リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。 作:ゼラチナマスター
ロウジのラストバトル、まだ始まっていないのに???
書き溜めがなくなっていろいろやばすぎるため、
次週はすいません一週間お休みをいただきます。
勢いだけで書いているとこうなります……
次は一回飛ばして12/7(日)とさせていただきます
【バトルフィールドが崩壊!
バトルフィールドが崩壊!
速やかに脱出を試みてください】
聞いたことのないシステムアラート、見たことのない光景だ。
愛機ワンゼロオーのコクピットで、“仮面の父”はぞっと背筋を震わせる。
通信は雑音まみれ、チャットサーバーも切断されたまま。
残骸と化したコロニーの破片が周辺には漂う。
一歩間違えていれば、自分やワンゼロオーも残骸の一つとなっていただろう。
「トロン、無事か!?」
「助かったわ……パパ。
乗員三人ともまだミッション継続可能よ」
愛機が懐に抱えたホバートラックから、接触回線でトロンの声が響く。
ここはGBNのバトルフィールド、サイド3のZコロニーがあった場所だ。
今は前後真っ二つに断ち割られたコロニーの残骸が漂う宙域となってしまっている。
「トロン、ダークフェニックスのコクピットへ!
「了解、パパ。お邪魔させてもらうわね。
わたしは通信とチャットサーバーの回復に専念します!」
トロンのアバターが転送され、ワンゼロオーと合体したサポートメカの操縦席に現れる。
そのタイミングで、遠くでかすかに砲撃音と爆発音が響いてきた。
おそらくは”巨神”が誰かを攻撃しているのだ。少しでも距離を取らねば。
スラスターの噴射光を最小限に、砲撃音から遠ざかるように”仮面の父”は移動を開始する。
不規則に漂う残骸の大きなものを回避し、小さなものを愛機の盾で押しのけ、ワンゼロオーが安全な宙域へと脱出を試みる。
「大佐、そちらはどこへ送れば良い?
このままでは指揮は難しかろう」
「こちらのことは心配ご無用!
宙域用のガンプラだって用意してあるとも」
同時にホバートラックが消え去り、偵察用ガンプラのアイザックが出現する。
操縦するのはオペレーターを務めていたダイバーなのだろう。
アイザックの掌に保護されたノーマルスーツ姿のロンメルが、厳しい表情で呟いた。
「だがしかし……“巨神”め、なんと恐るべき力か」
「トロン、コロニーを崩壊させた”巨神”の攻撃について情報をくれ」
「全方位ミサイル、もしくはミサイルカミューラ・ランバン・アタック。
全身のサイコフレームで速度を増幅したミサイルを全方位に打ち出す”巨神”の必殺技の一つよ」
アレすら”巨神”にとっては数多くある手札の一つに過ぎないということか。
トロンの説明に、”仮面の父”は渋面でうなる。
まさしくミサイルの嵐という他ない、恐ろしいまでの濃密な弾幕だった。
爆発すらせず、恐るべき速度であらゆるものを弾頭が貫通していった。
アレははたしてミサイルと呼んでよいものか。
ほぼ不意打ちに近い状況で、回避や迎撃、防御することも難しかったろう。
ワンゼロオーが無事だったのは、辛うじて射程外へ離脱が間に合っただけだ。
すさまじいミサイルの雨は十数秒発射され続け、その結果がこの崩壊したZコロニーの残骸だ。
「システムで保護したバトルフィールドをたやすく破壊するか……」
「……ええ。まさしく伝説の”巨神”ね」
ガンプラの攻撃で崩壊したりしないよう、バトルフィールドには強力な保護エフェクトがかかっている。
”巨神”の攻撃が原作よりはるかに頑丈なコロニーの大地を破壊し、フィールドを崩壊させたのだ。
「未確認機より膨大なエネルギー反応ならびにロックオンアラート!」
「なんだと!?」
その時、偵察機アイザックから悲鳴のような通信が飛び込んだ。
とっさに操縦桿を切り返し、スラスターを全力噴射。
ワンゼロオーの機器はなんの反応も示していない。
だが、次の瞬間モニターが真っ白に輝く。
【みんな……星になってしまえ!】
まただ。全方位ミサイルの時と同じように、モニターにぞっとするような文言が流れる。
同時に激しいエネルギー反応とロックオンアラートが響き渡る。
漂うスペースデブリの向こう、膨大なエネルギーを放つ光の柱が立ち上る。
「馬鹿な、こんな距離から!?」
「いけない!
“閃光の剣”よ!」
「“巨神”です……攻撃が来ます!」
「総員退避行動!」
言われるまでもなく、ブーストボタンは全開だ。
その光の柱が、まっすぐに倒れ込む。
真っ白な柱が軌道上にある全てを飲み込んでいく。
がなり立てるアラートに突き動かされ、スラスターを全開でふかす。
「きゃあああ!?」
「“巨神”め……!」
モニターが焼き付き、コクピットが真っ白い光に満たされる。
光が収まった時、あれほど無数に漂っていたZコロニーの残骸が一つたりとも残っていなかった。
クリアになった宙域の遠景で、腕を振り下ろした姿勢で残身を決める“巨神”が見える。
直撃を避けられたのは幸運でしかない。
機器の範囲外、ロックオンすらできないような距離からの一撃だった。
「銀河を切り裂く必殺の一撃“閃光の剣”よ。
腕から放出したサイコフィールドを剣状で振り回す技……」
「まったく尋常の技ではないな。
自作ガンプラが振るうにはどれほど作りこめば出来るものか……」
ぞっと戦慄にその身を震わせ、“仮面の父”は厳しい顔でうなずく。
はるかに遠いこの距離で、”巨神”のバイザーアイがこちらをはっきり捉えている。
人の身で神と相対すれば、こうも畏れを感じるだろうか。
まるで存在そのものの格が違うかようだ。
通常のガンプラバトルではついぞ味わったことのない感覚だ。
「本来、戦ってはいけない相手よ!
