ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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 ここ好き見る限りやっぱり高辻のカスい発言が人気みたいですね。予定していたよりもまともな性格に寄りつつありますが、ちゃんとカスなのでそれを出していけるように頑張ります。


第18話 人間離れ

 

 

 

 石崎君に案内されながらVIPルームへと向かう。

 

「では、ベットをお願いします」

 

 石崎君が向かったのはルーレットのテーブルだった。後ろ姿しか見えないが、そこには確かに1人の女子生徒が立っている。

 

「やっぱり堀北さんか」

 

 あの凛とした佇まいと黒髪ストレートには見覚えがある。カジノにはもう来ないと言っていたが気が変わったのだろう。

 ディーラーは朝比奈先輩。従業員の中でも一番ルーレットが上手い人だ。狙った数字の1つ隣くらいの幅ならほぼ確実に入れられるこの人が、10万も負け続けているというのだから不可解な話だ。

 

「1stに1000点を賭けるわ」

 

 そんな朝比奈先輩の合図を聞き、堀北さんはテーブルの上にチップを置いた。賭け方は1st……36の数字の内、1から12の間を予想する倍率3倍の賭け方だ。

 ここまでなら特に目立った賭け方や怪しい仕草は見えないが、流れが変わったのは朝比奈先輩が球を投げた直後だった。

 

 ルーレットというのはディーラーが球を投げた直後であればチップを数字に賭けることができる。というよりも、ディーラーが狙った数字に入れられないようにするためにそうするのがセオリーだ。

 メインルームに来る人たちはそういうセオリーを知らないため投げる前に賭ける。だがVIPに来るようなガチ勢たちは皆、最初に少額を賭けて球が投げられた直後に本命の数字に賭けるのだ。

 

 だから、朝比奈先輩が球を投げてからチップを追加した堀北さんの動きは何もおかしくない。

 ……もっとも、()()()()()()()()()()()()()()()()、という言葉が前に付くが。

 

「それぞれに500点」

 

 堀北さんはその直後、13,36,24,15,34,22にそれぞれ500点を賭けてきた。

 カジノのルーレットというのは数字が固定されていて、数字も一見不規則に並んでいるように見えるだろう。しかし、これらはディーラーが狙った数字を出しにくくするために厳正に決められているのだ。例えば1の数字と2の数字が180度反対に置かれていたり、1から12の数字は基本的に3つ飛ばしで配置されているなどがある。

 

 そして堀北さんが賭けた6つの数字というのは、1から12の数字の間を丁度縫うように配置されているハズレの数字だ。

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ……以上でよろしいですか?」

 

 一瞬だが露骨に表情をしかめた朝比奈先輩。……うーんマズいな。やっぱり狙った数字を逆に狙い撃ちされている状況っぽいね。

 最終的に止まった数字は36。堀北さんが1点掛けした数字のため、配当は36倍で1,8000点。賭けた金額が4,000点のためこちらの大負けである。

 

「あんな感じで、ずっとルーレットでボロ勝ちされてんだよ……」

 

「なるほどね」

 

 あ、目が合った。先輩超涙目になってるじゃん。可愛い。

 そりゃそうだよね。せっかく狙って入れてもその先を当てられて、ずっとボコボコにされ続けてるんだもん。後で慰めてあげないと。

 

「俺行ってくるわ」

 

「お、おう」

 

 石崎君の肩に手をポンと置いて、可哀想な朝比奈先輩の元へと助けに向かう。

 丁度交代の時間になったのか、朝比奈先輩は泣きそうになりながらも、それでも気丈に堀北さんに対して礼をし、その後逃げるようにしてこちらへ駆け寄ってきた。

 

「高辻くん~」

 

「っとと。お疲れ様です朝比奈先輩」

 

 度重なる負けが続いておかしくなったのか、こちらに抱き着いてぐしぐしと胸に顔を埋めて来る朝比奈先輩。この人も大概距離感が近い。

 

