ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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第21話 悪だくみ

 

 

 

 知恵先生との逃避行を終えて3日。

 敷地外に出た事がバレることもなく予定通りにクルーズ旅行が始まった。

 間もないうちに船は旅行先である無人島へと到着し、今は()()()()()()()()の説明を受けた後である。

 

「大丈夫ですか?」

 

 真夏の炎天下。思考がどんどんと深い方へと落ちていくのを止めたのは、心配そうな顔でこちらを覗き込むひよりちゃんだった。

 

「体調が優れなさそうです。熱中症ではありませんか?」

 

 俺の髪をかき上げ、その小さくて白い手を俺の額に当てるひよりちゃん。

 Cクラスの生徒が全員いるのだが、そんなことを気にする余地はないと言った様子だ。

 龍園君に殴られた時期も含め、距離感が近いと一部の女子から文句を言われたそうだが、天然過ぎてそれを跳ねのけてしまったのは記憶に新しい。

 

「大丈夫。昨日楽しみ過ぎて眠れなくてさ。ちょっと寝不足なんだ」

 

「無理はなさらないでくださいね。幾ら試験とはいえ、倒れてしまっては元も子もないですから」

 

 俺的にはひよりちゃんの体力の方が心配だけどね。運動とか全くしてないんだし。

 相変わらず母親気質のひよりちゃんに苦笑いを浮かべながら、それぞれ仲の良い生徒で固まって、不平不満を浮かべているクラスメイトを見る。

 

「無人島で試験ってどういうことなのよ……1週間もサバイバルなんてできる訳がないじゃない」

 

「それなー」

 

 真鍋さんが苛立ちを隠さずに文句を言った。その言葉に仲の良い女子生徒数人が同意する。

 そう。身の丈一つで無人島に降ろされた俺たちに待ち受けていたことは、クラスそれぞれが協力して一週間サバイバルをしろというお達しだった。

 

「何だ真鍋。そんなにこの試験が嫌なのか」

 

 そんな真鍋さんに話しかけたのは龍園君。

 

「りゅ、龍園君……そ、そういう訳じゃないよ。ただ私たちにできるか不安なだけで」

 

 この3か月でクラスの支配者と化した男に話しかけられた真鍋さんは、タジタジになりながらも自身の心境を打ち明ける。

 ここでしっかりと意見を出せるところがクラスの女子の中で立場が高い所以であろう。その分彼女を嫌う人も少なくないことも聞くけどね。

 

「そりゃそうだ。だがそんなお前らに朗報がある」

 

 そんな真鍋さんに笑いながら、全員に呼びかけるように語る龍園君。自然と皆が耳を傾ける辺りからも、彼がリーダーという認識はクラス内で共通のだということがよく分かる。

 

「朗報……ですか?」

 

 そんな龍園君の言葉に疑問符を浮かべるのは石崎君。

 

「ああ。お前らは真面目に一週間サバイバルするのが嫌なんだろう?」

 

「まあ……こういうのやったことないし、男子と同じとこでって言うのもちょっと……ね」

 

 真鍋さんの言葉に頷く女子たち。それを聞いた男子もの言いたげな表情だが、風呂無し簡易トイレしかないガチサバイバルとなれば嫌になるのも無理はないだろう。

 

「なら辞めちまえばいい。わざわざ学校の指示に従う理由なんてどこにもない」

 

「どういうこと?」

 

 いまいち要領の得ない龍園君の言葉に疑問符を浮かべるクラスメイト。

 

「簡単な話だ……今回のサバイバル試験、お前ら全員でリタイアすればいいんだよ」

 

 そう言い放った龍園君は、今まで見たことがないくらい楽しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、今回はどういう作戦で行くつもりなの」

 

 一部を除いての一部に選ばれたため、森の奥へと移動しながら隣で歩く龍園君に声をかける。

 表向き仲の悪いはずの龍園君だが、この場に居るのは()()()()()()俺と龍園君の関係を知っている人しかいないので問題ない。

 

「今回の試験、お前はどう考えている」

 

 質問に質問で返すような形で返答した龍園君。かなりざっくりとした内容だが、クラスメイトの大半を浜辺に置いてきた後なら、その言葉が意味することは何となく理解できる。

 

「ほとんどのクラスはポイントを残す方向性で行くだろうね。それが正しいかどうかはクラスの団結力次第だと思うよ」

 

