リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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ミッション名にやや誇大広告が含まれます。

次回更新は10/20(日)となります


ミッション4-1 見知らぬ戦友達と力を合わせよう!

 

 見知らぬ誰かと力をあわせる。

 一期一会、そんな楽しみもある。

 人見知りはまだまだだけど、その感覚は嫌いじゃない。

 

 ビームと機銃の対空砲火が敵陣から打ち上がり、無数の敵ガンプラの反応がレーダーを埋め尽くす。

 どっちを向いても敵だらけ。ロウジは緊張の面持ちで操縦桿を握り直す。

 ここはGBNのバトルフィールド、月面、ダイダロス基地(DESTINY)だ。

 

「ううん……ダメだ、臨時小隊員の人、完全にロスト!」

 

 会敵前に味方の名前が一機分消える。ネットゲーム最大の敵、回線接続不良の切断だった。

 愛機デコトレーナーのコクピットで、ロウジは悲しげにかぶりをふった。

 ロウジとデコトレーナーはキャプテンZが変形したウェイブライダーを足場に、基地上空にいる。

 

「復帰待ちは当然だが、もうこの近辺でオレらの獲物はなさそうだな……」

 

 3名構成の小隊、ロウジ一人、切断一人、最後の一人ハサウェイが冷静に呟いた。

 レーダーには数の敵影があるが、ロックオンアラートは響かず、モニターに映る敵影はない。

 正面モニター下方では、既に敵と味方が交戦を開始している。

 

「うわぁん、完全に出遅れ!」

 

 盤面を見つめ、ロウジは悲鳴を上げる。味方陣営の動きはそれほど圧倒的だった。

 無数のストライクダガーに囲まれた巨大なサイコゴーレムが、その巨体とパワーで周囲の敵軍を薙ぎ倒す。

 陣形を崩した敵軍めがけ、ソードインパルスとソードストライクのガンダムコンビが肩を並べて突撃してゆく。

 二機のガンダムに中央を突破され、守りがほころんだ隙を狙い、赤い機影が突撃する。

 ジオンの高速MAヴァル・ヴァロだ。GP01フルバーニアンが高速機動で追随してゆく。

 敵陣最奥のターゲット、デストロイガンダムへヴァルヴァロがクローを構えて突撃し、GP01が追撃する。

 

「どうするリーダー。ここからでも支援は出来るけど」

 

 ロウジは戦況をじっと見やる。

 あのデストロイガンダムはボス機体の一機だ。

 先ほど出現したばかりの優先撃破ターゲットだが……

 

「やめとこ、戦力十分足りてるよ。

 ここで支援しても単なる横殴りだ。

 味方さんのスコアをかすめとるだけ、ノーマナー!」

「了解リーダー、じゃあ別の戦場へいこう。

 ウェイブライダーにつけたSFS機能の見せどころだ!」

 

 ロウジは首を振り、戦場離脱を促した。

 ハサウェイがうなずき、愛機のウェイブライダーに移動を開始させる。

 デコトレーナーを乗せ、月面基地上空をウェイブライダーが巡航する。

 ロウジの視界で、モニターの景色が高速で後ろへ流れてゆく。

 ハサウェイいつもこんな景色見てるんだ。TMSもいいかも。

 

「うーん、さすが大規模レイドバトルミッション。

 いつもとはだいぶ勝手が違うね」

 

 ロウジはうめいて首をひねる。こう言う時に頼れるセセリアが、今日はいない。

 敵も多いが、味方も多い。どこに手を貸せばいいのかまるでわからない。

 その代わりに味方機は小隊を組んだロウジとハサウェイ以外にも、ランダムで選出された数十機いる。

 

「初挑戦の驚きを楽しむため、お互い攻略情報を遮断してたもんね」

 

 ハサウェイも苦笑しながら悠然とウェイブライダーを操る。

 対する敵はNPC操作のモブ機体からボス機体まで数百機だ。

 大規模レイドバトルミッション“月面ダイダロス基地を制圧せよ”

 ランダムマッチングシステムのある難関CPUミッションにロウジとハサウェイは初挑戦していた。

 

「こちら母艦、マザーバンガード!

 基地最南部の味方小隊が苦戦中、デストロイによって被害甚大!

