ようこそ現役ホストのいる教室へ 作:カスのホスト
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竜グループ以外の11グループ……つまりすべてのグループが同時に第二段階へ移行するという異常事態。今頃どのグループも地獄のような雰囲気になっているだろう。
「一体どういう事なんだ!? 何で今になって一斉に……!」
オレ達兎グループも例外ではなく、思わず立ち上がって声を荒げたのは試験の開始を待っていた幸村だった。
「落ち着けよ。まだ役者は揃ってねえぞ?」
そんな幸村に対してニヤニヤと意地の悪い笑みを向けるのは、Cクラスの生徒で唯一席に座っていた龍園だった。
「龍園! お前っ、この期に及んで!」
「お、落ち着いてください幸村君……」
Bクラスの浜口が目を白黒させながら宥める。だが、そんな彼にとってもこの状況は予想外の事態だったということ。
その隣に座る一之瀬も、幸村の言葉に返答することなく真剣な表情でスマホを弄っている。
「くそっ……一体どういうことだ」
彼らに問い詰めても意味がないことは幸村も承知の上。悪態をつきながらも、幸村は再度席に着く。
そのとき、部屋の扉が大きな音を立てて開く。視線を向けると、Aクラスの町田を先頭に3人の生徒が見えた。
「あっ、町田君」
浜口の声に応えることなく、町田たちは席へと向かって行く。途中龍園をあえて無視したのは賢明な判断かもしれない。
堀北と同じで、1煽ったら10になって帰って来るからな。
「……真鍋達はまだ来てないのか」
「は、はい」
「チッ……事情が変わった。俺たちも今回は話し合いに参加させてもらう」
今まで話し合いに一切参加する気を示さなかった町田達だが、ここに来て方針をガラッと変えた。
一見すると自分勝手な行動のようにも思えるが、これが葛城の指示であることは間違いない。
「綾小路君」
隣から呼び止められた。左を向くと、小首をかしげながらこちらを見る松下と目が会う。
「これ、どういう状況なの?」
未だ来ていないCクラスの生徒を除いた全員の視線がこちらに集まるのを感じる。こういう形で注目されるのは勘弁願いたいものだ。
「さあな。オレにはさっぱりだ」
「ふーん。噂だと、高辻君が色々動いてるらしいけど。何も聞いてないの?」
高辻が自身が裏切り者だと認めてなお、5回目の話し合いで追放されなかったことは、既に学年中で大いに広まっているようだ。
そして、それでも気にせずいつも通り船内のサービスを堪能しているとも聞いている。流石に肝が太すぎると思うが、これも高辻の作戦なのかもしれないな。
「今の高辻とオレ達は敵同士だからな。今日の朝からは連絡すら取ってない」
周りの生徒にも聞こえるように少し大きめの声で話す。いくらオレが高辻の親友だからって、変に疑いを掛けられるのは勘弁願いたいからな。
「そっかー。まあ、そうだよね」
残念そうな松下の声。これで、試験中に追及されることはなくなるだろう。
それから程なくして、試験の開始を教えるアナウンスが流れる。
「……おい。まだ来ないのか」
いつもギリギリとはいえ、必ず試験開始までには席に着いている真鍋たち。しかし、未だに真鍋たちが座るはずだった3つの席は空いたままだ。
そのとき、察し合わせたかのようなタイミングで通知音が鳴った。ポケットからスマホを取り出したのは龍園。
「今真鍋達から連絡が来た。体調が悪いから欠席するそうだ。体調不良なら仕方ねえな」
「ふざけるなっ! やっぱりお前らが裏切り者じゃないか!!」
声を荒げた幸村だったが、それを咎める生徒は居なかった。
「やられたねー……ペナルティ覚悟で休んじゃえば、私たちは運任せで追放するしかないってことかな? Cクラスらしいと言えばらしいけど」
「おいおい。俺だけ仲間外れかよ」
「君が指示したのによく言うよ。どうせ、龍園君はあたふたしてる私たちを見たくて来ただけでしょ?」
一之瀬の問いかけに鼻で笑い返す龍園。こんな状況で笑ってられるこいつの胆力も大概だな。
