先生の護衛ね……うん、なんで?   作:やまたむ

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任務初日、前途多難

 キヴォトスについてから僕は連邦生徒会のロビーで、『先生』と一緒に待たされていた。

 なんなら待たされていて限界が来たのか先生は寝てしまっている。

 

「すみません。お待たせいたしました。先生の方は……」

 

 そう言って駆け寄ってくる背の高い歳不相応の雰囲気を纏う女の人……七神リンさんは尋ねてくる。

 

「あー寝ちゃってます。起こしましょうか?」

「そうですね。お願いします」

「はーい。んじゃ、センセー、起きてください」

 

 先生の耳元でパチンと指を鳴らし超能力を使う。

 簡単な睡眠中に行える催眠術のようなものだ。人を起こしたい時とかによく使える。

 

「……ん……うぅん……」

「先生? 先生! 起きてください」

 

 あ、結局リンさんも声かけるのね……まあ、少し覚醒したし声掛けた方が確実なのもわかる。

 

「えっと……ここは……?」

「連邦生徒会のロビーです。結構ぐっすりですけど、疲れてたんですか?」

「先生もお忙しいでしょうから、仕方ありません。ヤクモさんに先生、着いてきて貰えますか?」

「はーい」

 

 僕と先生は先行するリンさんを追う。その間、セイアから何だかんだ聞くことができなかったキヴォトスについての話を聞くことができた。

 

(それにしても広いなー……えっとセイアのいるトリニティは……あー、ここら辺ね。把握、把握。後で飛ぶ時気をつけないと……)

「ヤクモさん? どうかしました?」

「え? あー、いや、なんでもないですよ」

 

 エレベーターから見える景色に、人がゴミのようだどころか全く見えないやんけとか思いながらボーッとしているとリンさんから怪しまれてしまった。

 うっかりうっかり。

 

 ……それにしてもなんて言うかあれだ。変な感じだ。僕の知る『人間』としての機能が微妙に違う、そんな感じがする。

 というか、キヴォトスの人って頭に輪っかみたいなの付けてるんだ……街ですれ違う人も女の子は皆頭に輪っかがあったし。それにほかの人たちが動物だったりロボットだったり、本当に不思議な見た目をしている。

 いや、僕の先輩の中にもタコの先輩がいるから別に変なことでは無いんだけど……それにしても数が多すぎる気がする。

 あ、でもよくよく考えたらセイアも狐耳と尻尾ついてたし、ここだと普通の事なのかもしれない。

 リンさんもよくよく見たら、エルフみたいな耳してるしね。

 

「そういえば、ヤクモさんは先生の護衛という事でしたが、学校とかはどうするおつもりで?」

「へ? 学校?」

「はい。見た目からの推測になってしまいますが、中学生くらいとお見受けしたので、学業の方はどうするのかと」

「あ……あー、学業……そっか学園都市ですもんね。学校って通うものですよね……」

「いえ、事情によって通わない生徒もいますので一概に絶対通わないといけないというものではありませんし」

 

 その言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろす。別に学校が嫌いとかじゃない……とはいえ、小学生の頃から通ってないともう通わないのが普通というか……通わず仕事してた方がいいよねってなってしまってると言うか……そんな変な感覚があるせいで、学校というものにちょっと苦手意識があるんだよね……

 

「不登校?」

「というより、職業柄あまり学校に行く暇がなくて……」

「職業柄……? 外だと中学生って働けないはずだけど……」

「えっと……まあ、いろいろあって……」

「そうなんだ」

 

 ちょっと、自分の能力について言おうか悩んだ……いや、護衛対象だからどうせすぐバレそうだけど、できうる限り秘匿するっていうのがうちのモットーだし……

 まあ、みんなの見えない範囲で超能力は全然使うんだけどね。

 熟練の兵士なら気配から誰がいるとかわかるらしいんだけど、僕はそこまでできないから 、能力を使って周囲の状況を把握するように訓練されてきた。

 まあ、おかげで索敵だけなら熟練の兵士よりも上だし、スナイパーの狙撃であれば、どんな距離であろうが領域に弾が入った瞬間に止めることができるくらいはできる。

 

「あっ……」

 

 レセプションルームに向かっている中、1人の女の子……この場合は女性って表現が正しいのかな? がこちらに気づき、近寄ってくる。

 

「代行! 見つけた、待ってたわよ!」

 

 怒り……なのかな? が先行したような口調でリンさんに詰める女性と他3人。

 なにやら、連邦生徒会長に会わせろ的な内容で、少し僕としても気になる部分ではあった。

 なにせ、僕を先生の護衛に付けるよう依頼してきたのは連邦生徒会長なわけで……面識のない人からの依頼ってのはなんかちょっとばかり怖いものがある。

 言いたいことを言ったのか、僕と先生に最初に声をかけてきた人が気づく。

 

「……隣の大人の方と中学生くらいの子は?」

 

 チラッとリンさんの方を見ると物凄く面倒くさそうな表情をしていた。

 

「こんにちは。各学園からわざわざ訪問してくださった時間を持て余している皆さん」

 

 ……えっ……っと? これはあれかな? 本当に面倒だと思ってるのかな? 

 わりとトゲのある言葉で返してるけど大丈夫なのかな……? 