 一番分かりやすいのは一之瀬さん率いるBクラスだろうね。遠目で見ていただけだが、開始早々言い争うこともなく皆で目的地へと向かっていた。

 統率、団結に置いてあのクラスの右に出るものは居ないだろう。今回の試験ではBクラスが基本有利というのは揺るがない事実だ。

 

「そうだな。そして、Cクラスの様な集団行動に適していないクラスも存在する」

 

「というより、Bクラス以外のクラスは厳しいんじゃないかな」

 

 Cクラスと同様個人主義の生徒が多い印象があるDクラスと、集団行動は出来るであろうが派閥同士が2分して睨み合っているAクラス。

 どちらも全く異なる理由だが、それぞれ連携力に障害が生じるのが確実だろう。

 

「そもそも男女40人でサバイバルしろって言うのが無茶なんだよ。よほど優秀なリーダーが居ないと途中で空中分解するのが目に見えてる」

 

 寝床、食事、衛生、役割分担。そのどれを取っても火種が燻っている。それを高校生40人で7日間ともなれば順調に行く方がおかしい。

 各クラスのリーダー格の生徒を見る限りだと、それぞれ毛色は違うけど優秀な人を配置させたんだろうと予想はつく。

 

「だから最初に配られた300ポイントを犠牲にする選択肢も案外悪い考えじゃないかもね。少なくとも空中分解して亀裂を残すよりかは」

 

「同意だ。だがもちろんタダでポイントをくれてやるわけにはいかない。そこでお前の意見を聞きたい。物資を売るならどのクラスが最善だと思う」

 

B()()()()だね」

 

 龍園君の質問に対し考えることもなく即答する。既にこの質問を予想していたからだ。

 

「何故そう思う?」

 

「支払い能力に問題が無くて、尚且つ一番ポイントをあげていいクラスだからかな」

 

 Aクラスと迷ったが、個人的にはポイント差を含め怖さがないBクラスと取引した方がいい気がする。

 

「Dはちょっと胡散臭いから関わりたくないかな。あとAクラスに関しては放っておいても自滅するだろうっていうのと、ちょっといい考えがあるんだ」

 

「ほう? お前がそこまで積極性を見せるとは珍しいな」

 

「まあね。この試験においては増減するクラスポイントが多いから。ちょっとやる気出してお小遣い増やそうかなって」

 

 本当は全く別の所に理由があるのだが、それをわざわざ教えられるほどの信頼は置いてない。

 

「はっ。どっかの馬鹿が勝手に借金を建て替えやがったからな。こっちとしてもありがたい話だぜ」

 

「だから今回はそのお詫びも兼ねてってことで、最大限協力させてもらうよ」

 

 痛い所を突かれてしまったが、今回に限っては反論している時間も余裕もない。

 俺がするべきことは今回の試験で最善を尽くすただそれだけだ。

 

「いいだろう。聞かせろ」

 

「まあ、例の如く表立って動いてもらうのは龍園君なんだけど────」

 

 作戦の内容を伝えると、龍園君はみるみるうちに口元を歪めて悪い顔で笑い始めた。

 

「ククク……お前も中々えげつないこと考えるじゃねえか。その発想は無かったぜ」

 

 クラス全体の作戦を考えていればそこまで頭が回らないだろう。細かな所に頭を回せる立場だからこそ浮かぶ発想だ。

 意地の悪い笑みを浮かべる龍園君に肩をすくめながら、俺たちは作戦の細かなすり合わせを行う。

 

「……」

 

 そんな俺たちを不満げに見つめる伊吹さんを、俺はあえて無視し続けるのだった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 試験2日目の朝。オレと堀北、そして櫛田は他クラスへの接触を兼ねた探索へと赴いていた。

 堀北と相性が悪い櫛田をわざわざ連れて来たため、堀北は先頭を無言で歩き続けている。

 

「暑いね~……綾小路くんはぐっすり寝れた?」

 

 隣で歩く櫛田が半袖のジャージの胸元をパタパタと動かしてため息を吐く。

 自覚しているのかは定かではないが、動かすたびに体のラインが浮き出ていて少し目のやり場に困る。

 

「微妙なところだな。下に何も敷かずに寝たから地面に寝ているのとさほど変わらなかった」

 

 木の葉のおかげで日陰になっているから多少マシだが、それでも体にまとわりつく嫌な熱気が不快感を底上げする。

 これでまだ日が昇って少しというのだから嫌なものだ。

 

