ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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第3章 無人島試験編
第20話 反抗期


 

 

 

 8月。色々と特殊なこの学校も休みの日程は同じのようで、2回目の定期テストを終えて一週間ほどで1か月程度の夏休みが与えられた。

 夏休みと言えば友達や家族と旅行に行ったり、好きな女の子と夏祭りに行ったり、はたまた家で花火をしたり色々あるだろう。

 世間は楽しいイベントで目白押しだが、そんな中オレこと綾小路清隆は……

 

「コール」

 

 うん。普通に高辻の部屋でポーカーをしていた。

 というのもさっき言ったような魅力的なイベントは、全て普通の高校生がやることだ。

 普通の高校生とオレたちとの違い、それは夏休み期間であっても敷地の外に出られないこと。とすると、自ずと唯一の娯楽施設などには人がごった返すことになる。

 

「オッケー。じゃ、開くよ」

 

 来客が見込める期間ともあって、ケヤキモールには臨時展開されるお化け屋敷を含めた、色々なイベントが行われているそうだが、外は暑いし人は多いしでいく気になれなかった。

 因みに高辻は仲の良いクラスメイトと2人で行ってきたらしい。もちろん例の如く女子だ。

 

「……Qのハイカード」

 

 開いた手札とテーブル上のカードを組み合わせても、一つのペアも作ることは叶わなかった。

 

「フラッシュだから俺の勝ちだね」

 

 対する高辻のカードはフラッシュ。勝てるわけがない。これに負けたことにより、現在の点数はオレが4万点、高辻が16万点。

 今回はお金を賭けずに普通に遊んでいるだけなので損害はないが、こうも負けが続くとあまり良い気分はしない。

 

「……ちょっとやってて思ったけどさ」

 

 カードを集めてシャッフルしながら、高辻は言いにくそうに視線を逸らした。

 

「お前運悪すぎじゃない?」

 

「……言うな。オレが一番分かってる」

 

 高辻はうーんと唸った後、2枚1組のカードを6組作ってオレの前並べた。

 

「適当なの3組選んで」

 

 3組を選んで手前に置いたのを確認にすると、高辻は残ったカードを全て表にした。

 

「俺のは……AとQ、9と5、3のペアか。まあこんなもんだよね普通」

 

 オレもそれに習ってカードをめくってみる。

 出た数字は2と3、4と9、3と7……全て手札の時点での勝率40パーセント以下の弱いものばかりだった。

 

「しょっぱなからフォールドしまくってたり、明らかに無理筋な手札で勝負してたのもこれが理由?」

 

「……ああ。堀北のときはこんな事無かったんだけどな」

 

「へぇー。ここまで下振れ引き続ける人マジで初めてかも。おもしろー」

 

 ぷぷぷと口元に手を置いていたずらっ子のように笑う高辻。

 普段は余裕のある立ち振る舞いをする高辻だが、2人きりになるとこうして子供っぽい部分が露骨に出てくる。きっとこっちの方が素なんだろうな。

 

「そういえば出発まで一週間切ったけど、ちゃんと準備とか終わらせた?」

 

 出発というのは来週に控えている豪華客船によるクルーズ旅行についてだろうか。

 なんかいいよな。男同士のこういう省略した適当な会話って。お互いに気を許している感が出て。

 

「ん、まだだな。正直何を持っていけばいいのかすらよく分かってない」

 

「ちゃんと日焼け止めとか持ってかないと駄目だよ? あと酔い止めとかも必須かな。うるさいと眠れない人なら耳栓もほしいかもね」

 

「随分手馴れてるんだな。こういう旅行は何回か行ったことあるのか?」

 

「うん。小さい頃からよくね。俺は酔わない体質だから良いんだけど、親父は大分船酔いする人だったから」

 

 手癖でシャッフルしていたトランプを机の上に置き、ソファーから立ち上がる高辻。

 ちなみにこのソファーは以前家に置いていた2人用の小さいものではなく、L字の形の3人用のソファーだ。あれから1回ポイントの振り込みが行われたとはいえ、池と山内の借金を返した後でどこにそんなお金があるのか不思議なものだ。

 

「昼飯食ってくでしょ?」

 

「おう。助かる」

 

