リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。 作:ゼラチナマスター
切りどころがうまく行かず、凄い文章量になってしまいました。
新年早々風邪をひいてしまい、ストックがなくなってしまっております。
次回の更新は1週間お休みをいただき1/19(日)を目指して頑張ります。
本年もどうかよろしくお願いします
無料公開でイデオン初視聴したこわすぎ
無人機はCPU操作の雑魚とは一味も二味も違う。
一当たりした結果、プルツーは己の考え違いを痛感した。
「プルツー隊、被害状況知らせ!」
「プルトゥエルヴ、右ビームガン並びに右マニピュレータ破損!」
「プルフォー、頭部全損、メインカメラ映像ありません!」
「プルファイブ、両腕喪失です!」
プルツー及び量産型キュベレイ3機の被害は散々なものだった。
サイド3周辺に展開中の敵無人機、ファントム6機の迎撃に向かった結果だ。
数の不利など質で誤魔化せるそんなおごりと油断も大いにあった。
「……見事な連携だ。そして明らかに戦術的な動き。
的確にこちらの戦力を削ぎにかかってくる」
ただ超反応なCPUなだけではない。
見た目はギラドーガをカスタムしたようなジオン系だ。
手持ち火器はライフルのみ、固定火器を幾つか準備したインターセプター、いわゆる迎撃機だろう。
問題はその中身だ。恐らく敵軍は量産型キュベレイの性能と武装配置をしっかり把握している。
ファンネルへ的確に対処し、数の有利でこちらの武装を一つずつ潰してきた。
プルツーすらシールドを投棄せざるを得ない状況だった。
「プルフォー、プルファイブ、対艦装備を残して下がれ!」
「了解……ご武運を!」
そしてレーダーには、アウーラから発艦する無数の光点があった。
ファントムのお代わりだ、その数9。
味方増援も動いてくれているが、到着はどちらが先になるか。
「グレミー、戦闘不能のプルフォーとプルファイブを下がらせる!
全軍へ通達!
敵無人機は容易な相手ではないぞ、心して当たってくれ!」
「ボスアッガイ、了解!
高ランクモビルドールやGビットみたいなもんやな!」
「ラカン隊、了解!
こちらも現場へ急行中だ、よろしく頼む!」
通信妨害はないようだ。ほっと一息ついたところだった。
戦場後方、こちらから見てサイド3の後方で、淡い白い光がまたたくのをプルツーは見た。
「なんだ……!?」
アレは、旗艦パプアのいる辺り!
理解出来ない現象に、プルツーの全身は悪寒に震える。
「パプア、応答しろ!
グレミー、グレミー!」
最悪の事態すら想像しながらカメラを最大望遠、パプアを捉えて映像を拡大する。
そして、プルツーは絶句した。
「……は?」
淡い白い光に包まれながら、パプア甲板へせり上がって来るガンプラが一機。
どう見てもそれは、ごくプレーンなザクⅠのようにしか見えなかったのだ。
「艦長、大変です!?
ザクⅠが発進していきます!」
オペレーターのプルスリーがパプアのブリッジで驚きの声をあげた。
パプアの甲板に、一機のザクⅠがせり上がるように出現する。
正面で腕を組み、威風堂々とたたずむ。
あまりにも見覚えあるポーズとその演出に、ガデムは喉の奥で笑った。
「なんでガンプラがあんなところから!?」
「あんなところにガンプラデッキがあるはずが……!」
混乱するグレミーとプルスリーに、ガデムは落ち着いた声で諭す。
思えば、マリコを初めて見た時から、ガデムはどこか懐かしさを感じていた。
「行かせてやりたまえ、グレミーくん」
「しかし、アレは艦長の機体でしょう?
本当に、マリコ女史が?」
まったく驚きの正体だ。ガデムはにやり、一人笑みを浮かべる。
ガデムは穏やかに笑い、首を横に振る。
「違う。“少尉”は通りすがりの正義の味方じゃよ」
「せ、正義の味方!?」
ガンダムらしからぬ単語にグレミーが狼狽する。
光栄なことだ。自分が作ったザクⅠを、”少尉”に使っていただけるなど。
「行けぇ、1日号!
流星よりも速く!」
マリコとは違う女性の声が響き、ザクⅠが淡い光と共に発進する。
流星のような速度で、1日号と呼ばれたザクがサイド3内部へ突入する。
まさしくそれは、遠き日に見た姿そのままだった。
「さぁ、サイド3内部は正義の魔法使いにお任せじゃ!
ロウジくん出撃までのグラン・ジオングの足止めは必ず成る。
我々はアウーラを落とすぞ、グレミーくん!」
「り、了解、艦長!」
憧れたあの方に、無様なところは見せられまい。
ブリッジを引き締め、ガデムは作戦遂行に専念するのだった。
『我々はヌーベルエゥーゴ。
連邦の走狗と化したエゥーゴと決別し、
スペースノイドの真の独立を目指すものである!』
プロパガンダを垂れ流しながら、グラン・ジオングがサイド3、首都ムンゾコロニーを睥睨する。
「どうした、ジオンのクソ虫ども!
