ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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第16話 協力者

 

 

 

 友達と遊ぶ約束をした際に感じる気だるさと期待感について考える。

 学校中を探してもオレ程友達の少ない生徒はそうそう居ないと確信しているが、高辻に関しては手放しで友人と宣言できる。……はずだ。

 そんな高辻とでも、明日遊ぶ予定がある日の夜などは少しだけ面倒になるのだから不思議なものだ。もちろん実際に行けば楽しいのはよく分かっている。世の中にはそのせいで予定を急遽キャンセルする行為、通称ドタキャンなんてものをする人間がいるようだが、オレには理解できない行為だった。

 

 ……そう思っていたのだが。

 

「……じゃあ、ことの成り行きを説明してもらおうかしら」

 

 オレの勉強机に座り、部屋の真ん中に座る池を冷たい瞳で見下ろして問いかける堀北。

 放課後。人を呼ぶことなんて滅多にないオレの部屋に、一か月ぶりに人を招くこととなった。しかし期待しているような和気あいあいとした雰囲気とは程遠く、部屋に集まった面子は皆通夜のような雰囲気だ。

 

「い、いや……そんな言うようなことないって」

 

「何も言うことがない? 3万ポイント近く所持していたあなたが一か月もしない内に使い切って、あまつさえ綾小路君に借金までしようとしたのに?」

 

 気まずそうに視線を左右に逸らす池だが、そんな言い逃れを見逃すつもりは無い堀北は詰めの姿勢を崩さない。

 堀北に池のことを相談して丸投げしようとしたのだが、さも当たり前かのようにオレの家に集合するのだから質が悪い。

 

「そ、その辺にしておいてあげようよ堀北さん。池君も、どうしてそうなっちゃったのか教えてほしいな?」

 

 部屋に集まった生徒の一人である櫛田が堀北をなだめる。ちなみにここにいるのは堀北、池、櫛田。須藤と山内を除いた勉強会メンバーだ。

 

「仮にポイントを使い切って生活が苦しいのなら、1万ポイントも借りる必要は無いわよね?」

 

 そんな正論が堀北から飛んでくる。うっとした表情の池は、ついに観念したように小さく語り出した。

 

「……そうだよ。カジノで大負けしちゃったんだよ! ()()()()()()()()()……明日中に返さないとヤベェんだよ! 助けてくれよみんな!」

 

 縋るように両手を合わせて下を向く池だが、オレは予想外の池の発言を見逃すことが出来なかった。

 

「ちょっと待って、例のカジノでポイントが無くなったのは何となく予想してたけど、借金? 一体誰に借りてるのかしら」

 

 堀北も同様の疑問を持ったのか、借金という物騒な単語に食いついた。

 今日が金曜日であることも踏まえ、ただ単に賭けるポイントが無くなっただけかと思っていたが、事態は思っているよりも悪い方向に進んでいるらしい。

 

「……確か龍園って言ってた気がする。カジノやってるサークルのリーダーらしくて、今まで全然見た事無かったんだけど」

 

「えっ、龍園君?」

 

 オレも堀北もピンと来ていない様子だったが、櫛田が驚いたように目を開きながらそう聞き返した。

 

「知っているのかしら櫛田さん」

 

「知ってるよ。Cクラスのリーダー的な男の子。……で、でもそれって本当なの? 龍園君、前に高辻君と揉めて高辻君に怪我させてたんだよ?」

 

「高辻と?」

 

 堀北の問いに対して不安げに答える櫛田だが、そこで高辻の名前が出て来るとは思わなかった。

 本人からそういう話は聞いていなかったし、そんな噂があるなら流れてきてもおかしくないのだが。

 

「うん。龍園君、クラスメイトに言うこと聞かせるために手を出したりしてるんだって、それを止めようとした高辻君が……って感じだったと思う。この話もCクラスの子からこっそり聞いた話なの」

 

 

「あの時か……」

 

 頬と額にガーゼを貼っていた姿を思い出し、殴られたであろう時期を予想する。確か5月の最初のころだ。つまりクラス間闘争の存在が明かされてから方針の違いがあったのだろう。

 

「なぜ高辻君は訴えを起こさないのかしら。クラスメイトを暴力で支配する生徒なんて、しかるべきところに訴えて罰を与えるべきだと思うのだけど」

 