 誰かフォロー出来るものはいないか?」

 

 レイドバトル用の味方軍内通信で、味方ダイバーからクールな声の支援要請が響いた。

 ナイスタイミング! ロウジは目を輝かせてデコトレーナーのメインカメラを巡らせる。

 いた、左前方、敵基地の一番端っこの格納庫付近! 進撃するデストロイガンダムの姿があった。

 MA形態のデストロイから前面に無数のビームが放射され、辺りの建物を豪快に吹き飛ばす。

 おそらく味方機は物陰に身を隠している。

 時折見える反撃の砲火の数は少なく、満足な攻勢に移れていない。

 

「ハサウェイ、行こう!」

「了解、リーダー!」

 

 僕らの力が少しでも役に立つのなら! ロウジは迷わず叫んでいた。

 ハサウェイの言葉と同時に、ぐっと強烈なGがかかり、モニターの景色が高速で後ろに流れていく。

 遠くに見えていたデストロイが、みるみるうちにモニターで大きくなる。

 さすがウェイブライダー、凄まじい加速だ。ロウジは操縦桿を握りしめ、デコトレーナーの姿勢をがっちり固定する。

 

「こちら、フォース“デミダイバーズ”

 ターゲットを目視、現在急行中。

 間もなく現着します!」

 

 まずは全軍へ現状報告。レイドバトル用通信を介し、ロウジは指揮する母艦へと連絡を行った。

 

「マザーバンガード、了解!

 感謝する、”デミダイバーズ”

 そちらの戦力編成を教えて欲しい!」

「前衛1、可変MSの遊撃機1、計2機です」

 

 ウェイブライダーがデストロイの上空を通り過ぎ、大きく旋回する。

 たちまちロックオンアラートが鳴り響き、デストロイと敵基地からの対空砲火が打ち上がる。

 これはヤバい。ロウジは背筋をひやっとさせつつモニターを睨む。

 

「2機現着間近、了解!

 味方小隊は前衛1遊撃機1火力支援機1だ。

 戦場が孤立しており、速やかな増援が見込めない。

 協力して遅滞戦闘を……時間稼ぎ願えるか?」

 

 しかもデストロイは単機ではない。近接警戒の護衛機らしい無数の敵ガンプラ、ウィンダムが迎撃に上がってくるのが見える。

 前にデストロイとバトった時はエニルさん作の強いガンプラだった。今は自作のデコトレーナーだ。

 こんな数、味方3機が5機に増えたところで本当に対処出来るのか?

 

「いえっさー、艦長。

 自信ないけど、やってみます!」

 

 迷った時は、楽しそうな方!

 浮かんだ迷いを振り切り、ロウジは勢いよく叫ぶ。

 

「ハサウェイ、行ってくる!」

「了解リーダー、制空権は任せろ!」

 

 笑顔のハサウェイにサムズアップを返し、ロウジは操縦桿のボタンを押し込む。

 ウェイブライダーとデコトレーナーの固定が解除され、デコトレーナーが勢いよく空中へ投げ出される。

 軽くブーストボタンをふかし、オートジャイロ頼りで足を下の降下姿勢へ戻す。

 ロックオンアラートが鳴り響く。ロウジは声にならない悲鳴と共に真横にブーストを全開する。

 降下するデコトレーナーのほぼ直下に、敵ガンプラの反応が三つ。迎撃にあがってきたウィンダムだ。

 ヤバい。自由落下中じゃほとんど動けない、このままじゃいい的じゃん!

 

「ロウジ、そのまままっすぐ!」

「えーい、ままよっ!」

 

 ハサウェイの声に背中を押され、自由落下姿勢のままメインとサブのウェポントリガーを引き絞る。

 肩部に背負った新武装、ビームキャノンとミサイルが火を噴き、密集陣形のウィンダムに迫る。

 真ん中のウィンダムの構えた盾をビームキャノンが吹き飛ばし、追撃のミサイルが直撃した。

 敵もさるもの、左右のウィンダムはミサイルを冷静に回避し、ライフルを構えて冷静に反撃の構えをとる。

 だが甘い。その直後、真上から降り注ぐハイメガの光芒が右側1機のウィンダムを吹き飛ばす。

 慌てたように左のウィンダムがライフルを構え直す。

 残念、遅い。飛燕のようにやってきたウェイブライダーが、喰らい付くように近距離でハイメガを放つ。

 敵機が起こした爆発の中にウェイブライダーが突っ込み、悠然とUターンして上空へと舞い上がる。

 

