リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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12/22(日)予定です。

マニアックなヤツらがいっぱいでてきます。


ミッション4-9 勝利のために死力を尽くそう

 

 たとえ判っていても、立ち塞がらねばならない時がある。

 それが、大人と言うものだ。

 

「強くなったな、ロウジ……」

 

 愛機のコクピットで、エニルは感慨深く呟いた。

 愛機が振るったビームメイスがヒートアックスに弾かれ、手から飛んでいく。

 愛機に残る右のミサイルで牽制し、デコトレーナーから距離を取る。

 

「皆さんのおかげです!

 もちろん、エニルさんも……!」

 

 牽制のつもりで放ったトリモチランチャーからするりと逃れ、猛然とデコトレーナーが突進してくる。

 初めて出会ったあの時、人慣れ出来ずに怯えていた少年が、よくもここまで!

 敵機のヒートアックスを抜き放ったサーベルで受け止め、弾かれるように飛び退る。

 弾ける若さと才能相手に、反射神経勝負では分が悪い。

 見たことない武装での初見殺し狙いにも限界がある。

 

「GBNがあったから、たくさんの人達と出会えました。

 たくさんの出会いのおかげで、今の僕があります!

 このバトルに、全部ぶつけてみせます!」

 

 ロウジの言葉に、エニルは目を細める。

 恐らく、純粋なバトルの腕前ではもう敵うまい。

 だが、両手を挙げて降参とはいかない。

 大人にだって意地があるのだ。

 

「……ありがとう、ロウジ。

 光栄だ!」

 

 武装を交換、右腕を腰の後ろに回したまま、エニルはミサイルとバルカンで牽制してデコトレーナーへ迫る。

 回避軌道のデコトレーナーをとらえ、スラスターを全開。

 ヒートアックスの間合いよりほんの少し外側、狙いすました距離で右腕の火器を構える。

 

「ビームマグナム!?」

 

 ロウジの悲鳴と閃光は同時だった。

 右手から伝わる反動がモニターとダイバーギアを激しく揺らす。

 理論上、どんな機体でも携帯可能な最強クラスのビーム兵器だ。

 至近で放たれた太く幅広のビームがデコトレーナーの上半身を呑み込む。

 威力はすさまじい。だがその代償もまた強烈だった。

 ダメージアラート、レッド。右腕が肘関節の先からあらぬ方へとネジ曲がる。

 直撃した。弾着を確認し、エニルは息を吐く。

 だが、ピンクの機影が閃光の中からぬっと顔を出す。

 

「必中距離でのビームマグナムだぞ!?」

 

 刃先が溶け消えたヒートアックスを放り捨て、デコトレーナーが猛然と掴みかかってくる。

 ヒートアックスを盾にして耐えたのか! ロウジの反射速度にエニルは思わず舌を巻く。

 

「掴まえた……!」

「ぐぅっ!」

 

 デコトレーナーの上半身の追加装甲は溶け落ち、ピンクの装甲も熱でボロボロだ。

 だがデコトレーナーが右腕のビーム内蔵のブレスレットをかざし、ジェガンへ近接距離で組み付いてくる。

 ジェガンの左腕で敵の右腕を掴み、エニルは必死に抵抗する。

 

「舐めるな!」

 

 右腕は動かない。頭部バルカンポッドが至近距離で猛然と弾丸を吐き出す。デコトレーナーの胸部に激しい弾着が弾ける。

 デコトレーナーが首を素早く振って頭部への直撃を避け、自由に動く左腕の拳をジェガン頭部へ叩きつける。

 衝撃が走り、モニターがブラックアウトする。

 

「逃しません!

 このままもらいます!」

 

 メインカメラとバルカンポッドがやられた! エニルは唇を噛む。

 フレームの歪む嫌な音が断続的に響く。デコトレーナーが激しい殴打を何度も繰り返しているのだ。

 ミサイルポッド脱落、装甲ダメージ累積。いかん、想定より損傷が激しい!