「ちゃんと言うこと聞いてるんだったら、暴力も振らないし凄い優秀な人みたい。この前の中間テストでCクラス2番目に平均点高かったのも、龍園君が早いうちに過去問を持ってきてくれたからなんだって」

 

 下手に刺激しないで平穏に過ごすことを選んだということだろうか。確かに高辻はクラス間闘争に対する意欲があまりなさそうだしな。他クラスのオレと関わっているし。

 

「もしかしてヤバい奴に金借りちゃったのか……?」

 

「大事なのはどういう条件でいくら借りたかよ。それ次第では不当な貸与として無効にすることもできるはず」

 

「借りる時に書かされた契約書? みたいなやつのコピーならあるぜ」

 

 そう言って端末で文書ファイルを開く池。

 堀北は端末を受け取り、眉間に皺を寄せながら端末の画面をスクロールする。

 

「……はぁ。どんな思考回路だったら毎月の収入が1万ポイントも行かない中、5万ポイントも借りようと思ったのかしら?」

 

「見せてくれ」

 

 堀北から端末を受け取り、内容を確認する。

 そこには金額、借用日、利息、期限等の基本的な条件の他に、月々何ポイントを返すのか、また連帯保証人の欄も記載されていた。

 

「だ、だってよ……毎月2千ポイントだけ支払えば良いって言われたから……」

 

 恥ずかしそうに呟く池を尻目に、オレはブラウザから計算サイトを立ち上げる。

 

「何をしているのかしら」

 

「最終的な返済額の計算だ。条件を入れれば計算してくれるサイトがあったはずだが……」

 

 あった。正直両者同意の上で借りた金なのだから池が100%悪い。オレにできることは、現状のヤバさを池に理解させることだけだ。

 

「わっ、こんなサイトあるんだね。よく知ってるね綾小路君」

 

「詳しいことは何も知らないけどな」

 

 金額5万、金利年15%、毎月2千の返済などの条件を入力して結果を出す。

 というより毎月2千ポイント返済すればいいのに、何で池は1万ポイントも借りようとしてきたのだろうか。

 

「毎月2千ポイントの返済だと……完済するのは3年の1月頃だな」

 

「は!? 意味分かんねえよ!」

 

 画面を見せると5万ポイントの借り入れなのに、返済総額は6万ポイントを超える結果となってしまった。

 

「借金というのはそういうものよ。金利無しで貸すメリットがどこにあるのかしら」

 

「で、でもやっぱりおかしいよ。学生同士がお金の貸し借りするなんて。学校に相談した方がいいんじゃない?」

 

 確かに櫛田の言う通り、普通の学校なら学生同士の……それも金利付きの貸付なんて認めないだろう。

 

「それが一番手っ取り早いだろうな。カジノ自体が学校の認可を経て運営している以上、借りた金はもちろん返さないといけないが」

 

 だがこの学校はどこまでも自由だ。池も同意してサイン付きで借りた上、条件も一般的な企業が行っているものと何一つ変わりない。借用書も騙すような記載の仕方はされていない。

 仮にこれが一般的な大人の貸し借りだった場合、借りた側が訴えても突っぱねられて終わりだろう。

 

「そ、そうだよな。助かるぜお前ら……」

 

 解決の糸口が見えたのか、ほっと息を吐いて机の上に体を倒す池。

 

「その前に、龍園君について知っているであろう高辻君から情報を貰いたいわ。綾小路君、連絡を取ってくれないかしら」

 

「いいけど、多分まだ仕事中だぞ」

 

 毎回終わるのが6時半過ぎだから……あと1時間くらいか。連絡だけ入れておこう。

『仕事終わったらオレの部屋に来れるか? 龍園について少し聞きたいことがある』……こんなもんでいいだろう。

 

「多分1時間後くらいに来てくれると思う。とりあえず返事を待とう」

 

「ええ。……それにしても、暴力でクラスをまとめようだなんて。須藤君みたいな生徒がCクラスにも居るのね」

 

 信じられないと言った様子で語る堀北。……いや、お前オレの脇腹をコンパスの針で突いたこと忘れてないからな。お前も十二分に暴力的だぞ。

 

「皆がみんなそうって訳じゃないんだけどね。Cクラスは少しやんちゃな子が多いのかな……?」

 