“巨神”は敵意に応じて力を増幅させる。
攻撃を加えれば加えるほどパワーアップしていくわ」
「だがトロン女史、これは戦争ではない。
これはガンプラバトルなのだ!」
弱気なトロンをたしなめるように、ロンメルの強い言葉を叩きつけた。
そうだ、“白鳥”も言っていた。
このGBNの流儀、ガンプラバトルなのだと。
武者震いを抑え込み、”仮面の父”は汗ばむ手で操縦桿を力強く握りなおす。
「“巨神”が誰かが丹念に作り上げたガンプラ相手ならば、
諸手を挙げてその腕前を認めよう。
だが、“巨神”は違う。
バグじみた力を振るうだけのバケモノに最強の座を譲れるか?」
「……そうだな、いやしくもプロのガンプラビルダーを名乗るのだ。
たとえ相手が誰であろうと、
ガンプラバトルで勝利を諦めるなど!」
たとえアレが神のごとき相手だろうと、あきらめる理由になるものか。
信念のこもったロンメルの言葉に、“仮面の父”は力強くうなずく。
ブーストボタンを押し込み、愛機ワンゼロオーを前へ出す。
「……ふむ。”赤い彗星のひと”よ。
ワンゼロオーに万に一つの勝機は?」
「……切り札が一つ。
チャージが長い近接の大技です。
何か策はおありで?」
前へ出かけたワンゼロオーを、ロンメルの言葉が押しとどめた。
”仮面の父”の言葉に、ロンメルがオコジョフェイスでにやりと笑う。
「勝機があるなら、あとは戦略戦術の出番だ。
敵を攪乱してワンゼロオーの大技を命中させる!」
「……では、運用はお任せします。
そういうことだ、すまんなトロン」
「まったく、仕方ないわね……!
ガンプラバトルのコンティニューはこちらも望むところよ。
あんなものを他のサーバーへ連れて行けるもんですか!」
トロンの決意に応えるように、“仮面の父”はうなずく。
メイジンでもない相手に、自分が負けてなるものか。
誰よりも自分が、自分のガンプラを信じてやらずにどうすると言うのだ。
「けれど、いくら何でも戦力が不足してるわ!」
「ワンゼロオーのとどめに持ち込むために、
盾となる機体とかく乱要員が最低限必要だな。
まずは残存戦力を後方で糾合する!」
「ならばこちらはそれまで、時間稼ぎぐらいはさせてもらう!」
トロンの悲鳴を聞きながら、ワンゼロオーは剣と盾を構えて再び前に出た。
後方でアイザックが射出した信号弾の光があっという間に遠のく。
有効射程へ飛び込んだ瞬間、ロックオンアラートが響き渡る。
「パパ、”巨神”の通常兵装よ!
胸部のビームと通常ミサイル!」
「そんなもので、このワンゼロオーを落とすつもりか!」
”巨神”の腕と胴体に内蔵された兵装がワンゼロオーめがけて火を噴いた。
ビーム砲を大きくローリングして回避し、ミサイルをバルカンと切り払いで迎撃する。
完全にこちらを標的と見定めたか、 モニターで残身の構えから”巨神”がゆっくりと即応姿勢を整える。
望むところだ。孤独な闘いなら慣れている。
「ここはガンプラバトルを楽しむ者達の場だ。
それを破壊しようと言うのなら……
たとえ伝説の“巨神”と言えど、おかえりいただく!」
「ええこと言いますやん、パイセン。
トロンちゃん、戦力ならここにいまっせ!」
関西弁混じりの明るい声が、通信に割り込んできた。
激しい重砲撃音が続けざまに響き、実体弾の大口径キャノンが”巨神”を襲う。
重厚な緑の光がバリアーとなって大口径キャノンを弾く。だがその衝撃が巨体の体勢を崩させた。
「エセリア・ドートとウルトラデストロイのお出ましや!
ウチらのプロの矜持っちゅーもん、見せてやりましょ!」
肩に背負った超大口径のキャノンから白煙を噴き上げながら、50m級の巨大ガンプラからエセリアの声が響く。
エセリア秘蔵の重火力要塞型ガンプラ、ウルトラデストロイだ。
それを皮切りに、周囲に次々に機影とレーダー反応が現れる。
後方から高出力のメガ粒子砲の火線が”巨神”目掛けて伸びていく。
通常のガンプラの2倍近いサイズの真紅の巨体がメガ粒子砲を”巨神”へ浴びせる。
そして最前線を疾走するワンゼロオーの横、音もなく並走する機影が一つ。
「同感だ、貴様もたまには良いことを言う。
だが、アマチュアだって意地がある。
エニル並びに“Jの影忍”推参!」
「どうやらまだレイドバトルに席はありそうだな。
プルツーとグラン・マンサ。混ぜてもらおう!」
「同じく“GM-ARMS”所属、グレミー。
遅れてすいません、大佐。
第七士官学校組の仇討ちといきましょう!」
ジェガン・Kのエニルが高らかに宣言し、支援砲撃を続けるグラン・マンサからプルツーとグレミーが元気よく叫ぶ。
続々と増える新戦力につられたように、前方宙域から信号弾の光を目指して複数のスラスター光が移動してくる。
初期から奮戦を続ける機体達だ。
無傷の機体はほぼいない。
腕や足、武装がもげ、装甲表面がえぐれ焼け焦げ、頭部のない機体さえいる。
「勝手に殺すな、グレミー。
たとえエースのプルツーだろうと、大きな顔はさせんぞ。
ラカン並びにドーベンウルフ。
ミッション続行可能メンバーと共に継続参戦します!」
「遅れてすまぁん、こちらボスアッガイとシャイニングアッガイや!