 メインカメラをやられ、モニターはブラックアウト、動くのは左腕だけ。

 愛機のコクピットでエニルはうなる。

 まだ負けた訳ではない、だが……

 直後、ひときわ大きな衝撃がコクピットに走った。

 

「チェックメイトです、エニルさん!」

 

 ロウジの声がコクピットに響く。

 ほぼ同時、サブカメラ起動によりモニターに周囲の光景が映る。

 暗礁宙域入り口付近でただよう大型隕石の一つへジェガンは押し付けられ、動きを封じられていた。

 エニルはレーダーに目をやり、にやりと笑う。

 しめた、地の利は我にあり!

 

「……そうだな、見事だロウジ。

 だが、天運は我にあり!」

 

 エニルは高らかに宣言し、手元のキーボードを叩く。

 この暗礁宙域は、ロウジ相手の戦場として用意しておいた場所だ。

 この隕石だって無論、仕掛けはある!

 

「わわっ!?」

 

 ロウジの悲鳴が上がり、拘束が緩む。

 隕石が衛星ミサイルの如くロケットエンジンをふかし、移動し始めたのだ。

 

「忍法……」

 

 叫びと共に、エニルはコクピットに設置した“影”と書かれた丸いボタンを押し込む。

 閃光が走り、ジェガンの全身の増加装甲が炸薬で弾けとぶ。

 デコトレーナーの拘束が緩んだ隙に、愛機の肩を打ち付け、吹き飛ばす。

 

「“空蝉の術”っ!」

 

 デコトレーナーの視界を奪った隙に、エニルは暗礁宙域に身を隠す。

 そしてそのままエニルはキーボードを素早く叩き続ける。

 対ロウジのフィールドギミックを起動させ、バトルの舞台を整えるのだ。

 

「さぁ、ロウジ。

 第二ラウンドといこう」

 

 魔王にでもなったつもりで高圧的に笑う。

 後輩の前では自分は出来るだけ高い壁でありたい。

 ロウジに純粋にバトルの腕で勝てないのであれば、策と物量で勝負する。

 エニルは自分を省み、笑う。大人げないとは今この時のための言葉と言えよう。

 

「この暗礁宙域を貴様の墓場としてくれる!」

 

 高らかに言い放ちながらも、エニルは確信していた。

 それでも、きっとロウジは自分を超えていく。

 だがそれは、今日でなくてもいいはずだ。

 

 

 

 エニルの声が通信で高らかに響く。

 

『この暗礁宙域を貴様の墓場としてくれる!』

 

 ザクバズーカとガトリングシールドの弾幕が飛んでくる。

 サイド3のビルの影へと身を隠し、プルツーはたまらず叫んだ。

 

「今ここでやるな、頼むから!」

 

 叶うならリアルタイムで観戦したい! プルツー、魂の叫びであった。

 “ピンクの悪魔”VSエニル・エル。望外の好カードに違いない。

 ビルへ着弾する実弾兵装の音を背後に、プルツーは素早くレーダーへ目を向ける。

 

「ラカン、そちらはどうだ?」

「順調に前進している。もう少しで基地内へ押し込める!」

 

 よし、戦況をこのまま推移させる! ラカンの報告にプルツーは頷いた。

 サイド3内部の状況はおおむね攻撃隊有利に展開していた。

 周囲に目を配り、プルツーはグレミーへと個人通信を飛ばす。

 

「……グレミー、そちらはどうだ!」

 

 ロックオンアラートに弾かれるようにプルツーは操縦桿を倒す。

 頭上から飛び込んできたボスアッガイの奇襲を避け、猛烈なランスの突きで押し返す。

 

「アイザックに撮影させている。

 ”ピンクの悪魔”のバトルは心配するな」

「よくやった。

 ……いや、違う!」

 

 確かにバトルは見たいが、そうじゃない!

