ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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 クラスカースト、最初は顔の良いやつが中心になりがち。これあるあるですね。余程の陰キャでもない限りは、という条件が付きますが。



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第3話 (モテる)男はつらいよ

 

 

 

 ひよりちゃんと本について語り合うこと十数分、始業を告げるチャイムが鳴った。

 それと同時に、担任の先生と思われる眼鏡をかけた男性が教室へと入ってくる。

 

「私はCクラスを担当することとなった坂上数馬です。普段は数学を担当しています」

 

 話し方や出で立ちからは、明らかに堅物といった様相を呈している。このタイプの先生とは仲良くなれた試しがないため少しうんざりだが、もう俺は小、中学の時とは違う。女遊びもバレずに遂行できるはずだ。

 

「1時間後に入学式が行われます。それまでは自由に過ごしても構いませんが、その前にこの学校の特殊なルールを説明したいと思います」

 

 そう言って配られたのは、以前入学案内と共に配布された資料だった。

 この内容について説明するのであれば特に話を聞く必要は無さそうだ。入学前に読み漁って、もしデスゲーム高校だった際の対策を考えていたからね。

 

「まず初めに、この学校には学年ごとのクラス替えは存在しません。よって卒業までの3年間、共に学んでいくこととなるでしょう。よろしくお願いします」

 

 おいおい、学校生活で最も楽しいイベントの一つが無くなったんだが。新学期の緊張感や、新しいクラスメイトとのやり取りなんて学生の醍醐味だろうに。

 まあ、発言に含みを持たせている以上、何かしらの裏があると見た方が良いかな。

 

 その後、しばらく事前に説明された学校の説明を受ける。3年間敷地の外には出れないとか、学校の中に様々な施設があるとかそんなところだ。

 そして話の話題は、何故か濁されていた学校内の通貨制度、Sシステムについてに移る。

 

「皆さんも知っての通りだと思いますが、この学校内では電子マネーを含む、全ての貨幣が使用できません。そのため学校内での取引にはこの学生証を使用してもらいます。学校内においてこのポイントで買えないものはありません。敷地内にあるものなら、何でも購入可能となっています」

 

 これも事前説明の通り。そして学校からは、生徒の実力に見合った適正な金額をポイントとして与えるという説明も書かれている。

 金額を濁していることや文言から金額が変動することは間違いなし。大方生徒の成績や普段の素行などでポイントの増減を決めているのだろう。ともすれば異常な数の監視カメラにも納得がいく。

 問題なのはその額だ。流石に入試の結果などで露骨に変えたりはしないだろうが、家賃や光熱費を除いた一人暮らしと同等の金額が必要となる。しかし国の税金で運営している以上、そこまで大きな額は出せないだろう。さて……どの程度なのだろうか。

 

「ポイントは毎月1日に振り込まれることとなっています。君たちには全員、平等に10万ポイントが支給されています」

 

 へぇ、割と太っ腹じゃん。流石東京のド真ん中にでっかい箱庭を作っているだけはある。

 恐らく1ポイント10円程度のレートと予想した。2日もあれば余裕で稼げる額だが、一般の学生にはそこそこと言った所だろう。

 

「なお、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……ふっ、それ以上は言わなくても大丈夫でしょう」

 

 ……は? おいおい。ちょっと待てよ。

 衝撃を受けたのは俺だけではないのか、クラスメイトがざわざわと騒ぎ出すのが聞こえてくる。

 

「10万円分のお小遣い……凄いですね」

 

「……そう、だね」

 

 隣に座るひよりちゃんがクラスの喧騒に乗じて耳打ちをしてくる。彼女もまた、中々の衝撃を受けている様子。

 そりゃそうだろう、だって────

 

────いくらなんでも少なすぎるもん。流石におかしいよ」

 

「……えっ?」

 

 早急に稼ぐ手段を見つけないといけないね。じゃないと、英孝先輩以下の極貧生活を送るハメになってしまう。

 

「ポイントの額に驚きましたか? この学校は実力で生徒を測ります。つまり、そのポイント数は学校側が君たちに見出した価値ということ。遠慮せず使ってください。振り込まれた後にどう使おうが君たちの自由ですし、生徒間での譲渡も無料で可能です。ですが、無理やり他の生徒からポイントを奪うような真似はくれぐれも止めてください。学校はいじめ問題にだけは敏感ですから」

