ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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 ちょっと法律や経済の話が混じってきます。間違ってたらご指摘いただけると嬉しいです。

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第12話 幕開け

 

 

 

 龍園君に話を持ち掛けるよりも前の夜。俺はとある用事のため、ケヤキモール内にある個室のレストランへと足を運んでいた。

 豪華絢爛で完全に周りと隔離された部屋は、一端の高校生が使用するには余りにも不釣り合い。まあ、学生も一応使えるってだけで敷地内で働いている大人に向けた場所のため当たり前なのだが。

 そんな場所で、俺はいつもは外している制服のネクタイをしっかりとしめ、いつも以上に身だしなみを整えて席に着いていた。

 

 ……さて、そろそろ来る時間だな。

 いつもは部屋の金庫に大事にしまっている親父からもらった高級時計で時間を確認していると、個室の扉が開いて一人の男子生徒が入ってきた。

 

「待たせたみたいだな」

 

「いえ。時間ピッタリですよ()()()()。どうぞお座りください」

 

 室内の雰囲気にも一切臆することなく体面に座った生徒は2年生の南雲雅。現生徒会副会長で、集会で壇上に立ったこともある有名人だ。

 普通なら何の関係性もないただの1年生が会える相手ではないのだが、そんな彼にとってもこの会食は大事なものとなるだろう。

 

「まさかこの店を手配してくるとはな。この時期の1年では厳しいだろうに」

 

 厳しいというのは経済状況についてだろう。予約に関しては完全前払い制のため、既にポイントを支払っていることは南雲先輩も知ってのことだろう。

 

「親切な人から援助を頂いているので、ポイントには不自由してませんよ。それにこの話を外部に漏らすわけにはいきませんから」

 

「はっ、生意気な奴だ」

 

 そう言いつつも、南雲先輩の表情には笑みが浮かんでいた。

 鞄からホチキスで止めた資料を取り出し、机の上に置く南雲先輩。

 

「お前が送ってきた資料には目を通させてもらった。入試の時点で目を付けてはいたが、こんな悪魔みたいなことを考える奴とは思わなかった」

 

「まさか現生徒会副会長から気にかけて貰えるとは、光栄な話ですね」

 

「世辞はよせ。この学校の面接で最高評価を取る人材なんて注目しない方がおかしいからな。かく言う俺や堀北会長も満点には至らなかった。会長も同じところを見ていたと思うぞ」

 

 面接なんて予め相手の理想とする人物像を想定し、それを事前に張り付けて答えればいいだけの簡単なお仕事だ。相手の言動から都度修正する必要はあるが、それは俺の最も得意とする分野だ。

 しかし、面接という面接官個人の裁量が大きい、採点項目が曖昧な分野で満点を取ることは相当難しいのだろう。そうでなきゃ、この実力者2人に名前を覚えられるはずが無いからね。

 

「あはは。コミュ力には自信がありますから。それで、そちらの計画についてはどうでしょうか」

 

「悪くない。この学校についてよく理解した人間が作ったものだと容易に想像がつく。……まさかSシステムの実態を知って1か月にも満たない一年生が考えたとは誰も思わないだろうがな」

 

 確かにまだ入学して2か月も経ってないのか。……そう考えると中々濃い学生生活を送れているな。

 ジャンルは全く違うが、ホストの仕事と比べても楽しさは負けてない。入学させてくれた親父には感謝しないといけないね。

 

「この学校の違和感に関しては入学時点で気が付いていましたから。1か月もあって調べない方がおかしいでしょう?」

 

「一体どこの馬鹿が情報を漏らしたのか、俺はそこが気になる所だが」

 

「さあ。人の口に戸は立てられませんから」

 

「はっ。そりゃそうだ」

 

 きっと判明した瞬間、その生徒は重い処罰を受けることになるだろう。親切に教えてくれた人を裏切るようなことはしたくないため口を塞いでおく。

 南雲先輩も本気で追及するつもりは無いのだろう。それ以上その件について口を開くことはしなかった。

 

「だが団体を結成して運営していくことには反対だな。公認した団体の活動となった場合、学校側がポイントの流れを追及しないとは思えない。あくまで個人で教室を借りた方が面倒も少ないと思うが、なぜわざわざ生徒会役員の俺を通してまでそうしようと思った?」

 

 部活動・サークルの結成に生徒会の認可がいるのは規則に記されている。南雲先輩が言っているのは、わざわざ自分に話を通してまで学校に利益を追求される方式を選んだ理由についてだろう。

 