 以心伝心の台詞に、プルツーは思わず声を荒げる。

 

「こちらは徐々に前線を押し上げ、順調に推移している。

 サダラーンは守り切れそうか?」

「無論だ。”ピンクの悪魔”は抑えてもらっている。

 敵後衛のアトミックバズーカ、敵大型機の爆導索も切らせた。

 敵に予備選力はもうない。想定外の増援が無い今、サダラーンの心配は無用だ!」

 

 グレミーが言う以上、我らに負けはない。

 ボスアッガイをランスで牽制し、プルツーは頷く。

 

「ならば予定通り、新人達に基地を落とさせる。

 防戦が長くなるぞ、せいぜい粘れよ、グレミー!」

「そちらこそだ、プルツー!」

 

 プルツーやラカンが突出すれば、恐らくもっと容易に勝利出来る。

 だが、それでは新人達を駆りだした意味がない。

 新人達によって勝利条件を達成してこそ完璧な勝利となる。

 

「ラカン、そう言う事だ。

 指揮は頼むぞ!」

「無論だ、ボスの抑えは任せたぞ!」

 

 ボスアッガイがウェポンコンテナの影へ飛び込み、再び姿を消す。

 負けはない、後はどう勝つかだけだ。

 静かに状況を見据え、プルツーは操縦桿を握り直す。

 ことここに至り、敵が切り札を隠す理由もない。

 敵の戦力をプルツーは冷静に見切る。これは油断でも侮りでもない、そのはずだった。

 

 

 

 閃光弾にやられたカメラがようやく回復する。

 モニターへ映る光景に、ロウジは思わず声をあげていた。

 

「うわぁい、なぁにこれ!?」

 

 前後左右直上直下、どこを見ても何かがある。

 隕石、戦艦の残骸、コロニーミラー、etc...

 いつの間にかロウジの周囲に暗礁宙域が形成されてしまっていたのだ。

 

「くくく……見たか忍法“星屑の幻影(スターダストメモリー)”

 ここが貴様を葬るために用意されたフィールドよ!」

 

 エニルさん、悪の大幹部みたい。

 エニルの台詞がどこからか響いて来る。

 

「忍法“星屑の幻影(スターダストメモリー)”!?」

 

 忍法! なんてワクワクする単語だ。

 ロウジは目をキラキラ輝かせ、周囲を見回す。

 出口が見えない。いったいどこまで暗礁宙域深く引き込まれたと言うのか。

 情報を求め、ロウジは旗艦のマリコへ通信を飛ばす。

 

「マリコさん、すいません、何かわかりますか!」

「ごめん、タネと仕掛けはわかんない!

 隕石やらスペースデブリが一斉に動いて、ロウジくんを取り囲むように配置されたの!」

 

 エニルさん……本気の本気だ! ロウジは高揚にぞくりと背筋を震わせる。

 なんて大掛かりな仕掛けだろう。

 多分、エニルさんが本気で組み上げた罠やギミック満載の対ロウジ専用のバトルフィールドだ。

 自分相手にここまでしてくれるなんて! ロウジの口元は知らずに緩む。

 

「サダラーンの方角はあちらですよね?」

「ええ、あってるわ。

 敵機のレーダー反応もそちらの奥!」

 

 なら、あちらに進むしかない。

 ロウジは覚悟を決め、装備のチェックを行う。

 至近距離のビームマグナムの余波で上半身の増加装甲は全壊、デコトレーナーの装甲も小破だ。

 シールドを構えてジェガンと衝突した左手首の反応がおかしい。

 スカートスラスターはまだ無事だ。 固定武装は右手首のブレスレットのみ。

 

「ありがとうございます、マリコさん!

 なんとかこの罠、突破してみせます」

「楽しそうにしちゃって!

 がんばってね、ロウジくん」

 

 いけないいけない、マジでやらなきゃ。ロウジは顔を引き締め直す。

 スカート裏のラックからサーベルを取り出し、左右の手に握らせる。

 左手首も何とか握るところまではいけた、こけおどしぐらいにはなるだろうか。

 ロウジは最後にサイド3内部を確認。どうやらアッガイマフィアは大苦戦中らしい。

 あまり時間に余裕はない。ロウジは警戒しながらデコトレーナーのスラスターを緩やかにふかす。

 

「いきますよ、エニルさん!」

 

 隕石やデブリの間を3つほどくぐり抜けた時だった。

 がくんとデコトレーナーの動きが不自然に止まる。

 機体パラメータの装甲表面にアラート、これは……糸?