 オレの部屋にはカップ麺しかないし、かと言って暑すぎて外に出る気にもなれないからな。

 

「ちょっと待ってて。すぐできるから」

 

 立ち上がってキッチンに向かう高辻。

 そこそこの時間がかかることを見越して動画を見て時間を潰そうと思ったが、高辻は10分程度で両手にガラス製の皿をもって戻って来た。

 

「夏と言ったらこれでしょ。めんつゆはこのまま使っていいよ。オリジナルだから」

 

 高辻が持ってきたのは、綺麗に巻かれた状態で皿の上に鎮座するそうめんだった。

 心なしかオレの記憶よりも麺にツヤがあるように見える。盛り付けがいいとこう見えるんだな。

 

「いただきます……! これは!」

 

「揖保乃糸の特級品だからね。美味いでしょ」

 

 一口食べて分かった。これはコンビニで売っているようなそうめんとは格が違うと。

 揖保乃糸というのが何を示すのかは知らないが、恐らくブランド的な意味合いを持つ言葉だろう。

 

「美味い、美味いぞ!」

 

「ふふん。ただのそうめんと侮って貰ったら困るよ清隆君……聞いてる?」

 

 高辻が得意げに胸を張っているが、そうめんをすすることに夢中になっていたため聞き流してしまった。せっかく用意してもらったのに申し訳ない。

 

「まあいいや。俺も食べよ」

 

 そう言って隣に座って高辻も食べ始めた。

 

「うっま! ガチの麺には自家製の麺つゆに限るね」

 

「レシピは自分で考えたのか?」

 

「ううん。これは母さんに教えて貰った奴だね。お前と同じでめっちゃ暑がりだからあの人」

 

 コップに注がれた麦茶を飲み、火照った体を急速に冷やす。

 何てことない1日だが、これがオレにとっての理想の日常なのかもしれない。

 

「暑がりの考えためんつゆとか一番信用できるでしょ」

 

「違いない」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんなことを密かに思いながら、オレと高辻は2人並んで麺をすするのだった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 夏休みに入って1週間と少しが経過した夏の日。

 珍しく予定が入っていなかったため、俺は知恵先生の居る保健室へとお邪魔させてもらっていた。夏休みと言えば日中の部活動が盛んにおこなわれる時期、熱中症などの生徒が出ても対応できるように保健室は常に空いている。

 しかし現代の日本において、熱中症が出るまで走らせたりする顧問なんて絶滅危惧種だろう。そして他の生徒もそもそも学校に来ないため、保健室には俺と知恵先生しかいない。

 ……となればすることは1つしかないだろう。

 

「え? マジで言ってますそれ」

 

 敷設されたベッドのカーテンを閉じ、することを済ませた俺は、隣で横になっている知恵先生に聞き返した。

 

「ええ。夏休みにも入ったし、閉校後に出て朝に帰ってくるくらいならバレないわよ。久しぶりにお父さんとお母さんの顔、見たいんじゃない?」

 

「まあ……そりゃそうですけど」

 

 3か月程度の付き合いだが、既に俺が両親大好きっ子なのがバレてしまっているためそちらの方向で攻められる。

 

「私の車に乗って隠れていれば大丈夫。入口に守衛さんいるけど、私たちはID通すだけで出入りできるから。GPSとネットの使用履歴からバレちゃうから携帯は置いていってもらうけど」

 

 ……まあ、未成年淫行バレるよりはマシか。正直両親に会いたいっていうのは結構ある。

 3年間会えないと思ってた息子が突然帰ってくるんだからビックリするだろうな。……どうやって出れたんだって聞かれた時がちょっと面倒くさいけど。

 

「分かりました。何日に行きますか?」

 

「今日行っちゃいましょう。だって明後日には船の上にいるのよ私たち」

 

 そりゃそうだけど……やっぱり色々と突然だよなこの人。

 

「分かりました。見られると色々マズいので変装していきますけど、どこ集合にします?」

 

「夜9時に教職員寮の駐車場で集合しましょう。そこなら人に見られる心配も無いわ。この時間に出かける人なんて早々いないし」

 

