リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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次回は多分12/8(日)です

今回の4-7予告投稿をうっかり12/8にしてしまっていました。
大変申し訳ございません





ミッション4-7 突発的な遭遇戦を切り抜けろ!

 

 いくら入念に検討を重ねたからと言って、

 予測通りに戦況が動いたことなどない。

 

「さぁ来い攻撃軍、“第七士官学校”の精鋭さん!

 ロウジ・チャンテが相手です!」

 

 レイドバトル開始早々、全体通信で高らかに声が響く。

 正気か、ピンクの悪魔!? 愛機キュベレイのコクピットで、プルツーはまず己の目と耳を疑った。

 全体通信を行った敵機は、レーダー反応を隠してすらいない。

 自軍にとっての最大警戒対象が自ら場所を明らかにしてくれたようなものだ。

 

「ガザの嵐隊、示したルートで強行偵察を!

 目的は”ピンクの悪魔”の位置だ、目視次第交戦は避けて撤収せよ」

 アイザック、通信を行った敵機の拡大画像を出せ!」

「了解、三手に別れて強行偵察行います。即応の準備を!」

 

 サダラーンのグレミーから、即座に指示が飛ぶ。

 ガザの嵐隊、三機のガザDがスラスター光を輝かせ、TMAモードの圧倒的な機動力で強行偵察に飛んで行く。

 普通は両軍探り合いから静かな展開が続くものだ。

 開始早々なんてテンポだ。プルツーは笑いを噛み殺しながらグレミーを問いただす。

 

「いいのかグレミー、罠か誘いかもしれんぞ」

「それならそれで構わん。

 どうしかけてくるか、敵の戦術レベルを推しはからせてもらおう!」

「敵影捕捉、カメラガン最大望遠で画像を出ます!」

 

 なるほど、策ならあえて乗ると言う事か。

 感心するプルツーに、自軍偵察機アイザックの捉えた映像がモニターの片隅に映し出される。

 まだ距離は遠く、色と輪郭程度しかわからない。だが確かにそいつはピンク色のシルエットだった。

 遅れて、偵察機の機能でシステムメッセージが流れる。

 

『照合完了、機体登録名、デコトレーナー・フルドレス。

 搭乗ダイバー、ロウジ・チャンテ』

「“ピンクの悪魔”は勇者か策士かどちらかのようだな!」

 

 長物を構えたピンクの人型のシルエットを眺め、プルツーは大口開けて笑った。

 まさかの結果だ、初手から予測が瓦解した。まさかの結果にプルツーは笑う。

 直後、”ピンクの悪魔”のレーダー反応がロストする。恐らくスラスターを切って潜伏したのだろう。

 

「攻撃隊、予定通りサイド3方面へ進軍せよ!

 ”ピンクの悪魔”を捕捉し、そのままサイド3内部へ侵攻する」

「こちらプルツー。

 キュベレイMK-II、先行する!」

 

 グレミーの指示と同時に操縦桿を握り直し、プルツーはブーストボタンを全力で押し込んだ。

 残り9機の攻撃隊のガンプラを置いて、愛機キュベレイMK-Ⅱがサイド3目掛けて飛ぶ。

 

「プルツー、こちらラカンだ。

 プルスリー小隊の3機を連れていけ!」

「了解、プルトゥエルブ小隊の3機はそっちで頼んだ」

 

 プルクローン隊の量産キュベレイ6機、その半分が援護につけられる。

 プルツーはスラスターの噴射を緩め、3機の僚機が追い付くのを待つ。

 この速度ならサイド3宙域まで60秒と言ったところか。

 

「さて強行偵察組、ガザの嵐隊の成果はどうだ?」

 

 注意を前方モニターへ向け、プルツーは舌なめずりする。

 自軍のレーダー反応が3つ、サイド3周辺へとたどり着いたところだ。

 まさにその直後、1機のガザDから張りつめた声で報告が届く。

 

「こちらガザの嵐隊、外壁付近を移動中のピンクの機影を目視。

 恐らく、ヤツです!」

「よくやった!