 

「ワイヤートラップ!?」

「忍法……“火遁の術”!」

 

 動く右のサーベルで糸を切り裂くのと、デブリの廃ガンプラのキャノンが火を吹くのは同時だった。

 懸命の回避、ビームキャノンがデコトレーナーの肩口をかすめて隕石に着弾する。

 カウンターのサーベル突きで、廃ガンプラが今度こそ完全にスクラップへ変わる。

 罠だ、すっごい! 次は果たしていったい何が来る?

 

「よくぞ今のを避けたものよ!」

 

 響いたエニルの声に、ロウジは口元を引き締める。

 レーダーに反応あり、近い!

 クールな声でエニルが言葉を続ける。

 

「汝、語るなかれ。

 汝、伝えるなかれ。

 その者達、歴史の裏街道をゆくものゆえ……」

 

 吸い寄せられるように、ロウジの視線が一点で留まる。

 暗礁宙域に浮かぶ隕石の一つに、ダークブルーの機影が姿を現していた。

 まるで逆さまに隕石へぶら下がるかのように、そいつは頭部を下に悠然と佇む。

 

「汝、見まごうなかれ。

 その者、影にあらず、猿にあらず」

 

 エニルさん、愛機を改装してたんだ! ロウジの目が輝く。

 それはエニルのジェガンであり、ただのジェガンではなかった。

 切り札のDモードを起動した時のジェガン・Dとも装い違う。

 

「宇宙の闇に紛れ

 戦いの時代を生きる者達」

「アレは……!?」

 

 名乗りを待ち切れないように、ロウジは思わず声をあげていた。

 傷ついた頭部を覆面のように布で覆い、額には鉢金。

 胸部は鎖帷子のような紋様に塗装されている。

 

「その名は……“忍”」

「忍者だ!」

 

 期せず、声が重なる。

 超カッコいい! 操縦桿を握ったまま、ロウジは叫んだ。

 装甲表面には“影”と“忍”の二文字が刻印されている。

 間違いなくモチーフを忍者としてカスタマイズされたジェガンだ。

 

「それが、 エニルさん用に再カスタマイズされたジェガン・Dなんですね!」

「然り。その名はジェガン・K(カゲ)!」

 

 堂々とした名乗りに、ロウジは武者震いし、操縦桿を握り直した。

 増加装甲を付けたジェガン・Dの素体を、完全に別物へ作り替えてきたのだ。

 エニルが扱いやすいように。

 ひょっとしたら、ロウジを叩き潰すために!

 

「またの名を……“Jの影忍”!」

 

 名乗りと共に、ダークブルーの敵機、ジェガン・Kが胸の前で結印する。

 来る、忍法だ! ロウジは表情を引き締め、モニターを凝視する。

 見えた、ワイヤー!

 ジェガン・Kとデコトレーナーを一直線に結ぶルートへ、先ほどの火遁で見た偽装ワイヤーがある。

 

「さぁ、ゆくぞロウジ。

 この姿を見た以上、貴様は既に我が術中!」

「小手先の忍法で、デコトレーナーは倒せませんよ!」

 

 ロウジは叫び、スラスターをふかした。

 ワイヤーを避けた最短の軌道でジェガン・Kへ斬り掛かる。

 

「甘い。

 忍法“畳返し”!」

「うわっ!?」 

 

 ジェガン・Kの足元、巨大な廃材が盾のように起き上がり、ビームサーベルの刃を受け止める。

 同時に、レーダー反応が爆発的に膨れ上がる。

 

「続けて行くぞ……忍法“影分身”!」

 

 廃材の盾の裏から、いくつもの機影が飛び出す。

 全てレーダー反応あり、どれもダークブルーのジェガンのように見える。

 

「レーダーデコイと、ダミーバルーン!?」

 

 最悪の仕掛けだ! ロウジはおののき、周囲を警戒する。

 周囲に漂うジェガンは、よく見れば色とシルエットが似ているだけの別物だ。

 だが、ロックオンアラートがやかましく鳴り響く中、よく見る余裕などない。

 突如、ダミーバルーンの影から何かがデコトレーナー目掛けて飛んできた。

 

「うわっ!?」

 

 頭部カメラ目掛けて正確に飛んできたそれは、小型の十字手裏剣だった。

 かざした左手でかばうのがやっとだった、手裏剣が手首近くに突き刺さり、炸裂する。

 

「うきゅっ!?」

「見たか、シュリケングレネード!」

 

 握ったサーベルごと、手首が完全に千切れ飛ぶ。

 恐らく火力は大した事がない。けど、関節や急所に刺さったらヤバい!