 ……楽しみだな。この3か月で背もちょっと伸びたし、成長した息子の姿を見せてあげよう。

 同級生の友達にポーカーで負けたって知ったら驚くだろうけど……やっぱいいや。黒歴史をわざわざ教える必要もないだろうし。

 

「分かりました。じゃあ今日はいったん帰って着替えてきますね」

 

「あら。もういいの? 流石に暑くてバテちゃったかしら?」

 

 腕をこちらに回し、へそや鼠径部をやらしく撫でてくる知恵先生。

 これでも普通の人からすると多すぎるくらいだけど、いつもはこの倍近くしているからか慣れてしまったようだ。

 

 そんな知恵先生の手を取り、恋人つなぎをしてにぎにぎと握る。

 

「今日の夜沢山出来るじゃないですか。最近ずっと真っ昼間からでしたし」

 

 流石に教員寮に出入りするのはリスクが高すぎるため、初日以外はずっと学校が開いている時間しかできていない。

 

「あら。先生をホテルに連れ込む気?」

 

「学校の外だったらお金使い放題ですから。ディナーは銀座のちょっといいお店に行きましょう。もちろん俺の奢りです」

 

 入学前に口座の金はほとんどを投資信託につぎ込んだが、それでも百万ほどは自由に使えるお金が残っているはずだ。

 金自身も銀行で腐るよりも美女とのデートに使ってもらった方が幸せだろうしね。

 

 そのとき、突然保健室の扉がノックされる。

 

「! は、はーい! どちら様?」

 

 慌てて起き上がり、下着姿から服を着てその上に白衣を羽織る知恵先生。ガラガラという音と共に扉が開かれる。

 急いで着直したためか着崩れがひどく、色々と人目に晒しちゃいけない格好をしていた。

 

「すみません、ちょっと足を挫いてしまって……って、何してるんですか?」

 

 そんな状況で生徒の前に出るわけにはいかないため、知恵先生はカーテンから顔だけ出して対応するという強引な策を打って出た。

 

「ご、ごめんねー。今熱中症で倒れちゃった子の看病してたの。すぐに行くからそこ座ってて……ひゃっ!」

 

 後ろから見たらこちらに尻を突き出しているようにしか見えない。そのため俺が反射的に尻を撫でてしまったのも仕方のないことだろう。

 

「は、はぁ……ありがとうございます」

 

 明らかに怪しい態度だが、普段の言動が幸いしてか深く追及されることは無かった。

 しかしそのあとしっかり怒られたことは容易に想像できるだろう。

 

 

 

 

 

 そして時間が流れ夕方5時。俺は数か月ぶりに自宅のマンション前に立っていた。

 本当なら知恵先生とちょっぴり大人なデートをするはずだったのだが、最初に顔を見せてこいとのお達しをされたためだ。そういう所で包容力を見せて来るのはズルいと思うんだ。

 

 ということでインターホンを鳴らしてみる。今の時間帯なら両親ともまだ家に残っているはずだ。

 そうじゃなくてもお手伝いさんを含め誰かしらは開けてくれるだろう。

 

「……清夜か!? お前っ、学校はどうしたんだよ!?」

 

 スピーカー越しだが聞き覚えのある、懐かしい男の声が聞こえてきた。

 

「やっほー親父。ちょっと色々あって抜け出せてきたんだ。開けてよ」

 

「……すまん。今少し大事な話をしていてな。母さんも誰も居ないんだ」

 

「はぁ? 親父浮気だけはするなってあれほど言ったのに」

 

 喜んで開けてくれると思ったが、返ってきたのはは数秒の空白と否定の言葉だった。この時間に母さんもお手伝いさんも全員いないとか浮気しかありえないだろ。

 こんな事を言いつつも、俺は自分の父親が浮気をするなど微塵も思っていなかった。ただ懐かしいツッコミを食らいたかっただけである。

 

「……すまん。お前のボケに乗ってあげられる案件じゃないんだよ。こっちも余裕がないんだ」

 

「……分かった」

 

 ……何だよそれ。久しぶりに帰ってきた息子に対する態度か? 

