ようこそ現役ホストのいる教室へ 作:カスのホスト
投稿時間は基本0時か6時です。間に合わなかったら6時の投稿になります。
高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
動画とかだと分かりやすいけど、文字だけにすると途端に難しくなりますね。
ポーカー分からない人は雰囲気で楽しんでくれると助かります笑 役の組み合わせだけ知っておけば楽しめるかもしれません。
アンケートありがとうございます。ヒロインとの絡み増やしていきますよー。
テキサスホールデム。囲碁や将棋、チェスなどと同じく頭脳を使うマインドスポーツに分類されるトランプゲームで、競技人口は全世界で1億人に上るとも言われている。
日本ではそれほど名の知れた競技ではないが、アメリカでは将来なりたい職業としてこのゲームのプレイヤーを上げる子供も少なくない。10億円もの賞金を獲得できる大会も存在するため、非常に夢のあるゲームと言えるだろう。
「さて、じゃあ始めようか」
向かい合う様にテーブルに座った俺と堀北さん。
場所はVIPルームとも遮られた、俺が従業員の子たちにゲームを教えるための部屋だ。邪魔が入られたらたまったもんじゃないからね。
「ということで、朝比奈先輩よろしくお願いします」
「……どういう状況なの? これ」
研修で使っている部屋に客である堀北さんが居るという状況に、突然連れてこられた朝比奈先輩は疑問符を浮かべている。
「堀北さん……正確には、その裏で指示を出している誰かさんとの勝負がしたくてね。負けたからって俺が勝てるようにイカサマしないでくださいね」
「しないし出来ないよ! ……裏でって、私のルーレットもその人が指示してたの?」
「うん。投げた瞬間のルーレット盤と球の早さから落ちる場所を予測してたみたい。しかも遠くからね」
ありのままの事実を伝えたのだが、朝比奈先輩は目をくりくりとまん丸に開いて静止してしまった。そりゃそうだよね。俺も自分で何言ってんだこいつって思ってるもん。
「……普通の人間にできるの? そんなこと」
「無理だね」
そんな人間がこの学校に居るということに、そしてそんな人間と戦えるということに興奮してしまう。
「って、それってVIPに居た誰かってことだよね。今から探しに行けば分かるんじゃないの?」
「もう自分の部屋なりどっかに行ってるでしょ。直接目で見なくていいんだから。ね、堀北さん」
「さあ、私にはあっちの状況は分からないわ」
黒幕さんは余程自分の正体が知られたくないらしい。堀北さんは一切の情報も渡さないとしらばっくれるばかりだ。
「いちいちチャットで持ち手を伝えるのも面倒だし、ビデオ通話で手札とカードを見せながらやってね。もちろん俺の顔を映して貰っても構わないよ」
カードを立てて並べられるスタンドを堀北さんの前に置いて、場に出たカードと手札を見せられるようにスマホスタンドを渡す。
堀北さんがカメラの画角を調整したのを確認し、画面を見ているであろう黒幕さんに笑顔で手を振る。
「持ち点は15万点。先に相手の点数を0にした方が勝ちのルール。もし俺に勝てたら池君と山内君の借金はチャラにしてあげるよ」
「ただのディーラーのあなたがそんな大言を吐いてもいいのかしら?」
「25万ポイントなんて稼ごうと思えば簡単に稼げるさ。その代わり、俺が勝ったら君の後ろに居る人の正体を教えてくれないかな」
そう聞くと、堀北さんは少し間を置いて答えた。
「……問題ないそうよ。負けるつもりもないとも言っていたわ」
いいね。お相手もやる気に満ちているようで嬉しいよ。
会話をしている最中にも朝比奈先輩の準備が終わったようで、慣れた手つきで俺と堀北さんの前にチップを置いた。
「先攻は譲るよ。最低ベットは300から行こう。5分ごとに倍にしていくからね」
────ここで簡単にテキサスホールデムのルールをおさらいしていこう。
テキサスホールデムは最初に配られた2枚の手札と、場に出た5枚のカードを組み合わせて5枚のカードを作り上げ、その5枚の役が強かった方が勝つという簡単なゲームだ。
もちろんこれだけだとただの運任せのゲームになってしまうため、プレイヤーにはチップが与えられる。
まずは先攻(ディーラーボタン)の人が最低ベットである300点を場に出し、後攻の俺がその倍の600点を支払う。強制参加費みたいなものだね。
そして配られた手札を見て、ここからプレイヤーには以下の3つの選択肢が与えられる。
・コール……直前に出た額と同額を場にベットする
・レイズ……直前に出た額の2倍以上を場にベットする
・フォールド……ベットせず勝負を放棄する
コールは様子見、レイズは強い手札が来たら使って、フォールドは弱い手札の場合に降参するといったイメージをしてもらえれば大体合っている。
まあ、一気に詰めこまれてもごちゃごちゃしそうだから実際にプレーしながら進めよう。
「では、よろしくお願いします」
朝比奈先輩が丁寧に礼をし、2枚づつ手札を配る。堀北さんが300、俺が600点をそれぞれ場に出し手札を開く。
俺の手札は……♠4と♥6か。柄の違う4と6だから……勝率は確か38%だったかな。
「レイズ」
そう言って堀北さんが置いたチップは1800点、3倍のレイズ。中々強いカードが揃っていそうな賭け方だ。
「コール」
現時点でのこちらの勝率が38%で、尚且つ相手のカードは強いと予想される。こんな状況なら普通はフォールドするのがセオリーだが、最初からそんな弱腰で戦うなんて楽しくないでしょ?
