ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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第22話 疑い

 

 

 

「随分馴染んでるな。一瞬お前だと分からなかったぞ」

 

 相変わらずの無表情で話す清隆君だが、付き合いの長い俺には彼が呆れていることが容易に伝わってくる。

 

「Bクラスには友達多いからね。多分他クラスだったら一番多いかも」

 

「おーい高辻! それもこっちにくれよ」

 

「重いから気を付けてね、よっと」

 

 調理場から手を振るBクラスの友達、柴田君にメロンを投げつける。

 胸の前で抱えるようにしてキャッチした柴田君だが、予想以上に重たかったのか前のめりになった。

 

「うおっ、お前よくこんなの6つも運んできたな」

 

「とりあえず食べない分は風通し良い日陰に置いといて。メロンは常温で保存できるから」

 

「おっけー」

 

 メロンを抱えてテントの裏へと持っていく柴田君。陸上部ということもあってその足取りは軽い。

 

「一日で図太く探索に行く、面の皮の厚さと積極性は流石と言ったところかしら」

 

「それ褒めてる?」

 

 堀北さんは清隆君とは違い、やれやれと言った様子を全開に出している。

 多分積極的にクラスに協力していることを褒めてはいるのだろうが、相変わらずの刺々した言い方は聞き手に誤解を招かせる。

 

「褒めてるんじゃないか。こっちで保護した伊吹と金田は、ずっと端の方で座っているだけだからな」

 

「えっ、伊吹さんたちも追い出されてたの?」

 

「知らなかったのか?」

 

「うん。だって俺が一番最初に追い出されたんだもん。殴られそうになったからそのまま逃げてきたんだ」

 

 NOとは言えないためお得意の嘘をついてみる。実際のところはお互い今後起こることを想像してニコニコで出て行ったんだけど、俺が作戦に関わっている事は知られてはいけないからね。

 

「野蛮ね。伊吹さんと金田くんの顔にも殴られたような痣があったわ」

 

「……あいつマジで終わってるな」

 

 ため息を吐きながら怒りを抑えて呟く演技をする。まあ目的の為なら何の躊躇もなく女の子に手を出す龍園君が終わっている事は事実だし、嘘はついてない。

 

「同感よ。怪我が無いのは不幸中の幸いだったわね」

 

「ホントだよー。外でうずくまってるときはどうしたのかと思ったもん」

 

 堀北さんに同意する形で苦笑いをする一之瀬さん。

 

「……何よ」

 

 意外と心配してくれる感じか。清隆君と違って変なことしてないから好感度が高いのはありそうだよね。

 清隆君出会って初日で下の毛がどうとか、アイスのスーパーカップを見て邪な妄想をしているところを指摘されたりとかしてたらしいし。流石にそれはちょっと厳しいって。

 

「ううん。何でもないよ」

 

 そんな堀北さんを微笑ましい目で見つめてみる。

 こうしてみるとやっぱり可愛いな。沼らせたらいい顔をしてくれそうだけど、堀北会長が卒業するまでは手出すのは厳しそうだね。

 

 各クラスのリーダー格の女子生徒は夏休みが終わるまでに全員掌握しておきたいところ。

 Aクラスはほぼ間違いなく派閥争いに勝つであろう有栖ちゃん。Dクラスは堀北さんアンチの桔梗ちゃん。そしてBクラスはクラスメイトから圧倒的支持率を誇る一之瀬さん。

 こうしてみると女子比率高いな。AとDに関しては葛城君や平田君もいるから女子一強って訳じゃなさそうだけど。

 

 唯一女子生徒が介入する枠がないのがCクラスかな。女子で一番立場が高い真鍋さんも全然だし。

 権力が龍園君一強なのと、Cクラスの生徒が皆個人主義であること、そもそも真鍋さんにリーダーを張れるほどの実力がないことなど、理由は様々だ。

 つまり、俺の得意分野が一切通用しないCクラスに配属されたのはかなりの幸運だということだ。

 