困ったように頬をかく一之瀬だったが、その顔を見れば彼女がこの試験を諦めるつもりが無いことがよく分かる。
先ほどからずっとスマホを操作していた一之瀬が、ため息をついて顔を上げた。
「しょうがないね。じゃあ、試験を滅茶苦茶にした張本人にお話しを聞くしかないかな?」
そういうと、一之瀬は手に持ったスマホを画面を上に机の中央に置いた。
スマホからはこちらまで聞こえる程の音量でノイズが鳴っている。そして、少し遅れて聞き覚えのある生徒の声が聞こえて来た。
『中々大胆な発想だね帆波ちゃん。これ、もう皆に聞こえてる感じ?』
「うん。もうグループで繋がってるよ」
『おっけー』
大勢の生徒に聞かれているにも関わらず、電話越しに話す生徒……高辻は極めて気軽な様子で返答するのであった。
「みんな竜グループの邪魔にならないように。こっちの声はミュートしてね」
一之瀬はスマホに手を伸ばして画面を一度タップした。
画面の奥で高辻たちの声が聞こえる一方で、こちらの声が届くことはもうないだろう。
「それじゃあ、早速優待者の人は手を上げて貰えるかな?」
投票時間まで残り50分。いち早く本題に入りたいといった様子だが、悠長に話している時間は無いのは皆が分かっていること。この短い時間で、オレ達の試験結果は大きく変わる。
そして、竜グループのやり方に習った優待者の開示。既にCクラスの生徒が裏切り者である事実はほぼ確定と皆思っているが、やっておいて損はないだろう。
「……はぁ。逃げ切れば50万ポイント貰えたのに残念」
少し遅れて手を上げたのは軽井沢。メールを受け取った画面も同時に見せられる。
「この前は嘘をついていたのか!?」
「なんで馬鹿正直に言わないといけないわけ? それに平田君には言ったから」
「まあまあ、もう過ぎたことだししょうがないよ」
案の定喧嘩を始めた幸村と軽井沢を宥める一之瀬。
しかし、ここに来て場を荒らし始めるのは龍園だった。喉を鳴らしながら、足を組んで幸村を見る。
「賢明な判断だな。軽井沢が優待者だと知ったお前が、報酬目当てに他クラスに寝返る可能性も0じゃない」
「ふざけるな! そんなことするわけないだろう!」
クラスポイントよりも目先の小遣いを優先する人間だと思われたのが心外なのだろうが、そこで声を荒げたら龍園の思うつぼだ。
そう言えるだけの関係性があればいいのだが……生憎、俺と幸村の関係は、友人というよりも知人と言った方が近いため口を閉じておく。
「そうか? 現にそう言う奴がいたから、俺たちは優待者の法則を見つけることができたんだぜ?」
「へぇー。優待者の法則なんてあるんだ? じゃあ、それで私のクラスの優待者を当てたってこと?」
龍園の発言を見逃すまいと言った様子の一之瀬が、質問の体で追及を始める。
「ククク……自分のクラスメイトが裏切った可能性もあるんだぜ?」
「私は龍園君と違って、皆のことを信じてるから」
「はっ、健気なこった。俺のクラスも従順な下僕なら大勢いるんだけどな」
「……高辻君も、その一人なのかな?」
一歩も引かないと言った様子の一之瀬がそこで初めて、一瞬だが悲痛な表情を浮かべた。
「一度
高辻がクラスの方針で龍園と揉めて殴られたのは有名な話。高辻が龍園の指示に全て従う訳ではないということが、他の誰でもない龍園の口から語られた。
もっとも、それが本当のことなのかはかなり疑問が残るが。
他クラスの優待者を数人当たりをつけたところで、法則が当たっているかを確認するためには確固たる証拠が必要となる。その証明を信用できない他クラスの優待者でするのはリスクが大きい。
先の無人島試験の件もそうだが、こと今回の試験においては龍園と協力して行ったのは間違いないだろうな。それがオレと堀北のような関係なのか、はたまたポイントなどの報酬を介した関係なのかは定かではないが。
「お前らのような腑抜けばかりのクラスに居たなら、中々楽しめる相手になったのかもしれないな?」
「……そっか。……残念、だね」
そう呟く一之瀬の表情は、とても悲しげなもの。……まさか、本当に高辻が龍園に無理やり試験に協力させられていると思っているのだろうか?
