ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

42 / 44

 高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!


第40話 種明かし

 

 

 

 時刻は夜の11時。普段なら静けさを見せるはずのカフェの一角は、生徒たちの喧騒と共に大盛況を見せていた。

 そんな中、俺はスマホを見ながら待ち合わせの場所まで向かって歩いていた。

 

「は? ど、どういう事だよ……」

「Dクラスが同率1位……?」

 

 既に試験結果は開示されたようで、すれ違う人々からは予想していなかった結果が出た混乱と困惑が感じ取れる。その顔ぶれの中には、竜グループでしのぎを削り合った神崎君や葛城君や、一之瀬さんといった各クラスの主要メンバーの姿も見えた。

 

 俺が試験を滅茶苦茶にして回っているのは既に周知の事実。隠そうともしない視線を全身に受けながら、俺はポケットに手を突っ込んでフロアを突き進んでいく。

 好奇と敵対心、畏怖が入り混じった針のような感情。親父の店で1000万円の売り上げを達成した日、先輩から受けた視線と同じものを感じるね。この感覚は妙に癖になる。

 

「全員揃ってるみたいだね」

 

 頬が自然に吊り上がるのを感じながら、俺は目的地であるカフェのソファ席へとたどり着いた。

 10人近くが一斉に座ることを想定した、真ん中で二つに割れた円形のソファ席。こちらから見て左側の端に腰掛ける。

 

「遅ぇぞ高辻。もう結果出てるだろうが」

 

「ごめんごめん」

 

 そんな俺を咎めたのは、奥の方に座っていた石崎君だった。

 両手を合わせて苦笑いをしながら謝罪をする俺に対し、鼻で笑ったのはその隣に座る龍園君。

 

「はっ。わざと遅れて来たくせに白々しい奴だ」

 

「あ、バレてた?」

 

「勝利をもぎ取った後の雑魚共の視線は中々乙なものだ。俺もお前の立場なら同じことをしてただろうな」

 

 寄りかかった背もたれの上に手を乗せながら、足を組んでふんぞり返る姿は実に様になっている。

 

「席、開けておきましたよ」

 

 やっぱり似た者同士だな。なんて感想を抱いていると、その右隣に座っていたひよりちゃんが立って席を譲ってくれた。

 

「わざわざいいのに」

 

「ククク……今回に限ってはお前が主役だからな」

 

 そういうことらしいので、お言葉に甘えて龍園君とひよりちゃんの間、半円のソファ席のド真ん中に腰掛ける。

 そして、対面に座る生徒たちに向けて笑みを向けた。

 

「お疲れさまだったね()()()()。中々いい演技だったよ」

 

「世事は良いわ。さっさと済ませてしまいましょう」

 

 アイスブレイクよりも数段冷たい返答が帰ってきた。味方と協力することは覚えたけど、どうやらまだ敵との交流に意味を見い出す段階には居ないようだ。

 机の上に置いたスマホを操作する堀北さん。すると少しして、ポケットに入れた俺のスマホが振動した。

 

「うん。しっかり揃ってるね。ありがとう」

 

 画面を開くと、そこには堀北さんからプライベートポイントが振り込まれたという旨が記されている。

 フィクションのように札束を数えたりこそしないが、それでもそこそこの額が動いているのは間違いないからね。しっかり確認しないと。

 

「……結局どういうことなんだよ。何でここにDクラスの奴らがいるんだ?」

 

 石崎君が目の前に座るDクラスの生徒……堀北さん、桔梗ちゃん、平田君を見ながら聞いてきた。

 

「簡単な話。俺はDクラスの子たちと取引したんだよ。互いの優待者を教え合うっていう取引をね」

 

 本来なら他クラスとの取引の内容なんて、馬鹿正直に打ち明けたりはしないけど、こと今回に関してはお互いの利害の一致がある。

 というより、わざわざ皆の目があるところで目立つように集まったのはそれが理由だったりする。

 

「優待者を教え合う……ですか」

 

 石崎君同様状況をしらないひよりちゃんが、顎に手を当てて小さく呟いた。

 

「ええ。4回目の話し合いを終えた後、私が高辻君に取引を持ち掛けたの」

 

「4回目というと……まさか」

 

 竜グループで一緒に試験を受けて来たひよりちゃんが、堀北さんの言葉から結論を導くのに時間はかからなかった。

 

「そう。5回目の話し合いで堀北さんが出した音声は、俺が用意して堀北さんに渡したやつなんだ。ごめんね勝手に録っちゃって」

 

 あの音声はひよりちゃんとご飯を食べてるときに話を誘導して、それを俺のスマホで録ったものだ。

 試験の為に仕方なかったとはいえ、やっていることは普通に盗聴なのでしっかり謝罪をしておく。無人島試験を含めてかなり多額の小遣いを得ることに成功したので、今度何か埋め合わせを考えておこう。

 

「それはいいですが、どうしてそんな回りくどいことを?」

 