 

 恐らく他人に譲渡した履歴などは全て記録される仕組みになっているのだろう。元からする気は無かったが、カツアゲという選択肢はなくなったね。だが他人への譲渡は手数料なしで行えるとのこと。

 つまり、先輩や同級生から同意の上でポイントを頂戴することは問題ないというわけだ。ここはホストの腕の見せ所だろう。

 ……もしかしたら、この学校が言う実力とはそういう所も含まれているのかもしれないね。もし親父がこの制度を知っていたのなら、俺を入学させたがっていた事にも納得がいくし。

 

「何か質問はありますか? 聞きたいことがあるなら早めに聞いた方が良いですよ。何分複雑なルールですし」

 

「すみません、2つほど質問があります」

 

 俺にはたった10万円の価値しかないとのたまう学校に苛立ちを覚えながら、それを隠して温和な笑みと声色で手を挙げる。

 本来ならこんな初っ端注目を浴びるつもりは無かったのだが、誰も聞こうとしないため仕方がない。

 

「高辻君ですか。いいですよ」

 

 名簿を見ることなく俺の名前と顔を一致させる辺り、流石に教師も気合が入っているな。

 

「ありがとうございます。生徒を実力で測るということですが、貰えるポイントが変動することはあり得るでしょうか? それと、他者にポイントを譲渡するときの上限があるかも教えていただきたいです」

 

「……ほう。そのポイント数では不満ですか?」

 

 席を立ち質問を投げかけると、先生は興味深そうに眼鏡をくいっと上げて聞き返してきた。

 見た目通り、中々嫌味が上手なようだ。こんな端金でどうやって生活すればいいんだか逆に教えて欲しいものだ。パジャマを買ったら半分が、ヘアケアとスキンケア用品でもう半分が飛んでしまう。これじゃ風呂にも入れない。

 

「あはは……すみません。気になっただけです。増えることがあったら嬉しいなーなんて思っちゃって」

 

「欲張りすぎだよー」

「それなー。お坊ちゃまかよじゃん!」

「イケメンだからって調子乗ってんなよー?」

 

 流石に貰っている立場のためyesとは言えない。

 皆も同じことを思っていたのか、クラスメイトからは穏やかな笑いが飛んでくる。Cクラスには嫌味を言うのが得意な人が一杯いるみたいだ。

 

「向上心があるのは素晴らしいことです。ですが、その質問にはお答えできませんね。もう一つの質問なら、他者へ譲渡する際の上限は基本的にはない、とだけ言っておきます」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 なるほど。望んだ答えは出てこなかったが、これはこれで良い収穫になった。

 

「ほかに質問はありませんか? ではこれで私は失礼します。残った時間は自由に使って頂いて構いません」

 

 そう言って退出する坂上先生。すると早速俺の机は数人の女の子たちに囲まれた。

 更にそれを中心として、雪だるま方式で人が増えてくる。最終的に俺を中心として内側から俺目当ての女子、カースト上位の匂いを嗅ぎつけた生徒、とりあえず話題に参加しておこうとする生徒といった順で、クラスの半数近くが固まった。

 

「さっきの質問の答えってどういう意味なのかな!」

「分かんないけど、10万ポイントって凄いよね! 高辻君は何に使うの?」

「それより下の名前教えてよ!」

 

 先生に質問をするという取っ掛かりを与えてしまったからか、皆一様に話し始めて無茶苦茶になっている。

 

「あはは、そうだね……とりあえず自己紹介しない? みんなの名前と顔覚えたいし」

 

 苦笑いでそんな提案をしてみると、皆がほぼ同時に賛成と声を上げた。うん、元気なのは良いことだけど。

 

「こら。まだ隣のクラス説明中かもだから、皆静かにねっ?」

 

「「「はーい」」」

 

 全く……まあ、退屈はしなさそうだけどね。

 

「……」

 

 隣で窮屈そうに鞄から本を取り出してしまったひよりちゃんに申し訳なく思いながら、俺はクラスの子たちと談笑を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 超名門校と言っても、入学式はどこも同じく退屈なもの。偉い人からの話は半分に、可愛い子を探していたらいつの間にか終わってしまった。

 クラスメイトからのお誘いラッシュを跳ね除け、俺はひよりちゃんと2人で帰路についていた。

 

