ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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第13話 仕事と家庭?

 

 

 

 ルールを説明しながらゲームをするとなると時間は経つもので、本当は20分ごとに交代しないといけないのだが2時間ぶっ通しで教えてしまった。

 テーブルを挟んだ向かいには右から堀北さん、清隆君、桔梗ちゃんと言った順番で並んでいる。並ぶときにサラッと清隆君を間に入れた桔梗ちゃんのポジション取りの技術に感嘆だ。

 

「ほら、帰るわよ綾小路君。現実はそう甘くないことを知れただけでも良かったんじゃないかしら」

 

 そして、彼らのテーブル上に置かれたチップの数は、堀北さんが3,000点、桔梗ちゃんが2500点、そして清隆君はなんと0点だ。最初に5000点のチップを3等分していたはずだが、どうしてここまで差が付いたのか俺にも分からない。

 因みに今回に関してはイカサマは一切していない。堀北さんなんか不正を暴いてやる! っていう意気込みがひしひしと感じられたし、変な所で勘が鋭い清隆君も居るからね。

 

「……そういう慰めは求めてない」

 

「ふっ」

 

 がっくりと項垂れる綾小路君に嘲笑の笑みを向ける堀北さん。中々いい表情をしてらっしゃる。綾小路君を煽れるのがよほど嬉しいようだ。

 

「そうだよ綾小路君! 高辻君の奢りなんだから気にしなくても大丈夫だって!」

 

「意外と酷いこと言うね桔梗ちゃん」

 

 電話を一週間近く無視された恨みからか、先ほどから地味に棘のある桔梗ちゃん。心なしかその笑顔も黒く染まっているように見える。

 

「じゃ、今後ともごひいきによろしくね。でも遊ぶときは自己責任で、分かった? 特に清隆君」

 

「……そうだな。オレには向いてない世界かもしれないな」

 

 教えたセオリー通りの立ち回りをしていたにも関わらず運が悪すぎてボロ負けするんだから、もう君ギャンブルの才能ないと思うよ。

 せっかく負けれたんだからこれに懲りて、こんなところ来ちゃダメだよ? ……なんて言いたかったが、立場的に言えるはずもない。

 

「もう来ることは無いでしょうけどね。ギャンブルなんて低俗な遊びはこりごりよ」

 

 そんなことを言っている堀北さんだが、途中で確率と期待値の計算をすれば勝率を上げられることを知ってからは楽しそうにしていた。

 

「結構楽しそうだったけどね堀北さn「何か言ったかしら?」……いいえ、何でもありません」

 

 清隆君から聞いた話によると怒らせたら普通に暴力に訴える人らしいので口を塞いでおく。そういうプレイも嫌いじゃないが、普通に殴られるのは勘弁だ。

 まあ、誰に対してもこれがデフォルトっぽいし、この2時間を通して大分仲良くなれたと言っていいだろう。……桔梗ちゃんは終始不機嫌そうだったけど。

 

「では。ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 

「バイバイ高辻君。また連絡するね!」

 

 生気をすっかり抜き取られて幽霊みたいになった清隆君と、そもそも挨拶をする気がない堀北さん。返事をしてくれたのは桔梗ちゃんのみだが、明らかに発言に含みを持たせてるのが怖い。

 次2人きりになったときは爆弾が爆発するかもしれない。……収入も増えるだろうし、今度俺からちょっといい店で食事誘ってあげるか。

 

 出口まで3人を見送り、こちらに手を振る桔梗ちゃんと清隆君に対して丁寧に礼をする。……さて、メインフロアの人はこれで最後かな。

 

「……改めてみると凄いな。自分で言うのもなんだけど」

 

 カジノサークルの活動場所として与えられたのは、特別棟3階の端にある多目的教室1という部屋だ。広さは普通の教室を縦に2つくっ付けた位で、真ん中に部屋を半分に区切るように仕切りを立てられるようになっている。