「健闘を祈る、リーダー!」

 

 さすがウェイブライダー、ほれぼれするような高機動戦闘だ。

 ロウジとハサウェイが敬礼を交わしあった直後、スラスターの噴射音がコクピットに響き渡る。

 デコトレーナーが上空エリアから地上エリアに移動し、システムによる墜落死防止のオートスラスターが作動したのだ。

 着地して大破しない程度に落下速度が一時的に殺され、ふわりと一瞬愛機がホバリングする。

 

「こっから先は、僕らの戦場だ」

 

 ホバリングの一瞬で、ロウジは真下の戦場を素早く観察する。

 多分ロウジとハサウェイの増援によって敵からの圧力が減ったのだろう。

 三方に散った味方機から、猛烈な十字砲火が敵陣めがけて撃ち込まれ始めていた。

 敵陣中央、デストロイガンダムの砲門もこちらを向いてない。

 ロックオンなし、フリー。つまり、大チャンス!

 操縦桿を握り締め、ロウジはスラスターを切って自由落下に移る。

 同時にウェポントリガーを引き絞り、デコトレーナーに両手で長大なヒートアックスを構えさせる。

 ロックオン警告が鳴ったか、デストロイガンダムが上方を振り仰ぐ。

 デストロイがかざした左手指にビームの光が輝く。でも、遅い!

 

「こちら、フォース“デミダイバーズ”

 ただいま現着、これより吶喊!」

 

 直撃だけ避ければいい! ほんの少しデコトレーナーに身をよじらせ、ヒートアックスをデストロイガンダムへ叩きつける。

 ほとんど自由落下の勢いを乗せた渾身の一撃だ。

 すんごい衝撃とダメージアラートがコックピットに響き渡る。

 ビームの対空砲火がデコトレーナーの左肩から先を持っていった。けれど右腕一本で叩きつけたヒートアックスがデストロイガンダムの肩口に大きい食い込み、フライトユニット左端と左腕を大きく持っていく。

 やった、ラッキーヒット! ありがとうヒートアックス、ありがとう味方の皆!

 ロウジは思わぬ戦果に拳を握る。ダメージは痛いが、ボスに与えたダメージを思えば大金星だ。

 

「騎兵隊参上!

 って言えばいいんだっけ?」

 

 にやりと笑ってロウジはウェポントリガーを引き絞った。

 デコトレーナーがデストロイからヒートアックスを引き抜こうとして、動きが止まる。

 当たり前だ、ヒートアックスは深くデストロイに食い込んでいる。

 ましてヒートアックスは本来両手で扱う長物だ。右手一本で引き抜ける訳がない。

 動きが止まった瞬間、猛烈なロックオンアラートが響き渡る。

 

「わきゃああああ!?」

 

 デストロイが至近距離から残った火砲で猛射を浴びせてきた。

 辛うじて武器を手放すのは間に合った。

 けれどとても回避は間に合わず、激しいダメージアラートと共にデコトレーナーが吹き飛ばされる。

 損傷甚大、増設したばかりのキャノンとミサイル、アーマーその他が大破した。

 やっばい! 助けに来たのに大ピンチじゃん!

 

「ロウジ君、デストロイの死角へ飛び込め!」

 

 この声、まさか!? 通信に叱咤され、ロウジは全速でブーストボタンを押し込む。

 地面をがっちり足裏のウィルダッシュが噛み締め、ローラー機構がロウジの愛機を疾走させる。

 ロウジの奇襲で切り落としたデストロイの左腕側、向かって右側へデコトレーナーが飛び込む。

 中破したデストロイの左側に火砲はない。だが敵の連携も甘くはない。

 

「うひゃあ!?」

 

 ウィンダムがデコトレーナーの進路を防ぐようにライフルを構えて舞い降りる。

 情けない悲鳴をあげてロウジは大破の覚悟を決めた。

 だが、次の瞬間、爆発したのはウィンダムの方だった。

 

「呉越同舟と行こう、ロウジくん!」

「……クランプさんっ!」

 