テロリストに答える舌も抗う心も売り飛ばしちまったのか!?」
グラン・ジオングのコクピットで、タウ・リンは上機嫌に叫ぶ。
30m級重MSの足が自動運転のエレカを踏み潰す。
営業中の建造物を大型アームで薙ぎ払い、肩のミサイルとメガ粒子砲で施設を薙ぎ払う。
思い出したように現れる防衛隊のプチモビは雑な火力で吹き飛ばす。
「スペースノイドの誇りはどうした?
死んだ同胞を売り払って得た富はどこへ消えた?
テロリスト風情に好き放題させていいのかよ!」
タウ・リンの言葉に応える声は聞こえない。
スペースポート、浄水施設、循環空気センター、変電所、重要施設はあらかた壊しきった。
暴力的な破壊をひとしきり満喫し、タウ・リンは小さく舌打ちした。
「おいおい、これが夢にまで見たジオンの首都の現状かよ……」
あまりにおかしい。タウ・リンの心がそう叫ぶ。
景色は観光パンフで見るあのムンゾに違いない。
だが、あるべきものがここにはない。
「アウーラ、ここは本当にムンゾか?
人っ子一人いやしねぇぞ」
降伏を呼びかけながら出てくる迎撃のMS。
妥協を求めてホットラインを繋ぐお偉方。
空襲に怯え、逃げ惑う避難民。
つぶした瓦礫の下から染み出す人だったもののどす黒い液体。
そのどれもがここにない。
事前に完璧な疎開が完了したとでも考えなければありえない光景だ。
「何を馬鹿な事を。座標はサイド3に間違いない。
それとも何か、タウ・リン。
ジオン共和国の政治ブタどもが我々をはめるために首都を丸々使って罠を?」
「罠か……どうやらそうみたいだな」
レーダーに目をやり、タウ・リンは楽しげに呟く。
敵機の反応が一つ、出現場所はこちらではない。
離れた場所で破壊活動に従事中の無人機一個小隊の方だ。
「ねぼけ眼でゲストのご登壇か。
即退場などしてくれるなよ!」
スラスターをふかしてコロニーの空へ浮き上がり、グラン・ジオングがモノアイカメラをそちらへ向ける。
破壊された瓦礫の粉塵が噴き上がる中、ファントムが散開し、シルエットの敵機目掛けてビームを撃ちこむ。
無人機ならではの正確な連携だ。
だが、敵機がビームをものともせず突進し、手近なファントムを一撃で打ち倒す。
粉塵の中、シルエットの敵機がモノアイを輝かせた。
「ようやくダンスパートナーにふさわしいお客人がいらっしゃったようだな!」
遅刻した恋人を咎めるような上機嫌さで、タウ・リンは笑う。
グラン・ジオングのモノアイカメラがズームし、敵影を映し出す。
もうもうと巻き上がる粉塵の中から敵機が歩み出た瞬間、タウ・リンは己の目を疑った。
「アウーラ、急げ。
グラン・ジオングのメインカメラ映像だ」
打って変わって冷たい声で、タウ・リンは急かす。
久しく忘れていた感覚が全身を駆け巡る。
「見えるか、アウーラ。
あの機体、何に見える?」
「がなるな、タウ・リン!
ファントムのカメラで見え……て……」
アウーラからの通信が途切れる。
生唾を呑み込む音が聞こえた。どうやら絶句したらしい。
これは恐怖か、それとも戦慄だろうか。
ありえない。これは狂気かヤクが見せる夢か幻だ。
「MS-05 ザクⅠ……旧ザクだと!?」
「くくく……ははは!
ついに俺も狂ったのか!」
歴戦の傭兵タウ・リンが、あまりの事態に声を立てて笑う。
モノアイ頭の緑色の敵機が、足元に転がるファントムの残骸を巨大な打撃武器で無造作に弾き飛ばした。
ゴルフスイングのような軽い一撃で、MS一機分のスクラップが重力を無視した動きで吹き飛ぶ。
残骸はコロニー外壁の穴まで飛び、激しい衝突音をたて、穴をふさいだ。
「アウーラ、博物館モノの旧式にご自慢のおもちゃがやられた感想はどうだ?」
「無駄にマッシブなフォルム、露出した動力パイプ。見間違うはずもない。
初期の初期、ザクⅡですらない旧型のザクだぞ。そんなバカな!」
アウーラの艦長を務める戦友が、裏返った声で怒鳴り散らす。
プロの軍人とて、狼狽もしよう。
20年前に退役した旧型のMSが最新鋭の無人機を一蹴したのだ。
しかもその手にする得物は巨大なピンク色のふとんたたきなのだ。
「どうせ金持ちどもが中身をレストアしたんだろうよ!」
「ほう。ご自慢のファントム、レストアMSごときに負けるってか?」
謎の旧ザク目掛け、残る2機のファントムが仕掛ける。
ライフルとグレネードの斉射が多方向から旧ザクを襲う。