「だいぶ先の話にはなりますが、ゆくゆくは学校外の施設を借りたいと思いまして。その際には学校側の認可は必須ですから」

 

「くっ、ははは。これは傑作だ。まさかここで働く大人まで巻き込んで商売する気か?」

 

 この学校には学生寮の他に、敷地内で働く職員や警備員、教師などが住む教職員寮が存在する。

 もちろん学生と比べて出入りに制限はかけられていないだろうが、休日の敷地内の様子を見る限り、学校内が生活圏になっている人の方が多いようにも思える。

 

「ええ。教職員も学生と同じくポイントで金銭のやり取りをしてますから。そして学生、教職員間でのポイントのやり取りを禁止にする規則はありません。先輩にこの話を持ち掛けたのは、その際に資金提供をお願いしたいという考えもあってです」

 

 恐らく指定した銀行口座から即時引き落としされるシステムなのだろう。学生と違うのは、引き落とし元が現金かそうじゃないかという点だけ。

 水泳の授業で一度、最もタイムが良かった生徒に先生からポイントが送られたことがあった。常習的にそのような行為が行われているということは、学生同士ではなく教職員とのやり取りも可能なのは明白だ。

 

「確かに開くこと自体は可能だろうな。ここのテナントを借りようだなんて奴は今まで居なかったから値段は知らないが、()()()()()()()()()ポイントさえあれば拒否されることもないだろう」

 

「学校内において、ポイントで買えないものは存在しませんからね」

 

 ホームルーム初日で言われたことだ。ポイントで教室を借りれるのなら、学校の設備であるケヤキモールのテナントを賃貸として借りることも可能なはずだ。

 

「だがそこでやるのは純粋な賭博行為だ。もし公になったら退学はおろか、賭博罪として少年院行きになるかもしれないぜ?」

 

「そこが問題ですね。ですが、僕は学校の認可さえ下りれば処罰を受ける可能性は限りなく低いと考えます」

 

 厳密には『賭博場開帳等図利罪』……賭博の運営者に対しての法律が適応されるが、この『賭博』という部分の解釈次第では法の抜け穴をくぐることができるのだ。

 

「ほう? 聞かせてくれ」

 

「賭博罪の成立要件には特例が設けられています。有名な例えですが、『じゃんけんで負けた方がジュースを奢る』など、一時の娯楽に供するものに関しては賭博罪が成立しないんですよ」

 

 そうじゃなかったら日本中が犯罪者だらけになってしまう。

 

「だが学校内においてポイントは現金と同等の価値がある。1ポイント=1円として現物と交換できる時点で、一時的な娯楽として扱われるとは思えないがな。今調べた限りだが、ブランド品など()()()()()()()()()()()()()()()()()()を賭けて捕まったケースもある」

 

「そこです。そこなんですよ南雲先輩」

 

 端末を手に取りながら、真剣な表情でこちらを見てくる南雲先輩にそう返す。俺は今その指摘を待ち望んでいた。

 

「あ?」

 

「確かにポイントの価値は学校内においては担保されています。ですが、それは()()()()()()()()()()()()()()()。卒業時に所持していたポイントを現金に変換することは不可能と言われましたよね?」

 

 そう。現金とポイントは不可逆な関係にあるのだ。いくら多量のポイントを持っていたとしても、一歩敷地から出ればそれはゴミ同然となる。つまり解釈次第でポイントは一時的な娯楽に供するものと扱うことも、かなり無理筋だが可能なのだ。

 

「実際にパチンコなどの日本で黙認されているギャンブルに関しては、これと全く同じ解釈を使っています。警察との利権絡みで治外法権になっているのかもしれませんが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 学校側は清廉潔白をモットーとしているが、実際には暴力や恫喝、それに伴う理不尽な退学などが横行している。

 そして、この学校はどこかそれを歓迎しているようにも思えてならないのだ。20人近く同級生を退学にさせてきた。南雲先輩が幅をきかせられている時点で証明は済んでいる。

 

「……面白いな。まさか法律の解釈の話まで飛ぶとは思わなかったぞ」

 

「まあ、正直夢物語ですけどね。もし学校のお偉いさんに賄賂でも贈れたら話は別でしょうが」

 

 高度育成高等学校が創立してからずっと、この学校の内情が外部に漏れたことは一度ない。20年という長い間、インターネットが発達した現代において情報を検閲し続けるなんて、警察組織の協力が無いと不可能だ。

 学校が創設された背景を踏まえても、政治家とズブズブな関係にあるのは間違いないだろう。……とすると、俺に依頼をして来た政治家の存在が気がかりになるが、余計な事は考えるべきじゃない。俺も若いうちに死にたくはないからね。