 ウィンダムに突き刺したヒートソードを引き抜き、灰色のグフタイプが月面基地で華麗に見得を切る。

 やっぱりそうだ。通信ウィンドウが開き、ジオン軍服の渋いおじさまフェイスが映った。

 

「コズン、ガデム、私とロウジ君はデストロイを死角から攻める。

 火力支援を豪勢に頼む!」

「コズン、了解。

 クランプ、小僧に負けるなよ?」

 

 ドムが斜面をホバーで駆け抜け、デストロイの右腕側目掛けバズーカを連続で受け止める。

 コズンさんまで! 聞き覚えのある名前と声、見覚えのあるガンプラに思わず笑いがこぼれる。

 かつてバトったベテランダイバー達との思いもよらない共同戦線だ。ロウジは目を輝かせ、操縦桿を握り直す。

 ランダムマッチングの戦場で、まさか顔見知りといっしょになるなんて!

 

「助かったぜ、坊っちゃん!

 まさか魔法使いの救援とはなぁ」

 

 ザクⅠが遮蔽物の影から身を乗り出し、デストロイの頭部めがけて大型ライフルを狙撃する。

 知らない声とガンプラだ、でもその援護がとても頼もしい。

 そうだ、僕はこの戦場で一人じゃないんだ。

 頼もしい味方機の姿に、ロウジは表情をほころばせ、ハサウェイへ通信を飛ばす。

 

「ハサウェイ、こちらロウジ。

 地上の味方機と合流した。

 こっちは連携してデストロイを落とす!」

「了解、空のウィンダムは任せて!

 さっさと掃除して対地もなるはやで援護するよ!」

 

 クランプのグフがガトリングシールドの猛射でウィンダムをなぎ払い、デストロイを牽制する。

 ロウジもサブウェポントリガーを押し込み、右腕に構えたスプレーガンからピンク色のビームを撃ち放つ。

 着弾した! ピンクの塗料が弾け、陽電子リフレクターのバリアが空中でピンク色に可視化される。

 

「ほう……陽電子リフレクターのバリア形状はあんな形なのか」

 

 クランプの呟きにかぶせるように、デストロイが残った火器で猛烈な全方位ビームを放ち、反撃する。

 それでもビームの隙間は結構ある。デコトレーナーとグフは地と空でそれぞれビームを華麗に避けてみせる。

 

「クランプさん、そのグフ月面でもちゃんと動けるヤツですよね?」

「おうとも。フライトユニットを増設した宙間戦闘対応型だ!」

 

 クランプの得意げな叫びに、ロウジはにやりと笑って覚悟を決める。

 

「右腕だけの僕が囮行きます。

 かく乱しますから、トドメを!」

「任せろ、ロウジ君。

 君が味方なら、デストロイなど物の数ではない!」

 

 たとえお世辞でも、その言葉がロウジにどれほど力をくれることか。

 

「コズン、ガデム、ロウジ君が行くぞ。

 デストロイが隙を見せたら必殺の一撃を叩き込め!」

 

 クランプの通信を聞きながら、ロウジは笑顔で操縦桿を握り直す。

 気力満タン、味方も万全。たとえ愛機がボロボロでも負ける気しない!

 支援と信頼を背負い、矢のような勢いで、ロウジはデコトレーナーと共にデストロイへと突っ込んでゆく。

 

 激しいバトルが展開された。

 そして、数分後。

 

「こちら、フォース“デミダイバーズ”

 味方機と連携し、南端のデストロイ撃破完了しました!」

 

 ボロボロで月面に倒れ伏すデコトレーナーのコクピットで、ロウジは晴れやかな勝利を通信回線で叫んだのだった。

 

 

 

 ロウジ達28名は、見事レイドバトルミッションをクリアする事ができた。

 

「ダイバーID:0357779 ロウジ・チャンテ 曹長」

「はい!」

 

 涼やかな笑みのデュランダル議長に名前を呼ばれ、ロウジは胸を張って返答する。

 

 「貴官はこの度のダイダロス基地攻略に多大な貢献を果たした。

 その功績をたたえ、ネビュラ勲章を授与する」

「つつしんでおうけいたします!」

 