前衛のファントムが距離を詰めて挑みかかる。
無人機ならではの完璧な連携だ。
「馬鹿を言うな、ファントムはガワこそジオニックの系譜だが、
中身はアナハイム肝いり、ゼファープロジェクトの系譜だぞ!?」
だが、その射撃を旧ザクがふとんたたきでいとも簡単に受け止めた。
そのまま素早く踏み込み、至近距離でライフルを突き付けるファントムへの距離をゼロにする。
鋭いショルダータックルに体勢を崩すファントムの脳天にふとんたたきが振り下ろされる。
星が飛び散り、轟音と共にファントムがコロニーの地面へめり込む。
「……アレは噂の傭兵、アージェント・キールかもしれん」
「銀色塗装には到底見えないぜ、戦友」
必死に合理的な理由を探す艦長を、タウ・リンは肩をすくめる。
狙いを定め、タウ・リンはグラン・ジオングの高出力メガ粒子砲を無造作に撃ち込む。
旧ザクがふとんたたきを振るい、あっさりとビームを弾き飛ばす。
バケモノめ。武者震いが背筋を駆け抜け、ふつふつと腹の奥底で何かが燃えだす。
「戦友、訂正だ。ここはやっぱりあの世かもしれん」
「どうしたタウ・リン。無神論者はやめたのか?」
あの旧ザク、悪魔か死神か、理外の怪物に違いない。
目の前の現実を受け入れ、タウ・リンは口元を歪める。
「神に感謝の祈りを捧げているのさ。
クソまみれの人生の延長戦で、楽しいおもちゃが見つかった」
「……手早く片付けろよ。
奴さんども、こちらでもようやく乗り気になったらしい」
旧ザクが油断なくふとんたたきを構え、じりじりとグラン・ジオングへと詰め寄る。
どうやら向こうさんもやる気らしい。タウ・リンは笑う。
「善処するが、期待はするなよ。
あいにくバケモノ退治は初体験でな!」
得体のしれない旧ザクもどきの怪物を見やり、タウ・リンは笑う。
死にぞこないのテロリストの相手など、地獄の怪物こそ相応しかろう。
もう二度と、このコクピットに座る事はないのだと思っていた。
1日号のコクピットで、”少尉”はかすかな感慨にふける。
豊満な身体をジオン軍服で包み、姿勢よく背筋を伸ばした前を見据える。
『……ざ、ザクⅠ、ファントム1機を撃破!』
『か、艦長!?
あなたはあんな切り札を死蔵するつもりだったのですか?』
ごめんね、プルスリーさん、グレミーくん。
混乱しきった様子のブリッジ内回線に、“少尉”は小さくかぶりを振る。
『違うよ、グレミーくん。
アレはワシの作ったザクⅠではない。
そして、操縦者はマリコくんでもない』
ガデムの声に、つやのある紺色の髪が揺れる。”少尉”の整った顔立ちに苦笑が刻まれる。
小さなミラーに映る姿はあの頃と変わらない。
若くてとびっきりにキレイな女性士官だ。
『あの機体の名は”1日号”
全世界でたった一人のための専用機じゃ』
やっぱり、ガデムさんはわたしを知っていた。
“少尉”は小さく頷き、モニターで周囲の状況を確認する。
敵無人機3機は倒した、増援はないようだ。
コロニーの空には悪鬼、グラン・ジオングが傲然と浮かび、こちらを見下ろしている。
”少尉”は決然とした眼差しでグラン・ジオングを睨み、高らかに叫ぶ。
「人のおうちに土足で上がり、
傍若無人に荒らし回る!」
1日号が悠然と動き、グラン・ジオングへと巨大なふとん叩きを突き付ける。
もう、他に敵影はない。時間の限り、相手取ってあげる!
「5歳の子供だって他人を思いやると言うのに、
なんて道徳心のない人達!」
”少尉”の言葉を受け流すかのように、グラン・ジオングが泰然と動いた。
スラスターを切り、油断のない動きでコロニーの大地に着地する。
モノアイが動き、1日号を睨む。
同時に通信ウィンドウが開き、東洋人系の男の顔が現れる。
「いかにも恵まれたコロニー生まれらしい戯言だ、反吐が出るぜ」
鋭い罵倒とは裏腹に、男の顔にはどこか面白がるような笑みが浮かんでいる。
「ヌーベルエゥーゴのタウ・リン。
テロリストだ」
傲然とグラン・ジオングが腕を組み、男……タウ・リンが名乗りをあげる。
「今から殺してやるぜ、夜郎自大な正義の味方さんよぉ。
だからその前に、墓碑に刻む名前を教えな」
正義などあるものか、これはただの私憤だ。
故郷を踏みにじられる怒りに任せた、ただの私闘だ。
ロウジくんにあれだけ偉そうに言ったのに、わたしはこんなことにしか魔法を使えない。
敵と自分を鼻で笑い、”少尉”は言葉を投げ返す。
「正義の味方?