 リーダー格の女子を掌握しただけで本当に試験が有利に進むのか疑問に思う人もいるだろう。

 答えはYES一択。女の子というのは論理より感情を優先する生き物だ。勿論個人差はあるが、大なり小なり皆そういう性質を持っている。完全に惚れた相手を陥れるようなことは早々できないだろう。好きな人に嫌われるのは嫌だからね。

 

「Cクラスは完全に試験を放棄しちゃったのかな?」

 

「そうじゃない? 元々龍園君は面倒だから全員でリタイアするつもりだったし」

 

 顎に指を当て首を傾げる桔梗ちゃん。Cクラスの生徒である俺が答えるという中々不思議なシチュエーションだ。

 

「理解できないわね。ポイントを獲得できるチャンスを捨てるなんて」

 

「それな」

 

 そう吐き捨てる堀北さんに同意する。きっと堀北さんの中では既にCクラスは脅威でないという認識が固まっていることだろう。

 

「頑張れば毎月1万とか2万とか貰える額増えるかもしれないのに……」

 

「カジノでバイトしておいてまだポイント欲しいのか?」

 

「誰のポイントで美味い夕食食えると思ってるのかな清隆君?」

 

「……感謝してます」

 

「よろしい」

 

 毎月1万ポイントも貰えていない清隆君は未だ俺に胃袋を掴まれたままだ。

 俺が飯作らなくなったら、清隆君の食事はきっと朝に廃棄寸前の菓子パン、昼は無料の山菜定食、夜は3袋まで無料でもらえるパスタに塩をかけて食べることになるだろう。そうなったらワンチャン自主退学するんじゃないか?  ……流石に無いか。

 

「ふっ……哀れね」

 

 俺と清隆君の両方を見て鼻で笑う堀北さん。

 俺には分かる。これは『あなたが金欠なのは私たちにポーカーで負けたからでしょう?』という意味が込められている。ちゃんと清隆君のことを考えて口に出さない辺り質が悪い。

 

 まあ、建て替えること自体はそこまできつくなかったけどね。

 実際に龍園君に払った額は、25万からもともと山内君が持っていた10万を引いて15万。それらはカジノで使われたお金なので、3割の5万円近くが俺の手元に戻ってくることになる。

 

「私も高辻君の料理食べてみたいかも!」

 

「なら今度清隆君が来るタイミングで一緒に来なよ。堀北さんも来る? 4人分作って待ってるよ」

 

 胸の前で手を繋いで可愛らしく声を上げる桔梗ちゃん。

 正直あんまり家に入れたくはない。この子何するか分かんないんだもん。

 でもこの場で断ったら後が怖い。ちゃっかり清隆君を巻き込むように提案してみる。流石に他の人が居るときにはやらかさないだろう。

 

「遠慮させてもらうわ」

 

 一瞬の間を置かず断る堀北さん。うん、知ってた。

 

「ありがと! 今度食事代持っていくね」

 

「いいよ気にしないで。2人分も3人分も大して変わらないし、そっちは色々大変でしょ?」

 

「そうだぞ。高辻はコーラとヨーグルトを持っていけば何でも作ってくれるんだから」

 

「お前が言うな」

 

 たまに出る清隆君のちょけ結構好きなんだよね。

 まあ実際借金返してもポイント自体はまだまだあるんだよね。先月7万ポイント弱の支給に、カジノの収入が12万程の合計20万ポイント程が懐に入ってきたからだ。

 

 まだ開いて3か月経った位だが、カジノ運営での純利益は平均して月400,000ppt程である。テナント、電気代が0円という強すぎる環境で稼がせてもらっている。

 ここから俺3割、南雲先輩2割、龍園君4割、設備費1割といった分配をしている。

 もちろん新しい設備を導入しないと飽きられるけど、それでも娯楽の少ない生徒たちにとっては貴重な場所だろう。

 

 ……じゃあ有栖ちゃんに援助を頼んだのは何故かって? 

