リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。 作:ゼラチナマスター
「この先には、荒くれ者のバルチャー達が、この水や物資を奪おうと待ち構えているのです。
どうか、勇気あるMS乗り様、どうか、この水と物資を集落まで届けていただけませんか……!」
「……はい、もちろんです! エニルさんと僕に、どうか任せてください」
輸送商人の男NPCの熱弁に、ロウジは胸を張り、答えた。
【輸送ミッションAW:バルチャーを蹴散らし、物資を輸送せよ】
同時にサブウィンドウが開き、ロウジとエニルのミッション受領を告げる。
「さあ、行きましょうエニルさん! 飢えと渇きに苦しむ集落に、この物資を届けるんです!」
「ああ、行こうか」
やる気満々のロウジに、エニルも楽しげに笑ってくれた。
「物資、水、搬入よし!」
ガンプラ、ジェガン・Cのサブシートで、
ロウジはミッション出撃の準備をノリノリで宣言していた。
「輸送コンテナは積載重量無視の効果がある。まさしくこの任務は独壇場だな」
エニルがいるのはロウジの前、メインシートだ。
GBNのガンプラ操縦席は、まるで本物のMSさながらのコクピットだった。
ロウジにはどういう仕組みか判らないが、このジェガン・Cも複座機体であり、
ロウジのサブシートにも、エニルのメインシートとほぼ同じコンソールが設置されている。
エニルのダイバーギア操作で、ジェガンCが膝つき駐機姿勢からゆっくりと起き上がり、
モニターの光景が流れ、視界が高くなる。
下方モニター側には、足元で手を振る商人NPCと子供の姿が映っていた。
「アフターウォーのNPC、たくましい感じがして、いいですね」
「そうだね。そこがガンダムXの魅力の一つと言えるだろう。
けど、アフターウォーで遊びたいなんて、渋い趣味してるわ、キミ」>ロウジ
オート操作でミッション受領用の非戦闘エリアからジェガンを歩かせながら、
エニルがメインシートをぐるりと回し、ロウジへ語り掛けてくる。
「パパのお膝の上で一緒に見たんです。ガンダムX」
「……こら、ネット・リテラシー」
たしなめるようなエニルの言葉に、ロウジは慌てて口元を抑える。
「知り合いの人の録画を一緒に見せて貰ったんです」>エニル
「……よろしい!」>ロウジ
心の中で、ロウジはしっかり反省する。
中の人のリアルがにじむ台詞は、あまりよろしくない。
「けど、良かったのか?
ガロードやティファの出るストーリーミッションもある」
「良いんです。僕はガロードやジャミルになりたい訳じゃなくて、
ガロードやジャミルが生きるアフターウォーの世界を歩いてみたかったんですから」
忘れかけた夢が、今動き出そうとしている。
コクピットから降り立てば、夢に見たアニメの大地が、空が広がる。
ガンプラのモニターを通せば、その世界を大好きなMSでまるで駆け抜けるかのようだ。
「AW.0017、戦災孤児であるロウジは優しいMS乗りの美女、エニルと出会う。
絶望に打ちひしがれたろうじにとって、エニルはまるで救いの女神のようだった」
格好つけた口調で、ロウジはそんな設定を語る。
「戦後のエニルなら、そんな心の余裕もあるかもしれないな」
「エニルはロウジを保護し、愛機ジェガン・Cへと招く。
二人が受けた依頼はバルチャーに狙われた物資を集落へと運ぶことだった。
ロウジの前には、いかなる困難が待ち受けているのであろうか……」
楽しげに語るロウジに、エニルがにやりと笑みを浮かべ、メインシートを前方へと戻す。
前方にはガンプラが通れるサイズの、通常エリアへのゲートが見える。
「あそこをくぐれば交戦可能な通常エリアだ。いいか、ロウジ?」
ガンプラを操るエニルの背中を見つめ、ロウジは大きく息を吸い込む。
この心臓の高鳴りは、不安からではない。
”好き”が溢れて零れ落ちてしまいそうだからだ。
「はい、よろしくお願いします!」
●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説
・NPC
ノンプレイヤーキャラ。運営がGBN各地に設置した非ダイバーのキャラ達のこと。
ダイバー達はPC=プレイヤーキャラとされる。元は古いTRPGや電源ゲームでの用語。
ミッションの進行、後述のCPU戦の敵役など、ゲームを成立させるために使用される。
多くはプログラミングされた通りにしか行動出来ず、決められたセリフしか喋れないが、
難関ミッションのボス格や、ガンプラオペレーターの皆さんなどにはAIが採用され、人間さながらの会話や戦術を駆使するが、運営リソースの関係上、数は少ない。
ちなみにAIへの暴言、ハラスメント行為も運営からの処罰対象になる。
ガンプラオペレーターさんをからかいすぎちゃダメですよ。
よっ。モーリンちゃん、今日もかわいいね!