。

 狙いは一点、まずは火力を削ぐ!

 

「長物、もらってくよ!」

 

 ジェガン・Dの構えたビームダガーが、長大な二本のウルトラデストロイキャノンの砲身を切り飛ばす。

 浅く裂くだけのつもりだったのに! ロウジすら切れ味に目を剥いた。

 着地したジェガン・Dへ胴体狙いの横薙ぎでクローアームが迫る。

 その場で倒れ込むようにして避け、伸び上がりざまに下から上へビームの刃を一閃。

 浅い! 二門残ったスーパースキュラが輝き、クローアームの薙ぎ払いが戻って来る。

 避けきれない! クローアームを飛んで避け、スーパースキュラをビームシールドで受け止める。

 まともに受けたスーパースキュラの勢いでジェガン・Dが吹き飛ぶ。激しい衝撃がコクピットを揺らした。

 ビームシールドのエネルギー残量がごっそり持っていかれた。

 操縦桿を切り返し、追撃に撃ち込まれる左腕の四連イーゲルシュテルンをステップで回避する。

 

「その特徴的な斬撃エフェクト……さては、ガンダムピクシーのビームダガーやな!?」

「あたり!

 さらに白兵モーションはコルレルです!」

 

 エセリアの通信とほぼ同時、ロックオンアラートが響いた。

 右手の武装をハイパーバズーカに持ち替え、飛んできたミサイルに散弾をぶちまけて迎撃する。

 せっかく飛び込んだ間合いがまた離され、仕切り直しだ。

 

 残り時間、420秒。

 満月がデストロイの背後でゆっくり天頂へと昇っていく。

 

 手応えはあった、近接白兵なら喰らいつける。ロウジは強く操縦桿を握りしめる。

 

「……これなら、いける!」

「ロウジ、合図ちょうだい、こっちがあわせる!」

 

 小隊内通信のハサウェイの声も、心なしか弾んで聞こえる。

 

「やるやん、デミダイバーズ。

 ……なら、こっちもいいもの見せたるわ!

 ウルトラデストロイキャノン、パージ!」

 

 まるでその空気を読んだかのように、エセリアがオープン回線で宣告した。

 ウルトラデストロイが両肩の長大なキャノン砲を切り離す。

 同時に、肩部と腹部のミサイルランチャーが炸裂音と共に切り離される。

 もうもうと立ち上る煙がウルトラデストロイを包み込む。

 もう使い物にならない火器はデッドウェイトだ。けど、ミサイルランチャーまで!?

 背筋が震える。予感が、ロウジの全身を駆け巡った。

 

「スモークグレネード!?」

「ロウジ、どうする!?」

 

 これはムービーシーンではない。

 混乱した声でハサウェイが攻撃するかと問うてくる。

 勝つためなら、攻撃すべきかもしれない。

 

「行くで!

 トランスフォーム!」

 

 エセリアが声高らかに叫ぶ。

 トランスフォーム。なんてロマンあふれる言葉だろう。

 ロウジは笑みを浮かべ、ハサウェイを制した。

 

「ごめんハサウェイ、攻撃はなし!

 プロガンプラのフォームチェンジ、どんなものが出てくるんだろうね?」

「……そう言うと思った!

 了解リーダー、即応態勢で待機する!」

 

 敵の最強モード、見ないなんてもったいない!

 これは恐怖じゃない、武者震いだ。

 “楽しい”が心に溢れ、ロウジを突き動かす。

 待機時間はわずか15秒、ウルトラデストロイを覆っていた白煙がゆっくり晴れていく。

 

「待たせたなぁ、デミダイバーズ。

 キミらの快進撃もここまでや!」

 

 白煙を振り払うように凶悪な咆哮が響き、鋭利な爪が勢いよく覗いた。

 満月をバックに、黒い巨獣が立つ。

 

「こいつがウルトラデストロイの蹂躙形態、”レックスフォーム”!