 そんなの俺に金を貢ぐ有栖ちゃんが見たかったからに決まってるじゃないか。

 結局先月だけで3万もポイント貰っちゃったからね。もちろんお金を貰うのは先月だけだけど。これが習慣化したらそれをいいことに面倒なことになるだろうし。

 

 でも付き合ってもない男とキスするために金払うって、字面だけ見たらかなり終わってるよね。…本人には絶対言えないけど。

 

 昨日までほぼ毎日会っていたのに、現在進行形で置いてけぼりを食らっている有栖ちゃんを想像して口元が緩みそうになる。

 上級生に友達も居なさそうだし、一人で外に行くのも大変そうだし寂しいだろうね。

 ……そういえば今日の夜電話しようって言われてたな。早速約束破っちゃった。ごめんね有栖ちゃん。

 

「それじゃあ、さっきの話の続きをしましょう一之瀬さん。Dクラスのキャンプ地に案内するわ」

 

 話を区切るように腰に手を当てる堀北さん。ついさっきまでBクラスの子と外に出ていたため知らない話だった。

 わざわざ敵である一之瀬さんを自クラスのキャンプ地に案内するということは、恐らく互いの情報を共有して試験を円滑に進める腹積もりかな? きっと3人がここに居るのも話を持ち掛けに来たのだろう。

 DクラスがA以外のクラスと協力することは何となく予想はしていた。ポイントの差が大きすぎてまさか堀北さんが直接話をしに来るとは思わなかった。

 

「何の話か分かんないけど、俺の前で言わない方がいいんじゃない?」

 

「どうせこの7日間遊び呆けるだけでしょう? 特に気にする必要はないわ」

 

 余裕綽々だねー堀北さん。油断してると足元掬われちゃうよ?

 

「あはは。それはごもっともだけどちょっと酷くない?」

 

「事実を言ったまでよ」

 

 ここでカスホストからワンポイントアドバイス。

 社会に出て上司や同僚と話すときは、少しだけアホなフリをするのが有効だよ。

 特に堀北さんみたいにプライドが高い人に対して強気に出ると、上司なら可愛くない部下と思われ、同期なら競争相手として敵視される可能性が凄く高い。

 

「流石です先輩! マジで尊敬っす!」とか言ってる体育会系が好かれるのはこれが理由だね。

 勿論ちょっとアホな人と、全く仕事が出来ない無能を混同させちゃマズいけど。メリハリが大事だよ。

 

「でも良かった。山内くんのこともそうだけど、龍園君ってちょっと怖かったもん。試験に参加しないなら安心だね!」

 

「……そうだな」

 

 ほっとしたように胸に手を置く桔梗ちゃんと、どこか警戒した様子で俺を見ている清隆君。

 流石に口八丁だけじゃ騙せないか。伊吹さんと金田君には上手いことやってもらいたいものだ。

 

「それじゃあ、邪魔者はあっちで遊んでこようかな。頑張ってねみんな」

 

 堀北さんたちに手を振り、清隆君の刺すような視線を背中に受けながら俺はその場を後にするのだった。

()()()()()()()()()()()()()()んだし、せいぜい伊吹さんと金田君には頑張って欲しいところだ。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 Bクラスとの情報交換を終え、オレと堀北は2人で深い森の中を歩いていた。

 当初の目的であるBクラスとの協定を結び終えたため、日が高いうちに残りのクラス……Aクラスの偵察を終わらせたかったのだ。

 

「櫛田も連れてくれば良かったのに」

 

「冗談じゃないわ。Bクラスのときとは違って、話し合いも協力もする気は無いもの」

 

 櫛田は一之瀬と繋がるためのパイプ役に使ったと暗に言う堀北。こいつの櫛田嫌いも筋金入りだな。

 堀北は櫛田が自分を嫌っていると確信しているようだが、何故そう思っているのかには疑問が残る。仮に何か酷いことをしたとしても、櫛田は根に持つような性格じゃないと思うんだが。

 