ちなみに手札の数字とマークで勝率というのは決まっていたりする。13×13でたった169通りの組み合わせを覚えるだけで、有利に勝負を勧められるからおすすめだよ。
堀北さんに合わせて1800点を出し、場に出た点数は合計4500点。そしてゲームは次の段階へと進む。
朝比奈先輩が3枚のカードを場に並べ、それらの数字を表に開く。
「♥Aと☘Jと♥4だね。場に出たカードは私が言っちゃった方がいいよね?」
「そうですね。カメラだと見づらいかもしれないですし」
さて、現時点で5枚のカードが開かれた。ここで俺は4のワンペアが完成。ここで4を引けたことにより、俺の勝率はおおよそ60%まで上がった計算になる。
後攻の俺からアクションを行うため俺はここで、
・ベット……300点(最低賭け金)以上を場に出す
・チェック……点数を賭けずにパスをする
の2つの選択肢が与えられることになる。先攻だと相手の動きを見てから賭けるか否かを決められるため、先攻が有利と言われている。
例えばここで沢山ベットすれば、この時点で強い組み合わせを完成させたとおのずと相手は思うだろう。そうなれば相手を降参させることも可能だ。
しかし、それがブラフだとバレれば賭け金を上乗せされ、負けた際の損害も多くなる。だからポーカーをやる上で表情を表に出してはいけないと言われている。
逆に、手札が凄い強かったとして、ガンガン多い金額をベットしていったら相手は降りてしまう。だからベットするにせよしないにせよ、その額の塩梅が大事になってくる。
────つまり、テキサスホールデムには『単純に強い組み合わせで勝って点数を得る』『ブラフをして相手を降参させて点数を得る』の2つの勝ち方があるのだ。
「1,500点をベット」
チェックをしたことにより、堀北さんにターンが移る。ここで様子見をするということは、勝てるか勝てないか微妙な手札だということをバラすことになる。
……さて、黒幕さんはどう出るかな?
「コール」
堀北さんはコール。つまり1500点を場に出したことにより、4枚目のカードが開かれる。ちなみにここで堀北さんがレイズしたら、俺がコールするかフォールドするかを選ぶターンとなる。
これを5枚めくるまで1枚ずつ繰り返していくのがテキサスホールデムの流れだ。
「じゃあ4枚目! ……♠のQだね」
うん。特に言うことは無い。ここで手札合わせて4枚目の♥が来たり、6が来たら勝率もぐっと上がるんだけどそう上手くは行かないようだ。現在の勝率はほぼ五分五分だ。
「チェック」
机をトントンと二回叩き、チェックの意志を相手に伝える。
「5,000点をベットするわ」
そう言って7500点しか置いていないテーブルにかなり強気にチップを置く堀北さん。
堀北さんがベットしたため続いて俺のターンが回ってくる。場に出した賭け金が同じになるまでこれを繰り返す感じだね。
「フォールド」
流石にこの手札で5,000点を賭けるつもりはない。リスクに対してリターンが少なすぎるからね。
ということで、場に出た7500点……俺の3,900点は堀北さんのものとなる。
最初は強気でレイズし、俺の1500点に対してレイズせず♠Qが出た途端に強気になったということは、恐らくは相手の手札はQとJ以上の強いノーペアだろう。
となれば、俺が勝つには2ペアかスリーカードを出すために4か6をもう一度引き当てないといけない。確率的には10%を少し超えるくらいだ。
最初イキった癖にフォールドするダサいムーブをかましちゃったけど、流石に俺も25万ポイントを自費で出すのはちょっと嫌だから本気で戦わせてもらう。
「いいね。どんどんやって行こう」
そんな楽し気な俺の声が、遠くから聞こえるフロアの喧騒にかき消されるのであった。
────────────────
「よし。良いぞ堀北」
高辻がフォールドしたのを見て堀北に声をかける。
こちらの手札は♦K、♦Qというかなり強い組み合わせだったが、結果的には1ペアのブラフによって勝利を収めることが出来た。
現在の点数は堀北153,900点。高辻が146,100点という微々たる差だが、初戦を勝利で納めることが出来たのは堀北のメンタル的にも悪くないだろう。
こっちの唯一の懸念点は堀北の表情で手札を読まれることだからな。
高辻はオレが勝率を計算できるソフトを使用して戦っていることも想定しているだろうが、こと今回の勝負においてはそんなズルをする気にはなれなかった。
「堀北さんって堀北会長の妹さんだよね」
堀北の端末越しに高辻の声が聞こえてくる。……おいおい、今になってその話題かよ。
「……何故そう思ったのかしら」
高辻にとっては何気ない雑談のつもりで話したのだろうが、堀北にとってはその話題はタブーだ。
「だって顔立ちとかそっくりじゃん。やっぱりそうだったんだ」
「そうだとして、その話は全く関係ないはずよ」
明らかに不機嫌になった堀北がそう言い返すが、高辻は気づいた上で苦笑いを浮かべている。
「いや、もし堀北会長に見られたら気まずいなって思ってさ。南雲さんから聞いた話だけど、あの人最後までカジノ反対してたっぽいし」
