ようこそ現役ホストのいる教室へ 作:カスのホスト
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Cクラスから与えられた潤沢な物資と食料を駆使し、Bクラスでの試験は特に滞りなく進んで5日目。
現時点で誰もリタイアせず、300ポイント+スポット占領のボーナスポイントを獲得しているという状況が、彼らのモチベーションを底上げする。
時計を確認すると現在時刻は夜の11時。つい2時間前まで焚火を囲んで食後のデザートに洒落込んでいた俺たちだが、バカ騒ぎをした代償か周りの生徒は全員深い眠りについている。
「zzz……もっと飯くれよー高辻ぃ」
一個隣のハンモックで眠る柴田君は一体どんな夢を見ているのか、涎を垂らしながら幸せそうな寝言を言っている。
本格的にご飯を作れると知られて早5日。俺はすっかりBクラスの飯担当大臣になってしまった。
でも悪い気はしなかったし、何なら食事の時間は潜入している中で一番楽しかった。
「アホだなほんと」
Bクラスの中でも特に交友が深い友人の、間抜けな姿に笑いがこみあげてくる。しかし、楽しい時間はもうすぐ終わってしまう。
音を立てないようにハンモックから起き上がると、そのままキャンプ地の中心に背を向けて深い森へと抜けていく。周りを照らすのは月と星の光のみ。視界は5メートルも無いと言っていいだろう。
そんな中十数分程感覚に任せて森を突き進んでいくと、茂みの奥に小さな明かりが見えてきた。
その光に向かって歩みを進めていると、突然後ろから肩を掴まれた。
「っ……なんだ。アルベルト君か」
振り返ると右手で俺の肩を掴みながら、こちらを見下ろすアルベルト君の姿があった。
その顔はいつも通りの無表情だったが、左手でサムズアップをしている様子は非常に嬉しそうだ。
「いい見張りだね。昨日一昨日とは大違いだ」
3日目、4日目と毎回俺に見張りを抜けられていたアルベルト君だったが、とうとう捕まえることが出来て嬉しいのだろう。
見かけによらず意外と純粋で面白い子なんだよね。腕っぷしは龍園君以上だし純粋な力は俺より強いんだけど。
「じゃあ行くよ俺……何、このまま連れて行く?」
肩を掴んでいる腕に手を沿えるが、アルベルト君は首を横に振りながら握る力をぐっと強くした。
「……ったく。しょうがないなぁ」
両手を天に上げ降参の意を示し、そのまま龍園君の元へと向かう。
「何だ。とうとう見つかったのか」
「毎日同じ方向から来てんだからそりゃバレるだろ」
煽ってくる龍園君にぶっきらぼうに返す……あ。アルベルト君へこんじゃった。
そういう意味で言ったわけじゃ無いから大丈夫だよ。俺のカンストしている隠密行動スキルを良く見破ったと褒めてあげたい位だ。
ちなみにこのスキルは、親父の友達の浮気調査を生業としているプロから教わったものである。ホストをやる前に浮気しまくっていた親父の悪行をことごとく見破った凄い人だったりする。
そこから仲良くなれる親父のコミュ力も相当だけどね。
「それで、そっちの進捗はどうなの」
手ごろな切り株に腰掛けながら、串刺しにされて焼かれているカエルを一口頬張る……初めて食ったけど意外とイケるな。鶏肉に似ているとよく言われてるけど本当にそのままだ。
「……マジかよこいつ」
「順調だ。後は伊吹と金田次第だな」
ドン引きする石崎君。特に気にすることなく話を続ける龍園君と話が続いていく。
てかこういうゲテモノ食ってるの龍園君だけだよな。石崎君とアルベルト君はBクラスにあげたポイントの残りで買った食料を食べてたし。
努力が嫌いとか言っておきながら、自分を犠牲にして仲間に楽させるところは手放しで尊敬できる。こういう所は親父そっくりだ。
「おっけー。まあある程度かき回してくれればそれで100点かな」
「2人で潜入してそれすら出来なかったら怠慢だがな」
けっこう厳しいことをいうものだ。殆ど交友関係がない集団に2人とはいえ7日間も潜入するストレスは相当なものだろうに。
帰ってきたら労ってあげよう。もちろん龍園君のポケットマネーで。俺みたいに浪費してないから相当ため込んでいるはずだ。