 プロジェクターを使用することを想定してか、日光を完全に遮断するカーテンが敷設されており、これによって部屋を真っ暗にすることも可能だ。もちろん教室中央に置かれた高性能なプロジェクターとスピーカーもフルで活用させてもらっている。

 

 南雲先輩に賄賂を贈ったとはいえ、ここまで好条件の部屋を用意してもらえるとは思ってもみなかった。3人が座れる高さ調節可能な机も据え置きだったため、自作したマットを敷いて使用している。ルーレットやブラックジャックなどはテーブルを4つくっ付ければ余裕だが、ゆくゆくは本格的なテーブルも導入したいものだ。

 

「そのためにはもっと稼がないとね」

 

 因みに一番お金がかかったのはフロアマットである。教室の床全面をカバーする量のマットを用意するのは流石に骨が折れた。

 しばらく使う予定は無いらしいが、いざ教室を使うとなったときには机を片付けてマットも全部取らないといけないため大変そうだ。

 まあ、その頃には石崎君やアルベルト君、そして南雲先輩に雇われた先輩たちも仕上がるだろう。そうなれば俺がいなくても店を回せるようになるだろう。面倒事は彼らに任せて俺は寝ているだけで小金持ちだ。

 

 ということで、メインフロアから中央に置かれた仕切りを挟んで反対側のフロア……まだ校内で10人程度しかいないV()I()P()()()のためのプライベートフロアへと足を運ぶ。

 

「さて、どうなさいますか?」

 

 営業時間である18時をすぎているにも関わらず、プライベートフロアでは数人の生徒がテーブルに着いていた。

 1番近くのテーブルでは、先ほど清隆くんたちを置いていった池くんがブラックジャックをしている。

 

「Aと3かぁ……よーし! ダブルダウンしちゃおっかなー!」

 

 そう言って池くんがテーブルに置いたのは3000ポイント分のチップ。

 先週までは100点しか賭けなかったのに。人間の欲というのは恐ろしいものだ。

 

 それを確認したディーラーがカードを1枚デッキから引き、机の上に置く。……うわ、よりによって1番弱い8か。かわいそ。

 

「は? ……おいふざけんなよ! なんでそこで8が出てくんだよ!?」

 

 ────ここでブラックジャックのルールをひとつまみ。

 ブラックジャックというのは、カードを数枚引いてその数字の合計が22を越えないように数字を大きくするゲームである。つまり21を目指すということだ。

 数字と言ってもカードの数がそのまま反映される訳でも無い。内訳としては以下の通りだ。

 

 A……1or11

 J,Q,K……10

 その他……数字通り

 

 Aは最強カードで、最初に11で計算して合計が22以上になったときは1として計算される。つまり池くんの手札は、Aと3で14になる。

 ここで7以下のカードを引けばAを11として数字を強くできるが、8以上を引いてしまったらAが1としてカウントされて12となるため弱くなってしまうのだ。

 

 ちなみにダブルダウンというのは、カードを1枚しか引けなくなる代わりに掛け金を2倍にできるルールだ。Aを引いて調子に乗ったのだろうが、こういうリスクを加味して堅実に立ち回るのがセオリーと言えるだろう。

 ダブルダウンしてなかったらもっとカード引けたからね。

 

 池くんができることはもう何も無いため、次にディーラーのターンとなる。1枚目のカードは9。さーてどうなるかな。

 

「バーストしろバーストしろ!」

 

 手札12じゃ厳しいと思うけど……ほら言わんこっちゃない。

 

「っ! っざけんなよマジで! くそっ……何でここで8が出てくんだよ」

 

 ディーラーが引いた数はJ、つまり10で合計19。完敗だね。

 テーブルの上に置いてあるチップの額を確認しようとしたが、池くんがひったくる様にポケットに入れてしまったため叶わなった。

 

「……ルーレットで取り返そう。今までこれだけ負けてるんだ。次こそは絶対いける……!」

 

