責任も負えない異端者共(リメイク) 作:you are not
公園を出た後、あてもなくミレミアム自治区をふらついていた時…
――バァン!パァン!
「ん?何だろ?……」
どこかから風を切る破裂音が聞こえてきた。何となく音のする方へと足を進めていく方へと進むと音の正体がわかった。それは紛れもなく銃声だったのだ。キヴォトスで銃声が鳴り響く理由など一つしかないだろう……
「はー良くも悪くもキヴォトスらしいね」
先生は呆れと懐かしさを持ちながらそう言って銃を打ちあっている生徒たちの喧嘩を発見する。戦えば勝てなくはないがいたずらに生徒を傷つけたくはないので戦闘に巻き込まれかねないため路地裏から静かに見守っていた。
――そこで、私は気が付いてしまう。
「……何だろうあれ」
生徒たちが銃撃戦をしている光景の向こう側、その壁に扉のようなものが付いていた。金属のようなもので構成されていて、丸い小窓が一つだけ扉の上部に目のように存在していた……最初は見間違いかと思った。しかし、何度見直してもそこにその扉は佇んでいた。そして私が持っていた弾丸のようにまたもや見覚えがあった。あぁ、今日は、いや、さっきから懐かしさばかり感じる。
「どこからどう見ても幻想体の収容室の扉にしか見えない……」
打ち合いをしている生徒たちを交互に見てみるが、収容室の扉らしきものの方を一切見ていなかった。見えていないのか、それとも銃撃戦に忙しくて気が付いていないだけなのか……わからないが、ブランクがあるは思えないほどに長年の職員としての勘がうるさいくらいに警鐘を鳴らしているのがわかる。なにせ、扉の丸い小窓に
と、赤い文字で浮かび上がっているのだ。流石にここまで条件がそろえば何が起きるか予想できる。
――幻想体脱走するなこれ、
そう思った矢先に金属の扉は粉々に砕けちり、破片が辺りに舞い散る。同時に煙が上がってきて銃を撃ちあっていた生徒たちは異変に気が付き、互いに攻撃の手を緩めてしまう……やがて、煙が晴れてゆく同時に生徒たちの脳裏は驚きの一色で染められるのだった。そこにいたのは案山子だった。かけた上部が欠落した空っぽの頭があり、穴のような虚ろな黒い目をキョロキョロと動かして、縫い合わされたような笑顔を張り付ける。ベルトの外れた青いオーバーオールと赤と白のチェック模様の袖、胸元には水玉模様の蝶ネクタイを身に着け、手があるはずの部位には金属製の鍬と鎌をぶら下げていて、乾いた血が付着していた。そう幻想体『知恵を欲する案山子』がそこにはいた。案山子はギギギと鈍い音を出しながら舐めまわすような視線を生徒たちに向ける。そして、縫い付けられた笑みのまま心なしか口角が上がったように感じた。その笑みに生徒たちは揃いもそろって例外なく身震いを起こしてしまう。
(何だこいつっ!!??体が震えて動かない!!!)
正体不明の感覚に襲われ硬直する生徒たちの体、その感覚が死への恐怖心と逃走本能であるとも知れず必死に生徒たちは体を動かそうと抗うのだった。生徒たちの行動を嘲笑うように案山子はかけた頭部から藁で出来たストローのような管を伸ばす。そのままそのスケバン不良生徒のそれなりに優秀な脳みそを啜る……はずであった。
「危ない!」
スケバン不良生徒は命からがら助かった。理由は明白、黄色いローブのような襤褸を身にまとい、鉄の仮面をかぶった人?が咄嗟に不良生徒を身を挺して庇ったからである。
「……君、大丈夫かい?すぐに逃げるんだいいね?」
「あ、あぁ、ありがとう……」
不良生徒はすぐさま立ち上がり転がるように走ってこの場から逃げてしまう。
「さて、どうしたもんかな」
彼は後ろを振り返り、知恵を欲する案山子と向き合った。明らかにこちらを標的にしていた。
☆補足設定
・知恵を欲する案山子(神秘の姿)
皆さんご存じHEの害悪。キヴォトスに来た影響で自己進化したようで、ロボトミ説明で職員レベルⅡ以下の存在は強制パニックにしてしまい、さらに勇気もⅡ以下であれば強制的に脳を吸い取ってしまう。