 こちらプルツー、後は任せろ。

 プルスリー隊、ついて来い!」

 

 通信と同時に、僚機のマーカーがレーダー上で大きく点灯する。

 プルツーは愛機と僚機をレーダー反応目掛けて全速前進させる。

 同時にモニターでカメラを寄せ、プルツーはガザDの周囲の映像を拡大する。

 キュベレイのカメラに偵察機ほどの精度はないが、十分だ。

 サイド3外壁部に、跳ねるような動きで移動するピンクのシルエットが確かに見てとれた。

 

「手には長物、ピンクのシルエット……?」

 

 プルツーは呟き、妙な違和感に唇をかみしめた。

 確かに”ピンクの悪魔”のシルエットだ。だが、プルツーの何かが脳裏で警鐘を鳴らしている。

 ロウジ・チャンテがあんなとろくさい動きをするか?

 

「こちらプルツー。

 グレミー、敵機の動きがおかしい!」

「こちらガザD、先ほどのは誤報!

 捕捉した敵機、ヒートアックスを持ったピンクのアッガイです」

「……罠の可能性がある!

 ガザの嵐隊、一時帰投せよ」

 

 じゃあ、ヤツはどこだ? プルツーの背筋を悪寒が駆け抜けた。

 グレミーの指示に遅れ、プルツーは僚機の量産型キュベレイ達へ指示を飛ばす。

 

「プルスリー隊、全周警戒!」

 

 プルツーの叫びの直後、モニターでスラスター光が一つ、まばゆく輝く。

 帰投のために急旋回するガザD目掛け、直上からスラスターの光が流星のように迫った。

 隠れ場所はデブリかコロニーミラーの影か、瞬く間にガザDと敵機の軌跡が交差する。

 

「……ロウジ・チャンテ!」

 

 あの動きは、間違いない。プルツーは叫ぶ。

 高機動のガザD、TMAが急旋回して相対速度がわずかに緩んだ瞬間とは言え、凄まじい速度だ。

 機体をロールさせ、緊急回避を試みるガザD目掛け、ピンクの機影が突撃する。

 ほぼゼロ距離、TMAモードのガザDの装甲を、ビームの光が上方から撃ち貫く。

 被弾の衝撃できりもみ回転して吹き飛ぶガザD目掛け、敵機のビームキャノンが無情に追い打ちをかける。

 

『ガザD、大破、戦闘不能』

 

「お前は確かに、”ピンクの悪魔”だよ……!」

 

 怒りと賞賛を込めて、プルツーは呟く。

 コロニー表面を移動する僚機を囮に、反対側の直上から奇襲する。

 ガザDにはカメラではもちろん、意識でも死角だったはずだ。

 戦慄に背筋を震わせ、プルツーは再度ブーストボタンを全力で押し込む。

 

「プルスリー隊、ついて来い。

 ヤツはこのプルツーが落とす!」

 

 高機動カスタムされた愛機のスラスターで、モニターに映るサイド3がぐんぐん大きくなる。

 宙域到着まであと10秒。周囲に注意を払いつつ、プルツーは”ピンクの悪魔”を睨む。

 

「ガザの嵐隊、プルツーと合流せよ!

 攻撃隊はそのまま前進、全力の遭遇戦もあり得るぞ」

 

 ”ピンクの悪魔”はここで落とす!

 グレミーの指揮を聞きながら、決意を込めてプルツーは叫んだ。

 逃せば、味方にどれほどの被害が出ることか。

 ヤツはエースとしての存在感を示してくれた。

 ならば次は、我々の番だ。

 

 

 

 ビームキャノンの直撃を受けたガザDが、デコトレーナーの正面モニターで爆発する。

 

『ガザD、大破、戦闘不能』

 

 システムメッセージを確認し、ロウジは愛機のコクピットで快哉を叫んだ。

 

「まず……1機です!」

「こちら旗艦パプア、ロウジくんの活躍により、

 敵のガザD1機を撃破! 幸先良い滑り出しです」

 

 オペレーターのマリコさんの言葉ににっこり笑い、ピンクのアッガイさんとデコトレーナーでハイタッチした。

 囮を務めてくれたキシリア隊のアッガイさんからヒートアックスも受け取り、デコトレーナーで小さく会釈する。

 

「ロウジくん、おみごと!

