Fateにおける代表的な魔術。
自己のイメージからオリジナルの虚像を作り出す強化・変化の最上位に位置する魔術系統。
そう聞くと何とも強そうに聞こえる魔術だが、実際は真逆である。
無駄に高度な魔術ではあるが、莫大な魔力を要する上、存在しない物を作るのだから世界の修正力によってすぐに消されてしまう。
修正力に抗う為にも莫大な魔力を必要とし、維持できても数分で、大きな破損があれば霧散する。
その上、投影される物品はオリジナルには及ばぬ模造品。
きちんと材料を揃えてレプリカを使った方が実用的とすら言われる始末。
精々使われるとしても儀式の道具の代用として使う程度、無駄に高度な無駄な魔術とは正にこの魔術の事を言うのだろう。
さて、この投影魔術。
何故こんな事を考えているかと言えば……俺が投影魔術の使い手だからだ。
【ステイタス】
Lv.1
力 : I0
耐久 : I0
器用 : I0
敏捷 : I0
魔力 : I0
《魔法》
【グラデーション・エア】
・投影魔法。
・自己イメージからオリジナルの虚像を作り出す。
・詠唱式【トレース・オン】
【 】
《スキル》
【 】
「────最初から魔法を持ってるなんて……すごい逸材じゃないか!」
幼さが色濃く残る幼女と少女の中間。
しかし、その胸部は成熟した大人のもので、ひどくアンバランスだ。
興奮した彼女はぴょんぴょんと跳ねる。
長く伸ばされた黒髪が生き物のように動き、胸もぽよんぽよんと揺れ動く。
うん、すごいな。
何がとは言わないがすごい。
彼女は人ではない。
天界からこの世界──彼女たちからすれば下界──に降り立った人ならざるモノ。『
完璧な存在だからこそ不完全な人々を面白いと感じた彼らは、娯楽を楽しむために『
──『
深い大穴からは
怪物に抵抗する子供らを見て、神々は人に力を──下界において、唯一使える祝福『
その人の歴史から【
これによって人類は怪物をダンジョンに封じ込めることに成功したのだ。
まあ、つまりだ。
ファルナを与えるには神様が必要なワケで……俺にとってその神様というのが……。
女神ヘスティアである。
その魔法、欠陥品ですよ……なんて目の前の
だってこんなに喜んでくれてるし……ああ、心が痛い。
──お察しの通り、ここはダンまちの世界。
気が付けばこの世界に転生していて、ぼんやりと過ごしてた。
けれど住んでた村がモンスターに襲われ、壊滅した。
俺は幸運にも助かることができたが、他のみんなは……。
残っていたのは骨や肉の破片と血溜まりだけで、遺体一つ無かった。
あの時は参ったよねー。みーんな死んじゃってるんだもん、死ぬほど吐いて、泣いて、辛かったな……。
ま、その後、立ち直ってモンスターの食べ残しを埋めて、行く宛も無かったから迷宮都市オラリオに来たってワケだ。
「シェロ君、どうしたんだい?」
「いえ、何でも無いですよ、神様」
おっと、言い忘れてた。
俺の名前はシェロ・トラゴディア。
両親から貰った宝物だ、かっこいいだろう?
それにしても投影魔術か……。
衛宮士郎の投影魔術モドキ*1と違って俺のは本物だからなあ……
戦闘スタイル……どうしようかなあ。
◇
ボクのファミリアに加入した少年、シェロ・トラゴディアを眺める。
ぼんやりと立っている彼には意志を感じさせず、赤銅を思わせる目には
……それも仕方ないだろう。
シェロ君はモンスターに村を滅ぼされたんだ。
心が壊れていたっておかしくはない。
初めて出会ったのはバイト中のこと。
ボクはヘファイストスに『良い加減、働きなさい』と追い出され、仕方なくバイトをしていた。
慣れない仕事に四苦八苦しつつも何とかこなしている時、仄暗い目をした少年を見かけた。
なんとなく気になって、話しかけようとしたけれど店長に怒られてしまい、追いかけようとした時にはもう見えなくなっていた。
二度目に会ったのはバイト帰りだった。
疲れた身体を引きずり、廃教会に帰る途中のこと。
メインストリートから外れ、細い裏道に入る。
一気に喧騒は遠くなり、まるで世界から忘れ去られたような錯覚に陥る。
いくつか角を曲がり、もう少しで家に着く──というところで彼はいた。
壁にもたれかかり、力無く座り込む少年。
服や髪は汚れていたが、確かに昼間見た少年だった。
なんとなし見つめていると、彼と目が合う。
赤銅色をした綺麗な瞳だ。
でも、そこにあるであろう光沢はなく、ただただ深い
どちらともなしに見つめ合い、ふと興味を失ったようにふいっ、と顔を逸らしてしまう。