違うわ、ただの時代遅れの魔法使いよ」
『では艦長、彼女はいったい何者なのです?』
『おとぎ話の……魔法使いじゃよ』
“少尉”の名乗りに、グレミーとガデムの会話が重なる。
『サイド3の危機には必ず現れて、
旧型のザクを駆り……』
暖炉の前で子供達に語るかのように、ガデムが語る。
そう。かつて、わたしは魔法使いだった。
『いつも人々を助けてくれる、
謎の軍人さん』
今は違う。歳を重ね、現実を知った。
あの頃の無邪気な全能感はもうない。
今の自分だってそうだ。魔法の力を私闘のために持ち出すなんて魔法使いの風上にもおけない。
『彼女の名は……』
それでも。
わたしを呼ぶ人がいるのならば、応えよう。
1日号が両手でふとんたたきを構え、大きな動きで見得を切る。
胸を張り、声高らかに”少尉”は名乗りを上げる。
「それでも今は名乗りましょう。
時代遅れの魔法使い。
その名は……!」
『「魔法の少尉、ブラスターマリ!」』
“少尉”とガデム、二つの声が期せず唱和する。
それはかつて、マリコが魔法使いだった時の名前だった。
「見せてもらうぜ、そのバケモノの性能の底を!」
高圧的に叫び、タウ・リンはウェポントリガーを引き絞る。
ふわりと宙に浮かんだグラン・ジオングからミサイルがバケモノ旧ザク……1日号へと殺到する。
1日号がふとんたたきを構え、ミサイルを撃ち払う。
弾き飛ばされたミサイルが中空で無意味に爆発する。
実弾も同じか!
「去りなさい、悪鬼!」
ブラスターマリと名乗った自称魔法使いが叫ぶ。
同時に、ふわりと1日号が宙に浮かぶ。
空を歩くかのように猛然と、緑の機体がグラン・ジオングへ迫る。
「スラスター制御の動きじゃねぇぞ!」
振りかぶったふとんたたきが最短距離で振り下ろされる。
下がらず、前へ! サーベル使い潰すつもりで引き抜き、ふとんたたきを受け止める。
受け止めは辛うじて成功した。
激しいフラッシュがまたたき、冗談のような衝撃と共に、グラン・ジオングが後ろへ吹き飛ぶ。
すかさず1日号が距離を詰めてくる。
ふとんたたきを横殴りに振り上げ、叩きつけてくる。
バックステップでかわし、サーベルを突きこむ。
返す刀のふとんたたきが、サーベルを撃ち払う。
「どんな切り返しだ!?」
物理法則を無視したようなムチャクチャな振り回しだ。
守りに回ったら押し切られる!
防御自慢のグラン・ジオングで初めて味わう感覚だった。
グラン・ジオングがサーベルを構え、突きかかる。
同時に肩のメガ粒子砲を近距離から撃ち込む。
1日号がふとんたたきを正眼に構え、サーベルとメガ粒子砲を両方弾き飛ばす。
「どういう仕組みだ、その棒は!」
「魔法の杖が弱いはずないじゃない!」
理屈になってねぇ! ブラスターマリの言葉にタウ・リンは舌打ちする。
白兵のクローはまだ使えない。壊されたら投棄するだけですむサーベルとは違うのだ。
クローをビーム砲ごとあの棒でうっかりへし折られたら大損だ。
右肩のメガ粒子砲で牽制しながら、左肩のクローアームで足元に落ちていたファントムのライフルを拾い上げる。
チャージは十分、こいつにはどう出る!
「バケモノめが!」
AE社共通規格のライフルから、1日号目掛けてビームが放たれる。
やはり敵はふとんたたきでビームをはたき落とす。
二発目、三発目、どちらも同じだ。
「ビームのライフルすら防いでくれるってのなら!」
手応えを感じ、タウ・リンはグラン・ジオングに思念で攻撃を命ずる。
タウ・リンの凶暴な攻撃意思に従い、両肩のクローが有線クローアームとなって飛び出す。
大きく左右に迂回し、1日号を取り囲む。
「こいつにはどう出る!」
オールレンジ攻撃!
手元のライフルと同時にクローアームのメガ粒子砲が火を噴く。
瞬間、1日号の映像が視界でブレた。
そう思うほどの猛烈な踏み込みだった。
真正面から強烈な敵意!
迎撃にサーベルを構え、ライフルの銃口を向ける。
ふとんたたきの一閃でライフルの銃口がへしゃげ、サーベルが弾け飛ぶ。
モニターを埋め尽くすように握り拳が大写しになる。
最新の対G仕様を衝撃突き抜け、コクピットが激しく上下に揺れる。
頭部装甲破損! やかましくダメージアラートが明滅する。
よりにもよってマニピュレータでの殴打とは!
「くくく……
はっはっは!」
吹き飛んだグラン・ジオングを素早く立ち直らせ、高らかにタウ・リンは笑う。
有線クローアームが戻り、肩口に接続される。
頭部に痛打は食らった。だが相手とて無傷ではない。
こちらを殴ったタイミングで、クローアームが敵機の装甲をえぐったのだ。
1日号のショルダーアーマーに、こちらのクローのかすめた傷がはっきり残っている。
体をかわされ、直撃ではない。だが、相手は無敵の存在ではない。
「たとえバケモノだろうと、魔法使いだろうと……
殺せば死ぬ相手のようだな、貴様は!」
たとえバケモノだろうと、相手はMS。
攻撃が通じるなら殺せるということだ!
暴力と殺意に心をひたしながら、タウ・リンは再び猛攻を開始するのだった。
「ブラスターマリ!
すごい、本物ですよ、エニルさん!」
歓声を上げるロウジの横で、エニルは大きく目を見開いた。
ジェガン・Kのモニターには、サイド3の激戦がライブで映し出されている。
難敵グラン・ジオングを相手に、旧式のガンプラ……ザクⅠが高速のタイマンバトルを繰り広がる。
アレは……間違いない、1日号!