 その名も、“デスレックス”や!」

「”怪獣王”、だ!」

 

 何あれ、ちょーすごい! ロウジは憧れにきらきらした目でオープン回線で叫ぶ。

 そいつは、スクリーンで見た怪獣映画の主役さながらの姿だった。

 漆黒の装甲で全身を覆ったティラノサウルスだろうか。その全身は凛々しく、禍々しい凶悪さだった。

 頭部のガンダムフェイスを黒い追加装甲が覆い、牙の生えた肉食恐竜のような頭部形状に変化している。

 シュトゥルムファウストを失った右腕にも左腕同様にクローアームが増設され、凶暴な格闘能力を主張する。

 背中の放熱ファンユニットを守るように、漆黒の巨大な突起が四つ生え、まるで怪獣王のような威圧感を醸し出す。

 その中心で放熱ファンが激しく蒸気を吹き出し、大きな駆動音を立てている。

 何よりもテイルスタビライザーが完璧だ。太い尻尾が、二足歩行の怪獣らしさを完成させていた。

 

「ひょっとしてこれ、隠してたサポートユニットと合体とかしてませんか!?

 喪失したシュトゥルムファウストの代わりに凶悪な白兵用左大型クローアーム!

 頭部ガンダムフェイスを追加装甲で覆い、その姿は肉食恐竜、まさしく怪獣王!

 昔の映画に出てくるようなティラノサウルスみたいな凶悪な姿、いい意味でガンダムらしくないです!」

「ほめたってなにもでえへんで、ロウジくん。

 そいじゃ、そろそろいくで。

 デスレックス流の歓迎、お見せしたる!」

 

 ロウジのいつもの早口に、エセリアがにやり笑ってオープン回線の通信を切る。

 ウルトラデストロイ改めデスレックスが、背面ファンユニットから激しく蒸気を吹き出した。

 来る! ロウジは大きく息を吸い込み、操縦桿を握り直した。

 見惚れていた訳ではない。

 油断していたつもりもない。

 けれど、気付いた時には巨体がモニターいっぱい、デスレックスが眼前に迫っていた。

 

「ふわっ!?」

 

 白兵攻撃の猛烈なダッシュで、距離を詰めたのだ。

 突進の勢いそのままに右のクローアームを繰り出され、ロウジは辛うじて横へ飛び退いて避ける。

 続いての左のクローアームはスラスターで空中へ飛び退って避ける。

 しのいで反撃! ウェポントリガーを握り締めた直後、いかつい衝撃がコクピットをがつんと揺らした。

 右肩のミサイルポッドが豪快にもぎ取られ、遅れて爆発音が響く。

 痛打を与えてきた犯人は左右のクローアームではなく、予想外の隠し武器だった。

 

「……頭部ヒートウェポン!?

 ひょっとして、噛みつきぃ!?」

「油断したなぁロウジくん。

 デスレックスの牙は爪と同じぐらい凶悪やメインウェポンやで!」

 

 ティラノサウルス型の頭部に備えた鋭い牙が、猛烈な噛みつきで装甲を食い破っていったのだ。

 驚きと賞賛に目をまん丸にしながら、ロウジは必至にウェポントリガーを引き絞る。

 手にしたハイパーバズーカが至近距離からですレックスの全身へぶちまけられた。

 だが、貫通力に劣る散弾はデスレックスの陽電子リフレクターに弾かれ、消える。

 

「散弾ではなぁ!」

「恐るべき突進力、そして続けざまの速いモーションでの白兵三連撃。

 ……すごい! 高コスト砲撃機が高コスト格闘機へ見事に化けた!」

 

 褒めている場合ではない。ロウジは短く呼吸を繰り返し、冷静に間合いをはかる。

 満月の光と街路のライトを浴び、デスレックスの黒い装甲が不気味に輝く。

 その時、モニターに映るデスレックスが、突如背後へ振り返った。

 振り上げられた鋭い爪が、デスレックスへ迫るショットランサーを斜めに弾き飛ばす。

 

「踏み込みが足りんっ!」

「質量兵器を切り払った!?」

 