 

「残念ながら無理だろうな。ポイントなんて足がつくものを受け取ろうとする馬鹿は居ない。一応こっちの方も掛け合ってはみるが、まずは大人しくこの学校の馬鹿共から搾取することを考えた方がいい」

 

 流石にここまで大事となると南雲先輩も慎重になるのか、一旦は当初の予定で進むように咎められてしまった。

 実際のところ学内で活動出来ればそれで100点だったりする。あれだけ熱烈に語ったが、正直言って出店する気なんてサラサラないんだよね

 だって面倒な割に利益が見込めないんだもん。敷地内に住んでいる大人は多く見積もっても100人程度。リスクに対して市場が小さすぎる。外部から人を誘致できるなら話は別だけど、その場合は普通に警察のお世話になるだろう。

 

 つまりこの話は、俺の有能さをアピールするための下地に過ぎないのだ。

 

「ふふっ、すっかり乗り気じゃないですか南雲先輩」

 

「この話で、お前がただの無鉄砲な馬鹿じゃないことは分かったからな。学内で行う分にはリスクもそこまで大きくないだろうし、報酬に関しても文句はない」

 

 ということで作戦成功である。やったね。

 

「ありがとうございます。スムーズに話が進んで助かりますよ。正直もっと難航すると思っていましたが」

 

 利益の分配としては俺が3割、南雲先輩が2割で半分。残りの半分は運営費に充て、その余りを龍園君に丸投げしてクラスの為に使ってもらう予定だ。

 運営費と言っても、団体として認可が下りれば施設利用代もチャラだし、従業員の給料をちょっと出せばいいだけだからさしたる問題じゃない。ゆくゆくは色んな設備を置きたいから少し貯めておく必要はあるけど。

 

「活動を保証するだけで利益の2割を受け取れるんだ。貰いすぎなくらいだ」

 

 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる南雲先輩。龍園君もそうだが、この学校の有能な人は皆悪役みたいな笑い方をするという共通点があるね。

 あと顔が良いことかな。俺が一番だけど。

 

「が、協力するにあたって俺から1つ条件がある」

 

 勝ちを確信している中水を差すように言う南雲先輩。流石の性格の悪さだ。

 ……悪い噂しかない南雲先輩からの条件。一体どんな難題が飛んでくるのか想像もしたくない。

 

「そう警戒するな。簡単な話だからな」

 

「簡単な話……ですか」

 

 警戒する俺にそう言って小さく笑う南雲先輩。

 

「ああ。生徒会が学校に在籍する生徒の情報を見れることは、お前もとっくの昔に知っているだろう? 

 

「ええ、入学初日に堀北先輩に言われましたから」

 

「もちろん閲覧できる情報は教師に比べて限られている。学校からの評価を除いた、個人に関するプライベートな情報はほとんど伏せられている。まあ当たり前の配慮だな」

 

 再び鞄から一枚の資料を取り出す。そこには『高度育成高等学校データベース』と書かれている。

 面接官の評価……「夜間外出や不純異性交遊で補導されるなど、生活にふしだらな点が多くみられたためCクラスの配属とする」

 

「この学校での女遊びはほどほどにしておいた方がいいぜ? 俺みたいに学年を完全に掌握してるなら話は別だがな」

 

「あはは……」

 

 やかましい! ……ったく。個人の女遊びまで評価項目に入れるか普通? いや何十回も補導されたら流石に指摘されるか。

 ……よく入学できたな俺。

 

「俺が気になるのはこの別途資料の事実ってやつだ。2年生にも何人かこう書かれている奴がいるが、俺の経験上この書き方をされてる奴にまともな人間は居ない」

 

「それを聞いてどうするのでしょうか? そもそも僕の心当たりと、別途資料の内容が異なる場合もあると思いますよ?」

 

「ただの興味本位だ。その高校生が付けるにしては値段が高すぎる時計も含めて、お前は不自然な点が多い」

 

 有栖ちゃんにも指摘されたけど、南雲先輩からしてもこの時計はおかしいらしい。

 身に着ける物にはその当人の品格が現れる。親父が俺にこの時計を与えたということは、これを付けるに相応しい人間だと親父から認められたということだろう。

あるいはただの親バカの二択だ。うーん……後者の気がする。

 

「多分俺の親とかについてじゃないですかね。あんまり大っぴらには言えない仕事をしてるんで」

 

 流石に俺がホストで働いていることはバレてないだろうし。だとしても職業で差別するのはどうかと思うけど。

 