「アレが本家本元のブラスターロッド……魔法のふとんたたきなんですね!
ビームを弾き、実弾を打ち払う。
反応さえできればグラン・ジオングのオールレンジ攻撃に対応できる!」
ジェガン・Kのコクピットは複座仕様だ。
エニルの前、メインシートに座るロウジが喜色満面で歓声を上げる。
それをよそに、サブシートのエニルは思考をフル回転させる。
ブラスターロッドによるブラスターチェンジは、機体の性能を大幅に向上させる。
だが、成功例はこのGBNではあまりに少なかったはずだ。
新人だと聞いていたが、何者だ? 誰かのサブアカウントか……?
「すごい、マリコさん……まるで別人ですよ!
アレならグラン・ジオングにだって食らいつける!」
マリコさん……マリコ・スターマインか!
検索したデータでフルネームを確認し、エニルは天を仰いだ。
姿こそ違うが、フルネームは原作のブラスターマリそのままだ。
気付かないのも無理はない。原作の小学生姿の先入観が強すぎた。
ダイバーID、生成記録なし。アクセス経路不明。
何の気なしにサブマスター権限のまま検索を続け、エニルは目を見開いた。
マリコも不正アクセス者……もう一人の”異邦人”だと!?
「ロウジ、どう見る。
1日号は我々の味方だと思うか?」
「……?
エニルさん、何を言ってるんです。
出撃前、マリコさんが僕に言ってくれました。
”自分が時間を稼ぐ、後をお願い”って」
きっぱり言い切るロウジに、エニルの心は決まった。
マリコの目的を推測するのは後回しだ!
「ロウジ、一つだけ訂正しておく。
彼女はマリコじゃない。
“魔法の少尉ブラスターマリ”だ、わかるな?」
「あ、はい、そうですね!
変身した魔法少女の正体はヒミツ。オッケーです!」
エニルはロウジを冗談めかしてたしなめ、サブシートから愛機の調整を再開する。
少なくとも今、ブラスターマリはグラン・ジオングの敵で、恐らくこちらの味方だ。
「ロウジ、事前準備は60カウントに短縮する。
1日号はグラン・ジオングの敵だ、共闘するぞ!」
「はい、いつでもいけます!」
搭乗すら初の機体だと言うのに、ロウジは実に勇ましい。
時間が必要なのはエニルの方だ。
サイド3の地形を読み込み、ギミックの仕込みを行う。
忍法とはすなわちトラップとギミックだ。
ジェガン・Kが真の力を発揮するには事前準備が絶対に必要なのだ。
「慣らし運転もなしのぶっつけ本番だ。
頼んだぞ、ロウジ!」
「信じてます。
エニルさんのガンプラと、エニルさんのサポート!」
盲信ともなりかねないロウジの言葉に、エニルは口の端に笑みを刻む。
複座でバトルに挑むのは、ロウジが初めてGBNへやってきた時以来だ。
急がねばならない。
ロウジの腕に不安はないが、戦況に懸念が一つある。
モニターを眺めながら、エニルは正確に迅速にキーボードを叩くのだった。
「たとえバケモノだろうと、魔法使いだろうと……
殺せば死ぬ相手のようだな、貴様は!」
「やってごらんなさい。
魔法使いが殺せるものか!」
果敢に叫び、ブラスターマリは1日号を右へと跳躍させる。
そこにどす黒い悪意! ふとんたたきの導くまま、ウェポントリガーを振るう。
メガ粒子砲を発射寸前の有線クローアームへ魔法のふとんたたきが振るわれ、クローを大きく弾き飛ばす。
「ちぃ! 魔法使いってわりにいい反射神経してやがる!」
大きくホームランされたクローのサイコミュワイヤーに引きずられ、グラン・ジオングが大きく体勢を崩す。
チャンス! コロニーの大地を踏みしめ、1日号が前へと突進する。
またたくまにグラン・ジオングへの距離を詰め、ふとんたたきを振り上げる。
直後、1日号が不自然な動きで大きく上へ跳躍した。
その足元を真横から放たれたメガ粒子砲が抜けていく。
浮いたところに放たれた追撃のミサイルをふとんたたきで打ち払い、1日号は距離をとって着地する。
「いい勘してやがるな、魔法使い……
さてはねたみややっかみに長年揉まれて来たな?」
「生きてりゃ誰しも苦労はするものよ!」
タウ・リンの揶揄のこもった物言いを、ブラスターマリは一蹴する。
だが、内心はタウ・リンの歴戦の傭兵ぶりに舌を巻く思いだった。
この男、隙を見せて罠を張っていた!
