嘘吐きは勇者の始まり   作:柴猫侍

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第十八話:素材は防具の始まり

 

 

 

 明くる日、俺とアータンは聖都の武具屋に立ち寄っていた。

 というのも、

 

「おぉ~! か、カッコいい……!」

 

 感動の声を口にするアータン。

 彼女は自分の両手に嵌められた革手袋を眺めていた。

 

「どうでしょう、ヴォラレフィリアの革から作った手袋の着け心地は?」

「すっごく良いです! 初めて着けるはずなのに、しっくりくると言うか……」

「ふふっ、そうでしょうそうでしょう。そのフィット感こそ、ヴォラレフィリアの革の良きところなのです」

 

 革手袋を作成した武具屋の店主は、アータンの反応を見て満足そうに頷いていた。

 気持ちは分かる。自分の作品がベタ褒めされたら、誰だってそんな顔になるだろうて。

 

 というわけで、俺達は馬車護衛の道中で手に入れた素材を武具に加工しに来ていた。

 倒した魔物は蛇ばかりであり、お陰様で蛇皮の素材は腐るほど持っていた。

 

 ある程度はギルドを通して売り払ってはもらったものの、自分で手に入れた素材を自分の装備に加工する……その喜びやら達成感やらを実感してもらうべく、武具に加工できる程度には残しておいた。

 

 その結果があの革手袋である。

 

 ヴォラレフィリアは周囲の環境に適応して皮の色が変化する。ここに来るまでの道中、襲い掛かってきた個体のほとんどは草むらに適応していた為、そのほとんどが緑色だった。

 緑色がパーソナルカラーのアータンとは、実に親和性が高いと言えよう。

 

 しかし、作ってもらった装備はそれだけではない。

 

「アータン、インナーの着心地はどうだ?」

「うん! こっちもピッタリだよ!」

 

 そう言ってアータンはローブの中に着ていた蛇革のインナーを見せつけてくる。

 

 ヴォラレフィリアの革は優秀だ。柔軟性に富み、それでいて刃を通さないくらい頑丈でもある。

 流石に金属や魔法の防具と比べると防御力は劣るが、インナーとしてならばこれ以上ないくらいには有能だ。

 

 たとえ通り魔にナイフで刺されようが安心である。

 まあ、アータンに通り魔しようなんて奴が居たら俺がボコボコのケツボッコにして尻の穴を二、三個増やしてやるが。

 

 

 なんてことを考えつつ、防具の引き取りを終えた俺達は防具屋の中を物色していた。

 

「お、アータン。これなんか見てみろ」

「え? なになに……うわぁ!? な、ななな、何その下着!?」

「下着とは失礼な。これはビキニアーマーという由緒正しき鎧だぞ」

 

 店の中で売られていた胸と局部のみを隠す防具───ビキニアーマーをアータンに見せてやった途端、彼女は茹蛸のように顔面を紅潮させる。初々しい反応だ。

 

「どうだアータン。これなんか着てみないか?」

「ヤダよ! そそ、そんな恥ずかしい鎧着て戦うなんて……!」

「何言ってんだ、アータン。これは服の上から身に着ける装備なんだぞ?」

「え? あ、あぁ……そ、そうなんだ……」

「んもぉ~、何考えたのよぉ~? アータンってエッチねぇ~」

「ご、ごめん……」

「まあ実際のところ素肌に身に着けるのが正式な使い方だけども」

「このホラ吹き仮面!!!」

「衝撃が顎を突き抜けるッ」

 

 ヴォラレフィリアの革手袋を嵌めた拳が、俺の鉄仮面の顎を撃ち抜いた。

 会心の一撃だ。俺の目の前がグワングワンと揺れる。あっ、ヤベェ。こんなんなったの成人した時、ふざけて色んな酒ちゃんぽんした時以来だわ。

 

 フッ……強くなったな、アータン。お前に教えることは何もない……。

 俺は膝から崩れ落ちた。

 

 それはさておき、ビキニアーマーってギルシンだと特別な装備なんだよなぁ~。

 

 何が特別かって言うと、キャラに装備させると見た目が変化する。

 キャラに装備させると見た目が変化する。大事なことなので二回言った。

 

 最近のゲームだと装備が見た目に反映されるなんてのは特段珍しいことでもなかったが、ことギルシンにおいては初代から最新作にかけて、全ての女性キャラはビキニアーマーを装備させるとグラフィックが反映されるのだ。

 こうなったらもう健全な青少年はビンビンよ……。時折、定期的にフィギュア系の立体物グッズでビキニアーマー着させられた女性キャラが発売されていたのが懐かしいぜ。

 

 そこのアナタ気になるかい?