 なんてことを思わなかったわけじゃ無いが、親父がこのテンションの時はガチの時なので口を閉じる。

 

「悪いな。少しロビーで待っててくれないか……はい? ……分かりました。清夜、やっぱさっきの話無しだ。今すぐ部屋に上がって来い」

 

 いやどっちだよ。まあ行くけどさ。……でも俺をわざわざそこに呼ぶ理由なんてあるのだろうか。

 帰宅の不運を呪いつつエレベーターへ乗り込む。

 

 最上階のフロアへ到着し、角部屋である自宅の前へ立って再度インターホンを鳴らす。

 セキュリティの面からこういう手順になっているが、こういうときは余計に面倒だ。

 

「おかえり。悪いな。早々こんな物々しい雰囲気でよ」

 

「別に慣れっこだから大丈夫。で、誰が来てるの?」

 

「見りゃ分かる。大事な得意先だ」

 

 親父がそこまで言う相手で、かつ俺が知っている人となると大分限られるな。記憶の中から検索をかけたが、該当する人物を完全に絞り込むことは叶わなかった。

 ともかく、相当な大物であることは間違いないだろう。変装の為に正装じゃなく適当な服を着てきたことがここで裏目に出るとは。

 

 親父の後ろをついて行く形で応接室へと向かう。心なしか廊下の空気も少し重い。

 

「失礼します」

 

 親父に続いて例をして入室する。こういう礼儀作法は小さい頃に両親からみっちり仕込まれた。

 俺の家族団欒を邪魔したヤツはどこのどいつだろうと頭を上げる。

 そこに座っていたのは、俺が小さい頃に何度か話したことがある人物だった。

 

「久しいな高辻清夜。最後に会ったのは7年ほど前か」

 

()()()()()……お久しぶりです。そうですね。母の店で会合をしたのが確かその時期だった覚えがあります」

 

 その男の名は綾小路篤臣。現在与党である市民党に所属する元衆議院議員である。

 数年前に政治家を辞めてからの情報は一切入ってきていないが、現役時代は相当な地位と後ろ盾を持っていたイメージだ。

 

「こんな格好で申し訳ございません。まさか綾小路先生がいらっしゃるだなんてつゆ知らず」

 

「気にするな。こちらとしても極秘の取引だ。知らないのも無理はない」

 

「極秘……それは、私が通っている学校と何か関りのあることでしょうか?」

 

 わざわざ俺をここに呼ぶ理由などそれしか思い当たらない。

 逆を言えば、その依頼をした人物が綾小路先生だということを俺はここで初めて理解した。

 

「流石に感づくか。そうだ」

 

 勘弁してくれよ。何で裏でヤクザとも繋がってる大物政治家が俺に依頼してくるんだよ。しかも親父経由となると相当な面倒事になるのは間違いない。

 何せこの綾小路先生は、親父と母さんの店のケツモチであるヤクザ、大場組との密接な関わりがある。つまり、この人の一言で親父の首が飛ぶ可能性も0とは言えないのだ。

 

「本来ならしかるべき手順を踏み、伝えようと思っていたのだが。まさかあの箱庭から抜け出してくるとはな。流石お前の息子といったところだろう」

 

「ありがとうございます。しかし、本当に清夜に依頼するのですか? お言葉ですが、綾小路先生が直々に動かれた方が確実かと。こいつもまだまだ未熟ですし……」

 

「いいや。あの学校の特性上、生徒としての立場にある者が動く方がよっぽどことが進みやすい。下手に干渉した証拠を残せば今度はこっちに足がつく。そうすればお前の店も無事では済まないだろう」

 

「ですが……」

 

 やはりこの場においては親父より綾小路先生の方が立場が上のようだ。

 暗に『この依頼を飲まないのならこの店の後ろ盾を無くす』と言っているようなものだから。

 

「もちろん、追加の報酬も出すつもりだ。高辻清夜が新たな店を出店する際の協力も惜しみなくするつもりだ」

 

「分かりました。依頼の内容を教えてください」

 

 内容次第だが、受ける価値は大いにあると思った俺は綾小路先生の目を真っ直ぐに見つめる。

 俺の成果次第で、親父や母さんが積み上げてきた努力の塊が潰える可能性があるのだ。失敗は許されない。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()退()()()()()……それがお前に依頼する内容だ」

 

 

 

 





ここでプロローグの話と繋がってきます。

 高評価、感想頂けると作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします! 

どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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