アッガイマフィア残党もまだまだやる気満々やで!」
装甲ボロボロのドーベンウルフが、グレミー軍のガンプラ達達と共に拳を突き上げる。
その横で比較的損傷の浅い色とりどりのアッガイ達が散会し、わちゃわちゃとフォーメーションを組みなおしている。
「……そうだな。
プロだのアマチュアだの、肩書を振り回すのも無粋か」
続々と集まる戦士達の姿に、”仮面の父”はつぶやきを漏らす。
ここは誰もが平等に遊ぶための場所だ。
いつものさわがしいレイドバトルの雰囲気こそ、このGBNにはふさわしい。
「では、我々も混ぜていただけますか、先達」
落ち着いた声と共に、横合いから別のスラスター光が戦場へやってくるのが見えた。
複数の機影だ。頼れる援軍がまた一つ。声にも覚えがある。
”仮面の父”は目元を緩め、言葉を返す。
「……ええ、どうぞ。ご同輩。
楽しむつもりがあるのならば歓迎いたします」
「かく乱は我らにお任せを!
今回は自作が間に合いました。
自前のガンプラで挑ませていただきましょう!」
緑の量産機カラーに塗られたジークアクスとジフレドの最新ガンダム2機に率いられ、
ジオンカラーのゲルググ(GQ)やリックドム(GQ)が陣形を組む。
そのガンプラ達の塗りを、”仮面の父”は見覚えはあった。
「マイケル・スターマインと量産試作型ジークアクス!
木星妖怪”有志と共に参戦いたします!」
「エセリア、一人で先走らない!
ロージィ・ユイリィと量産試作型ジフレドもいるよ!」
プロにアマチュア、さらにはELダイバーまで。
まったく、随分な戦力ではないか。
「巨神。砲撃姿勢!
ミサイルとビーム砲が来るわ!」
「総員、対処を!」
「ビームはIフィールド持ちに任せて!」
「対ミサイル迎撃開始!」
こちらの戦力が出揃うのを待っていたように、”巨神”が動いた。
腕部のミサイルと胴体からのビームが飛んでくる。
回避が間に合わず、リックドム(GQ)とゲルググ(GQ)が一機ずつ爆散する。
ワンゼロオーはミサイルを回避し、飛んでくるビームを盾で受け止める。
後方ではグラン・マンサとウルトラデストロイが盾となってほかの機体を守ったようだ。
「残存戦力、集合いたしました。
大佐、ご指揮を!」
「総指揮はグレミーに、参謀をエニル女史。
前線指揮をラカン、マイケル、ボスアッガイに任せる。
私は……援軍を呼んで来る!」
「……私がですか!?」
まったく、なんとも頼もしい。
固くかみしめた唇の隙間から、吐息が柔らかくこぼれていく。
ここはガンプラと、バトルを楽しむための場所なのだ。
我が子が夢中になったのもよくわかる。
「総員、傾注!
臨時ミッション、”謎の敵勢力の撃滅”は”木星巨神の撃破”に移行します。
敵は高い再生能力と無限の火力を備えた危険極まりない機体です。
誰でもいい、大火力の攻撃をもって撃滅を!」
「了解、ママ」
トロンの凛々しい宣言につぶやきで応え、”仮面の父”はロックオン距離に捉えた”巨神”を見据える。
”白鳥”よ。そして”巨神”よ。
GBNを運営の手へ返してもらおう。
ここは未来の子供たちのために残してやりたい場所なのだ。
【時間を……稼がなければ】
そこに広がっていたのは、底なしの虚無だった。
これが”白鳥”の心象風景か。”木星妖怪”マイケルは冷静に分析する。
明らかに通常の生命体の精神世界とは状況が違う。
「明らかに”白鳥”は通常の精神状態にない」
マイケル・スターマインとしてのアバターでその空間に浮かびながら、”木星妖怪”は思案する。
何もない空間に、黒い何かに浸食されたサイコフレームのオブジェクトが浮かんでいる。
ほかには何もない。雲のような不安定な地面と空、ただ延々と広がる空間。
本格的な交戦を前に、まずは絡め手、情報収集が必要だった。
”木星妖怪”の権能の一つ、他人の精神へダイブする能力を使い、やってきたのがこの場所だった。
【盟友の願いを、かなえるために……】
聞こえる声はか細く、とぎれとぎれだ。
ELダイバーとして生まれ落ちて間もないマイケルでもはっきり理解できる。
明らかに”白鳥”の心は擦り切れる寸前だった。
「……これは交渉、分析どころではない。
当該精神に余裕なし。
……む、なんだ?」
視線を感じ、マイケルは目線を上げる。
そして人間そっくりのしぐさでぎょっと目を大きく見開く。
いるはずのない”巨神”がそこにいた。
バイザー状のモニターカメラがマイケルをはっきり睨み、巨大な掌が虚空から現れ、伸びてくる。
「……自我が、”巨神”に呑まれつつあるのか!」
背筋を襲うのは焦りか、それとも恐怖か。
巨大な掌から逃れ、マイケルは精神世界からの離脱を試みる。
これ以上ここにとどまることは危険極まりない。
接続を解除、精神をログアウト。
焦燥に駆られながら、マイケルは危険なマインドダイブから離脱する。
完全に接続が切れるまで、ずっと”巨神”の視線がマイケルに張り付いたままだった。
「すまない、トロン女史。
説得や交渉どころではない状況のようだ。」
ワンゼロオーの背面サブコクピットで、トロンは厳しい表情でうなずいた。
モニターに映るマイケルの表情は、だいぶ憔悴していた。
ここはGBNのバトルフィールド、サイド3のZコロニー周辺宙域だ。
「ありがとう、マイケルさん。
無理してもらってごめんなさい。
後は下がってて!」
「そうもいかん、愛機ジークアクスのお披露目会、
活躍もなしに退場出来るものか!」
“木星妖怪”さん達もすっかりガンプラ沼にはまっちゃって。
意気込むマイケルに笑みを押し隠し、トロンは激励する。
「わかりました、気をつけて!