「私は娯楽のためにここに座っているわけじゃ無いわ。不当な金貸しに対して対抗するために戦っているの。一緒にしないで欲しいわね」
「そのためにはイカサマをすることも厭わないと。そういうことかな?」
高辻は意地悪な笑みを浮かべながら、自身の耳元に見せつけるように指を指した。堀北がオレと通話しながらルーレットで荒稼ぎした話をしているのだろう。
配られたカードを数字を確認。最低ベッドの300点を置きながらも、高辻の言葉は止まることを知らない。
「確かに龍園君のやり方に問題が無かったかと言われれば頷けないよ。でも実際にやっていることは合法の金貸し、国公認の消費者金融がやっていることと同じだ。だから学校側も問題ないとして君たちの訴えを却下した。そうでしょ?」
「一時は協力の姿勢を見せたあなたが、ここに来てその発言とはね。言いたいことがあるならはっきり言ったらどうかしら?」
「気分を害したならごめんね。でも、この場にいる以上は君もプレイヤーの一人ってことを忘れて欲しくなかったんだ」
語気を強くする堀北に対し、高辻は眉を八の字にしながら謝罪の言葉を口にする。
「……どういうことかしら」
「こんなに楽しいゲームをしているのに、君は随分つまらなそうに見えちゃってね」
「当たり前じゃない。……認めるのは癪だけど、私はただのこの場にいる代理で、実際に戦っているのはこの通話を優雅に聞いている誰かさんよ」
堀北がカードをこちらに立て、吐き捨てるようにそう呟いた。
それを見て高辻は小さく笑った後、込み上げてきた笑いを隠すように口元に手を置いた。
「ふっ、ははは……そっか。そうだよね」
暗幕に囲まれた部屋、テーブルを妖しく照らすライト。そんな雰囲気の中、完璧な着こなしのタキシードを身にまとって笑う高辻は、まるでマフィア映画に出てくる悪役のようにもみえる。
「そんな状況で楽しもうなんて、傲慢なお願いだよね。君もそう思うだろう? ────
「……は?」
そんな間抜けな声が部屋に響き渡る。……あり得ない、一体いつバレたんだ?
「何を言っているのかしら。綾小路君にこんな芸当が出来る訳ないでしょう?」
完全に油断しきっていたオレとは対照的に、堀北は全く動揺を見せずに言い返した。いつもは腹が立つ堀北の悪口だが、今回ばかりは感謝だな。
流石にブラフとしか思えない発言だ。突拍子が無さすぎる。恐らくこの言葉に対する反応で真偽を確かめる腹積もりだろう。
「その通り。こんな人間離れした芸当できる人間なんて相当限られてくる。それこそ俺の知り合いだと可能性があるのは鬼龍院先輩か堀北会長くらいかな? 一番あり得そうなのは堀北会長だけど、君の口ぶりからするとその線もないだろうし、鬼龍院先輩が協力するとは到底思えない」
「……」
「というより、そもそも知らない人からの協力なんて君は受け入れないでしょ? リスクが高すぎるし」
今堀北が使っているチップは、山内が龍園から借りた残りのポイントを交換したものだ。そんな大事なチップの行く末を知らない生徒に任せるなど、確かに堀北はやらないだろう。
「ともすれば君と親しい生徒でスペック高そうな生徒は……清隆君しかいないよね」
「だから、綾小路君にそんな芸当できると「出来るでしょ」……意味が分からないわ」
苛立つ堀北にあっけらかんと返す高辻……おかしいな。高辻の前で本気を出したことなんて、一緒にクレーンゲームをやったときくらいしか無いんだけどな。
「あいつ明らかに実力あるのに隠してるじゃん。付き合い長い方だし見てれば分かるよそんなの」
「高辻……」
……流石はオレの親友だ。まさか見抜かれるだなんて思ってもみなかったぞ。
「テストで全教科50点取って実力を隠した気になったり、アイアンマンの変身シーンではしゃぐような馬鹿な所はあるけどね」
「おい」
何なんだこいつ。褒めてるのか馬鹿にしてるのかどっちかはっきりしてくれ。上げて落とされるのが一番辛いだろ。
「あんな済ました顔をしておいてそんな面があったなんてね。気色悪いわね」
「おい、お前このまま通話切ってやっても良いんだぞ堀北。いやマジで」
何なんだこいつら。さっきまで険悪なムードだったのに変なところで意気投合するなよ。
「まあいくら否定しても構わないよ。俺は君の裏に居る黒幕さんは清隆君だと確信して戦うだけだから」
「そう。せいぜいその読みで自滅しないことね」
「ふふっ、そうだね。……無駄話もここまでにして、再開しようか」
そんな雑な締め方をして高辻は一枚のチップをテーブルに置いた。
「レイズ」
そう言って高辻は1枚1,000点のチップを3枚、3000点分をレイズした。
こちらの手札は♥Jと♠A。悪くない手札だが、異様な自信を見せる高辻が気になった。ブラフなら何かしらの反応が見えるはずだが、その様子も特に感じられない。
「フォールドしてくれ」
そう言うと、堀北はカードを裏返しでディーラーに基に投げてフォールドの意味を示した。
「さて、ここからが本番ってところかな。本当はフォールドさせて手札を見せるなんてあり得ないけど、ちょっとだけサービスしてあげる」
高辻はカードを表にしてこちらに投げてきた。
「……なるほどな」