「なんだ、ヤクザの息子とかか? それなら賭博について詳しいのも納得だな」

 

「あ、違います」

 

 確かに近からずとも遠からずだが、一応ちゃんと法に乗っ取って営業しているため訂正させていただこう。

 

「?」

 

「僕の父はホストクラブのオーナーです。ちなみに母も高級キャバクラのオーナーやってます。両方新宿では結構な有名店だったりしますよ」

 

 母さんの方は政治家ご用達の最高級店だ。母さん与党の幹事長とかとも関係があったらしいし、俺が思っている以上に凄い人なのだろう。

 

「……なるほどな。それは予想外だった」

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 池に案内されて向かった先は特別棟3階の多目的教室1という部屋。確か普通の教室2個分の大きさはあったはずだ。

 横開きの扉は見慣れたものだったが、中に入るとそこには別世界が広がっていた。

 

「じゃ、俺と春樹はあっちで遊ぶから。お前ら金使いすぎるんじゃねえぞ!」

 

 そう言って、池と春輝は教室中央に置かれた仕切りの奥へと向かって行った。ここで置いていくのか……流石だなやっぱり。

 

「凄いねっ、学校とは思えないかも」

 

「そうだな。実際に行ったことは無いが、雰囲気も凄いそれっぽい」

 

 息を飲んで当たりを見渡す櫛田に同意する。

 窓から差す光は全てカーテンと大型の黒い遮光板で遮られ、床に貼られた白黒のタイルマットがそれっぽい雰囲気を醸し出している。

 

「一体いくらポイントを掛けたのかしら。馬鹿らしいわね」

 

 明かりも教室に備え付けられているLEDではなく、小さな照明が各テーブルにスポットされているが、かと言って暗すぎることは無く、足元を照らす間接照明が程よい明るさを演出している。

 壁際に置かれたスピーカーからは落ち着いた雰囲気のジャズ音楽が流れており、中央に降ろされたスクリーンにはご丁寧にゲームのルール説明がスライドで流れていた。

 

「ご来店いただきありがとうございます……って清隆君じゃん」

 

 入口付近で固まる俺たちに話しかけてきたのは、白シャツ黒ベスト、蝶ネクタイというディーラー感満載の服装をした高辻だった……えっ。

 

「高辻? そんな恰好で何してるんだ」

 

「そっちこそどうしたの? 今日は友達来るから遊べないよ? ポイント入ったんだからたまにはラーメンでも食べてきたら?」

 

 それを言うためにわざわざここに来たと思われてるのだろうか。……最近世話になりすぎてるな。今度ヨーグルトとは別に何かお礼でも持っていこう。

 

「そうじゃない。池が何やら怪しい遊びをしているって聞いてな。気になって一緒に来たんだよ」

 

()()()()()()()! それすっごい似合ってるね、なんか悪い男って感じで!」

 

 櫛田がそんなことを言いながら高辻の腕をポンと叩く。……一瞬高辻の顔が強張ったように感じたが、どこか怪我でもしているのだろうか? 

 

「……久しぶり。桔梗ちゃんも清隆君たちと一緒に?」

 

「うん! まさかこんなところで会うとは思わなかったけど」

 

 話自体は聞いていたが、想像していたより仲が良さそうだ。……陽キャ同士の会話は入りづらいな。

 

「これは一体どういうことなのかしら。教室をこんなに改造するなんて」

 

 そんなオレのモヤモヤなどお構いなしに話をぶった切ったのは堀北。鬼の形相で高辻に詰め寄っている。

 

「ちゃんと団体として申請して許可貰ってるんだよ? カジノサークル。使ってない教室だから改造もOKなんだ」

 

「学校が許可するとは思えないわね。何か卑怯な手を使ったんじゃないのかしら」

 

「カジノって言ってもちゃんと使いすぎないようになってるから大丈夫だよ。ほら、これ俺からのサービスだから色々見てきなよ」

 

 楽しげに笑いながら、高辻はポケットから取り出したコインの様なものを堀北に手渡した。

 

「これは……?」

 

「5000ポイント分のチップだよ。俺のオススメはブラックジャックとルーレットかな。ルールが分かんなかったらあそこにパンフレットあるから読んでみて。分かんなかったら気軽に聞いてもらって大丈夫だから」

 

 チップという存在を知らなかったのだろう。手のひらの十数枚のチップを不思議そうに見つめる堀北に対し、慣れた様子で説明をする高辻。

 

「至れり尽くせりだな。本当に貰ってもいいのか?」

 