 残りの営業時間が10分しかないことを確認した池君は、山内君が座っている台へと歩いて行く。それと同時にインカムから交代の時刻を告げる音が聞こえてきた。

 先ほど池君とブラックジャックをしていた女子生徒が席を離れ、こちらに向かって話しかけてきた。

 

「おつかれー高辻くん。あの子負け続きで相当熱くなってるみたい。勝ってるんだから止めればいいのにね」

 

「お疲れ様です朝比奈先輩。そこで止めれる人ばかりなら中毒者なんていませんよ」

 

 朝比奈先輩は南雲先輩と同じクラスに所属してる人で、ディーラーを募集する際に信頼できる人物として紹介された人だ。

 2年生からは朝比奈先輩含めて合計7人が従業員兼サークル員として派遣されている。内訳としてはメインルーム5人、VIPルーム2人+俺が両方の穴を埋めるという感じだ。

 

 俺? 俺はもちろん休みなしで出勤してるよ。経営が軌道に乗るまでオーナーが頑張るのは当たり前だもん。

 

「ディーラー姿が様になってきましたね。もう僕がいなくてもVIPルームを任せられるかもしれません」

 

 手早くカードを集め、池君が台パンしたことでズレたテーブルを元の位置に戻す朝比奈先輩。

 最初はシャッフルすら覚束なかった朝比奈先輩だが、この2週間で一番飲み込みが良かったためVIPルーム担当になった。顔が良くて雰囲気が出るというのも大いなる理由だったりする。

 

「ええ? 私まだブラックジャックしか出来ないよ?」

 

「もうバカラとかも教えちゃっていいかもしれませんね。それに、朝比奈先輩を目当てにVIPに来る人もちらほら増えてきましたし」

 

 ちなみにVIP会員になるための条件は、賭けた額が合計で5,000ポイントを超えることになっている。

 そう聞くと簡単かもしれないが、3人で5000ポイントで2時間遊び続けた清隆君達を見れば難しいことが分かるだろう。そもそもとして掛けられるレートが低いのだ。

 

「それどうなのかな? 素直に喜んでいいか分かんないんだけど」

 

「それだけ朝比奈先輩が可愛いってことですよ。ディーラーも上手いし華がありますね」

 

「うわー。普通ノータイムでそんな言葉出てこないよ? 生意気な後輩だー」

 

 ぶーぶーと言いながら肘で小突いて来る朝比奈先輩だが、悪い気はしてなさそうだ。

 反応的に外見の評価よりも、ディーラーとしての努力を認められた嬉しさの方が大きそうだね。この人典型的な陽キャ美人って感じだし、今まで男から言い寄られることも多かったのだろう。

 コミュニケーションの取り方を調整していると、朝比奈先輩は椅子に腰かけて小さく笑った。

 

「それにしても凄い行動力だよね。入学してまだ2か月でしょ? それで雅に話つけに行っちゃうんだからさ」

 

 ちなみに南雲先輩から紹介してもらった先輩たちは全員Aクラスの生徒だ。つまり俺が南雲先輩に提案したことも知っている。もちろん表向きは雇われの立場のため、従業員だけの秘密なんだけど。

 ちなみに朝比奈とは元々一之瀬さん繋がりでの知り合いだったりする。Aクラスで南雲先輩と仲がいいということもあり、学年での立場はかなり上の方らしい。顔が良いし強かな性格をしているため納得だね。

 

「昔からカジノとかに憧れがあって、この学校だったら出来るんじゃないかなと思って話をさせに行ってもらっただけですよ。南雲先輩には良くしてもらってます」

 

「十中八九学校中のポイントをかき集めたいだけだと思うけど。VIP会員こそまだそんなに居ないけど、メインルームの方は大盛況だったらしいじゃん?」

 

 メインルームは十数人程度集まれば御の字だと思っていたが、今日は金曜日+ポイント支給日ということもあって20人近くのお客さんでごった返していた。

 