「うぅ……あの子強すぎだよぉ。私が狙ったところ全部当てて来るんだもん!」

 

「そんな日もありますよ。後は任せてください」

 

 そんな可愛い朝比奈先輩の頭に手を置き、キザったいセリフを吐いて堀北さんのテーブルへ向かう。

 

「……あいつ朝比奈先輩には走ってても何も言わないのかよ」

 

 後ろで石崎君がなんか言ってるけど無視無視。可愛い女の子とむさ苦しい男を一緒にしないで欲しいものだ。

 

「やっほー堀北さん。随分調子いいみたいだね」

 

「あら、居たのね高辻君。おかげさまで稼がせてもらっているわ」

 

「あんまり朝比奈先輩を虐めないであげて。涙目になってたから」

 

「あら、客に勝つなと言うのかしら?」

 

 ノリに乗ってきているのであろう、不敵な笑みを浮かべてこちらを見つめる堀北さんに、こちらもおどけた笑みを向ける。

 はてさて一体どんなトリックで荒稼ぎしているのか、見せて貰おうか。

 

「丁度並んでる人も居ないみたいだし、このままやっちゃおうか」

 

 自分で言うのもなんだが、この店はお世辞にもゲームテーブルが多いとは言えない。というより思ってるよりも速いペースで人気になってしまったのが大きいかな。

 人気なテキサスホールデムやルーレット、ブラックジャックは大人数で遊べるが、その定員を超えて順番の列ができることも多々ある。

 もちろん並んでいる人が定員オーバーとなったら、先に遊んでいた人には出て行ってもらう必要があるが、生憎と誰も並んでいなかった。

 

「では、ベットをお願いします」

 

 そう言うと、堀北さんは少し間を置いて黒に3000点のチップを置いた。なるほど、そっちも小手調べということか。

 それ以上ベットをしないことを確認すると、俺はあえて何も考えずに適当に球を投げた。

 

 ルーレットの外壁を鋭い音を立てながら球が回っていく。球を投げる瞬間も、堀北さんに不可解な行動はみられない。

 

「ベットを締め切ります。よろしいですか?」

 

「ええ」

 

 カジノに来ているというのに何ともつまらなそうな顔をするね。

 勝つ瞬間のアドレナリンを全く感じていない辺り、本当に金を稼ぐことを第一に優先しているようだ。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 止まった数字は14。色は赤のため堀北さんの負けだ。

 テーブル上に置かれたチップを回収するが、堀北さんは眉一つ動かさない。Dクラスにとっては3000ポイントなんて大金だが、彼女はその先を見据えている様だ。

 

「続けますか?」

 

 堀北さんが無言で頷いたのを確認すると、溝に止まったボールを取り出しもう一度ルーレットを回す。

 再び同じようなやりとりが続いたのち、堀北さんが置いたのは2nd……13から24に3000点。

 

「池君と山内君の件があって、もう来てくれないかと思ってたから来てくれて嬉しいよ」

 

「あれはあの2人が馬鹿なだけ。適度に遊ぶ分には悪くない文化よ」

 

 先月はあれほど否定的だったのに考えが変わったみたいだね。

 

「あなたこそ、龍園君の下で働き続けるとは思わなかったわ。最近はCクラスのディーラーも増えてきたみたいだし、てっきりやめたのかと思ったけど」

 

 ということは、俺が行かなくなった2週間の間に何回か偵察に来ていたということだろう。最近は全然顔出して無かったからね。

 

「もう龍園君とは割り切ってるから大丈夫。クラスメイトに手を出したのもパフォーマンスみたいなものだと俺は思ってるし。今はクラスの為に頑張ってくれてるから文句はないよ」

 

「負け犬根性極まれりね。反撃しようとは思わないのかしら?」

 

 随分と強い言葉を使う子だ。綾小路君がいじめられていると愚痴ってくるのもよく分かる。

 

「それで手を出したら、俺だけじゃなくCクラスにもペナルティが降りかかるからね。それに暴力は嫌いなんだ。すぐキレる男ってダサくない?」

 