 

「バルーンの影に、何かいる……」

 

 疑心暗鬼で、ロウジは周囲を警戒した。

 激しく動くレーダー反応と、ほんのわずかなスラスター光のきらめきが敵機の存在を主張する。

 次は反対側から十字手裏剣が飛来した。

 

「くっ!」

 

 二度も同じ手は喰らわない! 右手のサーベルで切り払う。

 弾かれた十字手裏剣が虚空で炸裂し、火花を散らす。

 あちらと思えばまたこちら。とんでもない速度だ。

 

「忍者どころか、天狗じゃん!」

 

 レーダー反応だけでは、とても追いきれない。

 悲鳴を上げた次の瞬間、左手正面のダミーバルーンが内側から弾けた。

 閃光と共に、ダークブルーの機影が飛び出す。

 

「もらった!」

「うぁっ!?」

 

 完全に虚をつかれた。サーベルを構えるのも間に合わない。

 突進するダークブルーの機影から身をかわすのが精いっぱい。

 ジェガン・Kが左で振るったビームダガーが左スカートアーマーを裂く。

 反撃に振るったサーベルも虚しく空を切る。

 ダークブルーの機影が再びデコイとダミーの影へと消えていく。

 完全に一撃離脱だ。

 追いかけようとブーストボタンに手をかけた瞬間、背中からロックオンアラート!

 

「うそ、後ろ!?」

 

 小さく刻んだステップで十字手裏剣を避ける。

 続いてロックオンアラート。今度はさっきまでの正面方向だ。

 回避先を狙って放たれた十字手裏剣を、もう一度短い回避でいなす。

 おかしい、いくら何でも早すぎる!

 

「エニルさん、すごい。

 ……じゃなかった。ヒキョーです!」

「笑止! 人と思わば影、 虚とみれば実。

 これぞ忍法“星屑の幻影(スターダストメモリー)”の神髄ぞ」

 

 思わず満面の笑顔で賞賛し、ロウジは慌てて台詞を取り繕う。

 いけないいけない。今は敵同士。 

 エニルもアニメの悪役みたいな台詞で、クールに煽る。

 

「ロウジくん、ちょっとだけサポートする!」

「マリコさん!?

 ……すいません、助かります!」

 

 ロックオンアラート、攻撃無し? 続いてロックオンアラート、背後から十字手裏剣!

 いやらしい連携をすんでのところで回避し、ロウジはマリコに笑顔で礼を言う。

 

「ダミーとデコイの分析お願いします。

 敵機の軌道が異次元すぎ! まるでワープしてるみたい!」

「オーケー、任せて!」

 

 ダミー、ダミー、デコイ、デコイ。

 レーダーの反応が、マリコの手で一つずつマーキングされていく。

 ごちゃつく戦場の情報がクリアになり、一気にロウジの視界と意識がクリアになる。

 

「くくく、無駄だ。

 オペレーター一人の目と手がくわわったとて、我が術は破れん!」

「8時の方向、ダミーに爆発物反応!」

「……っ!」

 

 まさにマリコの声の直後、ダミーバルーンが炸裂した。

 ロックオンアラート!

 ……どこから? 直上と直下!

 

「エニルさんなら、同じ手は二度使わない!」

 

 大きく足を振ってAMBAC機動、足を上に、頭を後ろに。

 同時にブーストボタンを押し込み、爆発物反応のないダミーへビームの刃を先端に突っ込む。

 スカートスラスターが片方なくったって!

 直上直下から飛んできた手裏剣を避け、敵反応へまっしぐら。

 

「“星屑の幻影(スターダストメモリー)”破れたりぃ!」

 

 快哉を叫び、ロウジはレーダー反応目掛けてビームの刃で突きかかる。

 敵機がビームの刃を引き抜き、受け止める。

 激突の衝撃は、あまりに軽かった。敵機が弾かれ、後方へ大きく跳び退る。

 

「小型機……SDジェガン!?」

 

 三等身しかないデフォルメされたデザインの小型ガンプラだった。

 ダークブルーに塗られた装甲、頭巾と鎖帷子塗装も同じ。

 まるでリアル等身のジェガン・KがSD等身に縮んだかのよう。

 SDのジェガン・Kが小柄さを生かした高機動で暗礁宙域の奥へと逃げていく。

 追いかけようとした瞬間、背後から強烈なロックオンアラート!