 大丈夫、アータンも着させられてたよ。しかもビキニアーマーなのにローブは着させられているという謎のこだわりだ。

 これはあれだよね。海辺に来て頑張って水着を着てみたけれど、肌を晒すのは恥ずかしいからパーカーを着るっていうアレに通ずるよね。

 

 ちなみに俺はもちろん買った。

 

 だが、流石に現実のアータンはビキニアーマーをそう易々とは着てくれないらしい。

ぴえん。

 

「ビキニアーマーだめぇ……?」

「だって下着じゃん……ま、まだ駄目」

「まだ駄目かぁ……」

 

 プイッとそっぽを向いたアータンに、俺はがっくり肩を落とした。無念。

 

「にしても、この店色んなビキニアーマーあるのな」

「無駄に種類あるもんね」

「うぉ、これを見てみろよアータン。ハイレグタイプのビキニアーマーだ……」

「こんな何も守れない防具に防具としての存在意義あるの?」

「辛辣過ぎる感想で笑う」

 

 という感じで店内をある程度見て回った。

 

「またのご利用お待ちしております~!」

 

 代金を払って俺達は武具屋を後にした。シリーズによっちゃ万引きもできたりしたが、現実じゃやるだけ損だ、そんなもん。

 

 そんなことよりこちらをご覧ください。

 新しい防具を手に入れたアータンがホクホクとした笑顔を湛えていますよ。はい、百点。心の中で花丸スタンプを押してあげましょう。

 

「えへへ、これで私も冒険者らしくなったかな?」

「そうだな。魔物の素材で新たな武器や防具を作る……これが冒険者の浪漫ってもんよ」

「ライアーは何か要らなかったの? ほら、剣とか」

「お、そう来るか」

 

 言われて俺は腰に佩いた剣を見る。

 

「フッフッフ、実はこいつは伝説の剣でね。だから新しい武器なんて要らないのさ」

「えっ!? ……ただの鉄の剣にしか見えないけど」

「まあ実際ただの鉄の剣だけど」

「認めた!?」

 

 いやいや、違うんだって。

 伝説の剣だって持ち主が偉業を成し遂げたからこそ伝説って呼ばれるわけじゃん?

 じゃあ、ただの鉄の剣だって持ち主が伝説になったら伝説の剣になれるのでは? ダメ? そうかぁ……。

 

「待つんだ、アータン。たしかにこいつはただの鉄の剣だ。でもな、俺が握ることによって魔剣も顔真っ青な力を発揮して……」

「はいはい、どうせ嘘でしょ」

「くぅ~ん」

 

 アータンが冷たくなった。冷淡アータンである。

 この態度、実家の妹を思い出す。昔は『お兄ちゃん!』って可愛かったのに……ちくしょう、涙が出てくるぜ。

 

 なんて他愛もない談笑を続けている内に、俺達は冒険者ギルドへと辿り着いた。

 今日も今日とて室内は大盛況。酒盛りしているテーブルもあれば、元気が良過ぎて殴り合いに発展しているテーブルもある。

 そんな光景を前に、新しい装備を手に入れて浮足立っていたアータンはサッと俺の背中に隠れた。まだまだ荒っぽい雰囲気には慣れていないらしい。

 

「それじゃあなんか適当な依頼でも見つけるかぁ~」

 

 元々俺達はセパルからアイベルの手掛かりを得るべく聖都にやって来た。

 しかし、それまでの間の滞在費はこちら持ちだ。完全に俺達の個人的な都合だし、聖堂騎士団だって慈善事業じゃない。滞在期間の宿代やら食事代やらはこちらで確保するのが筋というものだ

 

「手っ取り早くてたくさん稼げる奴がいいなぁ~」

「えぇ~、そういうのって危ない依頼が多いんじゃないの……?」

「たしかにな……おっ、これなんてどうだ? 海獅子(マーライオン)の討伐依頼」

「マーライオンって危なくない魔物なの?」

「いんや、ヤベェ強くて凶暴」

「言った傍から!?」

 

 でも報酬金いっぱい貰えるんだよ……?