……さて、どちらにしろ決着を急いだ方がいいわね。
パパ、ワンゼロオーの状況はどう?」
「エネルギーチャージ率70%、
チャージの完了まで約一分!」
危険な戦闘中、マイケルに無理して“白鳥”の心へ接続してもらった甲斐があった。
”白鳥”の状況は思った以上に思わしくないらしい。
強力無比な”巨神”という機体を強引に生成し、運営権限を模倣して再生も行う。
どうやらそれが”白鳥”にかなりの負担を強いているようなのだ。
「グレミーくん、エニル。状況は以上よ。
ワンゼロオーの火力を敵のウィークポイントに叩きつける。
そのための盤面を整えてもらえる?」
「業腹だが、のチャージしたエネルギーのすさまじさを見るに、
近接の最大火力はワンゼロオーなのは間違いあるまい。
グラン・マンサをワンゼロオーの直衛に回す」
「了解、トロン女史、エニル女史!」
素早く情報交換を終了し、トロンは戦況を見つめる。
”巨神”と連合軍が激しい攻防の真っただ中にあった。
「量産型キュベレイ隊は、下がれ!
スペースウルフ隊! 火力支援で負けるなよ!」
「ごめん、”木星妖怪”部隊、そろそろ限界!
肉薄攻撃してもバリアは抜けないし、いったん下がるわ!」
「ほな前衛はワイらが請け負うわ。
ガチ勢アッガイマフィア、前進や!」
率いるのはラカン、ボスアッガイ、ロージィの前線指揮官達だ。
第七士官学校、アッガイマフィア、木星妖怪連合が”巨神”へ果敢に攻撃を仕掛けている。
そしてメイン火力を務めるのは後方に控えたウルトラデストロイだった。
大口径のウルトラデストロイキャノンをメインに、壮絶な砲撃戦を”巨神”相手に展開している。
「ウルトラデストロイキャノン、全弾命中!
しかし”巨神”のバリア健在です!」
「あの火力で抜けないか!
バリアの強度が鉄壁にすぎる……」
だが、そのウルトラデストロイでさえ”巨神”に有効打となっていない。
”巨神”の戦闘力が上昇しつつある証拠だろう。
「こちらエセリア!
ウルトラデストロイキャノン冷却開始、しばらく使用不能や!」
「グレミー、了解!
スペースウルフ隊、アッガイマフィア隊、”巨神”へ砲撃を!
15秒後に砲撃を中止し、ガザD隊で牽制のための肉薄攻撃だ」
ウルトラデストロイの重砲撃音が鳴りやみ、変わって他ガンプラが射撃を開始する。
バリアを展開しながら”巨神”がミサイルによって反撃してくる。
「グラン・マンサが盾になる!」
「頼むぞプルツーくん!」
ワンゼロオーはグラン・マンサに迎撃を任せ、エネルギーチャージに専念していた。
無暗な攻撃して、致命的な一撃をもらうわけにはいかない。
再生能力を持つ相手には、必殺の一撃でなければ意味がない。
【みんな ほしになって しまえ】
「”巨神”の全身に危険なエネルギー反応を感知!」
「”閃光の剣”が来るわ!」
そして、攻撃を控えていたのが功を奏した。
不気味なメッセージと共に、”巨神”が再び拳を大上段に振り上げる。
トロンが全体通信で叫ぶのに少し遅れ、大音量でロックオンアラートがコクピットに鳴り響く。
「トロン、しっかり捕まっていろ!」
「全体、回避行動ぉーっ!」
”仮面の父”の叫びとグレミーの指揮は同時だった。
”巨神”の拳の付け根から、すさまじい光の柱が天頂へと立ち上る。
そしてそのまま、腕がまっすぐに振り下ろされる。
戦艦すら呑みこむほどの幅のあまりに危険で暴力的な閃光が宙域を縦薙ぎに走る。
まるで当たれば即死のアクションゲームだ。
ワンゼロオーは回避に成功したが、逃げ遅れたガンプラがなすすべなく光の中に消え去る。
「被害状況知らせ!」
「アッガイマフィア、リックドム(GQ)、一機ずつ損耗!」
「大技をスカさせたぞ、”巨神”の状況はどうか!?」
“閃光の剣”は“巨神”の存在そのものを破壊エネルギーに変える大技だ。
いくら“巨神”と言えど、連続して使用出来るものではないはずだ。
通信が飛び交う中、闇からにじみ出るようにジェガン・Kの機影が現れる。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行。
開け、心眼センサー!」
エニルが鋭く九字護身法を詠唱し、ジェガン・Kの胸部に超高性能センサーが開く。
ジェガン・Kの観測する情報がダイレクトにトロンの位置するサブコクピットのモニターへ共有される。
たとえデータベースに無い機体だろうと、外部からの観測は有効だ。
「“巨神”のエネルギー残量、一時的に低下。
今が攻め時だ、グレミー!」
「データ解析開始!