 

「ロウジくん、後ろ!」

「こっちが……本物かっ!」

 

 マリコの警告とほぼ同時、ダークブルーの機影が疾風迅雷の速度で飛び出した。

 同じ轍は踏まない! ロウジの意識は冷静だった。

 ジェガン・Kのビームダガーを飛び退って回避し、リーチを生かしてサーベルで突き返す。

 手ごたえは軽い。かすったのは敵の腰アーマーだけだった。

 シュリケングレネードのラックが吹っ飛び、虚空で炸裂する。

 少し遅れてマリコが解析してくれた画像データがモニターに表示される。

 

「……ダミーとデコイの闇に紛れ、

 サポートメカのSDと本体での連携攻撃だったんですね!」

 

 姿を現した”Jの影忍”へ、ロウジは言葉を叩きつける。

 タネが判ればなんてことはない。それでもなんと恐ろしい忍法!

 ヒキョーとは言わない。こちらだってマリコさんと二人三脚だ。

 ジェガン・Kが優雅な動きでビームダガーを構え、エニルが応える。

 

「然り、その名も慈影丸(ジェイガン)なり。

 我が忍法、見破ったのは初めてぞ、ロウジ!」

 

 正面からの踏み込み斬撃を回避した瞬間、斜め後ろにロックオンアラート!

 本体とSDの連携攻撃! バックステップと同時に、そのまま身体をひねって足を斜め上に振り上げる。

 

「2機同時の甘い操縦なんて!」

 

 SDの弱点は、リーチのなさ! SDジェガンのビームの刃より先に、デコトレーナーの蹴りが小型のSDを吹き飛ばす。

 踏み込んでくるジェガン・Kの斬撃をスラスターを吹かして大きくすかす。

 

「……反撃させてもらいますよ!」

 

 エニル相手に、ロウジは高らかに宣言する。

 エニルさんは強い、すごい。

 でも、タネさえわかれば対処だって!

 

「このジェガン・Kとエニル・エル。

 舐めてもらっては困る!」

「あたりまえです!」

 

 叫びと共に、右手のサーベルをジェガン・K目掛けて投げつける。

 ジェガン・Kの動きを阻害と同時にバックステップからのスラスター全開。

 

「まずは……小型機!」

 

 誰よりも尊敬している。だからこそ!

 最大限のリスペクトをもって……勝たせてもらいます!

 暗礁宙域を駆けながら、ロウジは高らかに決意を叫ぶのだった。

 

 

 

 ほんとのほんとに、楽しそうにバトルしちゃって。

 

「……多分、もう大丈夫よね。

 ロウジくん」

 

 ほんのわずかの手伝いを終え、オペレーター席のマリコは意識をサイド3内部へ戻す。

 あ、これヤバい。自軍拠点へ群がる敵レーダー反応多数。

 マリコは慌ててサポートに入る。

 

「ドーベンウルフより対艦ミサイル、飛びますーっ!?」

「コロニー内でなんてものを!」

 

 ガルマ隊の悲鳴に、マリコは慌ててオペレータ席の視点を基地防衛施設に移す。

 飛んでくる大型のミサイルに対空砲の照準を合わせ、弾幕を張る。

 

「対空CIWS、フルコントロール。

 お願い、落ちてーっ!」

 

 迎撃はぎりぎり間に合った。対空機銃の弾幕がミサイルを捉え、空中で炸裂。

 だが直後、対空CIWSの砲座の反応が途絶。見れば、量産型キュベレイのサーベルが突き刺さっている。

 

「ガデム艦長、対空CIWS残存0!」

「マリコくん、すまん!