 現代の男にはスマートさが求められるからね。

 いかに沼らせて金を出させるか。いかに楽しみながら女を落とすかが大事だ。だから客と話すときも金を落とさせることだけを考えずに、まずは俺自身が楽しむことを最優先にする。

 

「時と場合によると思うけれど概ね同意ね」

 

 あら、意外と暴力自体は肯定派なんだ。……って、そう言えば清隆君の手のひらにコンパス突き刺してた女の子だもんね。ものがちがうわ。

 性格はともかく見た目は個人的には結構タイプだし、Dクラスじゃなかったら押しに行っても良かったんだけどな。その場合この子のお兄さんに殺されちゃうか。せめて来年だね。

 

 そんな雑談をしながらも球を投げ入れる。

 こちらの確認を待たずして、堀北さんは先ほどと同様に6つの数字に500点ずつベットした。

 

「では締め切らせていただきます。中々面白い賭け方をするね」

 

 堀北さんが賭けた数字は29,25,10、25,27,00。すべて最初に賭けた2ndに当てはまらない数字で、尚且つ6連続で隣り合った組み合わせだ。

 

「文句でもあるのかしら?」

 

「いいや、何も」

 

 もし相手している客が普通の客だったなら、俺は迷わずここを狙って投げ入れる。並んでいる6つどれかに入りさえすれば、負けさせることができるからね。

 だが、今までの堀北さんの賭け方とあり得ない程の勝率の高さから、俺は2つの確信を得た。

 

 1つは、堀北さん……あるいはその後ろに居る誰かが、俺たちディーラーが狙ったところに球を投げ入れることが出来ると確信していること。

 もう1つは、堀北さんたちがルーレットの回転数や球の投げる速さから、どの数字に入るかをある程度予想できるということ

 この2つは表裏一体だ。ディーラーの狙いを最初のベットであぶり出し、投げ入れる際の条件を目で見て判断してベットしているのだろう。理屈としては理解できる。

 

 言うは易く行うは難し。高速で回転するルーレットの数字を見極めながら、ディーラーが投げ入れる球の速度や角度を判断しないといけないのだ。

 実際に自分でルーレットを回し球を投げ入れることが可能なディーラーが、狙った数字に球を入れることとは、難易度も必要とされる動体視力にも隔絶した差がある。

 人体に高性能ハイスピードカメラと物理エンジンを組み込んでようやくできるレベルだね。とてもではないが人間にできる芸当とは思えない。

 

 朝比奈先輩が負けた状況を見る限り、10回近くはこの人間離れした実力を披露されたということになる。

 俺もやれと言われたら出来なくはないだろうけど、ここまでの精度を出すには1か月近くの練習を設けないといけないだろうね。それを堀北さんは2週間足らずで身に着けたということだ。

 その場合マジでギャンブルの天才だから、こんな学校さっさと退学してラスベガスに行った方がいい。きっと世界的な有名人になれるだろう。

 

 だが、ずっと負け続けるのはあまり面白くない。この絶望的な状況だからこそ燃えるものがある。

 

()()()()。……ごめんね堀北さん。こればっかりは運だから」

 

 止まった数字は堀北さんが予想した場所の対面に位置する11番。テーブルに乗せられたチップ6,000点全てハズレだ。

 

「……っ。ええ。分かっているわ」

 

 口でそうは言って平然を装う堀北さんだが、俺は彼女が一瞬だけ見せた怪訝そうな表情を見逃さなかった。

 

「よかった。池君みたいにヒートアップされたら気まずいからね」

 

 見事に予想が外れた堀北さんだが、細工されたボールを使用したとか溝から上に風が吹いてるなんて大層な仕掛けは無い。

 その理屈は簡単。投げた際に遠目で分からない程度に球を回転させたのだ。狙った数字は隣の30なので1マスずれてしまったがぶっつけ本番だから仕方がない。こんなのは今から修正していけばいい。