 それがロウジくんの宙間対応の新型機?」

 

 マリコからの通信に、ロウジは増加装甲をまとったデコトレーナーで自慢気に胸を張った。

 

「はい!

 腰に大型のスカート型スラスター、

 腕にサーベルラック兼用のブレスレット、

 頭部にティアラを装備しました。

 その名も、デコトレーナー・フルドレスです!」

「素敵なドレス、お姫様みたいね」

 

 だいぶお転婆なお姫様ですけどね。

 愛機をマリコに褒められ、ロウジは照れくさそうにはにかむ。

 今のデコトレーナーは、ロウジ自慢の一品だった。 

 腰部に新たに追加したスカートアーマーは増加装甲兼追加スラスターだ。

 バウンド・ドックの大型スカートを二つに割って加工を行っている。

 ブレスレットに取り付けたサーベルは、ガザDを仕留めた時の用にビームガンとして使用可能だ。

 以前使った両肩部のビームキャノンとミサイルランチャーも続投している。

 推進力は旋回中のガザDを捉えられるほど高く、かなり戦闘向きな仕上がりだ。

 この調子であと1機でも敵の陣営を削る。そう思った矢先だった。

 

「ロウジ君、急いで撤退じゃ!

 敵の本隊がそちらへ殺到しておる」

「うぇ!? ち、ちょっと待ってください……」

 

 ガデムの大声に目を剥き、ロウジは慌ててレーダーへ目をやる。

 ホントだ、僕モテモテじゃん!

 圧倒的な敵軍マーカーがロウジ目掛けて移動していた。ロウジは心で悲鳴をあげる。

 このままじゃ、あっという間に囲まれる!

 

「撤収します!

 スペースポートからサイド3内部へ……アッガイさんも」

 

 お世話になったピンクのアッガイさんへ、ロウジがそう叫んだ直後だった。

 爆弾が破裂したような轟音と共に、コロニー外壁に何かが斜めに突き刺さる。

 

「……え、何アレ、ショットランサー?」

 

 それはデコトレーナーの身長ほどもある長大なランスだった。

 攻撃? いやでも狙いが大ハズレ。狙いは何?

 訳もわからない。それが逆にロウジの脳裏で警鐘をガンガンに鳴らす。

 理由は、すぐわかった。

 まるで夏の夜に見る蛍みたいに、ランスの側面から無数の燐光がぶわっと噴き出す。

 

「ファンネル、来ます!」

 

 ヤバい……アレ、ランス型のファンネルラックだ!

 僚機への警告に、どれほど意味があったろう。

 無数の遠距離攻撃用の子機、ファンネルがロウジとピンクアッガイ目掛けて飛んでくる。

 ファンネルから射出されたビームを、ヒートアックスを盾にして防ぐ。

 だが殺到するファンネルは止まらない。散開し、側面や後方へと飛ぶ。

 

「ヤバぁい!?」

 

 包囲される! とっさにスラスターを全開、ファンネルのビームを短くステップで避ける。

 迫るファンネルから距離をとるように大きく後方へ飛び退る。

 ロウジには経験と鍛えた反射があった、だが僚機はそうはいかない。

 ロウジは見た。わけもわからず立ちすくむピンクのアッガイさんへ、ファンネルが迫る。

 

「ピンクのアッガイさん!」

 

 ロウジの悲鳴と同時に、多方向からのビームの猛射がアッガイを襲う。

 しっかり愛を込めて塗ったのだろう、ピンクの装甲はファンネルのオールレンジ攻撃に耐えきった。

 だが、その直後、斜め前方から飛んできた二本のビームがアッガイのモノアイとコクピット部に突き刺さる。

 ガンプラの急所にクリティカルし、アッガイが爆発する。

 

『リックアッガイ大破、戦闘不能』

 

 やったのは、誰だ!

 エネルギーを使い切ったファンネルがランスへと戻るのを確認し、

 ロウジはデコトレーナーのカメラで斜め前方を見上げた。

 遅れて、ロックオンアラートがコクピットに響き渡る。

 

「……ファンネルもちのガンプラ!」

 

 ランスとビームが射出された軌道の軸線上、スラスターの光がまばゆく輝いていた。

 悠然と背面のプロペラントタンクを切り離し、赤いガンプラがデコトレーナーを睥睨する。

 ロウジは戦慄する。凄まじい速度で僚機を置き去り、単機駆けしてきたんだ!