画面越しに見えたのは♥2と♣️3。勝率で言うと32%にも満たない最弱と言っていい手札だ。
こんな手札で最初からブラフを行うなどあり得ないが、高辻は全く嘘をついている仕草を見せないでオレを騙しきった。
「ポーカーフェイスは得意なんだ。騙されないように気を付けてね?」
「最近家に新しいソファーを買おうと思っててさ。清隆君も俺も体大きいから、最初に買った二人用のソファーだと肩がくっつくんだよ」
既にゲーム開始から20分と少しが経過した。現在の最低賭け金は4800点。意外にも高辻は堅実な立ち回りを続けており、じわじわと削られて現在こちらの持ち点は12万程度。
「……そう。15000点をベットするわ」
手札に♠A、♠4が来た状態でテーブルには♠5、♠8、♥Q、♠Kが出ており、現時点でスペードのフラッシュというかなり強い組み合わせが出来ている。仮に高辻がスペードのカードを2枚持っていたとして、こちらにはAがあるためこちらの勝利。勝率的にはかなり高い状態だ。
しかしここで賭け過ぎてもフォールドされてしまうため、最低掛け金の3倍程度の点数を賭ける。現在場に出ている点数は35000点だ。
「コール。ただそれだと寮の部屋が手狭になっちゃってさ。そこで教員用の寮を借りれないか考えたんだよ」
高辻も手札にはかなりの自信があるのだろう。速攻でコールをして15000点を場に出した。
最後の1枚は♥の9。相手の手札がどれであれ、こちらのフラッシュを越えられる手札が存在しないため勝ちが確定した。
「30000点をベットしてくれ」
堀北も自身の手札が強いことは知っているのだろうが、勝ちが確定しているところまで理解しているわけでは無いだろう。これがかえって良い方向に働いている。
ここで高いチップをベットして降ろさせるよりも、乗せさせて勝った方が点数を獲得できるため多少強気のベットする。
今までの賭け方からして高辻の手札は恐らくQかKのペア。そのどちらだとしても高辻視点の勝率は90%以上になる。期待値で考えるのであれば乗ってこない理由はない。相手が強い手札じゃないでと予想されるベットの仕方なら猶更だ。
「フォールド」
しかし、オレの予想に反して高辻は手札をディーラーの元へ投げ捨てた。
これにより場に出ている合計5万点が堀北の元へと移動する。
「ここの勝ちは譲ってあげるよ」
まさか10%程度のフラッシュを読んだというのだろうか。だとすると高辻はこちらが4枚目をめくった時点で完成していたことを想定しないといけないが、それを回避するために少額のベットに押さえた。
……裏の裏を読まれたな。やはり手強い相手だ。読心術、それも堀北を通してオレの心を読んでいるとしか思えない。
しかし勝利は勝利。こちらの持ち点は155,000点。久しぶりに高辻の点数を上回った。
「25分が経過しました。最低掛け金が9600点になります」
「そろそろ決着がつきそうだね。楽しい時間はあっという間だ」
テーブルに両手を乗せ、身を前に寄せながら足を組み直した高辻。
だが言葉とは裏腹に、その顔にはこの時間を1秒でも楽しもうとする好戦的な笑みが張り付いていた。
────────────────
強い。
数十分程度の間で、対峙した相手に抱いた感想はその一言に尽きた。
ルーレットの件で動体視力や修正能力が非常に高いことは知っていたが、こと今回においてはまるでAIと対峙しているような錯覚さえさせられる。もちろんいい意味で。
手札から得られる勝率や期待値を計算する速度が異常だし、単純に引き運が強すぎる。
だがそれと同時に、あまり対人の経験を積んで来なかったんだろうと予想もできる。ベット、レイズする額がセオリーとは大分かけ離れていたからだ。
通常ポーカーのベット、レイズ額は先人たちが期待値と人の真理を総合して作ったセオリーというものがある。例えば最初にレイズするときは3倍以上の額を出すのが強いとか、とにもかくにも色々あるのだ。
その歪さも俺との戦いで段々と修正していき、今や全ての立ち回りにおいて文句の付け所が無い所まで進化している。まるで鏡写しの俺と戦っていることを錯覚させられるほどだ。
俺が10年近く研鑽して身に着けた技術を、黒幕さんはたったの数十分で身に着けたということになる。
だが、不思議と悪い気はしなかった。
「25分が経過しました。最低掛け金が9600点になります」
朝比奈先輩がそう告げると共に、目の前に2枚の手札が配られる。
「そろそろ決着がつきそうだね」
そう言った後にカードを中身を見て、吊り上がろうとする頬を抑えてポーカーフェイスを保つ。
「コール」
堀北さんが置いた参加費19,200点に対し、同様の額をテーブルに置き勝負に参加する。
本来はレイズをするべき場面だが、ここで賭け金を上乗せしてしまうとほぼ実質オールインになってしまうため押さえておく。
黒幕さんも同様の考えだったのか、レイズをすることなく勝負を続行した。場に出ている点数は合計48,000点。よほどのことがない限りはこのターンで終わりそうだ。
「では開きます……♠A、♥6、♠10です」
「20,000点をベットするわ」
テーブルに強気にチップを置く堀北さん。相手もこのターンで決める腹積もりのようだ。