「良かったのですか? 彼らのお誘いを断って」

 

「良いの良いの。あんまりわいわいした雰囲気は好きじゃなくてさ。それよりも俺は良き隣人と本の話をする方が楽しいよ」

 

「そうですか。なら良かったです」

 

 露骨な好意にも表情を崩すことなく、嬉しそうに両手を合わせるひよりちゃん。さりげなく距離を詰めたりしても反応は無しと。ここまで顔のバフが効かない女の子は初めてだ。男慣れ、イケメン慣れしているというよりも、マジで気にしていないというのが正しそうだ。

 そんなひよりちゃんの反応に悔しいと思う気持ちは少しあれど、感情の大多数を占めるのは喜びだった。

 

「……これからどうしましょう。私も生活用品は早めに揃えたいですが、それよりも図書館の方が気になります」

 

 俺に聞いたというよりは、独り言のような声量で呟くひよりちゃん。配られた資料の図書館の説明の部分に目を凝らしている。

 普通敷地内にあるショッピングモールやカフェなどを気にしそうなものだが、ひよりちゃんはそんな常識には当てはまらないようだ。

 

「じゃあ一緒に買いに行く? 荷物持ちなら任せてよ」

 

「荷物持ちだなんて悪いですよ。時間がかかるかもしれませんし」

 

「良いって良いって。こういうときは男手を頼るもんだよ。シャンプーとか化粧水とか買ったら意外と重くなるだろうし」

 

 こういった提案を断られたことはほとんどないため、少しムキになって押しに行ってしまう。男に生活用品を見られることを嫌がる人もいることくらい、頭では理解できていたはずだが……俺もまだまだ子供だな。

 そして認めよう。彼女は俺にとって天敵かもしれないことを。この少ない時間でも湊かえでという、ホストとしての仮面を剥がされつつある。

 

 ……まあ、この学校にホストとしての俺を知る人間は居ないから、さしたる問題ではないだろう。親父も俺に普通の高校生活を送ってほしいって言ってたし、少し肩の荷を下ろしても良いかもしれないね。

 そんなことを気づかせてくれたひよりちゃんに感謝しながら、俺は自分の感情に従うのだった。

 

「……分かりました。その方が早く買い物も終わるでしょうし、図書館に行く時間も増えますねっ」

 

 化粧品よりも本を優先するのか……あまりスキンケアとかは気にしないタイプか? 

 それでこんなにきれいな肌で髪の毛も艶々なのだから、遺伝子から美人になれとお告げをされているのだろう。俺もそこまで凝った手入れをしているわけじゃないが、羨ましい限りだ。

 

「ふふっ、そうだね。……あ、そうだ。連絡先交換しようよ」

 

 学校から配られた端末を取り出し、チャットの画面を見せて提案する。入学最初の連絡先が可愛い隣の席の女の子だなんて、全男子が憧れるシチュエーションだろう? 

 

「そうですね。えっと、確かやり方はこうでしたよね」

 

 UIはほとんどLI〇Eと同じのため、迷うことなく交換することができた。

 

「やったね。遊びたい時とか気軽に誘って。基本的に暇してるから……ん?」

 

 友達追加が完了したため、試しにメッセージを送ろうとトーク画面を開くと、15通ほどのトーク履歴の中に見慣れない名前があることに気が付いた。

 

『クラス分けと評価の話を聞いたときは驚きましたが、どうやら高辻君の仮説は当たっていそうですね』

 

 差出人は坂柳有栖。文章でも懇切丁寧な口調はそのままだ。……それよりも気になることはあるけど。

 

『ならよかった。ってか、どうやって追加したの?』

 

 メッセージを送信すると、画面を閉じる前に速攻で帰ってくる。

 

『学校指定のメールアドレスから追加できるんですよ。初友だちにはあなたの名前を入れさせていただきました』

 

 ……ごめん有栖ちゃん。もう俺クラスの半分くらいの子と交換してるんだ。クラスのグループも作っちゃったし。

 

『それは光栄だね。これからよろしく』

 

 意地悪しようか迷ったけど、画面越しで胸を張っている有栖ちゃんを想像してほっこりしたため勘弁してあげよう。

 有栖ちゃんとのトーク画面を閉じて、次に開いたのはグループのトーク画面。そこには既に遊びに行っているであろう子たちの写真が貼られていた。

 