 

『照合完了。機体登録名……キュベレイP2C。

 搭乗ダイバー、プルツー』

 

 敵は優美なフォルムの、赤いキュベレイだった。

 多分、原作のプルツー仕様のキュベレイMK-IIを改修したんだろう。

 なんてキレイなガンプラだろう。ロウジは脳裏で戦慄と共にボス戦BGMが流れ出す。

 だって、こんなキレイなガンプラを作れる人が、弱いわけがない!

 

「ゆくぞ、ファンネルたち!」

 

 プルツーの叫びと共にキュベレイP2Cがファンネルを展開する。

 

「よくも、ピンクのアッガイさんを!」

 

 背を向けたらヤバい、速攻で一撃離脱!

 とっさに方針を決め、ロウジはブーストを全開。

 キュベレイP2C目掛け、デコトレーナーが突進する。

 そうはさせじと、キュベレイP2Cの周囲に配置されたファンネルが迎撃のビームを発射した。

 斧の側面で受け流し、いくつかは避け、ロウジは大きく回避した瞬間、牽制にミサイルをぶっ放す。

 ファンネルの迎撃がミサイルに集中し、ミサイルの爆発が連鎖する。

 爆炎の中をデコトレーナーが最短距離で猛進、斧の一撃を振るう。

 

「落ちてください!」

 

 当たれば必殺の一撃を、キュベレイP2Cが軽やかにローリングして回避する。

 回転の勢いそのまま、キュベレイP2Cの袖口から伸びたビームの刃が振るわれる。

 デコトレーナーは空振りの勢いのままに身体を捻り、ビームの刃へヒートアックスを差し出す。

 激しいつばぜり合いエフェクトと共に機体が弾かれ、デコトレーナーとキュベレイP2Cが距離を取る。

 デコトレーナーのビームキャノンとキュベレイP2Cのファンネルの牽制射はほぼ同時、回避もほぼ同時だ。

 回避軌道そのままに白兵戦に移り、サーベルとアックスが幾度も打ち合わされる。

 7回目のつばぜり合いの寸前、キュベレイが即座にバックステップした。

 

「しまっ……」

 

 ヒートアックスを空振りするデコトレーナーの先にファンネルが複数待ち構える。

 誘い込まれた! ロウジは覚悟を決めてスラスターを全開した。

 網の目のように放射されたファンネルのビームを斧と全身で受け、デコトレーナーが最短距離でキュベレイへ突っ込む。

 

「お返しっ!」

 

 斧を構え直す間合いなんてない。

 デコトレーナーが肩口から猛烈なタックルをキュベレイP2Cへぶち込む。

 キュベレイP2Cが吹き飛び、間合いが離れる。

 追撃はほぼ同時だった。

 デコトレーナーとキュベレイ、両者の手首からのビームガンが交錯し、どちらも高機動で狙いをすかされる。

 ダメだ、急ごしらえのビームガンじゃあの高機動は捉えきれないか。

 

「ヤッバい……この人、エースだ!」

 

 短く息を吸い込み、ロウジは冷静に自機と敵機の被害状況を確認する。

 さっきのファンネルのオールレンジ攻撃が痛かった。

 短い交戦で、せっかくのフルドレスの外装がもうぼろぼろだ。

 スカート部分は無事だが、肩、頭、袖口がファンネルで焼かれて特にヤバい。

 敵機キュベレイP2Cも被害はもちろんゼロじゃない。

 デコトレーナーのタックルをぶちこんだ敵機の左肩、動きが明らかにおかしい。

 でも無理だ、一撃離脱を狙うどころじゃない。

 無傷じゃ勝てない。時間と戦力を浪費するだけだ。

 

「ロウジくん、敵の増援よ!

 直上から量産型キュベレイが3、間もなく接敵!」

 

 マリコの通信と同時、キュベレイP2Cが袖口のビームガンとファンネルで十字砲火を仕掛けてきた。

 明らかに足止め目的の牽制射撃だ。 ヤバい、この上に敵とファンネルがさらに増える!?