 うん、ちょっと僕黙ってマース。明らか上の人が不機嫌そうな時は黙ってろって社長から教わったからね! うん! 

 

 まあ、そんな訳でリンさんたちの話を聞いていくと、発電所が機能しなくなったり、治安が悪くなったり、武器や兵器などの不法流通の件数が大体2000%……つまるところ、20倍になったりという話らしい。

 

 えっと……うん。こりゃたしかにあれだ。護衛いるね。発電所どうのは置いておくとしても、銃器の携帯が当たり前の都市での治安悪化とか、武器の出処が分からないとか、普通にキヴォトス外で生活してたら身の危険とか、そう言ったレベルの話じゃない……

 まあ、だからといってどこの責任になるのかって話になると……え? どこの責任なの? キヴォトスってあれだよね? もう学校が多すぎて学校自体が国みたいになってて、更にその学校とかをまとめる……言うなれば国連的な立ち位置にあるのが連邦生徒会なわけだよね? 

 それの責任の所在って……連邦生徒会長が負うべきものなのかな……? どちらかと言うとその自治のトップ……それこそ生徒会とかが負うようなものな気も……あっ! でもあれか! シャーレ! そうだ! シャーレってやつに先生が就任するから、これから先生が各学校の自治を手伝ったり出来るようになるのか! 

 あー、なるほどなるほど……そして、僕の仕事わりと責任重大だな……先生に何かあったら僕の首が胴体とお別れしてもおかしくないかも……

 

「こちらの先生がこれからのフィクサーになってくれるはずです」

「私……?」

「その護衛として、こちらの少年は付いてもらう……と言うのが連邦生徒会長の意向となっています」

「護衛……? 外部のってことは銃弾1つで大怪我負ったりするのよね? 大丈夫なの?」

「それは……」

「えっと……発言しても良いですか……ね?」

 

 リンさんもこの治安が最悪になりまくった都市で、キヴォトス外の護衛がちゃんと機能するのかどうかは分からないから言葉に詰まっていたので、手を挙げて尋ねてみた。

 

「すみません。貴方のことは特に何も聞いていなかったので」

「いえいえ、僕だって昨日いきなり社長から『先生の護衛に行ってこい。命令だ!』って言われたので……なので僕も詳しい事情は分からないんですけど、護衛の経験は豊富ですよ! 銃弾くらいでしたらいくらでも防ぐ術はありますので」

「……嘘を言っているようには……見えないわね……」

 

 ジーッと僕を疑うように観察する女性。

 

「まあ、ちょっと企業秘密的なあれもあるんで詳細は僕も話せないんですけど……そうですね……例えばそう、ここから30キロくらいですかね? ……あそこで今騒ぎが起きてますよ。目的は……地下……ですね」

 

 うん。地下が狙いなのは確定かな。動きや統制自体が『見えてる』わけじゃないけど、いくつか周囲の情報を精査して見たら、そこくらいしかターゲットにできそうなものがない。

 

「あっ……もしかして、ここから30キロ先にあるのって……」

「……シャーレですね。こちらでも確認を取ってみます」

 

 リンさんはそう言うと手元の端末を操作し始める。

 

『はいはーい……うぇっ、リン先輩』

「モモカ。シャーレ周辺の状況は?」

『シャーレ? あー、外郭地区の? 今大変なことになってるねー。チンピラたちが武装して襲撃中』

 

 その言葉を受けたリンさんの表情が曇る。それから、ちらりとユウカさんたちを見ると、大きくため息をついてから言った。

 

「丁度、暇そうな方が4人……いますね」

 

 ……あ、もしかして

 

「こちらの4名に制圧をお願いします」

 

 ……そうなるよねぇ……うん。リンさんそんな顔してたもん……なんか、忍びないから僕も僕で出動準備しようかな……

 

「あの、リンさん。僕も……」

「ヤクモさんは1度こちらで生徒登録の方を済まさせてください。どこの学校にも属してない状態での銃火器の使用は今後各自治区でトラブルの元になる可能性もありますので」

「……はい」

 

 ……郷に入っては郷に従えっていうもんね……外だとバレなきゃ犯罪じゃない理論が幾ばくがまかり通ってたけど、こっちだとそうも言ってられない……

 

「私もシャーレの奪還に向かうよ」

「先生が……? ですが、先生も外部の方です。銃撃戦の中に送り出すのは……」

「だけど、生徒だけを送り出す訳にはいかないよ。これでも『先生』だからね」

 

 ……護衛としてすごく停めたい……けどなんかよく分からないけど、生徒として登録されてない僕じゃ、まだ力になれそうにない。

 

「……分かりました。ですが、彼女たちより前に立つことはないようにお願いします」

「わかってるよ」

 

 それじゃあ、行ってきます。という先生とその後ろについて行くユウカさん達。……まあ、キヴォトスにいる人たちだから銃撃戦には慣れてるだろうし、ぱっと見た感じ何となくそれなりの地位の人達のようだったし、大丈夫ではありそうかな? 

 

「では、ヤクモさんはこちらへ」

「はーい」

 

 護衛対象から早速引き剥がされた状態での任務……うん、幸先悪いかもしれない……。

 とりあえず、速攻で追いつけるよう、爆速で必要事項書いていかないとね……

 

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