ようこそ現役ホストのいる教室へ 作:カスのホスト
高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
「……なるほどね」
日ごろ接している人間が見れば背筋を冷やす程、感情が抜け落ちた表情で堀北のことを見つめる高辻。
椅子の背もたれに寄りかかり、足と腕を組んで顎に手を当てる様子は、その容姿と相まって独裁者さながらの雰囲気を醸し出している。
しかし、ことこの場において追い詰められているのは高辻なのは間違いない。
「言っておくけど、捏造だなんて陳腐な言い訳は止めて頂戴。この環境でそれが不可能なことくらい、あなたなら分かるはずよ」
高辻の先手を潰すように、堀北はスマートフォンを彼に差し出した。
内容を見るなら好きにしろという意志なのだろう。
「あと5分でどうやって言い訳しろって言うの? もう無理でしょ」
高辻はそれを肩をすくめることで拒否する。その瞳に、既に抵抗の意志は一切見られない。
しかし、それを見ても堀北が気を抜く様子は見られない。どうやら彼女にとって、まだ勝負は終わっていないようだった。
「無人島試験では後れを取ったけれど、詰めが甘いのはあのときから変わっていないようね」
「堀北……いつからこれを?」
そんな堀北に問いかけたのは、先ほど高辻との舌戦に敗北した葛城だった。その声色には、先ほどのような悲痛さは見られない。
葛城の考察は櫛田が裏切っていたという一点を除いて当たっていた。優秀な生徒が集められた竜グループで、それを理解できない人間は誰一人として居なかった。
そして同時に、自分たちが高辻に完全に言いくるめられていたという事実に、彼らは背筋を凍らせて戦慄する他なかった。
「二回目の話し合いを終えた直後よ。この試験のルールと同グループの生徒を説明された時点で、私はずっと彼を警戒してたわ。張り付いていて正解だったわね」
「さっきの会話を聞く限り、櫛田が裏切った線もこれで潰えたな」
「ええ。まさか、本当に見ただけで優待者が誰か分かるとまでは思ってなかったけど」
堀北の言葉に、ことの成り行きを見守っていた神崎が同意する。
「……ここまで来ると、初日に葛城が言っていた話も精査する必要がありそうだな。友人を疑いたくはないが、これを見せられて黙っていられるほど能天気じゃない」
彼もまた、ある種高辻に裏切られたと言っていい生徒の一人だった。
「高辻君……」
四面楚歌な状況においても、ひたむきに彼の身を案じるのは椎名ただ一人。
「ごめんねひよりちゃん。抜かっちゃった」
高辻はそんな椎名の頭を撫で、苦笑いで謝罪の言葉を口にする。
その実態は他者を陥れた挙句、堀北というヒーローによって全てが破綻した悪役そのものだが、見る者に同情を誘う独特の雰囲気を醸し出していた。
「……自身が裏切り者だと、認めるということでいいのかしら?」
それを見て背中にうすら寒さを感じながらも、高辻に引導を渡す堀北。
こと勝負事において、彼女が妥協することはありえない。個人的な関わりはほとんど無いが、人間観察に長ける高辻はそれを痛く理解していた。
「うん。そうだよ。俺が桔梗ちゃんを指名した。ひよりちゃんには、決まった時間に俺のスマホを使ってメールを送るようにだけお願いした感じ」
椎名をかばう形で全てを白状した高辻。自分だけが悪感情を請け負うつもりでいるのだろう。
争いごとに向かない彼女を巻き込んだ挙句、自身の怠慢で作戦を失敗に終えたことによる贖罪か。高辻の内心を知る者は、彼以外に誰一人として存在しない。
針のむしろとなった状況においても、罵詈雑言が飛んでこないことに高辻は生徒の理性を感じていた。
罵声、何なら暴力まで甘んじて受け入れるつもりだったが、学校の監視がある中で行うほど愚かな生徒は居ないようだ。
『試験終了5分前です。第二段階に移行したグループの生徒は、忘れずに投票を行ってください』
見計らったかのようなタイミングで、試験の終了五分前を告げるアナウンスが入った。5分以内にグループを解散させ、自室に戻るよう命じられる。
「葛城君」
高辻からの呼びかけに、葛城は無言で視線を送ることで話を聞く意思を示す。
「君は良い人だ。普通なら高笑いしてもおかしくない状況なのに、嫌味の一つも言わないなんてね」
「……堀北が居なかったら、俺は言いくるめられて敗北していただろうからな。それで何か言うほど、恥ずかしい生き方を選んだ覚えはない」
高校一年生とは思えない志の高さは、彼が持つ指導者としての素質を優に示していた。
「それに、これは特別試験だ。正道邪道あれど、クラスのために動くことは、何ら間違った行動じゃない」
無人島試験で喫した敗北から成長を遂げた葛城の姿を、高辻はその言葉から感じ取っていた。
投票し終えたのだろう、スマートフォンをポケットにしまう葛城。
「『他人を騙し、欺き続けた先には必ず手痛いしっぺ返しが待っている』試験初日、君が俺に言った言葉だけど、覚えてる?」
「今思うと恥ずかしい言葉だな。俺も大概感情的になっていた」
当時の状況を思い出したのか、眉間に皺を寄せてため息を吐く葛城。