魔法のふとんたたきが殺気を感じてくれなければ、直撃を受けていたところだった。
「プロの戦争屋さんだって、たいそうご苦労なさった事でしょう?」
「苦労もしたとも、その結果がこうだがな!」
グラン・ジオングが放つ牽制のビームを撃ち払い、ブラスターマリは唇を噛みしめる。
間違いない、木っ端テロリストとは違う、歴戦の戦争屋さんだ。
対してこちらは引退したロートルだ。
全盛期の力があれば、初撃でおしおきしてそのまま終幕だと言うのに。
今あるのは魔法のふとんたたきが与えてくれた軍人さんの操縦技術だけだ。
あとは1日号のパワーでなんとか喰らいついているが、いつまでこの均衡が保つものか。
「その腕と気力があれば、もっと生き方もあったでしょうに!」
「サイド3はMSの技術を売りさばいて戦後賠償を切り抜けた。
戦争も忘れてぬくぬく太った肥え太った苦労知らずのサイド3が憎くてなぁ!」
言葉にたっぷり悪意を乗せ、タウ・リンが語る。
同時にミサイルとメガ粒子砲の正確な射撃が飛んでくる。
時間差の攻撃をふとんたたきで両方とも正確に叩き落とし、1日号が前へ出る。
だが、前へ出た瞬間、もう片方のアームからメガ粒子砲が出足をくじくように撃ち込まれる。
「相対的に自分が不幸せだからって、
コロニーへの破壊行為が正当化されるとでも!?」
「地球のデスエリアには福祉もセーフティネットもない。
コロニー育ちはそこに残された12億の社会的弱者の事も知るまいに!」
隙があったのは最初だけ、こちらの動きに的確に射撃を合わせて来る。
操縦桿を握りしめながら、ブラスターマリは叫ぶ。
「福祉と社会構造についてディベートがしたけりゃ、今すぐ機体を降りなさい!
MSでの戦闘、それもテロなんて手段を選んだ時点で、
力による勝敗しか落着する結末はないのよ!」
「まったくもっておっしゃる通り。
停戦命令が下るまではぶっ殺すかぶっ殺されるしかねえわな!」
敵の言葉の途中、1日号が踏み込もうとした目の前にビームが飛んでくる。
これで三度目だ。白兵しか手段のないこちらが攻め気を見せた瞬間、ビームが足を止めに来る。
こっちの動きが読まれてる!? ブラスターマリはとぼしい軍事知識を必死で掘り起こす。
この男、ニュータイプか強化人間の素養がある……
「そう、ブーステッドマン。
俺は後期型強化人間手術の被験者だ」
「心の声を読みとった!?」
ブラスターマリはぎくりと身体を強張らせた
1日号が飛びのいた先に置くように、メガ粒子砲の奔流が放たれる。
人読みにしても、完璧に過ぎる。
敵は間違いなくこっちの何かを感知している。
少しずつ正確さを待つタウ・リンの攻撃がその証拠だ。
ならば時間をかければかけるだけこちらが不利になる。
多少被弾しようとも! ブラスターマリは覚悟を決めた。
魔法のふとんたたきを盾のように構え、グラン・ジオング目掛けて前に出る。
その、瞬間だった。
「そして……貴様もそうなんだろう、魔法使い!」
グラン・ジオングの肩口の装置が虹色の不可思議な輝きを放った。
ぐにゃりと視界が歪むような強い力場が1日号へと収束する。
激しいアラートが鳴り響き、1日号がつんのめるように速度を落とす。
1日号が手にした魔法のふとんたたきが苦しげに明滅する。
『Psyco Communicator has stopped. This is an attack from outside.』
『I-field barrier cannot be deployed』
”外部の攻撃により、サイコ・コミュニーターが強制停止”
”Iフィールドバリア、展開できません”
ジオン公用語の警告と共に、1日号のパラメータにイエローとレッドのランプが次々に点灯する。
「そんな旧式、まさかとは思ったが……
バケモノ旧ザクの正体、サイコ・マシーンだったか」
平坦な声でタウ・リンが言い放ち、ブラスターマリは驚きに目を見開く。
1日号……あなた、サイコ・マシーンだったの!?
だが、考えてみれば自然だ。
魔法のふとんたたきは、願いの力を増幅する現象を時折見せた。
「残念だったな、魔法使いのネエさん。
このグラン・ジオングはサイコ・マシーンを殺すための機体でな!」
肩口のメガ粒子砲が輝き、ビームが放たれる。
操縦桿を握りしめ、ブラスターマリは勢いよく横に倒す。
1日号が横へ飛び、メガ粒子砲の射線から逃れる。
『Mobility reduced to 40%』
続いてのミサイルを、右に左にジグザグ機動で必死に回避する。
バリアーだけではない。明らかに1日号の動きは随分と鈍い。
”機動力の低下、40%”と、モニターには容赦ない警告が躍る。
「遮蔽へ……!」
だが、歴戦の傭兵がそんな定石を読まないはずがなかった。
逃げ道を塞ぐように、グラン・ジオングの巨体が舞い降りる。
グラン・ジオングは悠然と腕組みし、右肩のクローアームが1日号へ襲い掛かる。
「舐められたものね!」
構えたふとん叩きでクローを跳ね上げ、1日号はそのまま横薙ぎにふとんたたきを振るう。
腕組みを解いたグラン・ジオングがサーベルでふとんたたきを受け止め、同時に左のクローが突きこまれる。
「うぁっ!」
回避など間に合うはずもない。ふとんたたきを構えた右腕が抑え込まれ、動きを封じられる。
全力で操縦桿を暴れさせるが、グラン・ジオングのパワーと体格差は圧倒的だ。
完全に死に体だ。そしてコクピットの前に刃を消したビームサーベルの柄だけが突きつけられる。
「チェックメイトだ、魔法使いさんよ」
勝利を確信した言葉と共に、タウ・リンの顔が通信ウィンドウに浮かび上がる。
だが、タウ・リンの顔に浮かぶのは敗者への嘲笑ではなく、まるで諦観のように見えたのだった。
アンチ・ファンネル・システムで化けの皮を外せばこんなものか。
約束された勝利を前に、タウ・リンの心は鈍った。
あとはトリガー一つ押し込むだけでサーベルが旧ザクのコクピットごと魔法使いを消し炭だ。
今まで必要なのは結果だけだった。
過程に意味などない。勝たねば死に、全ては失われる。
それが戦争屋としてのタウ・リンの戦場の全てだったのだ。
「お見事ですわ、戦争屋さん。
なぁに? まさか今更裏技使って勝ったのを後悔でもしてる?」
ブラスターマリがからかうように通信を入れて来る。
恐らく目的は時間稼ぎだ。
「貴様も死に損なってこちらへやってきたクチか?