 通常砲座ももう8割がた死んどる」

 

 基地施設内部の敵機反応、既に2。施設外に4。合計6

 味方の反応、基地内に3……いや、今2に減った。

 まさに絶体絶命、基地陥落は秒読みの状況だった。

 

「ボスアッガイ、基地がもうもたん!」

「すまんガデム、こっちも張り付くのに手いっぱいや!」

 

 ボスアッガイさんは健在だが、敵の赤いキュベレイへ完全に抑え込まれている。

 キュベレイP2Cはボスアッガイと白兵戦を演じては、時折僚機のフォローにも飛び出す。

 アッガイマフィアの戦力を削っては、浮いた味方を基地の方へ流している。

 働きで自軍を鼓舞する、キュベレイP2Cの動きはまさしくエースの働きだった。

 

「ギレン兄ぃがやられました!

 ガルマ隊ももう持ちませんっ!」

 

 敵指揮官らしいドーベンウルフと相対したギレン隊、ガルマ隊の方も劣勢だった。

 派手なエースとしての働きこそないが、質の有利を連携で生かし、少しずつ戦線を押し上げてくる。

 有効な罠はもうない、ビームかくらん幕の効果がギリギリ残っているだけだ。

 

「マリコくん、ドズル隊はどうじゃ!?」

「今、確認します!」

 

 サイド3の外へと目を向ければ、そちらも激戦の真っただ中だ。

 火器を喪失した01アッガイと02アッガイが、果敢にガンダムタイプへ白兵戦を挑んでいる。

 サダラーン周辺へと目を向ければ、クィン・マンサがデンドロアッガイの背面へと取りついた瞬間だった。

 クィン・マンサの長大なサーベルがデンドロアッガイのコンテナへ突き刺さる。

 

「デンドロアッガイ、轟沈……!」

 

 いけない。今の、ほとんど悲鳴だ。

 オペレーターは冷静でないと。マリコは唇を噛み締める。

 連鎖的に爆発が起こり、大型機が完全に沈黙する。

 辛うじて脱出したドズルアッガイ目掛け、クィン・マンサからファンネルの光が無慈悲に飛んで行く。

 

「ドズル隊、劣勢です。

 サダラーンへ直接攻撃出来る状況にありません」

 

 マリコは意識して冷静に、ガデムへ報告を入れる。

 ……うん、これは王手だ。局面を打開する手段がもうどこにもない。

 

「ロウジくん達の決着、まだなのに!」

 

 マリコは唇を噛む。ロウジは今も激戦真っただ中だ。

 小型機へ痛打を撃ち込み、残る敵機本体相手に暗礁宙域で大立ち回りを演じている。

 力を出し切っての敗北、勝利ならいい。時間切れ終了なんて結末はたまらない!

 

「固定砲台、沈黙!

 司令部の防護壁ももうもたん……!」

 

 パプアのブリッジに、レッドゾーンのアラートがやかましく鳴り響く。

 無理を承知でマリコは叫ぶ。

 

「艦長、何とかなりませんか!

 せめてあと3分、後1分でもいい。ロウジくんに時間を……!」

 

 敗北は避けられない。

 けれどせめて、ロウジくんに満足いく結末を。

 

「……どうしようもない!

 せめてあと1機、戦力さえあれば……」

「艦長、わたし、出ます!」

 

 もう間に合わない。それでも。

 マリコはオペレーター席を蹴った。

 

【Your wish will be granted.】

 

 その時、オペレーター席の小モニターに謎の文字が点灯した。

 

「え? 何、ジオン公用語!?

 “その願い、聞き届けた”……」

 

 ブリッジのモニターの片隅で、白い柔らかな光がまたたいた。

 耳元の通信インカムが雑音でいっぱいになり、レーダーが一斉にホワイトアウトする。

 

「なんじゃぁ、またか!?」

 

 ガデムの悲鳴を背後で響く。

 マリコはブリッジで宙に浮かび、モニターを呆然と見つめていた。

 わたしは、あの光を見た事がある。

 淡く輝くモニターが映すのはサイド3内部ではない。敵旗艦、サダラーン周辺宙域だ。

 

「まさか、また……!?」

 