 それにしても、櫛田と一之瀬のコンビは何というか、かなり良いものがあるな。

 可愛い女子2人がふわふわ会話しているだけなのに、それを見ているだけで癒される。無人島で溜まったストレスも穴の開いた風船の様にしぼんでいく。

 

「ほら。行くわよ」

 

 そして今オレの隣にいるのは全身ハリネズミガールの堀北。さっきまでの落差が凄い。

 

「……へい」

 

 顔は良いんだけどなぁ……カジノの一件からまだ柔らかくなったとはいえ、まだまだその刃は鈍ることを知らなさそうだ。

 

「それにしてもCクラスの龍園君。切れ者だと思ってはいたけど、とんだ杞憂だったわね」

 

「本当に全員リタイアしたと思うか?」

 

「分からないけど、クラスメイトを殴って追い出すような状況で、まともに試験ができるとは思えないわ。高辻君たちがリタイアしていたらその時点で90ポイントのペナルティよ。点呼不在でもポイントは減っていくし、そのリスクを考慮できない時点で脅威にはならないわ」

 

 確かに堀北の言う通り、あの状態からクラス全員で協力して試験を行うことは不可能だろう。()()()()()()()()()()()()()()、だが。

 

「高辻君、確か5月に龍園君と揉めたと言っていたわね」

 

「そうだな。クラス間闘争に対する方針の違いでだそうだ」

 

 最終的に容赦なくクラスメイトに手を出す龍園に、高辻が折れる形でリーダーの座を奪ったと聞いている。

 クラス内から学校へ訴えが出ない時点で、どれだけ支配が及んでいるかは想像がつく。

 高辻も伊吹と金田が殴られたと聞いたときに本気で怒っているように見えたし、龍園に追い出されたというのも納得がいく。

 

「高辻君も大変ね。頭の悪いクラスメイトに割を食っているんだから」

 

 堀北は完全に高辻の話を信じ切っているようだ。確かに高辻の話に不自然な所は何もなかったが、余りにおあつらえ向きな状況過ぎて疑いたくなるのも事実だ。

 特に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それはこの前2人でポーカーをやった時に身に染みて理解した。

 

「……」

 

 しかし、堀北は完全に油断し切っている。高辻のことをただのお人好しだと本気で信じているようだ。

 本当に裏表のないお人好しならカジノでイカサマなんてしないだろう。明らかに支給される分とバイト代じゃ足りないポイントの使い方からして、カジノの運営者……龍園や南雲から何かしらの追加報酬を貰っている事は確実。

 良き友人であるのは間違いないが、こと特別試験においてはそれは切り離して考えなければならない。

 

 これがただの数ある特別試験の1つなら、教訓として堀北が負ける様を見届けても良かった。

 しかし、こと今回においてそれは叶わない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あれは……幸運ね。Aクラスのキャンプ地よ」

 

 深い山を切り抜くように、魔物の口のように開かれた洞窟が姿を見せた。入り口の傍には仮設トイレが2つ、シャワー室が1つ置かれてある。

 

「ここからじゃ中の様子はよく分からないわね……」

 

 物陰に隠れ距離を取りながら確認をするのは至難の業だろう。

 オレも堀北もAクラスに知り合いはいない。櫛田を連れてこなかったのはやはり悪手だったか。

 

「行くぞ。Aクラスだからって怯えても仕方ないだろ」

 

 身を潜める堀北を追い越しオレは洞窟へ繋がる道を歩く。

 

「ちょ、ちょっと」

 

 うろたえながらも堀北が後ろをついてくることを確認し、オレは()()()()()のためにAクラスのキャンプ地へと向かうのだった。

 

 





 高辻のプライベートポイント推移(月末)
 5月:284,800PPt(+賭け事+先輩からの援助)
 6月:24,000ppt(-カジノ開設費)
 7月:130,000ppt(-借金立替+坂柳からの援助+カジノ利益)

 現在のクラスポイント
 Aクラス:1024CPt
 Bクラス:663CPt
 Cクラス:650CPt
 Dクラス:87CPt

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どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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