 口から水圧ビーム出してくるけど。

 

 雑魚魔物の10倍以上は貰えるんだよ……?

 口から水圧ビーム出してくるけど。

 

「じゃあ、毎日毎日あくせく働いてはした金を稼ぐのと、一発デカいのでドドンと稼いで聖都を観光するの……どっちがいい?」

「うっ、そ、それは……」

 

 質問の仕方を変えてみれば、あからさまにアータンがたじろいだ。

 何せ聖都グラーテは海に面した水の都。観光名所なんて腐るほどあるし、特産品だって山ほどある。

 昨日軽く町を散策しただけでもアータンは目を輝かせてあちこち眺めていた。見る物全部が新鮮で、ちょっと目を離せば迷子になってしまいそうなくらいにはうろうろしていたものだ。ひょっとしなくても幼児か?

 

「ア~タン~。ここは一発たんまり稼いで美味しいものでもたくさん食べようぜぇ~?」

「う、ぐっ……!」

「イカ墨パスタにアクアパッツァ、シーフードピザにアヒージョだってあるんだぜぇ~?」

「ふぐっ、ふぐぬぬぬ……!」

 

 揺れておる、揺れておるわ。

 昨日酒場で食べた海鮮パスタだけでも目を輝かせてがっついてたもんな。『私ここのメニュー制覇する!』って叫んだのを俺は忘れてないぜ。

 

「安心しろ、アータン。俺はマーライオンの倒し方は熟知している」

「ラ、ライアー……」

「アータンは魔法でサポートしてくれるだけでいい。それだけで後はガッポガポのウッハウハで美味しいご飯をガッツガツよ」

「わぁ……!」

「どうする、行くか?」

「行くぅ!」

 

 堕ちたな。

 だがそれでいい。

 

「そうと決まれば馬車を手配して、依頼主の居る漁村を目指すか」

「うん!」

「早めに討伐終わったら釣りでもして魚食べようぜ。新鮮な魚は刺身にすると美味いんだ、これが。魚醤も買ってって浸けて食おうぜ」

「うん!!」

 

 瞳を輝かせて涎を垂らすアータン。

 彼女の心はすでにこれから食べられるであろう魚料理の傍に在った。

 

 フハハハハ、精々魚料理を楽しみにしているがよい。マーライオンとの死闘後の料理はさぞ美味かろうからなぁ。

 

『おいおい、マーライオンを二人でって……あいつら正気か?』

『有名な冒険者か? 見たことない顔だが』

『いや、待てよ。あっちの女……もしかして〈嫉妬〉じゃ』

『アイベルか!? 冒険者に転向したって聞いてはいたが、まさか……』

『今の内にうちのパーティーに誘うか?!』

『やめとけやめとけ。手痛い()()()されるのがオチさ』

『だが……それもいい……』

 

「お刺身……フライ……!」

 

 後ろから色々話が聞こえてくるが、魚料理に思いを馳せるアータンの耳には届いてはいないご様子だ。まあ聞こえなかった方が幸せだろう。

 

 さて、これで漁村に立ち寄る理由は付けられたが……。

 

 これは吉と出るか、凶と出るか。

 さては鬼が出るか、蛇が出るか

 

 こればかりは行ってみなければ分からない。

 

 

 

 ***

 

 

 

 インヴィー教国聖堂騎士団〈海の乙女〉詰め所。

 ここには毎日インヴィー教国領内のありとあらゆる事件の報告が集う。

 

 そして、最終的には団長の耳に入るわけだが───。

 

「ライアー様に会いたいですわぁ~!!!」

 

 机に山積みとなる報告書を前に、団長セパルは天を仰ぐように椅子にもたれかかった。

 

「あっちで魔物! こっちで魔物! どこもかしこも魔物、魔物、魔物! うちの聖堂騎士団は人手が足りなくて困りますわ!」

 

 自分以外誰も居ない団長室でセパルは文句を叫ぶ。

 副団長が居る時であれば何かしら返答してくれる為、一応やり取りにはなるが、こうも一人でいると会話でストレスを発散することもままならない。

 とはいえ、ザン以外の団員に情けない姿を見せられぬセパルは、せめてもと魔法で防音を施した状態で叫び、溜まりに溜まったストレスを解き放つのであった。

 