“巨神”のエネルギーの流れを見極めます」
“巨神”の全身を流れるエネルギーの動きが心眼センサーによって映し出される。
頭部に取り込まれたサイコフレームのオブジェクトから、“巨神”の手足へポンプのようにエネルギーが送り出されていた。
サイコフレームのオブジェクトは“白鳥”の本体だ。
まさか、自分の身体をジェネレーター代わりに“巨神”を強引に動かしているの!?
「なんて無茶を!?
“白鳥”の存在そのものをエネルギーに“巨神”を動かしている……」
「ならば狙うべきはそこか。
頭部と胴体を切り離す!」
「エネルギーチャージ完了した。
ワンゼロオー、いけるぞ!」
トロンの言葉にエニルが続き、“仮面の父”が応える。
「全隊、陣形を再編!
“巨神”に総攻撃をかける!」
グレミーが指揮を飛ばし、前線指揮官達に率いられたガンプラ達が隊列を組んで攻撃準備を開始する。
グラン・マンサの背後に隠れ、ワンゼロオーは静かに牙を研ぐ。
「なぁ、トロン。
“白鳥”は、私が作ったブラスターロッドから産まれたらしいな?」
「……ええ、そうらしいわ。
けれど今回の事件、あなたのせいじゃないわ。
まして、あの子のせいでもない」
”仮面の父”の静かな声音に、トロンは動揺を押し殺して言葉を返す。
確かに”白鳥”は言った。自分はブラスターロッドに内蔵されたサイコフレームだったと。
だが”白鳥”がこうなった原因は、産まれのせいではあるまい。
GBNのバグと偶然の邂逅の結果、運命のねじれた結果がこのありさまだ。
「パパ、全部抱えこもうなんてしないで。
まずはあの子達を救うことだけを考えましょう」
「……ありがとう、ママ。
だがな、私が彼の生みの親であるならば。
……せめて、私が止めてやらねばならん」
”赤い彗星のひと”のアバターがつける仮面の下で、”仮面の父”は静かに決意を語る。
ああ、そうだ。こうなったこの人はもう譲らない。
たとえ誰が許しても、自分で自分を許せない。
なら、自分はその背中を支えてやるしかない。
「プルツー、グレミー、トロン、そして”赤い彗星のひと”。
総攻撃をかけるぞ、覚悟はいいな?
砲撃と肉薄攻撃で”巨神”の防御に隙を作る。
グラン・マンサの突貫で肉薄し、ワンゼロオーの最大火力を叩き込め!
「こちらプルツー、いつでもどうぞ!」
「こちらグレミー、全隊攻撃準備よし!」
「こちらトロン、いけるわ!」
「こちら”赤い彗星のひと”
ゆこう。決着の時だ」
エニルの声と共に、決戦の火ぶたが切られる。
モニター越しにトロンは、夫へと静かに視線を交わしあう。
「ゆこう、ママ。
少しでもあの子に、誇れる父であるために」
「……行きましょう、パパ。
わたし達があの子達を笑顔で迎えてあげるために」
それは単なる自己満足のための罪滅ぼしかもしれない。
けれど、その誇りこそが人を支えるのだと、トロンは知っていた。
「全隊、砲撃準備!
デスレックスの砲撃で敵のバリアに負荷をかける。
その後に全力で叩き込め!」
「ラカン、了解!」「ボスアッガイ、了解や!」「ロージィ、がんばるね!」
全体通信のグレミーの指示に、前線指揮官達が次々に声をあげる。
ここから先は、もう後戻りはできない。
何か取返しがつかない見落としはないか。
責任がずしりと肩にのしかかり、グレミーは小さくため息をつく。
「どんと構えていろ、グレミー。
用意されたのは最高の布陣だ。
私が脇役に回らざるを得ないぐらいにな」
「……そうだな、すまない。
次は最高の見せ場を用意しよう」
不満げな顔で、プルツーがはっぱをかけてくる。
やれやれ、君には本当にかなわないな。
浮かべた苦笑が、緊張や不安をふわりと溶かしていった。
「なに、勉強と思えば叔父上の盾となるのも悪くはあるまい。
ロウジのやつを存分に悔しがらせてやろう」
「頼むぞ、プルツー。
ワンゼロオーの直衛はグラン・マンサにしか出来ない仕事だ」
「ウルトラデストロイ変形完了、
空間スパイク固定!」
アイザックからの通信に、プルツーとグレミーが会話を切り上げモニターを見つめる。
サブモニターには、この場最大の砲撃能力を持つ機体の攻撃準備が映っていた。
ウルトラデストロイの50m越えの巨体が直立の恐竜形態デスレックスへと変形する。
脚部とテイルスタビライザーが宙域に固定され、背面の放熱ファンが光り輝き作動する。
小型化したジェネシス並とエセリアが称する荷電粒子砲を放つため、プラフスキー粒子を取り込み始めたのだ。
「荷電粒子砲発射までカウント30!」
「“巨神”の四肢並びに背面に発光を確認!