 晴れやかな笑顔で、ミッションクリア報酬を受け取る。

 これでロウジも、晴れてネビュラ勲章持ち。

 コンパスの一員として近々実装される劇場版SEED FREEDOMのミッションへ参加できるようになったのだ。

 

 ロウジは晴れやかな笑顔を浮かべたまま、デュランダル議長のNPCへ頭を下げ、ミッションクリア後の待ち合わせルームへと退出する。

 はじめてのクリアだ。ロウジはじっくりムービーを堪能し、恐らくは退出もほぼラストぐらいだろう。

 待ち合わせルームには、レイドバトルミッションを共にクリアした仲間達、そのうち数人がまだ残ってくれていた。

 

「すごかったですね。マザーバンガード。

 今度ぜひ、厨房でジャガイモの皮むきさせてください」

「ふふ。我がクロスボーンバンガードは万年人手不足だ。

 次、ご一緒した時もよろしく頼むよ」

 

 ハサウェイが、母艦搭乗の指揮官である女性アバターのダイバーさんとマニアックな会話をしていた。

 ええと、ベラ・ロナさんって言うのか。どこか気品ある雰囲気のキレーなおねーさんだ。

 多分セセリアが大好きなタイプだろう。

 

「指揮、ありがとうございました!

 初めてのレイドバトル、貴女のおかげで迷子にならずすみました」

 

 笑顔でお礼を言うと、ベラさんはふわりと微笑み、軽く片手を上げて応じてくれた。

 

「こちらこそ、助かったわ。“デミダイバーズ”

 ロウジくんとハサウェイくん、初めてのレイドバトルだったのね。

 どう、楽しかった?」

 

 ロウジはハサウェイと顔を見合わせ、にっこり笑う。

 二人して、ネビュラ勲章を掲げ、声を揃える。

 

「とても」「サイッコーに」「「楽しかったです!!」」

「よかったわ。

 次またご一緒したら、楽しみましょう」

 

 口元に手を当て、上品に笑うベラさんに頭を下げ、ロウジはハサウェイといっしょに次のダイバーのところへ向かう。

 まったく知らないダイバーさん達がネビュラ勲章を掲げ、にやりと笑ってサムズアップしてくれる。

 ロウジも笑顔で勲章を掲げ、ピースした。

 同じミッションへ挑み、勝利とミッション報酬を共に得た。

 顔も名前も知らなかった相手だけど、さっきのバトルでは皆頼れる仲間だったのだ。

 待機ルームに残っていたダイバー全員に二言三言の挨拶をかわし、最後にロウジは顔見知りのダイバーさんの元へ向かう。

 

「クランプさん、今回はありがとうございました!」

「お疲れ様です、クランプ大尉。

 今回はロウジがお世話になりました」

 

 ネビュラ勲章を誇らしげに掲げ、ロウジは今日一番の笑顔でハサウェイといっしょに挨拶する。

 

「うむ、今日はまさかの出会いだったな。

 あれがロウジ君の強化改造版デコトレーナーかね?」

「はい! デコトレーナーを使用自粛中、サブ機でテスト続けてたんです。

 ようやく、お披露目が出来ました!」

 

 今日は新型デコトレーナーの初陣でもあった。

 初陣としてはまずまずの戦果だ。ロウジはクランプ相手に胸を張る。

 

「遠距離火力と機動性を増強し、バトル向けに仕上げてあるようだね。

 ファイターではなくビルダーとしても一皮剥けたようだ」

「えへへ。セセリアにいっぱい相談乗ってもらいましたから!」

 

 ベテランダイバーの先輩に褒められ、ロウジは照れくさそうに頬を掻く。

 横でハサウェイがにやにやしているが、知るもんか。

 

「そうだ、コズンさんにもお礼を言いたかったんですけど……」

「コズンは人見知りなんだ、すまないね。

 後で私から伝えておこう」

 

 うーん、親近感。ゲームで知るコズンのごついおじさん顔とのギャップがすごい。

 と言うことは、後ろの知らない髭面のおじちゃんがガデムさんだろうか。

 

「おぅ、キミがロウジくんじゃな!