「ライアー様!! ライアー様!! ライアー様!! ああ、わたくしはあなたに会いたくて今日も震えております!!」

「───震えている暇があったら報告書を一枚でも多く読み進めてほしいのですが」

「ライアー様!?」

「何寝ぼけてたこと言ってるんですか。ビンタしてほしいですか?」

「自分の団長に容赦がない!?」

 

 そこへ腕を捲りながら登場したのは愛しの副団長ザンであった。

 故郷の島で健康的に焼いた小麦色の肌は今日も眩しく輝いている。そんな彼女が故郷の島で修めた『リューキュウ』なる武道を活かしたビンタを喰らおうものなら、もんどり打って倒れ込んだ後、生ける屍の如くうめき声を上げることしかできなくなる。(インヴィー教国在住・聖堂騎士団長談)

 

 そんな彼女は普段通りの……否、普段よりも一段と険しい顔を湛え、報告書の束を抱えてやってくる。

 セパルの顔が絶望に彩られるが、構わずザンは口を開く。

 

「団長、良い報せと悪い報せがあります。どっちから聞きたいですか?」

「……では、良い報せから」

「貴方の愛しの人が聖都に到着しました」

「うおおおおライアー様あああああっ!!! 今参ります!!! 待っていてくださああああい!!!」

「させるかっ!!」

「ふぎゃあああ!!?」

 

 歓喜のままに部屋から飛び出そうとするセパルを、寸前で足を掛けたザンが阻止する。

 セパルは顔面から床に倒れ込むが、無駄にフカフカとした絨毯が敷いてあった為、大事には至らなかった。

 

 それにしても容赦がない。

 あまりにもあんまりな自分の扱いに涙目となるセパルであるが、そこで追い打ちをかけるようにザンが報告書の束を目の前に置いた。

 

「こちらが悪い報せです」

「……内容は?」

「魔物の怪しい動きが確認された村の近隣調査に向かっていた騎士隊(エクエス)の小隊が全滅しました」

 

 セパルの纏う空気が一変した。

 凛然とした顔つきで立ち上がった彼女は、凄まじい速度で報告書の束に目を通す。

 

「何にやられたかは?」

「今のところ不明です。遺体は全て周辺の魔物に食い荒らされたようで、ほとんど原形が残っていなかったようで」

 

 そうですか、とセパルは沈痛な面持ちで答えた。

 同じ志を持った仲間が死んだのもそうだが、遺体を魔物に食い荒らされたのも彼女の心に追い打ちをかけた。

 

 せめて安らかに眠ってほしい───しかし、セパルが鎮魂の祈りを捧げる間もなく、ザンは言葉を継いだ。

 

「ですが、騎士隊の鎧に不可解な点がありました」

「なんでしょう?」

「全員の鎧に刃物で突いたような穴が。それも心臓の位置に」

「……なんですって?」

 

 つまり、それは人為的に付けられた傷であることを意味する。

 一部のアンデット系の魔物であれば刃物を携えているし、それ以外の魔物の爪や牙も一部刃物のように鋭い場合もある。

 だが、いずれも知能は低い。とてもではないが偶然心臓の位置だけを狙って攻撃したとは思えない。

 

 やはり、何者かが騎士隊に手を下した可能性の方が高い。

 

「足取りは?」

「現在従魔隊(ドミトル)に追わせています。ただ、あまり期待し過ぎない方がよろしいかと」

「……いったいどこの誰が……」

「それなんですが、これを」

 

 義憤に震えるセパルの前に、ザンが一輪の薔薇を差し出した。

 一見すればただの薔薇だ。

 しかし、華やかな甘い香りの奥に誤魔化し難い血の臭いが混じっていた。

 

 得も言われぬ不快感に襲われるセパル。

 だが、それ以上に彼女の顔を凄絶にさせた理由は別にあった。

 

「この薔薇……まさか!!」

「〈戦死(せんし)〉かと」

 

 二人の脳裏に過ったのは一人の罪人。

 そして、先日王都で暴れた司祭の牢に置き残されていた白い薔薇。

 

 そこまで思考が及んだ瞬間、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

 憮然とした顔のザンは不機嫌を隠さない声で応答する。

 