「櫛田はこういう試験得意そうだよな」

 

「そうかな。私もサバイバルとかはテレビでしか見た事無いから……」

 

「ああ。少なくとも皆で協力することに関しては率先してやってくれるだろ。そういう生徒はDクラスには貴重だからな」

 

 目の前を歩く堀北をそっと一瞥して視線を戻す。

 堀北自身も協調性の無さを自覚している。彼女にとっては耳が痛い話になるだろう。

 

「えへへ。そう言ってもらえるのちょっと嬉しいかも。でも皆が協力してくれるおかげだよ。池君とかかっこよかったもんね」

 

 確かに池のサバイバルの技術や知識はこの試験では大いに役に立つだろう。現に昨日も食べられる果物や魚を釣ったりしてDクラスの食事を支えていた。

 ギャンブルにハマって借金を作ってきたときには「本当に彼を助ける意味があるのか」なんて考えていた堀北だが、今回の試験では現状堀北より活躍していると言っていい。

 

「その言葉、池に直接言ってやれ。多分1週間寝ずに働いてくれるぞ」

 

「そ、それはダメだよ! 倒れちゃったりしたら大変だもん」

 

 焦ったように言葉を詰まらせながら否定する櫛田。普段の様子も相まって、こういう抜けているところも彼女のチャームポイントだ。

 

「冗談だ」

 

「っもう! 意外と意地悪なところあるんだね綾小路君って……って、あ!」

 

 そんな櫛田に小さく笑って返すと、櫛田はぷんぷんと怒りながらも何かに気がついたように声を上げた。

 無視を決め込んでいた堀北も流石に気になったのか、後ろを振り返って櫛田の方を見る。

 

「見てみて堀北さん! 綾小路君が笑ったよ!」

 

「……そんな下らないことで声を上げないでもらえないかしら」

 

 今回に関しては堀北に完全同意だ。ただ笑っただけで世紀の大発見をしたかのような反応をされるとこっちが困る。

 

「いや、だって私多分初めて見たよ! 綾小路君が笑っているとこ!」

 

「意外と笑うわよ。特に高辻君の話を聞いてもいないのに私にしてくるときとかね」

 

「へぇー、そうなんだ」

 

「さっきの生意気な発言も高辻君譲りじゃないかしら。彼のせいで私の隣が騒がしくて仕方がないもの」

 

 そこまで言われる筋合いはないのだが、確かに小さくだが笑えるようになってはいるはずだ。

 

「確かに結構言ってそうなイメージかも。意外と意地悪なところあるもんね。もし兄弟が居るなら絶対末っ子だと思う」

 

「基本面倒見が良い奴ではあるんだけどな」

 

 櫛田と高辻トークを繰り広げながら、オレは指摘された通り口元が緩くなっていることを自覚した。

 

 今まで全くそういう事が無かったのを考えると、細かいことだが確かにオレ自身が変化しているということか。

 ……その変化が良いのか悪いのかはさておき、今までの15年で凝り固まった考え方を変えるチャンスと言っていいのかもしれない。

 

 だから、オレも少しだけ今回の特別試験には協力の姿勢を見せようと思う。もっとも、他に理由が無いかと言えば嘘になるのだが。

 

「堀北、こっちに行ってみよう」

 

 前を歩く堀北のジャージを掴み、振り向いた堀北に左の方向を指さす。

 

「何故かしら」

 

「この大木。明らかに人工的に折られた形跡がある。きっと学校側が作った目印だ」

 

 この場には櫛田も居るがさしたる問題じゃない。この程度なら偶然の発見だと誤魔化せる。

 

「……なるほど。気が付かなかったわ」

 

「わっ、ほんとだ。凄いね綾小路君!」

 

「おう」

 

「やるじゃん」と言いながら背中を軽くたたいて来る櫛田にすました顔で応えながら、目印の方向へと歩き出す。

 櫛田に凄い奴だと思われたいという下心もほんの少しだけある、ほんの少しだけな。

 

 

 

 木々が生い茂る無人島と言えど、40人が集団で生活できるような場所は限られてくる。

 歩き続けて数分、目的地であるBクラスのキャンプ地へとたどり着いた。

 

「Bクラス……噂には聞いていたけど、これは思ったよりも強敵になりそうね」

 