 

「アッガイ魂見せたれやぁぁぁ!」

「ボスアッガイさん!?」

 

 野太い叫びと共に、猛烈な砲火がキュベレイP2Cを襲った。敵機の猛射が緩む。

 ジュアッグの長大な三連ロケットランチャーを構えたボスアッガイさんと僚機が3機だ。

 

「ボスアッガイ隊が援護に入ります、離脱を!」

「ロウジ君、撤収や。

 キミの見せ場は、ここやない!」

 

 実弾射撃の弾幕で援護しながら、ボスアッガイさんが叫ぶ。

 そうだ、僕は母艦狙いで、エニルさんとバトるんだ。

 ロウジは大きく息を吸い込む。

 ボスアッガイさん達まで助けに来てくれ、逃げられないとかありえない!

 

「了解、ルートをこじ開け、突破します……!」

 

 勝負はこの一瞬、敵増援より味方が多い今だけだ!

 前方モニター、ランチャーの制圧射撃を優雅にヒラヒラと回避するキュベレイP2Cを睨む。

 サブウェポントリガーに触れながら、ロウジはデコトレーナーで突進した。

 キュベレイP2Cは冷静だ。ファンネルと右手ビームガンをこちらへ構える。

 

「落ちろぉぉぉっ!」

 

 裂帛の気合と共に、ヒートアックスを振りかぶる。

 さっきのキュベレイに倣う、渾身のフェイントだった。

 ロウジはサブウェポントリガーを引き絞り、右足のサブウェポンが固定を外れた。

 同時にデコトレーナーを急制動、フレキシブルスラスター全開で、右斜め前方へ強引に跳ね飛ぶ。

 突進の勢いで、足から外れた銃器の本体だけがグレネードみたいにキュベレイP2Cへ飛んでいく。

 飛んでくる銃器を、キュベレイP2Cが左肩を向けてはじく。

 弾かれ、跳ねたビームガン目掛け、ロウジはウェポントリガーを引き絞る。

 

「ごめんね、ピンキービームガン!」

 

 あらかじめロックオンしていたピンキービームガンの弾倉に、手首から放ったビームが正確に突き刺さる。

 そして、爆散したピンキービームガンが、至近距離にピンク色のペイントを撒き散らす。

 

「な……っ!?」

 

 プルツーの悲鳴を置き去りに、ロウジは全速でブーストをふかして距離を離す。

 卑劣でごめんよ。多分キュベレイP2Cのボディはピンクの塗料でべっとべとのはずだ。

 

「ボスアッガイさん、お先にすいません!」

「ナイスやロウジくん、こっちもすぐケツまくるで!」

 

 挨拶も投げ捨て、ロウジはそのまま逃げの一手だ。

 上方にはもう、量産型キュベレイの3機編成のスラスターが目視出来る。危機一髪だ。

 ミサイルを牽制にばら撒いて、そのままスカートのスラスターを全開する。

 

「ロウジくん、ルートを指示するわ。

 こっち! 盛大に目立ってそのまま逃げ込んで!」

「マリコさん、サンキューです!」

 

 ロックオンアラートが断続的に響き、量産型キュベレイのアクティブカノンのビームが飛んでくる。

 そんな遠距離射撃、当たるもんか! ロウジはロックオンアラートに合わせ、悠然とビームを回避する。

 マリコの提示したルートに従い、デコトレーナーが大回り機動でスペースポートへ向かった。

 一番警戒していたプルツーの追撃が来ない。よっぽど当たり所がまずかったのだろうか。

 

「……ボスアッガイさん、スペースポートに到着です!」

 

 機体を反転させ、ロウジは戦場を見返す。

 今度はロウジが、ボスアッガイさんの撤退を援護する側だった。

 

 

 

 ピンクの塗料がモニターの半分以上を覆い隠す。

 陣営の勝利とロウジへの勝利、一挙両得のチャンスを逃した。

 進軍する自軍の最後尾にキュベレイP2Cを置き、プルツーは自分の不覚に天を仰ぐ思いだった。

 

「こちらプルスリー隊。

 ガザ嵐隊、プルツー共に第二スペースポートへ現着。

 敵影無し、トラップ恐らくなし。

 警戒しつつ前進します」

 