「ええ。やっぱり上級生はそこそこポイントをため込んでるみたいで、前回VIPに来た3年生の人4人だけで20万ポイントも動いてましたよ」

 

「うっわヤバいね。……まあでもちょっと納得かなー。入学したときは一生遊べるじゃんとか思ったけど、1年も2年も居ればちょっと飽きるもん」

 

 そりゃそうだ。南雲先輩のクラスは毎月15万近くのポイントが入ってくるらしいし、毎晩外食したとしても10万ポイントは余すことになる。殆どの生徒は使い切らずに翌月を迎えるだろう。旅行とかもいけないしね。

 ちなみに、金銭感覚に関しては有栖ちゃんとひよりちゃんのおかげで何とか一般人レベルまで落とし込むことに成功した。金銭感覚が狂ったまま経営なんてできる訳が無いから本当にありがたい話だ。

 

「そんな人たちの癒しの場になることを目標に頑張ろうかなって思います。今度バカラとルーレットのコツとかも教えるんで、暇なとき連絡してください」

 

「おっけー」

 

 最初は皆南雲先輩の命令+給料が出るから渋々といった様子だったが、褒めながら丁寧に教えたため楽しいといいながらやってくれている。

 従業員のモチベを保つのも経営者として大事な素養だからね。将来親父の店を継ぐときのための練習と思えば全然苦じゃない。

 

「じゃ、俺はルーレットの方行ってきます。もう上がっちゃって大丈夫ですよ。お疲れ様でした」

 

「うん。ありがとねー」

 

 こんな感じで教育係も兼ねているため、最近は清隆君と家でダラダラ過ごす時間も減ってしまった。

 俺以外に遊ぶ人が居ない可哀想な清隆君のために、今度龍園君を紹介してあげよう。大人しそうで意外と肝が据わっているし、案外相性が良いかもしれない。

 

 

 

「やっほー。2人とも調子はどう?」

 

 テーブルで待っていた池くんと山内君に手を振りながら話しかける。

 

「そんなのいいから早く回そうぜ! 早く!」

 

「寛治のやつ3万くらい負けてて焦ってんだよ。ちなみに俺は1万勝ちだぜ!」

 

 手持ちのチップは池くんが2千点。山内君が4万点。2人とも入場時に3万ポイント分を交換してたため、池くんは相当焦っているはずだ。

 元々2人とも1万ポイントも持っていなかったはずだが、ギャンブルの恐ろしさは勝って得たお金を、さも自分が元から持っていたものだと錯覚してしまうところだ。

 ここでやめとけば累計3000円勝ちくらいで勝ち逃げできるのに。

 

「はい。ではチップを置いてください」

 

 まあ、辞めさせる気なんてサラサラないけど。

 山内くんは黒に2万点。池くんは……おお、16に全賭けか。

 

「お前16ピッタリなんて出る訳ないだろ?」

 

「うるせぇ! 俺はこういうときの運はピカイチなんだよ! 俺様の誕生日に全てを賭けるっ!」

 

「馬鹿な奴。俺みたいに堅実に行くのがスマートな男だぜ?」

 

 思考力が試されるテキサスホールデムや、カードカウンティングが使えるブラックジャックなどと比べて、運要素が非常に大きいのがルーレットだ。

 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ルーレットを先に回し、ある程度時間が経ったタイミングでボールを投げる。

 素人目には分からないと思うが、このルーレットには一般のカジノに出回っているものと比べて、特別な改造がされている。

 

「頼む……マジで来い!」

 

 それは、各数字を隔てる溝が少しだけ深いこと。

 そんなことで何が変わるかと思うかもしれないが、この数ミリの差がディーラーの勝率を大幅に左右させるのだ。

 

「は……おいおい。マジで言ってんのかよ!?」

 

 子気味いい音を立てながら、最終的に球が入った場所は0。数字はもちろん、赤にも黒にも属さない特別な数字だ。

 