「……ってか、お前がキーカードの写真を撮れたことの方が意味わかんねぇけどな」
そこに先ほどまで黙っていた石崎君が入ってくる。ジロリとこちらを疑うような視線を向けてくる。
クラス1の功労者に何て扱いなんだか。まあ十中八九Bクラスの2重スパイじゃないかと疑われているんだろうけど。
「誰がリーダーか分かれば余裕だよ。一応20人くらいでスポットを囲んで、占領するときに誰がリーダーか分からないようにしてたけど、その都度囲う人を変えてったら意味無いよね。内側に対する警戒が緩すぎる」
人の顔を覚えるのは得意だからね。毎回占領するときに囲んでいた生徒は一之瀬さんとリーダーの生徒しかいなかった。
喋った反応的に一之瀬さんじゃないのは確実。後はもう1人の生徒をマークしておけば余裕も余裕だ。
「嘘は言ってないと思うぜ。こいつは座席表を見ただけで俺の名前と顔を一致させる記憶力を持ってるからな」
「懐かしいね」
既に同学年の生徒の顔と名前はほとんど一致している。多分廊下ですれ違う生徒の名前を言えと言われても問題ないはずだ。
幼少期から色々な会合に連れ出されて鍛えられたスキルだね。
「話は以上だ。お前もさっさとBクラスの所に戻れ。いくら夜中とはいえ、こうも続けて抜け出してたらバレる可能性も高くなる」
「はーい」
Dクラスに潜入中の2人とは違って、島の情報を渡す必要があったからこうして直接話しているけど、昨日の時点で俺の仕事は終わったも同然だ。
それにも関わらずわざわざ足を運んでいるのは、俺の道楽だということに気が付いているのだろう。龍園君はシッシと手を振って俺を追い返そうとしている。
「これを持っていけ」
それに従って再び森の中へ足を踏み入れようとしたとき、龍園君がこちらに向かって何かを投げた。
「っとと」
危うく落としそうになるが振り返ってキャッチする。
ジップ付きのビニール袋に入れられた、角ばったフォルムの携帯電話のようなそれにはアンテナのような棒が付いている。
「トランシーバーだ。明日の23時にもう一度連絡を入れろ。それまで適当な場所にでも埋めておけ」
どうやら残ったポイントを使ってレンタルしてくれたらしい。あえて食料を買わずに過ごしていたのはこの為だったか。
気の利いた龍園君に感謝の言葉を述べ、俺はBクラスのキャンプ地に戻るのだった。
────────────────
そして丸1日が経って6日目の23時。
予想外の大雨が降る中、俺は雨風をしのげる崖下の小さな窪みに身を隠していた。
時間になったため、指定された周波数に調整して連絡を入れる。
「時間通りだな」
スパイ映画で聞いたようなノイズ音と共に、龍園君の声が聞こえてきた。
口調こそいつも通り淡白なものだったが、その声に喜色が混じっていることが無線越しにも伝わってきた。
「もしかして上手くいった?」
「ああ。伊吹と金田には報酬を与えるつもりだ」
わお。本当に上手く行ったんだ。
正直望み薄だったけど、流石の清隆君も集団に埋もれてしまっては動きづらいか。
「後で俺にも頂戴ね。正直一番の功労者だと思ってるし」
「はっ、テメェの金銭感覚がマトモになったら考えてやるよ」
珍しく和やかな雰囲気で龍園君と冗談を言い合う。この雰囲気は俺の顔に痣を付けたとき以来かもしれない。
知らない人と話しているときに「あ、こいつとは気が合うな」って分かった瞬間みたいななノリだったからね。やっぱりカスみたいな悪だくみをしている瞬間が一番俺たちの性に合ってるようだ。
「まさかキーカードの写真まで撮ってくるとはね…」
胸の中に勝ちが確定した喜びが駆け回るが、それと同時に『本当にこれで終わってしまったのか』という呆気なさも感じた。
Bクラスに保護された俺をずっと疑っていたから、何かしらの対策は練ってくると思ってたんだけどな。
「伊吹さんか金田君ってそっちにいる?」
「ああ。金田はまだDのところに残ってるがな」
きっと色々かき回された後のDクラスの様子を偵察しているのだろう。これによりクラス内の人間関係の情報を得ることが出来るし良い判断だ。
「間抜けにも
……堀北さんから逃げた?