 前方で、プルクローン隊のプルスリー隊が、相互フォローできる陣形で慎重に進軍している。

 プルツーの横にはMS形態に変形したガザDが武器を構えて周囲を警戒している。

 

「こちらラカン。

 スペースウルフ隊、プルトゥエルブ隊共に第一スペースポートへ到着。

 同じく敵影無し、トラップ目視出来ず。

 ……恐らく、サイド3内部で手ぐすね引いて待ち構えているな。

 プルスリー隊、警戒しつつ進軍を開始せよ」

 

 まったく、これでは指揮どころじゃないぞ、プルツー!

 カメラの塗料をぬぐうためにワイパー機能を全開し、プルツーは自分を 咤した。

 

「プルツー、スプレーガンによるデバフ解除はどのくらいかかりそうだ?」

「あとおおよそ60秒弱だ。その間は後方で援護に徹させてもらう。

 まったく……絶好の機会を仕損じるとは、エースの名が泣く!」

 

 ラカンの確認に、プルツーは唇を噛んで嘆いた。

 ”ピンクの悪魔”との遭遇戦、互角だと思ったのが思い上がりだったのか。

 最後のフェイントにプルツーは手ひどくひっかかり、スプレーガン弾倉の誘爆を至近距離でまともに受けた。

 現状、キュベレイP2Cのモニターと上半身はピンクの塗料でべとべとだ。

 

「プルツー、仕損じたのはこちらもだ。

 援護に出てきた髭アッガイの小隊、取り逃がしたからな……」

 

 プルツーの予期せぬ被弾により、追撃戦はおおむね成果なしに終わった。

 アッガイマフィアの首魁、ボスアッガイ率いる3機のアッガイは見事な引き際で逃走したのだ。

 こちらはガザDを1機失い、ピンクのアッガイ1機を撃破した。

 

「グレミー、敵機の戦術レベル、おそらく我らと同等以上だぞ」

「そのようだ、ラカン。

 決して油断していい相手ではないな……」

 

 グレミーとラカンの会話にプルツーはうなずき、敵の評価を上方修正した。

 アッガイマフィアは明らかに戦術的な意図をもって戦力を使っている。

 囮に、援護陣形。想像以上にしっかりした敵”軍”だ。

 そしてガンプラ操縦の腕も、撤退援護のボスアッガイ隊はかなりのものだった。

 最初に仕留めたピンクのアッガイは素人同然だったが、全てがああではないのだろう。

 

「各機へ通達。スペースポート付近に敵軍が確認できず。

 まず間違いなく、サイド3内部で敵は待ち構えているだろう!

 だが、敵は背後に防衛拠点を背負う背水の陣だ。

 二手に分かれた攻撃隊のどちらかが敵軍を抜けばいい!

 諸君の全力をもって敵軍を突破し、敵拠点を破壊せよ!」

「攻撃隊、相互支援陣形で進軍せよ!」

 

 グレミーの言葉にあわせ、ラカンが命令を下す。

 プルスリー隊がサイド3内部へ侵入する。

 見えにくい視界に戸惑いながら、プルツーはキュベレイP2Cをサイド3内部へ侵入させる。

 ぐん、とコロニー内の疑似重力が機体にかかり、地面方向へと押し付ける力が発生する。

 スラスターをふかし、ゆっくりとコロニーの大地へ着地し、敵拠点の方角を見据える。

 

「あと、15秒……」

 

 視界が晴れるまで、プルツーは歯がゆい思いでモニターを見つめ続けていた。

 

 

 

 まるで師走の駆け込み依頼ね。

 まさに鉄火場だ、盤面を忙しく情報が飛び交う。

 

「グレミー軍、総勢12機、市街地へ侵入しました!」

 

 パプアのオペレータ席でマリコは声を張り上げた。

 目、耳、口、五感をフルにチェックし、機器から得た情報を取捨選択してピックアップしていく。

 

「敵軍の進行速度は?」

「トラップを警戒してか、慎重です!」

 

 まるで、ガチの軍人さんね。マリコは敵軍の熱意に舌を巻いた。

 敵軍の動きは本職さながらだ。とてもシミュレーションの娯楽に挑む相手とは思えない。

 二手に分かれ、小隊単位で相互フォローの陣形をとり、奇襲を警戒しながら進んでくる。

 

「マリコくん、全機種の外見情報を頼む!」

「キュベレイ2種、ドーベンウルフ、ガザDの4機種!