「うん。多分3人で負け続けても余ると思うから、そしたら奥の入口横で渡して貰えればお菓子とかジュースと交換できるよ。ポイントにしたい時には会員登録が必要だけど、学生証か端末を読み取るだけだから時間はかからないよ」

 

「ちゃんとしてるね。誰が運営してるの? 先生?」

 

「いや、仲いい2年生の先輩だよ。カジノ文化とか凄い詳しい人が居てさ。ディーラーが居ないからやってみないかって誘われたんだ。楽しいし時給も出るから最高だよ」

 

 高辻が櫛田の質問に答える。この規模のサークルを学生が運営している驚きもあったが、それ以上に気になることがあった。

 

「ディーラーもやってるのか?」

 

「うん。元々トランプとかボードゲームとかすごい好きでさ。まだまだ慣れないけどね」

 

 近くのテーブルに立ち、端に置いてあるトランプをシャッフルして一気に並べる高辻。

 慣れないと言いつつも素人から見たら非常に様になっている動きだ。顔は勿論スタイルも良いためベスト姿も非常によく似合っている。

 

「綾小路君にこういうスマートな動きは無理そうね。給料に惹かれたのでしょうけど残念だったわね」

 

「やかましい」

 

 隙あらば煽ってくる堀北は無視だ無視。さっきから機嫌悪そうだし、極力関わらないようにしよう。

 

「かっこいい! 高辻君ディーラーでゲームできるの?」

 

「やってあげたいのは山々なんだけどルールで駄目なんだよ。そこのボタンを押して貰って、ランダムで空いてるディーラーが呼び出されてそこに着くってスタイルなんだ。不正防止目的だね」

 

 確かに仲の良い生徒同士だったら優遇したくもなるだろう。テーブルに着いた時点で友人だった場合は仕方がないだろうが、しっかり不正対策もされている。学校が認可するだけあるな。

 

「この台は何のゲームなんだ?」

 

「これはスリーカードポーカーだね。シンプルなゲームだから初心者にも人気なんだ。丁度3人までできるし、他の人いないなら教えて貰いながらできるんじゃない?」

 

「普通のポーカーは分かるけど、これは分かんないかも……教えてもらいながらいいかな?」

 

「私も知らないわ」

 

 申し訳なさそうにこちらを見て聞いてくる櫛田と、さも当然の様に言い放つ堀北。両者性格の差が浮き彫りとなっている。

 

「いいぞ。オレも実際に賭けてやるのは初めてだからな」

 

 こんな美少女に上目遣いで頼まれたら断れるわけがない。

 

「ありがとう綾小路くん! じゃあ押しちゃおっかなー……えいっ」

 

 可愛らしい掛け声と共にボタンを押す櫛田。

 すると、台に立っていた高辻が右耳に付けたインカムを抑えて小さく笑った。

 

「偶然。俺が指名されたみたいだね」

 

「お手柔らかに頼むぞ」

 

 そこまで人数が多いわけでもないだろうから、こういうことも少なくないだろうな。

 高辻はニコリと小さく笑った後、姿勢を正して俺たちを見渡した後に礼をした。

 

「それではゲームを始めさせていただきます、ディーラーの高辻です。ルール説明から始めさせていただきます」

 

「おー」

 

 これが実際に接客するときの態度なのだろう。高辻の粋な計らいに櫛田が感心したように声を上げる。

 それに応えるように、高辻は短くまとまった分かりやすいルール説明をしてくれた。

 

「────以上がルールとなります。まあ、一気に聞いても分からないと思うから解説しながら進めてくよ」

 

「はーい」

 

「ここで勝って経営破綻させてあげましょう綾小路君。足を引っ張ったら許さないから」

 

「……おう」

 

 何で結構乗り気になってるんだよ。……そんな言葉が喉まで出かかったが、何とか抑えることに成功した。

 

「あはは……一応賭けられる額には上限があるから、勝っても負けても大金が動くことは無いよ」

 

 となると、数万ポイントも稼いだ池は本当にギャンブルの天才なのかもしれないな。

 

「……今のところはね」

 

 手早くカードをシャッフルする高辻。何かつぶやいていたような気がしたが、スピーカーから流れる音楽と、周りのテーブルに立つ生徒の喧騒にかき消されてしまった。

 ……よし。ここで勝って高辻が嫉妬するほどの良い飯を食いに行ってやろう……1人寂しくな。

 

 

 





 池と山内はどこに行ったんでしょうね……? 

 高評価、感想頂けると作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします! 

どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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