オレから見る限りだが、あいつは自分から進んであくどい方法をやっているとしか思えない。
……そういえば、無人島試験で一之瀬といい感じになったとか言ってたなあいつ。そこでどんな話をしたのかは分からないが、一之瀬が高辻を色眼鏡を通してみているのは間違いなさそうだ。
他者の信頼や好感度を軽んじていたわけではないが、コミュニケーションという一点でここまで状況を有利に働かせる高辻の手腕には、末恐ろしいものがある。自分にない戦法を取り続けている様を見せられているためか、必要以上に警戒しすぎる傾向がある。
前回の無人島試験でも、Bクラスに入った高辻の動向を気にしすぎたことが、結果が振るわなかった理由の1つとして挙げられるし、次の試験からは立ち回りを変える必要がありそうだ。
「もっとも、あいつの得意分野がいかんなく発揮できるのはCクラスの他にないと思うけどな」
「っ……」
そんな龍園の皮肉に対し、今度は軽井沢が顔を歪めたのが目に映った。
高辻の過去(本当かどうかはともかく)を知っているためか、思う所があるようだが口を挟むことはしない。彼女にとって、高辻との関係は公にできるものではないのだから。
軽井沢の動向には目を向けておく必要があるな。
そんな中、竜グループでも話し合いという名の追及が行われているようで、堀北の声がスマホ越しに聞こえて来た。
『メールを見るに、あなたたちCクラスが優待者であろうグループも裏切り者が出ていたけれど、これはあなたの指示という事でいいのかしら?』
『どうだろうね。もしかしたら土壇場で誰かが当てたのかもしれないよ?』
『メールのタイミング……つまり優待者を指名したタイミングは11グループで差1分以内よ。事前に話を合わせていないとあり得ない速度だわ』
『確かにね』
のらりくらりと逃げる高辻に対して、理詰めで周りを固めようとする堀北。
極めてレベルの高い舌戦が繰り広げられていた。
『大方クラスメイトの優待者を教えてもらう代わりに、Cクラスの優待者を教えたんだろう? お前が貰う予定の150万ポイントに加えて、指名による30万ポイントを貰えるとなれば、裏切る生徒がいないとも言い切れない』
そこに加勢する形で話に参加したのは葛城。Aクラスが複雑な事情であるということは、雑談としてだが高辻から聞いている。
実際にその爆弾を抱えているからこそ、クラスが一枚岩であるという幻想は抱いていない様だ。
「こっちも凄い勢いでやってるね。高辻君あの二人相手によく喋れるね」
口の上手さで言ったらあいつ叶う生徒は居ないからな。そう言う意味では、この試験は高辻にとって最も得意とする分野と言っていい。
「俺はもっとお前と熱い話をしたって構わないけどな」
「あはは。遠慮しておくよ。もうちょっとこっちの話を聞いていたいな」
苦笑いをする一之瀬だが、その裏で発言の矛盾を探ろうとする姿勢は崩していないようで、顎に手を当てながら集中して話を聞いていた。
────
「……ねえ、これっておかしくない?」
ここにいる生徒の中で、現時点でその
決して術中にはまっている一之瀬や葛城が、松下よりも劣っているとは言えない。一之瀬も葛城も、他人を疑うということにそれほど慣れていないからだ。彼女たちは、己が最も苦手とする分野で、最も強い相手と戦わされているようなもの。
そして、高辻の裏の顔を良く知る松下だけが、その違和感にたどり着くことができた。
「聞いてる? 綾小路君……」
「待て」
小声でその違和感を共有しようとしてくる松下を、名前を呼ぶことで静止させる。
「だって……っ!」
咎められたことに不満を露わにこちらを見る松下だったが、その言葉は強張った口元から発せられた息を飲む音でかき消される。
何か恐ろしいものでも見たかのような顔をしているが、笑うのは苦手だから許してほしい。
「
この瞬間、オレは松下をこちら側に引き込むことを確定させた。
軽井沢という手札を失ったのは痛いが、もしかしたらそれ以上の活躍を見せてくれるかもしれない。
「……分かった」
不満の言葉を飲み込んだ松下の評価を上へと修正しながら、オレは事の成り行きを見守るのだった。
全ての試験を終え、結果が明かされることとなった午後11時。
どこか寂し気に深い闇夜の海を漂う船、その端くれにあるバーのカウンターにて、オレは一人の生徒を待っていた。
デッキの奥に見えるカフェは、遠目から見てもかなり賑わっている。今頃堀北たちもそちらで結果を待っていることだろう。今回無理を言ってオレは集まりを外させてもらったのだ。
「ごめん、遅れちゃった」
カウンターに置かれたノンアルコールカクテルの残りが7割ほどになったとき、小走りでこちらに駆け寄る生徒の姿が見えた。
「大丈夫だ。オレも今来たばかりだからな」
駆け寄ってきた松下に声を掛けながら、グラスを持ってストローに口をつける。
「あっ、ピニャコラーダじゃん。もしかしてハマっちゃった?」
「ああ。飲んでみると中々美味い」
「ふふっ。じゃあ、私はカシスオレンジで」
また知らない名前のカクテルを頼んだ松下。適当な雑談の後程なくして、鮮やかな色のドリンクがカウンターに置かれる。
そして、午後11時を迎え一斉にメールがスマホに届く。
「あっ、来た」
それぞれスマホに目を落とすと、簡潔な文章で試験の結果が記されていた。
子(鼠)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
丑(牛)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
寅(虎)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
卯(兎)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
辰(竜)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数5回)
巳(蛇)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
午(馬)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
未(羊)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
申(猿)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
酉(鳥)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
戌(犬)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
亥(猪)────裏切り者の正解、生存のため結果3-2とする(残り回数1回)
以上の結果から本試験におけるクラスポイント(cl)及びプライベートポイント(pr)の増減は以下とする。
Aクラス────マイナス160cl 変動なし
Bクラス────マイナス160cl 変動なし
Cクラス────プラス160cl 240万pr
Dクラス────プラス160cl 240万pr
そんな、誰もが予想だにしないであろう結果で、船上試験は幕を閉じた。
出来レースだったというわけですね。
高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)
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主人公とヒロインの絡み
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主人公と龍園、綾小路等との絡み
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バチバチのクラス間闘争