スラスターの噴射光です!」
いかな”巨神”と言えど、無傷ではしのげまい。
意気込むグレミーの心に、アイザックの通信が冷や水を浴びせかける。
足を止めて砲撃を行っていた“巨神”が姿勢を変えた。
「”巨神”が……動く!?」
当たり前だ、敵だってこちらの必殺の一撃を待ってなどくれない。
レーダーの反応が猛烈な速度で移動を開始し、モニターの巨体が少しずつ大きくなる。
巨体ゆえに初動こそ遅いが、一度動き出してしまえばその速度は遅くない。
両腕からミサイルを断続的に発射しながら、連合軍の布陣真っただ中へ突っ込んで来る。
「“巨神”進路をデスレックスへ固定!
後方目掛けて突っ込んできます!」
「……グレミー、出るぞ!」
「待ちぃや、プルツーくん!
今こそフリーのウチらの出番や!」
順序が逆だが、このまま”巨神”に蹂躙させるわけにはいかない。
焦るグレミーを、ボスアッガイのベテランボイスが落ち着かせてくれた。
「任せたぞ、アッガイマフィア!」
「全隊、各個に砲撃準備!
アッガイマフィアにあわせて“巨神”の足を止めろ!」
「アッガイマフィア、友情フォーメーション!
前哨戦の借りを返させてもらうでぇ!」
凛々しくボスアッガイが叫び、色とりどりのアッガイ達がフォーメーションを組む。
物々しく重武装したカスタムタイプ、サイサリスアッガイとボスアッガイのシャイニングアッガイが中心に陣取る。
そして周囲に群がるアッガイ達がエネルギーパイプを接続し、騒がしくエールを送り始めた。
「「「「がんばれ、がんばれ!」」」」
「奥義、友情アトミックバズーカや!」
「ソロモンよ、アッガイ帰ってきたぁぁぁ!」
サイサリスアッガイから構えたアトミックバズーカから、謎の破壊エネルギーが放たれる。
レーザー水爆に相当する破壊光線が猛進する“巨神”へ迫る。
緑の光が“巨神”の前方に集まり、指向性を持ったバリアとして盾のように展開された。
激しい炸裂音が響き、光線がバリアと衝突する。
着弾点にアッガイの花が咲き、衝撃波が走った。
「か~ら~の~」
「協力奥義! アッガイ覇王電影だぁぁぁぁぁん!」
さらにアッガイマフィアが追撃をかける、
陣形の中心に構えたシャイニングアッガイが砲弾のように打ち出され、巨神と衝突する。
あまりにふざけた連続攻撃だが、どうやら威力の方はガチだったらしい。
ガンプラ砲弾と化したシャイニングアッガイの身体がバリアを突き破り、”巨神”の胸部へ突き刺さる。
”巨神”が苛立たしげに咆哮し、シャイニングアッガイを平手で払う。
「うぎゃあ!
やーらーれーたー」
「シャイニングアッガイ、被弾!
“巨神”のバリアフィールド、すぐさま再生した模様」
間抜けな悲鳴をあげ、シャイニングアッガイがぐるぐる回って飛んでいく。
むしろなんで無事なのかそっちの方がわからない。
だが、その貢献度は非常に大きかった。
プルツーが感心したようにつぶやきを漏らす。
「アッガイマフィア、恐るべしだな」
「ああ、”巨神”の足を見事止めてくれた。
全隊、各個で砲撃開始!」
「行くぞ、第七士官学校。
ビッグガンの威力を見せてやれ!」
堅牢なバリアフィールドと装甲でアッガイマフィアの攻撃へ耐えた”巨神”であったが、
着弾の衝撃はバリアごと“巨神”の巨体を押し返し、突進の勢いを完全に殺していた。
そこを目掛けてスペースウルフ隊の射撃や、設置されたビッグガンの狙撃が多方位から襲いかかる。
激しい砲撃に、“巨神”が再度形成したバリアをまといながら激しく身悶えする。
だが、この“巨神”が一筋縄で行くはずがない。
はたして、グレミーの予測を偵察機アイザックからの報告が肯定した。
「グレミー、”巨神”が!」
「カミューラ・ランバン・アタックの予兆を確認。
全方位ミサイル、来ます!」
「来るぞ、全隊備え!」
“巨神”が身を縮め、ログで見たあの姿勢をとる。
恐るべきミサイルの嵐で、こちらの包囲網を強引に食い破るつもりだ!
だが、不意打ちだった前回とは訳が違う。
「直衛部隊、前へ!
全隊、ここが正念場ぞ!
デスレックスとワンゼロオーをなんとしても守れ!」
「全ファンネルのコントロールをグラン・マンサへ!
密集させて盾にする!」
前方にファンネルが集まり、密集してバリアを形成する。
その後ろにグレミーの指示に合わせ、盾を両手に構えたガンプラ達が前に出る。
動けないビッグガンやデスレックス、ワンゼロオーや砲撃部隊を守り抜く構えだ。
「エセリアちゃんはこっちで守るよ!
グラン・マンサやワンゼロオーもジフレドの後ろへ!
“木星妖怪”連合、フォーメーションGQ!」
「やろうか、ロージィ!