 なんて無法な! ハサウェイの悲鳴に、ロウジも心で同意する。

 デスレックスが悠然とこちらへ向き直る間に、ロウジはジェガン・Dにもう一度戦闘態勢をとらせた。

 左肩のミサイルポッドを排除し、ハイパーバズーカを投げ捨てる。

 もう飛び道具なんていらない。相手が勝手に近接距離まで飛び込んできてくれる。

 左右の手にビームダガーを構え、ロウジは慎重に打ち込みの間合いをはかっていく。

 

「近接格闘戦は、こっちも望むところ!」

「怪獣王に挑む、その意気やよし!」

 

 ロウジは地上でスラスターを短くふかし、前ステップ。

 低い姿勢でデスレックスの間合いへ飛び込む。

 まず左手クローアームが来る、これは横ステップで回避。

 次に右手の爪がジェガン・Dの足を掴むように低く薙ぎ払われる。

 飛べばまた噛みつきの二の舞いだ、唇を噛んで大きくバックステップして避ける。

 追撃に撃ち込まれる左腕の四連イーゲルシュテルンをビームシールドで凌ぎ、遮蔽へ半身を隠す。

 デスレックスの白兵モーションは、ウルトラデストロイの時よりはるかに強い!

 機体強度に劣り、速度で互角、攻め手が足りない。ロウジは思わず小隊通信でうめく。

 

「機体の反応速度が互角だ……

 正面からじゃ崩しきれない!」

「なら、後ろから突いて崩す!」

 

 ハサウェイの声が、どれほど頼もしかった事か。

 ハイメガを小脇に抱え、デスレックスの背後にキャプテンZが陣取る。

 射撃の誤射による同士討ちを避けるため、完全な真正面ではなく斜め左方向の位置だ。

 ロウジは大きく深呼吸、手の汗を拭い、操縦桿を握り直した。

 

「ハサウェイ、僕が仕掛ける。

 敵が食い付いたら誤射オーケーで撃ち込んで!」

「了解、リーダー!」

 

 デスレックスの注意を引くように、小刻みな前ダッシュで距離を詰める。

 すかさず、デスレックスが曳光弾の弾幕を張る。左腕の四連イーゲルシュテルンの猛射だ。

 素早くステップで弾幕を抜けた先、胸部スーパースキュラが光る。

 

「っ!」

 

 ビームシールドを斜めに構えてビームを受け流す。

 それでも衝撃で一瞬足が止まる。

 おかしい、白兵でなく射撃で足を止めに来てる?

 ロウジは違和感を抱えてモニターを見やる。

 デスレックスの背後、上空からハイメガを抱えて舞い降りるキャプテンΖが見えた。

 その瞬間、デスレックスが凄まじい勢いで真後ろ、低空へ飛んだ。

 

「しまった!?

 ハサウェイ、避けて!」

 

 悲鳴をあげ、ロウジは操縦桿を前に倒す。だが間に合わない。

 デスレックスの巨体が身をひねり、長大なテイルスタビライザーがキャプテンΖへ叩きつけられた。

 辛うじて身を捻ったキャプテンΖを、恐るべき質量兵器と化した尻尾が強かに打ち据え、大きく弾き飛ばす。

 デスレックスが着地する。振動に揺れるモニターで、ロウジはウェポントリガーを引き絞る。

 デスレックスが牽制に放つ四連イーゲルシュテルンをビームシールドで強引に突破し、ビームダガーを左腕に撃ち込む。

 手甲を浅く切り裂き、もう一撃! その瞬間激しいロックオンアラートが響く。

 着地硬直の解けたデスレックスが右手クローアームからの三連撃を繰り出す。ロウジは距離をとって凌ぐしかなかった。

 

「油断やったな、ハサウェイくん!」

「……ハサウェイ、損傷は!?」

 

 全体通信のエセリアの勝ち誇りと、小隊通信のロウジの悲鳴が重なった。

 正面モニターでデスレックスを睨みながら、サブモニターでキャプテンZを映す。

 

「……ハイメガランチャーと右手首がやられた!