彼は今にも消えてしまいそうな儚さがあって────
そして、気が付けば声をかけていた。
「なあ、キミ。独りなのかい?」
「…………それが、どうしたんだ」
力の無いあまりにか細い声。
僅かにかすれているようにも聞こえる。
「なるほど、ならキミ。ボクの
これまで何度も失敗してきた誘い文句。
けれど今回は、今回だけは失敗してはいけない。
そんな気がした。
「は? 何を言って」
「ボクはヘスティア。キミの名前は?」
彼の言葉を遮るように自己紹介する。
もごもごと少年は何か言いたげに口を動かすが、諦めたようで溜息を吐く。
「…………シェロ。シェロ・トラゴディア」
「そっか、良い名前だね」
会話が途切れる。
マズイな、ここからは何も考えてなかった。
気まずい空気が流れる中、彼が切り出す。
「……なんで、あんたは家族を求める?」
なんで、か……。
家族の神であるから……というのは卑怯だね。
まあ理由なんて単純なんだけど。
「────ボクが寂しいから」
たったそれだけの話。
愛しいから、寂しいから、家族を求める理由なんて単純でいいのだ。
「…………」
「納得してくれたかな。ボクのファミリアに入ってくれるならボクの手を掴んでくれ」
手のひらを差し出す。
彼は手を伸ばそうとするも、途中で躊躇う。
その手をがしりと掴み、無理矢理立ち上がらせる。
「うわっ!?」
彼は体勢を崩し、ボクの胸へとダイブする。
ボクはにっこりとした笑みを浮かべ────
「よおし、これで契約は成立だ」
そう告げた時の呆然と赤らめた彼の顔は忘れられない。
この時のことを後悔したことはない。
無理矢理にでも彼を入れなければ死んでしまう──そんな気がしたし、何より彼は独りだった。
その後、一緒に廃教会に行き、数日を過ごした。
シェロ君は献身的で、掃除洗濯料理までこなしてくれるとても良い子だった。
「……神様。俺は貴女と家族になっても良いと思います」
ぽつりと呟いた彼の言葉に歓喜した。
「本当かい!? ありがとうシェロ君!」
「うわぁ!? 抱き付かないでください神様!」
やっとファミリアが結成できると喜び────彼に聞いて欲しいと言われ、シェロ君の過去を知った。
あまりにも酷い話だった。
彼一人が背負って良い過去ではない。
ああ、なんだって運命は時にここまで惨いことをするのだろう。
神様と呼ばれているのにシェロ君一人救えない。
力無き身が今はどうしようもなく、恨めしかった。
シェロ君が洗い物をしている。
彼は最初から魔法を持っていたし、冒険者として大成し得るポテンシャルを持ってる。
「けど、あれは……」
彼の背中に刻まれた黒い文字、ステイタスのスキル欄を見る。
【
・自身にとって最悪の悪夢を見る。
・早熟する。
・心が折れない限り効果継続。
・
前例のない成長促進スキル。
だけどデメリットがとんでもない。
────最悪の悪夢を見る。
これだけでメリットが釣り合わない。
村を、家族を助けられなかった己への失望。
力が無いとかは関係がなく、自分がその場に居合わせなかったこと、生き残ってしまったことに対する罪悪感。
誰も悪くない。ただ、運が悪かっただけの話。
けれども彼は自分を責め立てる。
自罰的な思考と救う力を求めた結果、このようなスキルとして発現したのだろう。
「……ふざけるなよ」
ぎゅっ、と拳を握り締める。
なんて、なんて……巫山戯たスキルなんだ。
彼はずっと家族を殺された事を気に病んでいる。
それを夢でも繰り返させると言うのか?
誰がそんな罰を下せる?
……特大の
そのせいで彼は呪いにも等しいスキルを得てしまった。
「いや、違う」
間違ってなどいない。
このスキルを得たということはシェロ君が元々悪夢を見ていた、ということになる。
スキルがあるにせよ、ないにせよ、彼が悪夢を見ていたことには変わりがないのだ。
彼の
そうすれば、いつかはこの最悪なスキルも消えるかもしれない。
「……二度と独りになんてさせるもんか」
ヘスティアの名において、誓う。
ボクは、彼を、シェロ君を救ってみせると──。
正確には投影魔術ではなく、そうと呼ぶしかないので投影魔術と呼ばれているナニカ。
以上プロローグでした。
見切り発車で書いたのでプロットはありません。
なので続くかは不明ですが、もし続くとしたら本人視点ではシリアルで他者視点ではシリアスな勘違いものになります。
だって彼は衛宮士郎の贋作ですから、自己犠牲とか大好きなのでね。
きっと周りを曇らせに曇らせるでしょう。