魔法使い」
あえてタウ・リンはブラスターマリの言葉に乗った。
それは、自分と周囲への違和感を抱えきれなくなった故だったのか。
今のタウ・リンにとって楽しかったのはひりつく殺し合いの瞬間だけだった。
その先にある勝利に、どれだけ価値があるのか、まるでわからない。
「大気圏で燃えるアクシズの中にわたしは居たわ。
あなたは一体どちらから?」
よりによってあのクソ戦場の生還者かよ!
あまりの答えに、タウ・リンは喉の奥で笑いを噛み殺す。
「月の直上だ。あと一歩で月と世界を崩壊される目前だったがね。
そこで俺は愚かなテロリストとして母艦アウーラの甲板で討たれた。
下手人は青臭い若いパイロットとザビ家最後の嫡出子だ」
タウ・リンは自分の最期を笑いながら語る。
「俺は野望をくじかれ、一度死んだ身だ。
敗北を刻まれ、気付いたら“もう一度”とここに放り出された。
これは罰か、神のイヤガラセか?
貴様を殺した後、にっくきサイド3を灰燼に帰した後、何を目指せばいい?」
そう、あの時自分は死んだ。今の自分は哀れな敗残者に過ぎない。
”死は全てに平等だ”と掲げた信念すら裏切られて、これからどう生きればいい?
答えなど誰にも出せるはずもないまま、タウ・リンは言葉を投げかけてしまっていた。
素人にカウンセラーの真似事なんかさせなさんな!
タウ・リンの言葉に、ブラスターマリは天を仰いだ。
「あなたが頼るべきだったのは愛機なんかじゃなく、
お医者様か友人だったのよ」
挑発するつもりはない。侮辱するつもりもない。
相手がこっちの心を感じ取るなら、嘘や欺瞞なんて意味はない。
「PTSDって診断されて終わりだろうぜ」
「そっちの方がよっぽどマシだったわよ。
殺しあいの舞台じゃない場所に割り込んで
戦争屋の論理で全部めちゃくちゃにしてくれちゃって!」
すました顔で皮肉げに呟くタウ・リンへ、ブラスターマリは言葉を真正面から叩きつける。
「殺し合いの舞台じゃないだと?
MSが殺しあう以外の何に使う機械だってんだ、”魔法使い”」
「機体から降りなさい、”戦争屋”
そうしたら出来る限りの情報を教えたげるわ」
戦争屋相手の人生相談?
全力で時間稼ぎのためにカウンセラーをするのが最適解だったろうか。
いいや、言葉で時間稼ぎが出来る相手じゃない。
「わたしはニュータイプじゃない。
親子で判りあうにも言葉が必要な若造です。
他人の、それも一度戦っただけの相手の辛さなんて、わかりゃしませんけれどね!」
そして多分、言葉で救える相手なんかでもない。
ブラスターマリの持ち球は真正面からの剛速球しかない。
「大なり小なり誰でもあるつまづくことはあるわよ。
美味しいご飯食べて寝て!
辛かったら家族やお医者様を頼って!
また明日って毎日を繰り返す!
わたしはずっと、そうしてきた!」
大人になると、ずっと判る。
今までと生き方を変えるのは、なんと難しいことか。
この戦争屋と自分が生きてきた道は、あまりに違いすぎる。
同じ”異邦人”だろうと、心に響く言葉を選ぶには距離が遠すぎた。
「くく……ふはは、はっはっは!
まったくもって人と人とは分かり合えようはずもないもんだな」
タウ・リンにもそれは判ったのだろう。
諦めたように、どこか悲しげに哄笑する。
「ありがとよ、”魔法使い”
そうだな、今更この俺が日和った道など歩けるはずもねえわな。
初志貫徹といこう。次はもう一度月と世界を滅ぼしにかかるとするさ」
タウ・リンの言葉に力が戻り、表情に好戦的な気配が戻る。
1日号は全力でもがくが、グラン・ジオングの拘束は外れない。
確定した死が訪れるまで、後何秒か……!