 交友関係が広い櫛田が首を傾げながら呟く。

 

「他のクラスはどのような雰囲気なのかしら」

 

「うーん。どうだろうね。Bクラスは凄い明るい子が多いからみんな仲良しって感じだよ。Aクラスは頭良い子たちがいっぱいって感じ。中間試験の点数も他のクラスよりずっと高かったし」

 

 そういう話を聞くと、やはりクラス毎に似たような性質の生徒が配属されるようにも感じられる。Dクラスには堀北や高円寺のような『優秀だが直すべき欠点がある生徒』がコンセプトだろうか。

 となれば、一見完璧そうに見える櫛田や平田にも何かしらの欠点があるということだろうか。

 

「あ、これ可愛い! 綾小路君こういうぬいぐるみとか買うんだね」

 

 オレのベッドの上に座っていた櫛田が、枕元に置いていたペンギンのぬいぐるみを胸に抱く。……まあ、誰にでも隠したいことの1つや2つはあるか。

 

「高辻とクレーンゲームで取った奴だな。あいつ取るの上手いんだよ」

 

「確かに! 高辻君そう言うの得意そうだよねー」

 

 足をプラプラさせながらぬいぐるみをもふもふと揉む櫛田。可愛い。

 

「気を抜かないで2人とも。高辻君が来たら話を聞くんだか……」

 

 堀北の咎める言葉を遮るように、来客を知らせるチャイムの音が鳴った。

 モニターを確認すると、そこには部屋着であろうラフな格好をした高辻が映っていた。

 

「早いな。仕事じゃなかったのか?」

 

「うん、連絡したんだけど既読つかないから来ちゃった」

 

「すまん。気が付かなかった。今開ける」

 

「おっけい」

 

 モニター越しにそんなやり取りをして鍵を開ける。

 

「高辻君?」

 

「ああ。今日は仕事なかったらしい」

 

 扉を開けると、スニーカーを脱いで上がるところの高辻と目が合った。

 

「おいすー。清隆君の呼び出しって珍しくない?」

 

「櫛田たちも来ててな。少しカジノの件で話を聞きたいんだ」

 

 他にも来客がいると言った瞬間、高辻の顔が一瞬歪む。

 

「マジ? ……まあこんな格好だけど別にいっか」

 

 オレ的には帰ってすぐに部屋着に着替える意識の高さに驚きだ。オレなんか眠いときはこのままベッドにダイブして昼寝してしまうからな。

 

「あー。言えばよかったな」

 

「いいよいいよ。清隆君にそこら辺期待してないからっ」

 

「おい」

 

「冗談冗談。お邪魔しまーす」

 

 高辻は悪戯な笑みですれ違いざまに肩をパンと叩いた後、部屋と廊下を遮る扉を開けた。

 

「こんにちは。こんな格好でごめんねー、これ部屋着なんだ」

 

 ちょいちょいと手を奥に押し出すようなジェスチャーで櫛田をベッドの奥へと移動させ、オレと櫛田の間に挟まるように腰掛ける。

 

「ううん。こっちこそ急に呼び出しちゃってごめんね。もしかして寝ちゃってた?」

 

 気配りの天才櫛田が申し訳なさそうに両手を合わせるが、高辻は穏やかな笑みを浮かべてやんわりと否定した。

 

「面白い映画無いかなーってネトフリ漁ってただけだから大丈夫だよ。こっちの方が深刻そうだしね」

 

「龍園君について聞きたいことがあって。彼とは並々ならぬ関係にあると聞いているわ」

 

 そんな櫛田と対照的に、堀北は触れづらい話題にも関わらずずかずかと踏み入っていく。

 

「んー? ああ、俺が龍園君に殴られた話ね。まあそこから殆ど関わりないけど。何があったの?」

 

 一瞬何のことを言われているか分からなかった高辻だが、話の本筋を理解したのか質問を投げかけてきた。

 

「そこの彼がカジノでポイントを全部吐き出して、挙句の果てに5万ポイントを龍園君から借りたそうなのよ。もっとも、それも全部使い切ってしまったようだけど」

 

「すみません……」

 

 お調子者の池でも堀北の眼力には勝てないのか、蛇に睨まれた蛙の様に小声で謝罪をするばかり。

 