ジークアクスとジフレドが盾となる!」
だがその直衛部隊よりさらに前、ジフレドとジークアクスの2機が前へと飛び出す。
“木星妖怪”のネームド、ロージィとマイケル二人がアドリブを効かせた。
2機の新型ガンダムが向かい合い、掌を胸の高さにかざす。
その後方でリックドム(GQ)、ゲルググ(GQ)達、”木星妖怪”の機体が一斉に掌をかざす。
後方の機体からジフレド、ジークアクスへと淡い光が流れ出す。
そして向かい合うジフレド、ジークアクスの掌の間からLaLa音が響き始める。
「ジークアクス、ジフレドを中心に激しいエネルギー乱流!
小規模なゼクノヴァ反応です!」
「なんだと!?」
【みんな……きらいだ!】
グレミーの驚きの言葉を塗りつぶすように、不気味なメッセージがモニターに流れる。
“巨神”が光り輝き、全身からミサイルを撃ち放つ。
「ミサイル、来ます!」
「いくよ、マイケル!
キラキラフィールド!」
「ゆくぞ、ロージィ!
ゼクノヴァ・バリアー!」
叫びと着弾はほぼ同時だった。
あふれ出したピンク色のキラキラを、ジフレドとジークアクスがまるで盾のように前方に構える。
空間に溢れ出した光が、“巨神”が放った高速のミサイルと激突する。
LaLa音と共にピンクの光が広がり、光に飛び込んだミサイルが瞬時に焼失する。
「ぐぅ……っ!」
「がんばれマイケル!」
まさか、あんな真似ができるとは!
グレミーは”木星妖怪”達が見せた隠し玉に目をむいた。
機動戦士Gundam GQuuuuuuXでニュータイプとガンダムだけが起こせる不可思議な現象、ゼクノヴァ。
別世界への転移を行うとされる現象を応用し、攻撃を転移させてバリアーとしているのだ。
“巨神”が連続して射出し続ける高密度なミサイルの雨を、ピンクのキラキラが次々に呑み込んでいく。
その度にキラキラが蠢動し、ロージィとマイケルが苦しげにうめく。
グラン・マンサのサブコクピットで、グレミーはただ見守るしかない。
「ファンネル、壊滅!
盾持ちの直衛6機、全滅!
ビッグガン一台もミサイルの直撃で大破!
ゼクノヴァ現象、停止!」
「主力部隊の被害状況知らせ!」
ミサイルの大嵐は十数秒撃ち続けられ、唐突に止んだ。
ジフレドとジークアクスが激しく放熱し、機能を一時停止する。
包囲のために展開した部隊にも少なくない被害が出た。
だが、無茶の甲斐はあった。
「ジフレド後方の主力部隊にミサイル被害ありません!」
「……へへ、やったよ、エセリア」
「ロージィ、よーやった!」
“巨神”の切り札二つを切らせ、こちらの火力は健在。
盤面は整えた。自分の仕事はここまでだ。
大役を果たし終えた安堵と共に、グレミーは声を張り上げる。
「“巨神”へ総攻撃をかける。
全隊、攻撃準備!」
「ようやくか、グレミー。
腕が鳴るぞ」
「頼む、プルツー。
神気取りのバケモノに一撃を入れてやれ!」
プルツーの言葉に、グレミーは笑顔で応える。
あとは自慢のガンプラと共に、ダイバーの一人として存分に戦うだけだ。
「ついてこい、ワンゼロオー!」
「あわせる!
全力で飛ばせ、グラン・マンサ!」
強気に叫ぶプルツーに、“仮面の父”は声を張り上げた。
布陣の後列から真紅の巨体がとびだし、ジグザグ軌道で“巨神”目掛けて加速する。
まったく、なんてジャジャ馬な加速だ!
グラン・マンサの背後で軌道をトレースし、“仮面の父”はにやりと口元を緩める。
「伝説をぶち抜け……!
収束荷電粒子砲、いくでぇ!」
総攻撃の口火を切ったのは、あまりにも危険な破壊の光だった。
きちんと確保された射線くを目掛け、デスレックスの口から猛烈な稲光が伸びていく。
破壊の光をつかみ取るかのように、”巨神”が左腕を前へと突き出す。
掌から腕全体に緑の光が集中し、分厚く縦長のバリアフィールドが展開。
そこへ小型化されたジェネシス相当の戦略兵器が真っ向からぶつかった。
幾重にも張られたバリアフィールドを食い破り、巨神の左腕部を稲光が飲み込んでいく。
だがその一撃は、”巨神の肘から先を呑み込み、止まった。
「荷電粒子砲、着弾!
”巨神”の左腕部が消失しました!」
”巨神”へ初めて与えたまともなダメージだ。
意気込み、味方機が次々に巨神に襲い掛かる。
だが左腕を失った”巨神”の反撃はむしろ苛烈だった。
ミサイルやビーム砲、残る右腕を振るい、次々に挑むガンプラを撃墜していく。
だが、その犠牲はけして無駄ではない。
稼いだ時間で、ワンゼロオーが最高のポジショニングを終えている。
「飛び込むぞ、ワンゼロオー!」
「……応!」
天頂方面、”巨神”の頭部の真上方向、プルツーの叫びに”仮面の父”は吠える。
電光石火の一撃、天から降り注ぐ流星のように二機のガンプラがまっしぐらに”巨神”を狙う。
【なぜだ、なぜ戦う……なぜそっとしておけない!】
だがまさにその瞬間だった。
不吉なメッセージとともに、大音響のロックオンアラートが響き渡る。
”巨神”が”長大な砲を虚空から生み出し、天頂方面へ向けたのだ。
緑の光が砲口に集まり、グラン・マンサとワンゼロオーに狙いを定める。
「”巨神”と巨砲から、
破滅的なエネルギー反応です!」
「いかん、”波動ガン”だ!