「”魔法使い”からの最後の助言よ。
必ず、お医者様かお友達を頼りなさいね」
「ああ。せめてもの礼に、出来るだけ苦しまないよう殺してやる」
好戦的に微笑み、タウ・リンがささやく。
だが、その時ブラスターマリは見た。
まるで、影のように何かがグラン・ジオングの背後に立つのを。
(まるで、影のように何かがグラン・ジオングの背後に)
魔法使いが発した鮮烈な驚きがタウ・リンの心に突き刺さる。
「後ろだとぉ!?」
完全な死角からの奇襲だった。強化人間の反射速度すら完全には間に合わない。
ビームダガーの一撃が左クローアームを切り飛ばす。
構えたサーベルが刃を形成する前に、強烈な蹴りがグラン・ジオングの腕を襲う。
サーベルが弾き飛ばされ、背後へ振るったクローアームを謎の機体が飛び退って回避する。
「ちぃっ!」
グラン・ジオングのセンサーを掻い潜っての奇襲だと!?
手練れだ。タウ・リンの背中を戦慄が駆け抜ける。
せめて魔法使いだけは! 至近距離から旧ザクへ放ったミサイルが、突如隆起したコロニーの地面で防がれた。
「どんな手品だ!」
「忍法”隔壁返しの術”!」
叫んだのは恐らく、背後の機体だろう。
サイド3のコロニー管制施設をハッキングして操っているのか。
見た目は細身で軽装のジェガンタイプに見えるが、中身は情報戦仕様の恐ろしくピーキーな機体に違いない。
凛と澄んだ冷たい意志が突き刺さる。
その感覚、タウ・リンには覚えがあった。
遠くから伺っていた“覗き見ヤロウ”だ!
「テメェは、あの時のピーピングトム!」
「その体、鬼神のごとく
その瞳、菩薩のごとし」
謎のジェガンタイプが呪文のように名乗りを上げる。
アンチファンネルシステムを維持したまま、タウ・リンは旧ザクから距離をとり、ジェガンタイプへ向き直る。
肩のクローアームが撃ち込むメガ粒子砲を、ジェガンタイプが飛び退いてかわし、追撃の二発目を隔壁で防ぐ。
「いつからサイド3はテーマパークになった!」
「駆けること、光のごとく
走ること、疾風のごとし」
……そうか、恐らくここはテーマパークなのだ。
タウ・リンの天啓をかき消すように、ジェガン・タイプからの攻撃が迫る。
隔壁を軽々と飛び越え、ジェガンタイプが空中から飛び道具を投擲したのだ。
まるでサーカスの軽業師だな!
左クローアームの残骸を振るい、飛んできた小型の飛来物を弾き飛ばす。
弾かれた飛来物が彼方で小爆発を起こす。
遅れて映像がモニター片隅に映る。十字の刃物だった。
「死してなお、屍を残さず、
生きていようと、影のごとく」
撃ち込んだミサイルを、あろうことかジェガンタイプがビームダガーで切りとばす。
反射速度のバケモノか!?
うめくようにタウ・リンは呟く。
「何者だ、こいつ……!」
「その名も……」
呟きと名乗りが重なった。
踏み込みを諦め、ジェガンタイプが旧ザクをかばうように仁王立ちする。
「”Jの影忍”!」
「ジェガン・Kとロウジ・チャンテ。
義によって助太刀いたす!」
「ピンクの小僧!」
もう一つの声は、あの時殺し損ねた小僧のパイロット!
間違いない、こいつが敵の切り札だ。
小僧と覗き見ヤロウの複座だと?
忌まわしい新型Zタイプの姿がタウ・リンの脳裏にちらつく。
「アウーラ。聞こえるか。
ここは多分テーマパークだ。”作り物のサイド3”だぞ!」
コロニーの外の母艦へ、タウ・リンは通信で声を張り上げる。
どうやら外は外で激しいバトルが始まっているようだ。
「……ならばどうする、タウ・リン?」
「決まってる。どうせ一度死んだ身だ。
楽しく殺ろうぜ」
戦友の言葉に、タウ・リンは好戦的な笑みを作って言葉を返す。
思い返せば、戦争と血で彩られた人生だった。
目の前の不気味なジェガン・タイプを睨み、タウ・リンは強気に言い放つ。
「血塗られたテロリストの最期の相手。
テメェらごときじゃ役者不足なんだよ!」
またも立ち塞がるのは複座機体か。
因果が収束するのを感じながらも、タウ・リンは凶暴に吼えるのだった。
●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説
・サイコ・マシーンと対サイコミュ兵装
主にニュータイプ専用機として調整された機体を指す。
ビットやファンネル、有線式サイコミュを搭載していることが多いが、
機体能力強化のため、バイオセンサー、サイコフレームのみを搭載した機体も存在する。
1日号は今作において、魔法のふとんたたきと言う外付けサイコフレームによって機体能力を大幅に上昇させたサイコ・マシーンとして定義されている。
アンチ・ファンネル・システムやサイコ・ジャマーは強力な兵装だ。
対戦相手に強力なデバフをかけて行動を大幅に制限する。
そのため、対戦が地味になり、対戦者と観戦者双方にストレスとなるため、
現在のGBNにおいて対ファンネル兵装は強い制限を受けており、かなりの弱機能であり、使い手はほぼ廃れたレア兵装となっている。
グラン・ジオングが原作そのままの凶悪な機能を持つのはタウ・リン達“異邦人”の特異性によるものと推定される。