「嘘でしょ? それいつの話?」

 

「知らなかったのか?」

 

「うん。だってここ2週間くらい入ってなかったもん。南雲先輩の知り合いの人が入りたいからシフト開けてくれーって」

 

 これは当てが外れたな。高辻なら当時の状況を見ていると思っていたんだが。

 

「え、どういうこと? 龍園君が店来てて、そこで借りたってことだよね?」

 

 話の流れからカジノ内でやり取りがあったと推論したのだろうが、受け入れがたいと言った様子で池に聞き返している。

 正直なところ高辻も何かしら関わっているんじゃないかと疑っていたが、目の前で頭を抱える姿は嘘には見えない。龍園といざこざがあったという話もあるし、本当に無関係の可能性もある。

 

「そうだよ! カジノサークルのサークル長だっても言ってたんだ。それでポイント貸してくれるって言うから、春樹と一緒に借りちまったんだ……」

 

「サークルに入っているあなたなら、その辺の事情も知っていると思っていたのだけど」

 

 堀北も疑いの目を向けているが、高辻は本気で池を心配している様子だった。

 

「いや、俺って南雲先輩から頼まれてディーラーやってるだけだからさ。サークルの集まりとかも無いし、龍園君なんて一度も顔出して無かったから」

 

「……なるほど」

 

「多分学校に聞けば、誰が所属してるとかの名簿を貰えると思うけど……」

 

「そこから聞き込み調査をすれば、もしかしたら何か分かるかもしれないわね」

 

 名案だと頷く堀北だが、当の高辻は苦い顔をしたままだ。

 

「……いや、多分変に嗅ぎまわらない方がいいかもしれないよ。龍園君だけならともかく、南雲先輩ってちょっと怖い所あるから」

 

「南雲先輩というのは、生徒会副会長の?」

 

 聞いたことがある名前だったので確認したが、やはり生徒会の挨拶の際に堀北兄の隣に居た人物で間違いないだろう。

 

「うん。2年生なんだけど、学年全体を牛耳ってる凄い人なんだ」

 

「学年全体を?」

 

「そうだよ。あの人に逆らって退学させられた人も多いし……悪い人じゃないんだけどね」

 

 一体そんな生徒とどこで関わりを持てるのか疑問だが、オレの預かり知らないところで多くの生徒と関わっているのだろう。

 ……少し複雑な気持ちだ。これが俗に言う嫉妬という感情なのだろうか? 

 

「だから俺も断りづらくてさ。仕事自体には満足してるけど、2年生の先輩たちも結構ビクビクしながらやってるよ」

 

 苦笑いを浮かべながら話す高辻……そんな裏事情があったのか。一緒に働いてみたいと思っていたが、余計な事はしない方がよさそうだ。

 

「南雲先輩と龍園君……ちょっと怖いコンビかもね。2人とも手段を選ばないっていうか」

 

 櫛田も南雲のことを知っているのか、表情を曇らせてそう呟いた。

 

「正直大人しく金を返して、もうカジノには通わない方がいいんじゃないか? オレたち1年生にできる事なんて限られてるし、下手な事をして上級生に目を当てられたら大変だぞ」

 

「面倒だからって穏便に済ませようとするのは止めて頂戴。ルール上問題なかったとしても、明らかにモラルに反する行為だわ。しかるべき処罰を与えないと」

 

「そうかもしれないが……」

 

 マズい。堀北が変にやる気になっている。

 確かに堀北の言っていること自体は間違いではないと思うが、その裏側にある生徒会副会長……兄に選ばれた人間に対する対抗心が浮き彫りになっている。

 高辻の言っていることが正しいのだとしたら、まずロクな事にはならないだろう。

 

「……俺の方からも南雲先輩に聞いてみるよ。そこから動くのでも遅くはないんじゃない?」

 

「協力感謝するわ」

 

 ほぼ強制的に説き伏せられる形で、高辻も協力することとなってしまった。……さて、オレはどうやってフェードアウトしようか。

 

「来週の水曜日予定を開けておいて綾小路君。潜入調査よ」

 

「……ちなみに拒否権は」

 

「ある訳ないじゃない。強制よ」

 

 ……最悪だ。

 

 

 




 
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どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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