「ちょっと代わってもらえる?」
龍園君の言葉に違和感を覚えたため、疲れている伊吹さんには申し訳ないが無線を代わってもらうことにした。
「……何。私あんたと違ってすっごい疲れてるんだけど」
無線機越しに不機嫌な声が聞こえて来る。
そりゃそうだよね。Bクラスと違ってDクラスとかめちゃくちゃ殺伐としてそうだもん。特にコミュニケーション能力に秀でているわけでは無い2人が潜入するのは相当なストレスが掛かっていそうだ。
「ごめんごめん。ちょっと状況を確認したくてさ。堀北さんから逃げたって言ってたけど、写真を撮る所を見られたってこと?」
「…いや、直接キーカードを盗んだんだ。それがバレて追い回された」
「マジか。随分賭けに出たね」
物資の窃盗が発覚したらかなり大きなペナルティが掛けられるはずなのだが、
「しょうがないだろ。デジカメが壊れてたんだからな。想定外の事態だ」
「はえー…よくそれで軌道修正して持ち出せたね」
伊吹さんの言葉に違和感が強まっていく。
いくら結束がバラバラだったDクラスとはいえ、キーカードを持ち出すことが出来る状況になるとは考えにくかった。
「ふん、ただ運が良かっただけ。堀北が
「……なるほどね。ありがとう。龍園君に代われる?」
伊吹さんは淡白な返事をし、そのまま龍園君へと無線が切り替わる。
「何だ。何か引っかかることでもあったのか」
ここに来て詳しく状況を聞きだした俺に、龍園君は不思議そうに聞いてくる。
「いや、ちょっと確認したいことがあってね」
「あ?」
いまいち要領を得ないと言った様子の龍園君。
そう思うのも仕方のないことだろう。キーカードという勝ちにつながる道具を手にしたのだから、疑う方が逆に心配性すぎる程だ。
しかし、今俺は
「ちょっとお願いがあるんだけどいいかな」
「お前の『お願い』には良いイメージは無いがまあいい。何だ?」
「毎度ごめんねほんとに。Dクラスのリーダーについてなんだけど────」
今までの努力が全て無駄になるかもしれないが、俺にはこの違和感を気のせいだと済ませられるほどの鈍感さは無かった。
……さて、この判断が吉と出るか凶と出るか。結果が楽しみだ。
────────────────
「────ではこれより、端的にではあるが特別試験の結果を発表したいと思う」
浜辺に集められた、最後まで試験を生き抜いた生徒たち。
恐らくこの試験結果を見抜けている人間は、担任教師を含め誰一人いないだろう。
「なお結果に関する質問は一切受け付けていない。自分たちで結果を受け止め、分析し次の試験へと活かしてもらいたい」
「予想通りだね。これで公開されてたら今までの努力が水の泡だ」
そんな中、俺と龍園君は浜辺……ではなく、船内のラウンジを2人で貸し切ってモニター越しにその様子を眺めていた。
「はっ、そうなりゃお前は一転裏切り者だな。そういう結果も中々面白そうだが」
デカいソファに2人で並んで座りながら結果を待つ。オットマンの上に乗せた足を組み、ふんぞり返る姿はあまりにも柄が悪そうに見える。
クリーンで売っている俺のファンガールたちが、この姿を見たら解釈不一致を起こすかな? 誰も居ないからできることだね。
「この結果がどうであれ、俺たちはこの試験で得られる以上の戦果は既に獲得した」
「グレートブリテンも真っ青な3枚舌外交だね。ホントよくやってくれたよ」
まあ考えたのは俺なんだけど。
だが、考える人も実行する人も別の能力が求められるのは事実。きっと俺たちなら立場が逆になっても上手く立ち回れるだろう。
そう思えるほど、龍園君と俺のコンビは相性が良い。
「ではこれより特別試験の順位を発表する。
最下位はAクラスの50ポイント
第3位はDクラスの105ポイント
第2位はCクラスの120ポイント
第1位はBクラスの250ポイント……以上で結果発表を終わる」
「
今回の勝負はギリギリ俺の勝ちかな? 楽しかったよ清隆君。
島のどこかで結果を聞いているであろう黒幕兼親友にそんな思いを馳せながら、俺は満足げに呟くのだった。
船上試験含めての章にするので、こちらでサクッと終わらせます。
次話で説明や各クラスの反応を入れるので、どのような結果になったのか考えてみてください!
高評価、感想頂けると作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)
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主人公とヒロインの絡み
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主人公と龍園、綾小路等との絡み
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バチバチのクラス間闘争