「0って……はぁ!? そんなん分かるわけねえだろうが!」

 

 池君は全チップを溶かし、山内君は1万の勝ちから大赤字へと転落だ。

 気の毒だけど、ノーリスクで金を稼げると思っているのが間違いだよ。

 

「うわぁ……よりにもよって0か。ドンマイ2人とも」

 

 2人が置いたチップを回収すると同時に、閉校の10分前を知らせるチャイムの音が鳴り響く。メインルームに比べて30分遅くまで営業しているVIPルームだが、学校が閉まる時間を越えて営業することは流石に厳しい。

 

「今日はこれでおしまい。早く換金しないとせっかく残った2万点無くなっちゃうよ?」

 

「……ちくしょう! 次は絶対勝つからな!」

 

 項垂れる池君を引っ張って、山内君は換金場所へと小走りで向かって行った。何ともそれらしい捨て台詞を残して。

 2人が退出したのを確認し、スピーカーから流していたBGMを止める。

 先ほどまで大勢の人で賑やかだった多目的室に静寂が訪れ、そのギャップが緩くなった思考を奥深くまで潜り込ませてくる。

 

「うわぁ。凄いかわいそうな事になってたね」

 

「あれ、朝比奈先輩居たんですね」

 

「うん。裏で着替えてた。それにあれだけ大勝負してたから気になっちゃって」

 

 空のルーレットをクルクルと回しながら話す、制服姿の朝比奈先輩。

 

「危なかったね。もし16に入ってたら8万ポイント近く持ってかれるんでしょ?」

 

「そうですね。……丁度いいや朝比奈先輩。好きな数字って何ですか?」

 

「え? 好きな数字……7とか?」

 

 大分ギャンブルに脳が染まってないか? まあいいや。

 

「分かりました。じゃあ、適当で良いんでルーレットを回してください」

 

「えっ……どのくらいかな、こう?」

 

 おっかなびっくりと言った様子でルーレットを回す朝比奈先輩。

 もうちょっと強く回しても良いけど、ルーレット自体高い物だから遠慮してくれたのだろう。この速度だったら……このくらいかな。

 

 先ほどよりも早いタイミングで球を投げ入れる。あんまり遅く投げても客からインチキだと突っ込まれるし、難易度は上がるが早めに投げるのが自然だ。

 

「えっ……!」

 

 開いた口を両手で塞ぐという100点のリアクションをしてくれる朝比奈先輩。

 

「じゃあ次は0に入れましょうか」

 

 今度は自分でルーレットを回し球を投げ入れる。

 そんなやり取りを5回ほど繰り返すと肩に手を置かれた。後ろを見ると、額に汗を垂らした朝比奈先輩が引きつった笑みでこちらを見つめてきた。

 

「ルーレットに細工するのは止めた方がいいかもよ……? ほ、ほら。もし訴えられて調べられでもしたら大変だし、ね?」

 

 何を勘違いしているのか、そんなことを言ってくる朝比奈先輩。金の亡者を見てドン引きした様子だ。

 

「ふふっ、ルーレットにも球にも細工なんてしてませんよ。狙って入れてるだけです」

 

 動体視力と指先の感覚のゴリ押しである。

 溝を深くしてあるのは狙ったところに入れやすくするためだ。普通のルーレットだったら成功確率は7割と言ったところだが、改造することによってほぼ100%の成功率をたたき出すことに成功した。

 

「……どれだけ練習したらできるようになるの?」

 

「分かんないですけど。15時間くらいぶっ通しで練習したらできるようになりますよ。最終的には朝比奈先輩もこのくらい出来るようになって貰うつもりですから」

 

「……荷が重いなぁ」

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 閉校時間ギリギリで特別棟を抜けて寮へと戻る。

 

「その格好で隣歩かれるの恥ずかしいんだけど。全然学生っぽくないから変な噂立ちそうだし」

 