 大丈夫、キャプテンZは頑丈だ。まだいける!」

「ごめんハサウェイ、僕がしくじった!」

 

 あまりに痛い損失だった。ロウジの叫びはほとんど悲鳴だった。

 ハイメガは、こちらの陣営で遠距離からデスレックスに唯一有効だった大型火器だ。

 

「そぉら、追撃いくで!」

 

 動揺に付け込むように、デスレックスが猛烈な勢いで突進してきた。

 そして、勢いよく背中を向ける。

 遠い間合いで、長い尻尾が叩きつけられる。間合いが思ったより長い!

 飛び退って避けたつもりが、足先を尻尾がかすめた。

 かすめた一撃だと言うのに、ジェガン・Dは後ろへ大きく弾き飛ばされた。

 足の強化装甲が無ければ、どちらか折れていた可能性すらある。

 距離を取り、ロウジはチーム通信でうめく。

 

「ハイメガと引き換えにするなら、僕が敵の腕一本でももぎ取らなきゃいけなかった!」

 

 焦りと後悔が声に溢れた。ロウジは強く操縦桿を握りしめる。

 

「ロウジ、前も言ったろう!

 失敗したっていいさ、オレがフォローする!」

 

 力強いハサウェイの言葉が、焦るロウジの視界をクリアにしてくれた。

 

「ありがと、ハサウェイ。君もいつも、僕に寄り添ってくれるね」

 

 その言葉、グエルに敗北した時に言ってくれたよね。ロウジは大きく深く息を吸い込んだ。

 キャプテンZが立ち上がり、ビームサーベルを構えるのがサブモニターに映る。

 そうだ、後悔している間なんてない! 僕は、僕達はまだ負けてなんかいないんだから。

 モニターに映る満月と、制限時間カウントを見やる。

 残り時間390秒。

 牽制に放たれるデスレックスのスーパースキュラを避け、イーゲルシュテルンをビームシールドでしのぎ切る。

 

「ハサウェイ、セセリア! Dモードを使うよ。

 ……大暴れするから、後はお願い!」

 

 ハサウェイと、そしてセセリアに向け、ロウジは力強く宣言する。

 敵は強大だ。苦しい、怖い、しんどい。

 でも……楽しい!

 

「行くよ、皆!

 これは、僕らが望んだ戦闘だ!」

「任せろ!」

「……まーかせて!」

 

 二人の声が、小隊内通信で力強く響く。

 そうだ、僕達は半人前のデミダイバーじゃないか。ロウジは乾いた唇をぺろりと舌で舐める。

 

「ごめんね、お待たせ、ロウジ、ハサウェイ!

 ここからはボクが指揮に戻るね。フォーメーションDからXだ!

 ロウジ、ハサウェイ、頼んだよ!」

「何とかやってみる!」

「……了解、オレはハサウェイのサポートに回る!」

 

 セセリアの指示に、ロウジはうなずき、ハサウェイと視線を交わす。

 一人で勝てないなら、二人で。二人じゃ無理なら、三人で!

 

「デミダイバーズ!」

「「「ゴー・ファイっ!」」」

 

 残り時間、360秒。

 満月は静かに戦いの趨勢を見つめる。

 バトルは、いよいよ決着の時を迎えようとしていた。

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・バトルフィールドの時間経過

 

 ゲーム内時間の経過に伴い、バトルフィールドが昼から夜に変化する。フィールドギミックの一環で、設定によっては採用されないこともある。

 今回のバトルは60秒が1時間となり、ゲーム内では正午開始となっている。夏設定で450秒経過の1930が日没設定となっている。

 基本的にガンプラのカメラは暗視対応になっているが、もちろん夜は視界が悪くなり、敵機を見逃しやすくなる。

 実弾兵器は自動的に曳光弾に切り替わるため、攻撃が見えにくくなることはあまりないようだ。

 フィールドにあわせて照明弾などを装備することもある。

 ところで、夜道でたたずむゾックにばったり遭遇したらぞくっとしちゃうと思わない?

 

 

 

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