「コール」
同様にチップを置く。場に出ている点数は合計88,000点。
4枚目のカードが開かれる。
「♠のQ」
「チェック」
ここで様子見のチェックか……あまり強くない手札の可能性が高そうだね。
「10,000点をベット」
これ以上掛け金を吊り上げ過ぎても降りられる可能性が高いため、常識外に少ない額をベットする。
「……コール」
少し間を置いてコールする堀北さん。黒幕さんも迷っている様子だが仕方がないだろう。俺は今までは理論値を求める『強い』戦い方をして来たんだ。
先ほどは強いカードを持っていたかのように振る舞っておいて、今度は弱気にベットする一見一貫性のない弱い立ち回り。
だが、時として最適解を導く戦い方よりも、一見非効率的な戦い方が勝つ時だってある。そこがポーカーの面白い所なんだ。
「♥A」
朝比奈先輩がカードをめくった瞬間、俺は今までのポーカー人生の中で最も感情が昂ったのを自覚した。
「30,000点をベットするわ」
場に出ているカードは♠A、♥6、♠10、♠Q、♥A。恐らく相手の役はストレートかフラッシュかフルハウス。どれも確率3パーセント程度の強い組み合わせだ。基本的にこれらの役になったら負けることは無いと考えてもらっても良い。期待値的には強気のベットをしなければならない。
♥Aで強気にベットしたってことは多分フルハウスかストレートかな? どちらにせよこの役でベットするのは間違いじゃないね。
ベットした瞬間の堀北さんの表情など目に入らなかった。その時点で俺は自身の勝利を確信していたからだ。
楽しかったよ。
ここまで心躍る、ひり付く戦いは初めてだ。
本当はこんな安っぽいチップじゃなく、もっと豪華な舞台で人生を賭けて戦いたかった。
だがいいじゃないか。こんなに早く本気で戦える相手に会えたのだから。
何をやっても一番になれた、そんな退屈な旅路の途中で、俺を越えうる相手と出会えたのだから。
「
手元に残っている7万近くのチップを全てテーブルの上に投げ出す。朝比奈先輩がビクッと体を震わせたが気にしない。
さあ、乗って来いよ……! ここでフォールドするなんてクソしょうもないことはしないよな!?
「ふふっ」
「……?」
オールインした瞬間、堀北さんはその長い髪の毛をかきあげて、耳元に付けた白いイヤホンを取り出して小さく笑った。
「オールイン」
そして、迷うことなく丁寧に積み上げたチップをテーブルの上に移動させた。
「……では、両者カードをお開き下さい」
朝比奈先輩の合図に合わせ、表向きでカードをテーブルに置く。
「Aのフォーカード」
俺の手札は最強のAのペア。テーブルに出たカードを合わせても0,16%しか出ないレア中のレア役だ。それもAという最強の数字で。
何年もポーカーをやってきた人でも、数えられる程度しか出したことの無い組み合わせと言っていいだろう。
「えっ……う、嘘でしょ……」
そのとき、朝比奈先輩の動揺したような声が耳に聞こえてきた。
何事かと顔を上げると、そこにはこれでもかと胸を張ってドヤ顔をする堀北さんの姿があった。
「────
テーブルの上に置かれた堀北さんの手札は♠のJとK。約65万分の1という確率の役を、堀北さんは最後の最後で作り上げたのだった。
────────────────
「はぁ……男がポーカーに負けたくらいでみっともないわね」
堀北さんのため息が嫌に耳に残る。そんなの俺でも分かってる。でも流石にそんな速攻で立ち直れる気にはなれない。
「……ちょっと堀北さん。そんなこと言ったら高辻君泣いちゃうよ……だ、大丈夫高辻君?」
堀北さんを咎めるように、テーブルに突っ伏す俺の背中をさすってくれる朝比奈先輩
「大丈夫です」
「ほ、本当? 私には全然大丈夫そうには見えないなー……なんて」
「いや、マジで大丈夫です。ホントに」
ああ……今の俺って滅茶苦茶ダサいんだろうな。
当たっちゃってごめんね先輩。この前行きたがってたお店奢るからさ……って、あのバカ共の借金返すからしばらく金無し生活じゃん。最悪だマジで。
「よしよし。格好良かったよー高辻君。マフィア映画のラスボスって感じで!」
それって最後に主人公に倒されるって意味? ……駄目だ。思考がどんどん悪い方向に転がり落ちてる。
「あれだけ勝ち誇った上負けて、その挙句女に慰められるなんて、みっともないにも程があるわね。恥を知りなさい」
「君人の心ないのかなぁ!? 高辻君本当に泣いちゃうよ!?」
「……」
泣いてないよ。……泣いてないけど何故か自然と目に涙が滲んできた。
「ああもうほらぁ!?」
朝比奈先輩は俺の頭を抱き、自身の胸に包むようにして頭を撫でてくれた。
……柔らかいしいい匂いがする。
「……大丈夫です。ありがとうございます」
「本当? 目元腫れてるよ」
……先輩。そういうことは気が付いてても言わないのが気遣いってもんですよ。
「約束通り、山内君と池君の借金は無しにしてもらうわよ」
「うん。分かってるよ」
「約束を違えたら、あなたがそこの彼女の胸の中でみっともなく泣き腫らしたことを広めるから、分かった?」
酷い。酷すぎるこの女。マジで人の心ないやん。