「誰だ?」

『あっ、ふ、副団長がこちらに居られると伺ったのですが……』

 

 ザンがセパルの方を向けば、柔和な笑みを浮かべた団長が頷いて対応を促した。

 そして、キビキビと扉まで歩いていくザン。そのまま退室したかと思えば、扉の外でやって来た団員と何かを話し始めた。

 

 その間、心を落ち着かせようとセパルは冷めた紅茶を魔法で温め直して口に含む。

 

(こんな時にライアー様が居てくれたら……)

 

 聖堂騎士団以外で信用できる人間が居るとすれば、それは紛れもなく彼だけだった。

 彼の強さは聖堂騎士団長である自分が良く知っている。

 どれだけ彼が騎士として隣に立ってくれていたら心強いかなど、回数を数えるのは疾うにやめていた。

 

 やがて紅茶を飲み切った頃、再びザンが団長室へと入ってきた。

 

「団長、もっと悪い報せが届きました」

「……今度はなんでしょう?」

「ライアーとアイベルの妹ですが、今報告に上がった村に向かったようで……」

「ライアー様あああああ!!!」

「団長がご乱心だ!!! 取り押さえろ!!!」

 

 副団長が叫ぶと、いつのまにやら部屋の外に待機していた団員達が一斉に飛び出ようとするセパルを羽交い絞めにする。

 最早団長の威厳など皆無だった。

 元から無いに等しいが、この時は尚一層のこと恥も外聞も関係なかった。

 

「うおおおおお!!! わたくしめが護衛に馳せ参じます故!!! 今しばしお待ちくださあああああいッ!!!」

「落ち着いてください、団長!!! まだ彼に何かあると確定したわけじゃないんですから!!!」

「ぐうおー、放せー!!!」

 

「ふ、副団長……!!! このままでは振り放されます!!?」

 

「くっ……!!!」

 

───かくなる上は。

 

 魔力で身体強化を施したザンは、目いっぱい広げた掌をセパル目掛けて振り抜いた。

 

「いい加減に……してくださああああいッ!!!」

「がああ!!? クーパー靭帯ぁぁあああい!!?」

 

 乳をビンタ───略して乳ビンタされたセパルは絶叫した。

 




Tips:スワローラー(丸呑蛇)
 インヴィー教国の領地内でよく見られるヘビ型の魔物。魔物ではあるが魔法などを使うことはなく、純粋なスペックで襲い掛かってくる大蛇。
 草むらに紛れるべく体表は緑色系をしており、街道を行き交う馬車や冒険者を襲っては丸呑みにしている。慣れた冒険者であれば問題なく対処はできるが、初心者には巨大な体と柔軟で強靭な鱗が生えた体に苦戦する。
 反面、はぎ取った皮はインナーとして非常に優秀な素材となり、スワローラーの素材を用いた防具を身に着けることは新米冒険者から一皮むけたことの証明となる。

 上位種としてさらに巨大な体躯を誇る『丸呑大蛇(ヴォラレフィリア)』が存在する。

 シリーズ初出は『ギルティ・シンⅥ 嫉妬の反逆者(リベリオン)』より。

───スワローラーが節穴過ぎる。

 この緑色のヘビ型の魔物はスワローラーといい、多くはインヴィー教国領の平原地帯を生息地としています。
 スワローラーはバッタと同じく、生育環境に応じて体色が変化するという特徴を兼ね備えており、これは地面と同化することで獲物に気づかれにくくするという重要な役割を担っております。さらには優れたピット器官により、草むらの中からでも相手の体温を検知し、襲い掛かれるという優れた能力を持っているのです。
 そんなスワローラーたちは大型のヘビ同様、見つけた獲物を絞めては丸呑みにするという恐ろしい生態をしていますが、一つだけ話にならない点があります。

 それは目が悪過ぎるという点です。

 スワローラーは散々体温検知能力が優秀ともてはやされてますが、その分視力はバチクソに悪いです。それは数メートル先の人間とお湯をも見分けることすらできないほどです。
 見てください、この鋭い眼光を。何も見えてはいません。
 上位種であるヴォラレフィリアに至っても、その視力は何一つ改善されていません。アホみたいに舌をピロピロさせて体温を検知することかできません。

 それがもっと現実を見るべき生き物、スワローラーです。
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