 学年が違うため棟こそ別だが、帰り道はもちろん同じなため朝比奈先輩と歩いている。しかし当の朝比奈先輩は少し不満げな様子だ。

 急いで教室を出たためベスト姿のままだが、夜遅いこともあって通学路には誰一人として居ないためセーフだろう。

 

「あはは、ちょっと格好つけたくなっちゃって。恥ずかしいですね」

 

「意外と子供っぽいところあるんだね。その方が年相応で良いと思うよ?」

 

 苦笑いをして後頭部を掻く俺を微笑ましそうに見る朝比奈先輩。2年生Aクラスという、ほぼほぼ勝利が約束されたクラスの中心人物ということもあってか、言動一つ一つに余裕が感じられる。

 元々包容力ありそうな人だし、こういう『有能で少し生意気だけど子供っぽいところもある後輩』という立ち回りが刺さりそうだ。

 

「今日はこれから予定あるの?」

 

「はい。友達の家でご飯食べる約束してるので」

 

「そっか。帰ってからご飯作るの面倒だし、ついでにどこかで食べようかなって思ってたんだけど残念」

 

 お互いよく喋るタイプということもあってか、朝比奈先輩とは割と早い段階で打ち解けられた気がする。

 そういう気は無いのだろうが、こうして2人での食事に誘われるくらいには仲がいい。

 

「テストも終わったしいつでも行けますよ。そのときは恵まれない1年生に奢ってくださいね?」

 

「これから大金持ちになるだろうに悪い後輩だね。出世払いだよ?」

 

「やったー! ゴチになりますっ」

 

 有栖ちゃんや桔梗ちゃんみたいに弄れる相手との会話も楽しいが、こういう年上の女性との会話もまた違った楽しさがある。

 会話が弾むと時間はすぐに間に過ぎていくもので、あっという間に寮のエントランスについてしまった。

 

「私こっちだから。また来週よろしくねー」

 

「はい。おやすみなさい朝比奈先輩」

 

 朝比奈先輩と別れた後、自分の部屋に戻るためにエレベーターに乗り込む。

 中に置かれた大きな鏡で髪型を調整する。桔梗ちゃんの言っていた悪そうな男という評価はあながち間違って無さそうだ。賛否両論あるけど刺さる人には刺さりそうだ。

 クズな男にハマる才能がありそうな有栖ちゃんにも見せてあげよう。この姿で言い寄ったらどんな反応をするのだろうか。

 

「……そう言えばまだ見せてなかったな」

 

 たまには私服や制服以外の姿も見せてあげよう。ということでそのまま部屋に戻らずに8階の女子フロアへと向かう。何回も行き来しているため場所はよく覚えている。

 目当ての部屋まで行き、誰も廊下に居ないことを確認してインターホンを鳴らした。

 

『はーい。入っていいですよー』

 

 スピーカー越しに、入学してから一番聞いているであろう女性の声が聞こえてきた。

 鍵が開いたのを確認し中に入る。

 

()()()()()()。わっ、珍しい格好ですね。どうしたんですか?」

 

 エプロン姿でお出迎えしてくれたのはひよりちゃん。家庭的で非常に似合っている。

 何回も出入りしてるとはいえ、ナチュラルにお帰りなさいが出てくる時点で男のツボを良く分かってる。これが無意識なのだから恐ろしい女の子だ。

 

「ふふっ。あんまりお帰りなさいっては言わないんじゃない? ()()()()。ひよりちゃん」

 

 そうおどけて返すと、ひよりちゃんは照れくさそうにに小さく微笑んだ。

 

 

 




 
 狙った数字に入れることができるのはディーラーの基本的な技術だそうですよ。だから投げる時はルーレットから目を離すのがマナーだとか。

 よう実でエプロンが似合う女子生徒ランキング、個人的に一之瀬と並んでトップです。異論は認めます。

 高評価、感想頂けると作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします! 

どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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