避けろ、二人とも!」
「無理だ、逃れられん!」
「もろともに、突っ込む!」
迷いは一瞬、ブーストボタンを全力で押し込む。
だが、彼我の距離はまだ遠い。砲口に集まる光が輝きを増す。
回避も攻撃も間に合わない、まさしく必殺のタイミングだった。
誘いこまれたか! ”仮面の父”は覚悟を決め、構えた剣を引き抜く。
たとえ届かずとも、奥義で相殺するしかない!
【因果地平の彼方へ……吹き飛べ!】
不吉なメッセージと共に、緑の光が終息する。
だがその砲撃が放たれるより前に、長大な”波動ガン”の砲口は切り飛ばされていた。
「アカウントハック並びに不正ログイン、運営権限の違法使用。
目的達成のため、その存在全てを賭しての迷惑行為!」
あざやかな赤い光が、緑の光を消し飛ばす。
突如バトルフィールドに乱入した真紅のガンプラが、降りぬいた剣で残身をキメながら前口上を叫ぶ。
「その必殺の一撃、放たせるわけにはいかない。キャプテン・ジオンの名の下に!」
「キャプテン・ジオン!」
「……あなたか、キャプテン!」
プルツーと”仮面の父”の声に、濃ゆい顔の覆面男……キャプテン・ジオンがサムズアップを返す。
崩壊する”波動ガン”を放り捨て、”巨神”が右手に緑の光を集める。
「ゆけ、勇士達!」
「続け、ワンゼロオー!」
「……ゆくぞ!
神々の運命、ここに決せり!」
この機は逃さん!
ワンゼロオーが加速する。前方のグラン・マンサがさらに加速する。
トロンと視線を交わし、加速する愛機のコクピットで”仮面の父”は叫ぶ。
「魔狼はいかに!」
「主神を食らい、太陽を食らわん!」
朗々たる”仮面の父”の言葉に、トロンがよどみなく返す。
諦観の盾の裏に隠し、エネルギーチャージを続けた必殺武器、”傲慢の剣”をワンゼロオーが抜き放つ。
両手で握りしめた長大な実体剣に、集めたエネルギーが収束していく。
「世界蛇はいずこ!」
「世界を毒に塗れさせ、波が大地を洗いさらう!」
突如陰からエニルのジェガン・Kが飛び出した。
無数に分身した”Jの影忍”が”巨神”へ襲い掛かる。
放たれたミサイルで薙ぎ払われながらも、ジェガン・Kの振るうビームカタナが手首へ突き刺さる。
「勇士は死に絶え、神々は滅びん。
ヨツンヘイムより死が来たる」
「世界樹は枯れ果て、全ては灰に!」
グラン・マンサがランスとサーベルを構え、巨神の手首目掛けて特攻する。
突進の勢いをランスに乗せ、巨神の掌へ叩きつける。
ランスが突き刺さり、グラン・マンサの巨体がそのまま拳へ体当たりする。
ゼロ距離で放たれたメガ粒子砲の光がグラン・マンサと巨神の右腕を呑みこんだ。
「ここに、我が傲慢によって黄昏を呼び込まん!」
ワンゼロオーの漆黒の機体から吹き上がる邪悪なオーラが、剣へと流れ込む。
叫びと共に、傲慢の剣の刀身に光を呑みこむ漆黒の闇がまとわりつく。
音もなく滑るようにワンゼロオーが間合いを詰める。
距離は詰め、”巨神”の腕がもぎ取られた。
今しかない!
「行け!」
声を上げたのは誰だっただろう。
”巨神”の迎撃弾幕がスローモーションのようだった。
エニルが、エセリアが、プルツーが、グレミーが。その場全てのダイバーが息を呑む声が聞こえた気がした。
”白鳥”よ。悪いが、私の……私たちの勝ちだ。
操縦桿を握る自分の背には、勝利を願うこの場のダイバー全ての想いが乗っている。
攻撃トリガーを引き絞る指が、あまりにも軽い。
全身を震わせ、自然と叫びが口をついた。
「コール・ラグナロク!」
漆黒の闇に包まれた剣が、”巨神”の首に手ごたえなく吸い込まれる。
軽々と振るわれた刃がきれいな円の軌道を描く。
その軌道に沿い、まるで日食のように”巨神”の頭部が欠け、闇へと呑みこまれる。
頭部を失った”巨神”が大きく震え、異音を響かせ、動きを止めた。
「……眠れ、”巨神”よ。
ここはお前のいるべきところではあるまい」
”仮面の父”は静かに呟く。
剣を振りぬいた姿勢で、ワンゼロオーが悠然と残身を決めた。
通信回線で湧き上がる歓声が、戦いの終わりを告げていた。
●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説
・バトル中のアカウント切り替えについて
通常のプレイ時はアカウントの切り替えは10秒ほどで可能である。
だが戦闘中はアカウント切り替えによる機体交換を防ぐため、アカウント切り替えやログアウトには制限がかかる。
具体的にはバトルフィールドでのアカウント切り替えには30秒の無操作が必要で、ダメージを受けるとキャンセルされてしまう。
本文でしれっと別人として参戦してきた方は、頑張って物陰に潜みこっそりアカウント切り替えを行なっている。
オペレーターや指揮官にはモロバレだが、基本的には指摘しないのが不文律なのだ。