 Bクラスのベースキャンプに着くと、Dクラスとはまるで違う生活観がそこにあった。

 Dクラスの川辺のスポットも中々に良いものだとは思うが、こちらは少し狭いが井戸の周りを拠点としており、テントを広げられない部分はハンモックを縛って代用していた。学校が管理する井戸ともなれば飲み水にも困らないだろう。

 そして何より驚かされたのは彼らが持つ独特の雰囲気だ。

 

「あれ? 櫛田さん?」

 

 遠目から様子を観察していた俺たち……の中の櫛田に話しかけてきたのは、ストロベリーブロンドの美少女だった。

 その顔には見覚えがある。以前俺が茶柱先生に呼び出され、職員室に居た星之宮先生に絡まれていたときに、間接的ではあるが救ってくれた一之瀬というBクラスの生徒だったはず。

 

「一之瀬さん。ごめんね突然お邪魔しちゃって」

 

「大丈夫だよ。……えっと、君は多分綾小路君? だよね。そっちの子は分かんないけど、Dクラスの子だったよね。図書館で見た気がする」

 

 一度も話したことがないのに何故かオレの名前を知っている一之瀬。

 

「あれ? 2人共知り合いだったの?」

 

 櫛田も疑問に思ったのか首を傾げている。

 知らない女子生徒に名前を知られているなんて、もしかしたらオレにもモテ期というものが来ているのかもしれないな。

 高辻はこういうイベントは日常茶飯事だったらしいから、ずっと一緒にいるオレにも恩恵が回ってきたのだろうか? 

 

「えっと……高辻君って分かるよね? 写真見せて貰ったんだ。ゲームセンターでクマのぬいぐるみを抱いてる、ツーショットの写真」

 

 全然違った。「あの人カッコいいよね! ○○ちゃんあの人の名前知ってる?」みたいな展開ではなかったようだ。

 ってここでも高辻の名前が出てくるのか。あいつの交友関係の広さにはつくづく驚かされる。自分で言うのもなんだが、何故そこまで友達がたくさんいるのにオレのような日陰者と遊んでくれるのだろうか。

 

「私服で顔立ちも似てたから兄弟? って聞いたんだけど、全然違かったみたいで、恥ずかしくて覚えてたんだよね」

 

「……似てるか? オレと高辻だぞ」

 

 片や学年クラス問わず人気者。片や岩の陰に隠れているダンゴムシのような日陰者。似ている要素なんて0な気がするけどな。

 櫛田も無言でジロジロとオレの顔を見つめている。きっとこの数秒後には「似てるわけないじゃん」なんて言われるんだろうな。

 

「……似てるかも」

 

 マジかよ。

 

「だよね! 櫛田さんもそう思うよね!」

 

「うん! 性格とか全然違うから印象無かったけど、こうしてじっくり見ると目とか輪郭とか凄い似てる」

 

 こんな小さなことでも盛り上がれる女子というのは不思議な生き物だ。……まあ、女子の胸の大きさでバカ騒ぎをする男子よりかはマシか。

 というより、オレと高辻が似ているということは、つまりオレもイケメンに属する生物の可能性が高いのでは? 

 

「似ていたとしてもその性格じゃ意味が無いわね。櫛田さんもそんな話をしに来たんじゃないでしょう?」

 

「あはは……意外な発見だったからつい、ごめんね堀北さん」

 

 しっかりと怒られる櫛田と、何故か巻き込まれる形でディスられたオレ。

 流石高辻からハリネズミみたいな女の子と形容されるだけある。返しのついた棘が心に刺さって中々抜けない。

 

「えっと、堀北さんだよね。話って言うのは?」

 

 シュンとする櫛田に苦笑いを浮かべながら一之瀬は問いかける。

 

「私たちDクラスと協定を結ぶ提案をしに来たのよ。お互いの物資の情報を交換して、リーダーが判明しても互いに当てないという協定をね」

 

「協定……理由を聞いてもいいかな?」

 

 唐突にも思える堀北の提案にも、一之瀬は動揺することなくその意思を問いただした。

 

「Dクラスがイレギュラーなのは十分承知だけど、それでもAクラスとそれ以外のクラスの差は歴然よ。この特別試験はその差を埋める大きなきっかけになるわ」

 

「だからAクラス以外のクラスが協力して、Aクラスとの差を無くそうってこと?」

 

「そうよ。もちろん説明にあたってこちらの拠点にも案内するわ」

 

「でも、それって堀北さんたちのメリットがあんまりなくない? 正直私たちは君たちの拠点を知らないんだし、見るだけでも何を使ったかなんてある程度わかるでしょ?」

 