「まあ、でも悪くない時間だったわ。最後に気持ちのいい勝利を決められたしね」
ここに来てデレが出るのか。ここまでしてやっと出るとかマジで貴重じゃん。
「楽しかったなら何よりだよ。……清隆君に色々教えてもらいなよ。今度はサシで勝負したいな」
「遠慮しておくわ。
呆れたように溜息を吐きながら額に手を当てる堀北さん。どうやら頭を使いすぎたようで、罠に引っかかったことに気がついていないらしい。
「やっぱ清隆君だったんだ」
「……あっ」
やってしまったと咄嗟に口を手で覆う堀北さん。さっきまでの凛とした表情はどこへやらだが、こういう顔もギャップがあって可愛いね。
「……ごめんなさい綾小路君。私も少し浮かれているみたいね。ええ。もちろん申し訳ないと本気で思っているわよ」
そう言って逃げるようにイヤホンをケースにしまった堀北さん。
「お前マジでよくもやってくれたな!? このままいけばバレずに済んだかもしれないだろ!?」
無線接続が解除され、端末から聞こえてきたのは清隆君の焦った声。これでもう黒幕さんは清隆君で確定だね。
「私を良いように使おうとするのが間違いだったのよ」
「おまっ……お前マジで……」
「ばーかばーか」
キレそうになっている清隆君を煽るように言い放つ。
先ほどまで殺伐としたゲームをしていたとは思えない程、緩み切った空気がその場に広がっていた。
「良いじゃない。最後は私の強運で勝てたんだし。誰も聞いていないのを良い事に、間抜けな声を上げていたあなたとは違ってね」
「……いや、だって普通おかしいだろ。ロイヤルストレートフラッシュだぞ。ポーカーのプロでも人生で一度出るか出ないかのレベルだしな。よく最後まで動揺せずに隠し通せたな」
「私は高辻君に楽しめと言われたから楽しんだだけよ。おかげでいいものも見れたし」
俺の顔を見てふっと心底馬鹿にしたように笑う堀北さん。丁度いいおもちゃを見つけたようなノリで人のことを虐める子だ。
清隆君は分かんないけど、この子がDクラスに所属させられたのは性格が悪いからだ。断言できる。
「朝比奈先輩でしたっけ」
そして、思い出したかのように朝比奈先輩に話しかける清隆君。
「う、うん。お疲れさま綾小路君。凄い試合だったね」
「そうですね……流石にオレも疲れました。ということなので、このことはくれぐれも秘密にお願いします。さもないと……」
「さもないと……?」
物騒な文言に朝比奈先輩が遠慮がちに聞き返す。
「高辻があんたの胸でみっともなく泣いていたことを方々に言いふらします」
「おい」
テメェもかよふざけんな。
「ということで、切るぞ堀北」
「ええ。お疲れさま綾小路君。流石に大手柄ね」
「……初めて聞いたぞ。お前のねぎらいの言葉」
「……忘れなさい」
こいつらも大概仲良いよな。俺の両親の夫婦漫才と似たようなものを感じる。
「じゃあ、私も帰るわ」
こちらの返事を待たずして暗幕を除けて退出した堀北さん。……何かどっと疲れたな。嵐のような人だった。
そして、部屋には俺と朝比奈先輩だけが残った。タキシード姿の朝比奈先輩は、VIPの喧騒とBGMも含めて少し色っぽい雰囲気を醸し出している。
「ふっ……ふふっ。面白い子たちだったね。綾小路君だっけ?」
「……いや、笑い事じゃないっすからね朝比奈先輩。普通に俺の学生生活終わりますし、先輩だって嫌でしょ?」
泣いている後輩を胸に抱きしめたなんて、色々と変な噂が立つに決まってる。
「別に、高辻君だったら悪い気はしないけどね?」
「……そうっすか。いや、嬉しいですけど」
つんつんと俺の頬をつつきながら、にっこりと笑顔で語る朝比奈先輩。
ひよりちゃんを思わせる意識外からの攻撃を食らってしまった。凄い恥ずかしいけど嬉しいしもう何だか情緒が滅茶苦茶だ。
「まっ、その場合雅とバチバチになっちゃうから無理かな。ついでに雅のこと倒しちゃう?」
そう言えばこの人南雲先輩に告られてたんだっけ。「堀北会長を倒せたら付き合ってあげる」なんてことを言える辺り、何となく関係性は伺えるよね。……って、南雲先輩セフレ作りまくってるから断ったんだっけ朝比奈先輩。じゃあ俺無理じゃん。
「はぁ……もう帰ります。南雲先輩とは仲良くしていきたいんで」
「つれないなぁ」
勘弁してくれ。ケツモチに歯向かったら何もできないでしょうに。
「まあ、今はかっこかわいい弟って感じだけどねー私からしたら。ほらほら~もう一回お姉さんの胸で泣いてもいいんだよー?」
両手を広げて意地悪に笑う朝比奈先輩。
……こいつムカつくな。何分普通に魅力的なのがウザい。
抱き潰して俺以外受け入れられない体にしてやろうかな。その場合南雲先輩の脳が破壊されちゃうんだけどさ。
なんてことは言えないため、朝比奈先輩の大きな胸を両手でもみもみと揉みしだいておく。
「ひゃあ!? ちょ、ちょっと何するのよっ! ……んっ♡」
うんうん。この瘦せすぎてない健康的なプロポーションが良いんだよね。ワイシャツ越しに高々と主張しているこの山を揉むのもまた一興だ。
「ひっ♡……調子乗らない!」
「いたっ」
ペシッと両手を叩かれ手を離されてしまう。
「高辻君のえっち!」