 アレは確か、燃えるアクシズ。わたしは、あの光を見た。

 混乱と焦燥がマリコの中で頭をもたげる。

 猛烈な悪寒が背筋を突き上げる。

 身体をひねり、壁に無重力ブーツで張り付き、壁のパイプに全身でしがみつく。

 聞こえないのを承知で、マリコは声を限りに叫んだ。

 

「総員、対ショック防御ーっ!」

「なんじゃと!?」

 

 音も光もない衝撃波が世界を揺らし、パプアが激しくきしんだ。

 揺れる視界で、マリコは見た。何か巨大な機影が世界の裂け目から姿を現す。

 悪鬼のようにそれは笑い、モノアイを点灯させた。

 

『Unknown MS appears』

 

「未確認機、敵拠点周辺に出現!」

「なんじゃとぉ!?」

 

 報告の声をあげ、マリコは絶句する。

 まさか、あれも”異邦人”だって言うの?

 凶暴な悪意を感じる、あの凶暴なガンプラ……いいえ、モビルスーツ!

 

「未確認機、敵旗艦を強襲!」

 

 凄まじいスラスターの噴射と共に、大型機が敵旗艦のブリッジへ迫る。

 対空砲火をものともせず、大型のクローがブリッジへと突き刺さった。

 メガ粒子の閃光が敵旗艦のブリッジを幾度も貫き、やがて弾薬庫に火がともる。

 閃光。そしえ火球が生まれ、サダラーンが消える。

 鉄壁の守りだったはずの敵旗艦、あまりにもあっけない最期だった。

 

『Battle ended』

 

 サダラーンの爆散とレイドバトルの終了を、システムメッセージが冷たく告げる。

 

『No Contest』

 

「そんなバカな……!」

「……こんなことって!」

 

 あまりにも、あまりにもあっさりと、わたし達のレイドバトルは終わってしまった。

 納得できる敗北でも、念願の勝利でもない。

 謎の未確認機の乱入による無効試合と言う、最悪の結末だった。

 

「皆が、頑張って、一丸となって……その結末がこれですか!?」

「こんなこと、あって良い訳がなかろう!?」

 

 ガデムの慟哭と、マリコの叫びがブリッジに響き渡る。

 勝利者などいない、戦いに疲れ果て。

 星空を見上げる。泣くこともかなわない。

 

 

 

 サブモニターの荒い画像で、エニルはそれを見た。

 サダラーンの爆発を背負い、未確認機が悪魔のように笑う。

 クィン・マンサ並みの巨体と、まるで阿修羅のような異形のシルエット。

 二本の腕とは別に、肩口から巨大なアームとクローが生えている。

 GBNのデータベースに存在しない、正真正銘の未確認機だ。

 

「グラン・ジオング!」

 

 この場でたった一人、エニルだけがおののき、その名を呟いた。

 間違いない! チャットサーバーとレーダーへの強引な介入、並外れた火力が証拠だ。

 エニルの拳がコクピット内の保護カバーを叩き割り、エマージェンシーコールを通達する。

 

「カツラギ、いるなら飛び起きろ!

 ……“異邦人”だっ!」

 

 

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・SDガンダム

 

 SD(スーパー・ディフォルメ)ガンダムの略。

 二頭身から三頭身サイズで描かれたモビルスーツ並びにキャラクターを示す作品群。

 武者ガンダム、騎士ガンダム、コマンドガンダムなどのシリーズがある。

 スーパーロボット大戦やGジェネレーションでよく見るアレ、という方が多分通りがいいかもしれない。

 GBNでも一連のSDタイプの商品はガンプラとして認められており、愛機として問題なく使用出来る。

 SDタイプの機体は小回りがきく機動性、被弾面積の小ささによる回避力の高さを主な利点とし、

 白兵戦でのリーチの短さ、大きさの差による耐久性の低下を主な欠点として備える。

 エニルが使用した慈影丸はRGM-89 ジェガン(武装強化型)をダークブルーにリペイントし、忍法影分身によるサポートメカとして登録した機体。

 パト◯イバーもとい、自衛丸とは別物なので要注意。 

 ロウジは家にある古いビデオを履修しているため、知識が偏っている。

 

 

 

 




Dガンダムファースト、プレバンで販売……!?
うーん、正直ちょっとほしい
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