「とりあえずグループ誘っとくね」

 

「グループ……ですか?」

 

「うん」

 

『高辻清夜が椎名ひよりをグループに招待しました』というメッセージが流れ、少ししてひよりちゃんが参加したことが通知される。

 

「なるほど。クラスのグループでしたか」

 

「あった方が何かと便利でしょ? テストの対策とか、連絡とかもできるからね」

 

「まだ半分程度しかいないようですが、残りの人たちはどうするのですか?」

 

「んー……まあ、全員が全員仲良しこよしって訳にも行かないかもね」

 

 そこで思い出されるのは、クラスで自己紹介をしようとなったときに拒否感を示した数人の生徒。

 

「そんな方も居ましたね。確か……」

 

「石崎君、伊吹さん、それと龍園君だったかな?」

 

 後ろ2人についてはよく印象に残っている。伊吹さんは可愛かったし、龍園君は顔や雰囲気が親父に似ていたからだ。

 

「よく覚えていますね。私なんて高辻君以外顔と名前も一致しないです。先生は……えっと」

 

「坂上数馬先生」

 

「そうでした」

 

 感心したように声を上げるひよりちゃん。……担任の先生の名前くらいは覚えようぜ? 

 すると、グループの通知設定を切っていなかったのか、ひよりちゃんの端末が通知音を鳴らす。因みに俺は作った途端に消した。特に入学してすぐなんて皆頑張るからうるさくてしょうがない。

 端末を開いたひよりちゃんは、何かに気が付いたのか困ったように声を上げた。

 

「あっ、これ……」

 

 気になったのでトーク履歴を開いてみると、そこでは俺が誘いを断った女子たちからのチャットが数件流れていた。

 

『椎名さんじゃん。もしかして高辻君と一緒なのー?』

『えーまじ? もしかして2人だったりする』

『てか絶対そうでしょ? 2人で出て行くところ私見たもん』

 

 どうやら俺がひよりちゃんを招待したことから、一緒に帰っていると思っているらしい。

 確かにグループに招待するには友だち登録する必要があるし、メジャーな登録方法は端末同士を近づけることだ。女子のこういう所の洞察力は流石といっていいだろう。

 

「どうしましょうこれ。無視してもいいのでしょうか?」

 

『一緒にカラオケ行きたかったー』

『それなー』

『椎名さん見てるー? 高辻君と一緒に居るの?』

 

 彼女たちの誘いを断って2人でいるとバレれば、ひよりちゃんは女子からは抜け駆けとして何かしらの制裁を食らうだろう。……俺の顔しか見ていない癖に、随分と図々しい話だ。

 ……仕方ない。多少無理やりだが無視するよりはマシだろう。

 

「ごめん、ちょっとこっち来て」

 

「はい? あっ……」

 

 椎名さんの右手を掴み、俺の背中の後ろに体が隠れるようにくっつかせる。

 そのままもう片方の手に持った端末を前に突き出し、カメラを起動しとある撮影方法を選択する。

 

「そうそう。そのまま屈んでて……よし、これでオッケー」

 

 パシャという音と共に、画面全体にアウトカメラで撮った通学路の写真が撮られ、その左上に俺の自撮り写真が置かれていた。……急に撮ったせいで映りは悪いが、背中のひよりちゃんが見えてない為良しとしよう。

 それを、間髪入れずにグループラインに送り込む。

 

『1人で帰ってるよー。ひよりちゃんとは元々交換してただけだよ』

 

 秒でグループの半数近くの既読が付き、トーク履歴が鬼のように流れていく。

 

『やばっ、超カッコいいんだけど!』

『ね! 加工無しでこれはヤバすぎでしょ!』

『しかも下から撮ってこれだからね。顔面最強じゃん』

『疑ってごめんね椎名さん。真鍋ちゃんがいるんじゃないかって』

『ちょ、やめてよそういうこと言うのー』

『てかこんな機能あったんだね。BeRe〇lみたい』

 

 ただの写真なのに楽しそうだなこいつら。……まあいいや。これであらぬ疑い(事実)も晴れたし。

 

「あの……いつまでこうしてればいいですか?」

 

「あっ、ごめん」

 