そのまま両胸を抱えるようにして距離を取る朝比奈先輩。何時もの余裕そうな顔が赤く染まっている姿は非常にそそるものがある。
「な、なんてことするんだね君は!」
「先輩が可愛いくて、つい」
「い、意味わかんないし! ホントに雅に言うからね! そういうことは付き合ってからじゃないとしちゃいけないんだよ!? 男の人に揉まれるの初めてだったのに……! 」
「……そうですよね。ごめんなさい、調子乗りすぎました」
もう一度泣きそうな顔で謝罪すると、朝比奈先輩は面白い位におどおどとしてこちらに駆け寄ってきた。
「そ、そんなに? いつもと全然違う……」
普通に善人過ぎて罪悪感生まれてきた。俺がこういうタイプの女の子にマジで弱いことを自覚させられる。
「そうだよね……堀北さんの前ではちゃんと振る舞ってたけど、あんな負け方して、あんな酷いこと言われたらへこんじゃうよね……」
どうやら俺が堀北さんと清隆君の前で無理して振る舞ってたと勘違いしているようだ。実際にへこんでるのは間違いないから何とも言えないんだけど。
「……しょうがないなぁ」
すると、朝比奈先輩は暗幕についているひも状のロックを閉じて、外から開けられないようにした。着替えとかでも使ってるゆえの設備だ。
「ほら。今度は揉んじゃめっ、だからね?」
朝比奈先輩は座ったままの俺にもう一度抱き着いてきた。先ほどと同様に柔らかい胸の感触が顔に伝わってくる。
ヤバい。いい女過ぎだろこの人。普通に惚れそうなんだけど。
「……立っていいですか」
「えっ、このまま? ……いいよ」
頭を撫でている手をどかし、背中に回した腕の力を緩めた朝比奈先輩。
「こうしてみると結構おっきいよね。身長何センチ?」
立ち上がると身長差が顕著になるのか、上目遣いで見つめる先輩は恥ずかしそうに視線を横に逸らした。
「175です。まだまだ伸び盛りですよ」
「そ、そうなんだ……んっ」
今度はこちらから抱き寄せてみる。
朝比奈先輩は少し恥ずかしそうに身じろぎした後、胸板に顔をくっつけてもじもじと押し付けてきた。
「朝比奈先輩これ好きですよね。さっきのルーレットでもしてましたし」
「……私、普通ならこんなことしないからね」
そうかな。割といろんな人に距離感近いと思うんだけど。まあ、俺以外に抱き着いてるところはみたことないか。
というより、ワイシャツに顔うずめてきても化粧移ったりとかしてないんだよね。つまり朝比奈先輩はノーメイクということである。それでこれだけ美人なんだから人間国宝と言っても過言じゃない。
「じゃあ俺が特別ってことですか?」
「ん゛ん゛……そういうことじゃ……ないけど」
恥ずかし気に喉を鳴らし顔を上げる。
俺が慰めてもらうはずだったのに、何故か朝比奈先輩は顔を赤くさせ、瞳をうるうると潤わせてこちらを見上げてきた。
「なんか安心する……のかな。分かんないや」
「親が恋しかったりして」
「そうかも。もう1年以上声も聞いてないもん」
まあ、何だかんだ言って高校2年生だ。親とずっと会えていないなら不安の一つや二つ出てくるだろう。朝比奈先輩みたいに優しい人なら猶更だ。
「じゃあ、お互い寂しくなったらこうやってぎゅーしましょう。ハグするとストレス減るって言うじゃないですか」
「……うん」
恥ずかしそうにそう呟くと、朝比奈先輩は大義名分を得たというかのように、落ち着くまで俺の胸に顔を埋めるのであった。
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「……こんな夜中に呼び出して、他の人に見られたらどういうつもりなんですか」
夜11時。帰宅して着替えを済ませ、風呂に入って部屋着姿の俺の隣に座るのは、同じくパジャマを着た有栖ちゃん。
フリルが付いた可愛らしい肩だしのピンクの布地には、これまた可愛らしい猫の肉球が付いている。
ちなみに割と見慣れた服装である。何故なら普通に夜遅くに俺の家に来るからだ。
「いっつも突然来るくせに」
「今日は土曜日でしょう? 明日休みの日は、遅くまで外にいる学生も珍しくないんです」
確かにそうかもしれない。学校の敷地とあって、遅くまでで歩いていても補導はされないからね。コンビニくらいしか開いてないけど。
「ごめんごめん。ほら、おいで」
「……」
ソファに座りながら両手を広げると、有栖ちゃんは無言でゆっくりと立ち上がってこちらへ寄って来た。
そして、そのままおれの膝の上に跨るようにしておしりを置いて座る。二人とも生地の薄いパジャマなので体のラインがよく伝わってくる。
「ふふっ、珍しいですね。清夜君の方からなんて」
膝の上に座ると言っても、30センチ近くの身長差があるため目線の高さはほぼ同じだ。
「今日はちょっと辛いことがあってさ」
「あらあら。付き合ってもない女性に慰めを求めるんですか? 困った人ですねっ」
そう言うと、有栖ちゃんは俺の頭に腕を回してキスをしてきた。
「んっ……ん、っ……」
色っぽく声を上げながら口の中に入れた舌を這わせる有栖ちゃん。……最初に比べて大分上手くなってきたな。やっぱ天才を自負するだけあるね。
「んっ……今日は何があったんですか?」