「そうかもしれないわね。でも、どちらかというとこの協定は長期的に見た方がメリットがあると思うの。協力関係を成立させたクラスがあるだけで、他のクラスにアドバンテージを取れるわ」

 

 堀北から協力という耳を疑うような言葉が出てきたが、これは堀北が協力の大切さを理解したのではなくオレの指示だ。

 勿論最初から受け入れる訳もなく、カジノで出来た借りを返せという名目で従わせた。後が怖いがそんな悠長なことは言ってられない。

 

「私も一之瀬さんなら信用できるなって、堀北さんに伝えたの。だからお願いっ!」

 

「……なるほどね。もし今後協力できる試験があったときのために、今のうちに慣れておこうって感じだね。いいよ。皆に確認させて」

 

 一之瀬たちBクラスにとっても、600ポイント近く差のあるクラスと協力したところで、自身の立場を脅かされることは無いという安心感はあるだろう。

 櫛田のお願いもあり前向きな返事をしてくれた一之瀬は、5分ほどしてこちらへ戻って来た。

 

「皆納得してくれたからお願いしたいかな。こっちからもよろしくね堀北さん」

 

「ええ。よろしく頼むわ」

 

 一之瀬から差し出された右手を握り返す堀北。ここに、DクラスとBクラスの協定が結ばれた。

 協定の内容の細かい所をすり合わせ、双方クラスの代表者として同意した。その内容としては以下の通り。

 

 1.互いの使用した物資についての情報を共有すること

 2.島内で採れる食料や物資についての情報を共有すること

 3.互いにリーダー当てをしないこと

 

「早速共有したい情報があるわ。Cクラスについてなんだけど」

 

「……Cクラス?」

 

 堀北の口から出たCクラスという単語に疑問符を浮かべる一之瀬。

 一瞬だが一之瀬の表情が歪んだ気がする。……やはりCクラスには何かがあるな。

 

「先日Cクラスの生徒を2人保護したの。話を聞けば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()そうよ。2人とも顔に殴られたような怪我を負っていたわ」

 

「えっ、それって……」

 

 ギョッとした表情で堀北の言葉を待つ一之瀬。

 普通の高校生からしたら、クラスメイト同士で怪我が発生するような事態は信じられないだろう。

 

「龍園君……Cクラスのリーダーの生徒に殴られたそうよ。今も船に戻れば何をされるか分からないと不安そうにしているわ。他にもそういう生徒がいたら保護してほしいの。もしかしたらCクラスの問題行動を訴えられるかもしれないわ」

 

「なるほどね……」

 

 どこか納得したように呟く一之瀬。こちらの想定していたものと少し異なる反応に堀北が首を傾げる。

 

「実は、私たちも1人保護……というか、一緒に試験をしている子がいるの」

 

「! それはCクラスの生徒かしら?」

 

「うん……だけど」

 

「だけど?」

 

 いまいち要領の得ない一之瀬の解答に、櫛田が不思議そうに聞き返した。

 

「ちょっと元気すぎるって言うか、問題があったとは到底思えなかったっていうか……あ、丁度帰って来た」

 

 一之瀬が指を指したのは反対側の木と、その周辺に群がる男女十数名ほどの生徒。

 よく見ると、その中心には丸々と実った大きなメロンが垂直に3つほど積みあがっていた。……誰かが持っているということだろうが、だとしたら中々おかしいバランス感覚だ。

 

「近くのスポットにメロンが生えてたよ! 包丁とまな板持ってきて!」

 

「「「うおー!」」」

 

 キラキラという擬音がピッタリ似合うであろう笑顔を浮かべ、両手にメロンを3つづつ縦に積んで歩く高辻の姿がそこにはあった。

 いや何してんだあいつ。龍園と悪知恵働かせてたんじゃなかったのか?

 

「龍園君と喧嘩しちゃったみたいで保護したんだけど……今は多分Bクラスの誰よりも試験を楽しんでると思う」

 

「一之瀬さん見てよ! 絶対美味いよこれ! ……って清隆君じゃん、どしたのこんな所で」

 

 手に持ったバスケットボール大のメロンを指で回しながらこちらに話しかけて来る高辻。

 

「……いや、それはこっちのセリフだ」

 

 

 

 





 ということで、3章のヒロインは一之瀬さんです。

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どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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