リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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ミッション1-8 PVPを楽しんでみよう!

 

 胸に手を当て、大きく深呼吸。

 握り直したダイバーギアの操縦桿が、汗でぬるつく。

 ロウジはエニルに見えないよう、手の汗をそっとぬぐった。

 

【勝利条件1:敵機すべての撃墜】

【勝利条件2:物資を保持したまま、指定の離脱エリアへの到達】

【敗北条件1:自機の撃墜】

【敗北条件2:物資のロスト】

【PLAYER:エニル&ロウジ】

【CHALLENGER:クランプ&コズン】

 

 モニターに映る冷たい文字列が、よりいっそうロウジの緊張をあおる。

 エニルの戦績とガンプラに、傷をつけたくない。

 そんな弱気を振り切るように、ロウジは声を張り上げる。

 

「エニルさん、指示を!」

「物資のロストは無視!どうせコンテナより本体が先に壊れる。

 表示したルートで指定エリアへ。ブーストゲージを常に半分は温存!」

「判りました!」

 

 叫ぶと同時、ロウジは操縦桿を力いっぱい前へ倒す。

 初手から操縦権の返上を覚悟したが、まだエニルがロウジに任せてくれている。

 その思いに応えたいと、ロウジの心は沸き立つ。

 

「交戦よりも突破を優先ですか?

「交戦はまず避けられない。

 けど、勝利条件2をちらつかせた方が、敵の選択肢を絞れる」

「なるほど!」

 

 エニルのナビゲーションしたルートに従い、ロウジはジェガン・Cを谷底を駆けさせる。

 突如、コクピット内に警告音が響き、谷底や崖がはじけ飛ぶ。

 もうもうと上がった土煙に驚き、思わずロウジはガンプラを制止させる。

 

「なんです、あれ!?」

「足を止めない!

 たぶんレーダー頼りの、敵の間接砲撃だ。

 移動し続けていれば当たるものじゃない!」

 

 エニルの叱咤に、ロウジは慌ててジェガン・Cを動かす。

 確かに敵機はまだレーダーにも見えない。

 レーダー頼りの射撃なら、そうそう当たる訳がない。

 やがてレーダーのはるか後方、敵機を示す光点が点灯する。

 速い!レーダーの地図をぐいぐい進む光点の移動速度に、ロウジは思わず目を剥いた。

 

『機種照合……MS-09F、ドム・トローペン』

「ホバー走行の名機。追手に選ぶだけあるね」

 

 そこかしこに砲撃が着弾し、視界が土煙ですこぶる悪い。

 それでもロウジは後方の敵機を振り切ろうとブーストを駆使してスラスターでジェガンを疾駆させる。

 だがどうしてもブースト切れ中は地上走行を避けられず、その間に敵機の光点はみるみるうちに距離を詰めてくる。

 

「どうしますエニルさん、交戦回避はやっぱり無理そうですよ!」

「……待った。お相手さんから通信のお申込みだ。

 目標地点へ現状の方針を維持、敵機が目視出来次第、牽制射撃は許可!」

 

 エニルが短く深呼吸し、通信受諾を選ぶ。

 モニターの端に通信ウィンドウが開き、渋い顔の男性が表示される。

 それは、ジオン公国軍のランバ・ラル隊所属のクランプ中尉のアバターだった。

 

「こちら、クランプ中尉です。

 対戦、よろしくお願いします」

「よろしく。クランプ中尉」

「ところで……ロールプレイ、させていただいても?」

「構わない。お互い、節度をもってね」

 

 顔にふさわしい渋い顔で、顔に似合わぬ堅苦しい口調でクランプがエニルと言葉を交わす。

 ロールプレイ? レーダーとモニターに意識を集中させながら、ロウジはかすかに首をひねる。

 そんなロウジの疑問は、直後の二人の会話ですぐに氷解した。

 

「いいガンプラだ。そして悪くない腕前だ、女。エニル・エルとか言ったか!」

「女子供と思って与しやすしと思ったなら、おあいにく様

 物資もガンプラも、アナタなんかには渡さない」

「バルチャーにその態度、いい度胸だ!」

 

 礼儀正しい謙虚な会話を一変させ、クランプとエニルが互いに強気な口調で言葉を投げあう。

 ロウジは納得した。これはつまり、お互い、自分の作った”設定”に沿っての会話だ。

 

「こちらは2機だ。まさか卑怯とは言うまい?」

「エニルさんのガンプラが、そんなもので負けるもんか!」

 

 熱のこもった会話に引きずられ、ロウジも思わず叫んでいた

 クランプが思わず目を丸くし、楽しげにロウジへと言葉を投げ返す。

 

「いいセリフだ小僧。貴様、名をなんという!」

「僕はロウジ。エニルさんと僕、ジェガン・Cはお前達なんかに負けない!」

「いいだろう。ならば2対2だ。

 アフターウォーの流儀に従い、力づくで奪わせてもらう!」

 

 クランプは強い口調で宣言し、そして笑顔をやわらげ、語調を緩めた。

 

「勝ちは譲りませんよ。エニル少佐、そしてロウジくん」

「対戦、よろしくお願いします!」

「いい勝負をしましょう、クランプ中尉」

 

 最後はやはり礼儀正しく言葉を交わし、通信が終わる。

 また二人きりに戻ったコクピットで、ロウジはエニルの背中に言葉をかける。

 

「あの、エニルさん」

「いい勝負にしよう、ロウジ」

 

 身体ごと向き直り、朗らかにエニルが笑ってくれた。

 エニルとクランプ、二人が自分を認めるように応えてくれた。

 先輩ダイバー達の仲間入りが出来た。

 そんな思いが、ロウジの胸に熱く湧き上がる。

 

「はいっ!」 

「操縦をアタシへ!」

「了解! ゆー、はぶ、コントロール!」

「Yes. I have control」

 

 声高らかに、ロウジは操縦権をエニルに返上する。

 嫌も応もない。エニルの描いた勝利のため、素晴らしい勝負のため、最善を尽くす。

 出来ることはそれほど多くないけれど、それがきっとガンプラバトルの礼儀のはずだ。

 

「レーダーは見ます。地雷の警戒も任せてください!」

「ああ。私とロウジ、二人なら……負けない」

 

 エニルの言葉を証明するように、エニル操るジェガン・Cはスラスターを無駄なく吹かし、地表を滑るように駆け抜けたのだった。

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・ロールプレイ

 直訳すると、役割演技。「キャラになりきってそれっぽい演技をする」遊び方の事である。

 テーブルトークロールプレイングゲームや、その源流であるウォーシミュレーションゲームなどが発祥。

 GBNではキャラパラメータに「ロールプレイOK」タグなどがあり、エニルもつけているが、

 空気感を見計らわないとただのハラスメントになるため、礼儀正しいクランプはエニルに許可を取った。

 冷静に見ると痛々しい会話かもしれないが、皆でキャラになり切って会話すると、とても楽しい。

 苦手な人がいる時にロールプレイを強要するのはもちろんいけないことだ。

 だけど、盛り上がっている人に横から冷静にそれって恥ずかしいよとか言うのはやめてあげようね!

 かあちゃん! 囚われのヒロインを裏声でやってくるときにいきなり昼飯もってくるのはやめてよ!?

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