可愛らしく呼吸を整え、抱き着いた状態で耳元で囁いて来る有栖ちゃん。
────そう。俺が有栖ちゃんの初キスを奪ってから2か月の間で、俺たちは付き合ってもないのに唇を交える歪な関係になってしまったのだ。
キッカケは些細なこと。いつも通り部屋に遊びに来た有栖ちゃんが急にキスをして来たのが始まりだ。
なんかされっぱなしは負けた気がするということらしく、それからは部屋で遊ぶたびにといった感じだ。
「龍園君の借金の件でさ────」
説明をしながら経緯を思い出してみる。
例えば日曜の夜とかは家に飯を集りに来るため、ご飯を食べて歯を磨いてそのままラウンド開始といった感じだ。
だから洗面台の棚の裏には有栖ちゃんの歯ブラシが隠されている。映画とか一緒に見ながら気が向いたら……といった感じでいると自然と合計1時間くらいは平気でキスしてたりする。
最初はお互い唇腫れまくってたけど、最近はリップを塗らなくても問題なくなってしまった。
「そうですか。ロイヤルストレートフラッシュ……私もポーカーは嗜む程度ですが、清夜君に勝ってしまうとは相当な実力の持ち主ですね。……ん」
話をし終わると途端に唇を落とす有栖ちゃん。今日はいつもより激しいな。滅多に俺からお願いしないからだろうね。
そこまでするならセックスしろよって思うだろうけど、有栖ちゃんからはプライド的な理由で求めてこないんだよね。多分俺を我慢できなくさせて襲わせる的な目標があるのだろう。
ちなみに俺は滅茶苦茶我慢してる。我慢しまくって翌朝学校に早く行って保健室のベッドで知恵先生を死ぬほど抱いて発散してる。
だからお互いめっちゃ我慢してるっていう意味不明な状況なんだよね。有栖ちゃんは1人寂しくというのを考えると可哀想だよね。
そっちから求めてくれるなら全然抱くのに。俺からだと付き合わなきゃいけなさそうだから絶対行かないけど。
「そう、それでお金無くなっちゃってさ」
「……そうですか。それは災難ですね」
俺が何を言いたいのか察したのだろう。有栖ちゃんはそっぽを向いて冷たくあしらってきた。
「来月までキス1回1000ポイントでどう?」
「嫌です」
「そこを何とか、ガチで行くからさ」
「……今まで本気では無かったと?」
「もちろん」
初キスの時が本気だと思ったようだが、流石に初キスの高校生に本気出したら失禁しちゃうからやってない。
「……なら見せてください。その本気とやらを」
口調某悪の帝王みたいになってておもろい。
「よし。じゃあ今日は俺と一緒に寝ようか。明日休みだから丁度いいね」
「えっ」
人間の記憶に一番残る五感は嗅覚と言われている。
俺の匂いのついた枕を持って帰るような有栖ちゃんのことだ。シングルベッドに連れて行かれたら大変なことになるだろう。
「……狭いベッドで寝たくないんですけど」
「大丈夫大丈夫。くっ付けば暖かいし快適だよ。お金溜まったら広い部屋で一緒に寝ようね」
早く教職員寮借りるポイント貯めたいんだよな。知恵先生の部屋行きやすくなるし。
今更逃げようったってそうはいかないぞ。エアコンガンガンつけて離れられないようにしてあげよう。
部屋の電気を消し、新しい枕を有栖ちゃんに渡し、清隆君とクレーンゲームで取ったぬいぐるみを頭の下に入れる。
「私こっちが良いです」
そう言って俺の頭の下にあるぬいぐるみを強引に引っ張り抜く有栖ちゃん。ぬいぐるみ好きだよなこの子。
そのまま抱き合って布団を上から被せ、足を絡めながら鎖骨辺りに有栖ちゃんの口元を持ってくるように抱き寄せる。
「……見かけによらず大きい体ですよね。まだトレーニング続けてるんですか?」
「もちろん。男磨いてる瞬間が3番目に楽しいよ」
1番目は相性のいい女を抱いている時で、2番目は狙った女が落ちた時である。
「ちょっと強く抑えちゃうかもだから、苦しかったら言ってね」
まあ、離すとは言ってないんだけどさ。
この子多分ちょっと押さえつけられるのとか、首絞められるのとかハマれるタイプだと思うんだよね。今日でその素養を確かめたいと思います。
「えっ……────んんっ!?」
カスホストの弱点:動揺するとホストの仮面が剥がれる。
想定の100倍朝比奈先輩がヒロインに近づいてる…
最後は無人島試験から出番が無くなる坂柳さんで締めたいと思います。
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第2章これにておしまいです! 皆様の応援でここまで来れました! これから無人島試験に入っていくので、高評価いただけたら励みになります!
どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)
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主人公とヒロインの絡み
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主人公と龍園、綾小路等との絡み
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バチバチのクラス間闘争