 後ろから遠慮がちなひよりちゃんの声が聞こえてきたため、急いで振り返って体を支え直す。

 姿勢を正したのち、不思議そうに首を傾げるひよりちゃんにグループのトーク画面を見せる。

 

「なるほど、そういうことでしたか……良い機転ですね。流石高辻くん」

 

「ふふーん。どんなもんだいって感じ? にしても面倒だよね。一緒にいるだけでここまで言われるんだからさ」

 

 感心した様子でにっこりと笑うひよりちゃん。今までごまんと同性異性問わず褒められてきたが、彼女の言葉は不思議とスッと心に染みこんだ。ここまで嬉しいのは母さんと親父に褒められたときくらいだろうか。グループのトークの100倍は嬉しい。

 本音を込めた愚痴を言うが、ひよりちゃんは苦笑いを浮かべてやんわりと言った。

 

「仕方ないですよ。高辻君は格好いいですから」

 

「そう? 嬉しいこと言ってくれるじゃん」

 

 それが疑いようのない事実であるかのようにサラッと褒めてくるひよりちゃん。……危ない危ない。油断しきってたから照れるところだった。

 気を引き締め直して照れたように小さく笑うと、ひよりちゃんはふと自身の右手とオレの左手を見比べた。

 

「それにしても……大きい手でしたね。ちょっと良いですか」

 

「えっ、ちょ……」

 

 すると突然何を思ったのか、ひよりちゃんは俺の左手を持って開かせ、自身の手のひらとくっ付けた。

 暖かい人肌の体温が、手のひらを介して伝わってくる。

 

「大きい手ですね。四六判の小説を読む際にも困らなさそうで羨ましいです」

 

「……そうですか」

 

 手持ち無沙汰になったのか、恋人つなぎの様にグーパーと指の間を通して握るひよりちゃん。広げても俺の手の第一関節ほどにしか届かない細くて小さな指が、指の間を包み込むように握られている。

 

「あ、すみません。つい気になったもので」

 

「いいや、大丈夫だよ」

 

 全然大丈夫じゃない。……相手を油断させ、緩急入れた隙を生じぬ二段構えとは恐れ入った。どこぞの人斬り抜刀斎もビックリだろう。

 心臓のギアが一速に入ったことを自覚しながらも、俺はひよりちゃんとの会話に心を躍らせていた。

 

「でも、これで一緒に歩いているところ見られたらマズくなっちゃったね」

 

 しかし、ここで彼女との会話はしばらくお預けとなりそうだ。

 今でこそ()()()()()()()()()()()、ここから誰かとばったり出会う可能性もゼロじゃない。月に叢雲花に風とはよく言ったものだ。

 

「確かにそうですね。どうしましょう」

 

ちょうどいいや。俺近くの公園のトイレ行って来るから、先に寮で荷物置いて待ってて。ついたら連絡するから」

 

 そう言ってひよりちゃんと別れた俺は、人気のない公園の端の方へと1人歩いていく。

 

 

 

 そして人の目も監視カメラも届かなさそうな薄暗い木陰の下へとたどり着くと、この場にいるであろう人間に向かって声を上げた。

 

「さて、何の用かな? ()()()

 

「────これは驚いた。尾行されていることに気づいてた上、名前まで抑えられているとはな」

 

 ニヤニヤとした意地の悪い、好戦的な笑みを浮かべながらこちらへ近づいて来る龍園君。その出で立ちからは一切の不安を感じさせない。

 腹黒モードの有栖ちゃんと全く同じタイプの笑みだが、こちらはあっちと違って何も可愛くない。

 

「生憎、一度覚えた顔と名前は忘れられないんだ。それに君は……いや、何でもない」

 

「あ?」

 

 親父に似ているなんて言ったら気持ち悪がられそうだからやめておく。

 それにしても入学初日に絡まれるとは……モテる男はつらいよホント。

 

「要件があるなら早く済ませて欲しいな。ひよりちゃんが待ってるからね」

 

 ポケットから取り出した拳を軽く回し、最悪の事態に備えて準備体操をするのであった。

 

 

 





 ホストがデレたっ! 流石天然文学美少女椎名ひより。数年ぶりにカスホストのデレを引き出しました。
 とはいえまだ一速(ロー)です。これがハイトップに上がる日くるのでしょうか。

 ということで、初っ端から龍園君に目を付けられたカスホストです。次回お楽しみに!
  


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どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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