 

 たったの1回なら偶然だと思うだろう。だが、これが確信に変わるのにそう時間はかからないはずだ。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

「……しくじったか」

 

 VIPの休憩所にてコーラを飲みながら思わずそんな呟きが出てきた。

 ソファに身を預けながら盗み見るのは堀北の座るテーブル。

 

「もう一度だ。1stに3,000点。高辻が投げたら合図する」

 

 変装と音声通話をする目的で買った眼鏡型の通話器機に手を当てながら、再度堀北に合図を送る。

 ディーラーである高辻の死角からルーレット盤に目を送り、投げる瞬間のルーレットと球の速度を目に焼き付ける。

 

 先ほどは予想とは真逆の位置に球が落ちたが、そもそもさっきのディーラーと高辻の球の投げ方が同じだと想定する方が間違いだった。投げた瞬間は分からなかったが、球の軌道から逆方向に回転が掛かっていたのは明白だ。

 ならば、高辻が球を回転させることを考慮して計算すればいい。

 

「15,34,22,17、32,20に500点ずつ」

 

 指示通りに堀北がテーブルにチップを置く。

 しかし、最終的に球が止まったのは最初にベットした数字でもなく、最後にベッドした数字でもなかった。

 

「……マズイな」

 

 高辻は今度は前方向に回転をかけたようで、想定していた範囲を2度もズレる結果となってしまった。

 最初の1度だけならまだしも、数字を狙ったところに入れられるであろう高辻が余計なことをする必要は無い。……完全にこちらのトリックがバレているな。

 さっきのディーラーも恐らく狙った数字に入れていたし、そりゃ池と山内が合計20万近く負けるのも納得がいく。

 

 3回目のゲームが始まるタイミングで、突然高辻がルーレットに手を置いて回転を止めた。

 生徒の喧騒やスピーカーから流れる音楽のせいで会話は聞こえないが、堀北の声が耳元のスピーカーから聞こえてくる。

 

『……何を言っているのかよく分からないわね。私は今ここに1人でここに座っている。それ以外に何かあるのかしら』

 

 そう語る堀北に対し、高辻は長い黒髪で隠れた堀北の耳元に指を指す。……まさか、裏で誰かが指示を出していることにも気が付いているとはな。

 

『……分かった。少し外すわね』

 

 テーブルから離れ、部屋の端の方に移動し口元に手を当てる堀北。

 

『高辻君があなたと勝負をしたいそうよ』

 

「……受ける訳ないだろう。わざわざこんな回りくどいことをする理由が無くなる」

 

 この作戦を裏で仕切っているのがオレだとバレるのはマズい。

 

『あなたが出てくる必要は無い。……今まで通り、私を操り人形にしても良いとのことよ』

 

 少し捻くれた口調でそう吐き捨てる堀北。オレの言いなりに動いていることと、高辻に相手にすらされていない事実が気に入らないのだろう。

 ……仕方ない。このまま戦って勝てるとも思えないし、別のゲームで稼ごうにも対策されて終わりだろうな。

 こちらに有利な条件で戦ってくれる上、断ったら追い出されるのであれば受けるしかない。

 

「分かった。勝負を受けよう。何のゲームだ?」

 

()()()()()()()()()よ』

 

 高辻が指定してきたゲームはまさかのポーカー。

 こちらの表情など見なくても余裕だという、高辻のポーカーに対する自信が見て取れるチョイスだった。

 

「……面白くなりそうだな」

 

 そう呟きながら口元に手を当てると、自然と頬が吊り上がっている事に気が付いた。今まで一度も無かった現象だ。

 そんな自身の変化に驚きつつも、オレは胸の奥でうずうずと鳴る高鳴りを感じるのであった。

 

 

 





 綾小路の実力はなんぼ盛っても良いですからね。次でこの章は終わりかな。

 高評価、感想頂けると作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします! 

 最後に少しアンケートを取りたいと思います。気軽に回答よろしくお願いします。

どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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