 キシリア隊のパッシブセンサーからの情報、サブウィンドウに出します!」

 

 出てきた画像は、民間人だったマリコには知らない機種ばかりだった。

 潜んで偵察を行ってくれている残り2機のアッガイのセンサーが捉えた詳細なデータだ。

 どいつもこいつも、ごてごてした武装名ぞろい。いかにも火力自慢といった風に見える。

 

「よし、敵機は全部第三~第四世代の機体ばかりじゃな。

 ボスアッガイ、作戦はパターンAで行くぞ!

 トラップコンテナ、パターンAでセット!」

「ボスアッガイ、了解!」

「了解、各部トラップコンテナパターンA!」

 

 ガデムの指示にマリコはキーボードを叩き、サイド3内部に設置したトラップの内容を確定させる。

 

「旗艦パプアより、各機に通達。

 作戦はパターンA!

 予定通りの武装で、指示に備えてください」

「ギレン隊了解!」

「ガルマ隊了解!」

「ロウジ、了解!」

 

 サイド3内部に潜むメンバーから次々に声が上がる。

 マリコはじっとモニターとレーダーを睨み、敵軍の進軍を見守る。

 じりじりした時間が経過し、マリコはついに叫んだ。

 

「敵軍、所定のラインを通過しました!」

「よし、スペースポート封鎖!」

 

 ガデムの声で、アッガイマフィアが一斉に動き出す。

 いよいよ、作戦開始だった。

 

 

 

 まず動きがあったのはレーダーだった。

 

「レーダー反応多数!

 各機、警戒せよ!」

 

 ラカンの叫びとほぼ同時、プルツーはレーダーを頼りにキュベレイP2Cの首を忙しく左右に振った。

 潜んでいた敵機が欺瞞を解いたのだ。敵が仕掛けてくる予兆に他ならない。

 忌々しいピンクの塗料はまだモニターの視界を覆ったままだ。

 

「レーダー反応、ラカンに6プルツーに9、総数15!

 欺瞞用のデコイの数を逐次報告しろ!」

「サンタバルーン!?」

 

 塗料に覆われたキュベレイのモニターで、むくむくと膨らむ巨大な展示用ダミーバルーンをプルツーは見た。

 

「メリィィィクリスマァス!」

「来るぞ、各機即応態勢で周辺警戒!」

 

 やかましい叫びと共に全体回線に立派なヒゲのボスアッガイが映る。

 ラカンの叫びに、ラカン側6プルツー側6、総勢12機の攻撃隊が火器を周囲へ向けて戦闘態勢をとる。

 

「盛大な歓迎だな、アッガイマフィア!」

「良い子と悪い子に、サンタからプレゼントやぁぁぁ!」

 

『スプレーガンの効果、解除されます』

 

 まさしく奇跡のタイミングだった。

 システムメッセージと同時、プルツーはブーストボタンを押し込み、愛機をコロニーの空へと舞い上がらせる。

 塗料が消え、全天周モニターの視界はクリア。

 コロニーの空を舞うキュベレイP2Cの足下で、次々とサンタバルーンが破裂する。

 銀色の紙ふぶきが舞い散る中、色とりどりのアッガイがバルーンの中と物陰から一斉に飛び出す。

 

「待ってましたと言ったところだ!」

 

 真正面から、それで奇襲のつもりか!?