毅然とした態度を示しつつも、当時の状況は流石に堪えていたのが見て取れる。
「あはは。でも、この言葉は間違いじゃないと思うよ。────
「……何だと?」
スマートフォンを取り出し、十数秒操作した後に画面を対面に座る葛城に見せる高辻。
「ひよりちゃん。葛城君に投票して」
そこには、高辻が今回の話し合いで追放する生徒の投票を、葛城に入れたという旨が書かれていた。
「ですが……」
「いいからいいから」
高辻は不安げに呟く椎名の手を取り、スマートフォンを持たせて操作を促す。
それに従う形で葛城に投票をする椎名だったが、それを見た葛城は怪訝な表情を浮かべていた。
「往生際が悪いぞ。追放される生徒は投票で最も表を集めた生徒だ。お前たち2人が投票したとして、残りの8票はお前たちに入るんだぞ」
「まあまあ、やってみないと分かんないっしょ」
諦めの悪い高辻に苦言を呈する葛城だが、当の高辻はどこ吹く風と言った様子だ。
『第五回グループディスカッションを終了します。お疲れさまでした』
その直後に、試験が終了したとアナウンスが伝えられる。
他のグループはここで解散となるが、唯一試験の第二段階へ移行している竜グループは、追加で追放者の名前が呼ばれることとなっている。
『竜グループの追放者は────
「は……?」
葛城の呆気にとられた声が、次回の集合時間を伝えるアナウンスに紛れて消える。
しかし、高辻に投票した生徒の誰もが、葛城と同様の感情を抱いていた。
「んっー! 疲れたぁー!」
沈む空気を打ち破ったのは、何故か九死に一生を得た高辻の声だった。
椅子から立ち上がって背筋を伸ばし、にこやかな笑顔を浮かべている。
「ど、どういうことですか高辻君? きゃっ」
何も知らない椎名はただひたすら疑問を投げかけるのみだったが、その返答は自身の掌に重なった高辻の体温だけだった。
「ほら行くよひよりちゃん。流石にここに居るのは気まずいでしょ?」
「ちょ、ちょっと……」
高辻に手を引かれる形で席を立つ椎名。
「狂人は一人じゃ無かったみたいだね。葛城君」
葛城にすれ違いざまに囁いた後、高辻は未だ放心状態の生徒たちを見る。
「もしもし? いやぁ、
そんな意味深な言葉を残して部屋を後にするのだった。
────そして、時刻は最後のグループディスカッションが始まる10分程前に進む。
「2週間のバカンス、あっという間だったな」
「バカンスって言えるのか? 半分以上特別試験だったのに」
「確かにな。って、早く行かねえとやべえな。最後の最後で遅刻とか笑えねえよ」
船内で最後のひと時を過ごしている生徒たちのスマートフォンから、けたたましい通知音が鳴り響いた。
「うおっ、びっくりした。何だよ突然……」
「どうした……は?」
丁度スマートフォンを持っていた生徒が、画面を見て目を見開いた。
それを見て後ろから内容を覗き見るもう一人の生徒だったが、その異質な内容に言葉を失ったようだ。
鼠グループの優待者が指名されました。鼠グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
猪グループの優待者が指名されました。猪グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
鳥グループの優待者が指名されました。鳥グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
牛グループの優待者が指名されました。牛グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
猿グループの優待者が指名されました。猿グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
虎グループの優待者が指名されました。虎グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
蛇グループの優待者が指名されました。蛇グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
羊グループの優待者が指名されました。羊グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
犬グループの優待者が指名されました。犬グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
兎グループの優待者が指名されました。兎グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
馬グループの優待者が指名されました。馬グループの試験はこれより第二段階へと移行します。
高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)
-
主人公とヒロインの絡み
-
主人公と龍園、綾小路等との絡み
-
バチバチのクラス間闘争