 若くてちっこいのにやるもんじゃのぉ」

 

 ロウジがそちらを見た瞬間、推定ガデムが大きな声を出して歩み寄ってきた。

 とっさにロウジは飛び退り、ハサウェイの後ろに隠れる。

 

「あ、あ……の、あ……な……」

「ワシはガデム。

 クランプの古いなじみじゃい!」

 

 知らないおじさん、こわい!

 大きな声の人、こわい!

 ロウジが十年かけて熟成した人見知りの条件反射だ。

 びくつくロウジの頭をハサウェイが撫で、代わりに応対してくれた。

 

「すいませんクランプ大尉、ガデムさん。

 ロウジは人見知りなんです」

「すまないハサウェイ君、脅かすつもりはなかった。

 ガデムは、ロウジ君のファンなんだ」

「ファン……やられメカのファンファン?」

 

 あまりに唐突なセリフに、ロウジはわかりにくいボケをかます。

 ガデムは距離をとり、出来るだけ声量を抑えて静かに言ってくれた。

 

「おぅ。キミとマフティーのバトル動画に感動してな。

 尊敬しとるよ、魔法使いの坊っちゃん」

「え。ブラスターロッドを使ったあの動画!?」

 

 予想外すぎる言葉に、ロウジは目が真ん丸だ。

 ごめんハサウェイ。思わぬ流れ弾に、元マフティーのハサウェイが横で苦い顔をしてる。

 

「うむ、正確に言えば……

 魔法少尉ブラスターロウジのファンってことになるのぉ」

「ガデムはザクⅠ使いとして、ブラスターマリが大好きだそうでね」

 

 ううん……色んな意味で恥ずかしい。

 ロウジは頬を染めてうつむいた。

 

「キミの救援にテンション最高潮!だったんじゃ。

 脅かしてしもうて、すまんかったの」

「……ぁ、いえ。だいじょぶです。

 ありがとうございます」

 

 落ち着けば、大丈夫だ。ロウジは自分に言い聞かせる。

 震える手を差し出し、ガデムの握手に応える。

 ううん、デカい、ごつい。さすが大人の軍人さんアバターだ。

 

「良ければ、フレンド登録お願いできんかの?」

 

 思わず助けを求めるようにハサウェイとクランプの方を見てしまってから、ロウジは慌てて首を振る。

 ダメだ、こんなんじゃ。ちゃんとはっきり言えるようにならないと。

 真面目な顔で、クランプがこんなことを言って来る。

 

「鬱陶しかったら、すぐにフレンド切ってやって構わないぞ」

「ぁ……はい。

 ブラスターロッドはもう多分使わないですけど、それでも良ければ……」

 

 結局、熱意に押されてロウジはフレンド登録を受理するのであった。

 こうして、レイドバトルミッション初体験は楽しいままに終わりを告げた。

 

 拝啓、セセリア様。

 僕にファンができました。

 アバターも中の人も、たぶん年上のおじさんです。びっくり。

 

 君とGBNは一緒に遊べなくても、僕もボチボチ頑張ってます。

 だから、君も頑張ってください。かしこ。

 

 

 

 

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・ランダムマッチングのレイドバトル

 

 小隊ならばが3人、冒険者パーティなら4人や6人。

 それを超える大人数バトルをオンラインゲームではレイドバトルと呼ぶ。

 GBNでは原則として中隊規模9人からがレイドバトルと呼ばれる。

 今回の大規模レイドバトルは大隊規模27人プラス母艦1人の計28人で開催されている。

 もちろんそれだけの人数を集めて挑むのは容易ではないため、システム側での補助が用意されている。

 それがランダムマッチングである。ミッション参加希望者をランダムに配置し、小隊を結成する。

 ロウジとハサウェイ、クランプとコズンとガデムのように小隊を組んで申請した場合は必ず同じ小隊になる。

 前衛や砲撃支援機など、ある程度機体傾向でバランスが良くなるようシステム側では振り分けられる。最近は大体どのオンラインゲームにも搭載されている。

 ロウジとハサウェイの小隊にももう一人メンバーがランダムで配備配置されたのだが、ログイン回線不調でミッション除外されてしまった。

 今回のレイドバトルは、近々実装予定のコンパス所属ミッション受領のための前提となるため、大人気だったようだ。

 

 




ドラクエ10のランダムマッチングでの実体験です。
フレのどでかい金色のナスを見た瞬間思わず笑ってしまいました。
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