 目立つキュベレイP2Cへ、一斉に砲火が集中する。

 プルツーは余裕をもって回避しながら、ファンネルに砲火の元へと反撃を命ずる。

 

「撃ち返せ、ファンネルたち!」

 

 ファンネルから無数のビームが輝き、中空で溶け消える。

 なんだアレは!? プルツーの背筋をぞわりと悪寒が駆け抜けた。

 眼下のプルスリー隊も同様だ、構えた火器で迎撃出来ず、猛烈に突撃するアッガイ2機の接近を許してしまっている。

 そのうち1機は立派なヒゲのボスアッガイだ。

 ボスアッガイが、陣形外側で孤立気味のガザDへ狙いを定め、突進視点た。

 

「総員、抜剣!」

「火器は使うな!」

 

 ラカンとプルツー、叫びは同時だった。

 だが、懸命の指示も間に合わず、ガザD2機が痛撃を食らい、吹き飛ばされる。

 させるか! こちらへ集中する砲火をかわし、プルツーはブーストボタンを押し込む。

 ガザDへ追撃の構えを取るボスアッガイへ、弾丸のようにキュベレイP2Cがランスで突きかかる。

 下からクロー、上からランス、ガンプラ2機ががっちり組み合う。

 その背後で小さく爆発音が響いた。

 

『ガザD大破、戦闘不能』

『ドーベンウルフ大破、戦闘不能』

 

 つばぜり合いエフェクトで弾かれ、プルツーは至近距離でボスアッガイを睨む。

 後輩達には荷が重いか! プルツーがカバー出来なかった側のガザDがやられたようだ。

 

「ラカン、無事か!」

「集中砲火で後輩がやられた、こちらは損傷軽微!」

 

 ボスアッガイが頭部バルカンで牽制しながら苛烈に踏み込んでくる。

 伸びる右クローアームを避け、キュベレイP2Cがランスで突き返す。

 ランスが上へ弾かれ、ボスアッガイが左クローのフック。

 左のサーベルを身体ごと振るい、ボスアッガイを追い払う。

 プルツーは舌を巻く。このボスアッガイ、やはり凄まじい動きだ。

 

「ラカン、プルツー!

 コロニー内に相当量のビームかく乱膜が散布されているぞ!」

「そうか、アレか!」

 

 グレミーの指示に、プルツーはモニターに舞い飛ぶ布きれを忌々しげに睨む。

 教練で聞いたことがある。両軍にビーム火器の使用を一定時間妨害する強力なトラップだ。

 

「ガザDとドーベンウルフ、ミサイルで撃ち返せ!」

「プルクローン隊、抜剣して白兵だ!

 ガザDとドーベンウルフへ敵機を近づけるな!」

 

 ラカンとプルツーの指示で、“第七士官学校”の面々が陣形を組み直す。

 この混乱に乗じて”ピンクの悪魔”も奇襲をかけてくるはずだ。

 ぺろりと舌で唇を湿し、プルツーは迫る敵機を睨み据える。

 

「やってくれたな、アッガイマフィア!」

「そっちこそやるやん、お嬢ちゃん!」

 

 たかがアッガイなどとは思うまい。

 ダイバーギアの操縦桿を握り直し、プルツーはボスアッガイを睨んだ。

 だが、どんな相手だろうと、勝利は我々がいただく!

 

「ロンメル大佐の顔に泥を塗るなよ!

 全力で当たれ!」

 

 まったく、これだからガンプラバトルはやめられない。

 思いもよらない苦戦に、プルツーは闘志を燃やす。

 強敵であればこそ、大佐とグレミーに捧げる勝利の価値も上がろうと言うものだ。

 激しく攻めかかるボスアッガイに対し、キュベレイP2Cが猛然と反撃を開始した。

 

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・ビームかく乱膜

 

 ギレンの野望でおなじみ、ビームを無効化する特殊兵装。

 原作ではパブリク突撃艇が使用し、ソロモン攻略で要塞のメガ粒子砲などを無効化した。

 GBNで実装されている効果は、散布されたフィールドでのビーム系の遠距離火器を使用不可にする。

 ビームサーベルなどの白兵用兵装は使用可能であり、ゼロ距離での接触射撃などでは使用が可能。

 GBNのかくらん幕は、銀色のチャフ状のものとして画面上に表示される。

 サポートアイテムの場合と、自作した兵装として使われる場合がある。

 今回はガデムの所有するパプアの兵装、トラップコンテナの中身として採用された。

 敵軍の武装を制限する非常に有効で強力な装備だが、めったに使用されない。

 おそらく作成するのに手間がかかり、準備が地味に面倒なのではないだろうか。

 アッガイマフィア総出でよなべしての作業が行われたものと推測される。

 

 

 

 

 

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