 ひよりちゃんからすれば、アリバイを作ったのにわざわざそれを無下にする行為と思うだろう。

 仮にDクラスとの結託によって追放される可能性が0に等しくなったとしても、その後に他グループでも裏切り者が出ればCクラスの誰かが裏切ったと思われるのは必然。一見するとCクラスにメリットは無いように思える。

 

「唯一第二段階に移行していた竜グループの裏切り者がCクラスの生徒だったら、他グループの裏切り者もCクラスの生徒だと思うでしょ? それこそが俺たちの目的だったわけ」

 

 話を聞いていた堀北さんに視線を送ると、堀北さんは鞄からクリアファイルに挟まった一枚の紙を取り出してこちらに向けた。

 

「これは……」

 

「各グループの予想される優待者と、どちらが指名するかをまとめたリストよ」

 

 箇条書きで書かれた内容をまとめると以下の通りとなる。

 子(鼠)……Aクラスが優待者。Dクラスが指名

 丑(牛)……Bクラスが優待者。Dクラスが指名

 寅(虎)……Cクラスが優待者。Dクラスが指名

 卯(兎)……Dクラスが優待者。Cクラスが指名

 辰(竜)……Dクラスが優待者。Cクラスが指名(高辻指名、150cp)

 巳(蛇)……Cクラスが優待者。Dクラスが指名

 午(馬)……Dクラスが優待者。Cクラスが指名

 未(羊)……Cクラスが優待者。Dクラスが指名

 申(猿)……Bクラスが優待者。Dクラスが指名

 酉(鳥)……Aクラスが優待者。Dクラスが指名

 戌(犬)……Bクラスが優待者。Dクラスが指名

 亥(猪)……Aクラスが優待者。Cクラスが指名

 

 Dクラス…… 30×8(指名)-50(竜グル-プペナルティ)-10×3(裏切り者逃し)=160cp

 

 Cクラス……150(竜グループ指名)+30×3(指名)-80(裏切り者逃し)=160cp

 

「この試験の面白いところは第二段階で裏切り者が逃げ切った場合、そのペナルティが優待者の居るクラスだけではなく、裏切り者が所属していないクラスからも平等に発生する所なんだ」

 

 竜グループで例えると、裏切り者である俺が所属するCグループは、150cpを残り3クラスから50cpずつ奪うという結果。

 

「なるほど。裏切り者が逃げ切った場合のペナルティを、AクラスとBクラスにも押し付けたという事ですね」

 

 流石読書家のひよりちゃん。中々的を射る表現をしてくれた。

 仮にDとCが話し合い残り一回でお互いの優待者を当て合ったとして、そのクラスポイントは以下の通りとなる。

 

 D、Cクラス……30×3(指名)-10×3(裏切り者逃し)=60

 

 A、Bクラス……-10×6(裏切り者逃し)=-60

 

「……って待てよ。じゃあなんでAクラスとBクラスの優待者まで分かったんだ? お前が櫛田が優待者だと見抜けたのは、試験中同じグループだったからだろうが」

 

「これに関しては完全に僥倖だったわね。元々竜グループの裏切り者に逃げ切られた場合の保険として、高辻君に取引を持ち掛けたのだけど……」

 

「お互いの優待者を見比べた時に、龍園君が優待者の法則に気づいたんだ。元々はお互いの優待者を当てるだけのつもりだったんだけど」

 

 石崎君の質問に対し、堀北さんと平田君が簡潔に答える。

 

「メールで送られて来た『厳正なる調整』って文言の根幹に辿り着いたのさ。答え合わせも優待者の半数が分かってるんなら難しい話じゃない」

 

 これに関しては流石龍園君って感じだね。俺も言われるまでマジで気が付かなかったし。

 その辺の鋭さなら学年でもトップレベルと言っていいだろう。

 

「そしたら後は簡単な話。Cクラスが何らかの方法で他クラスの優待者を当てたって、ひたすらアピールすればいい。こんなに上手くいくとは思わなかったけどね」

 

「最後の一斉指名。裏切り者だとバレた高辻君のやけくそに見えたでしょうけど、実際に裏で投票していたのは、高辻君に竜グループで優待者を当てられて、しのぎを削り合っていた私たち。気づけという方が酷だわ」

 

 無効投票となった竜グループを除く11グループで、追放されたのは全員Cクラスときた。

 Cクラスが投票した兎、馬、猪は、裏切り者を含めた全員を話し合いに欠席にさせる運ゲーにも成功した。まあ当てられる確率は25%だし、1人くらい当てられても大した損失じゃない。

 

「人は嘘が露呈したとき、その奥にあるものを真実と思い込むものだからね。平田君と桔梗ちゃんも中々いい演技だったよ」

 

 そしてその上で、俺が裏切り者であるという事実を嘘の中に交える。

 我ながら中々素晴らしい、性格の悪い作戦だったね。

 

「あはは……何言っていいか分かんなかったから、ずっと黙ってただけだよ」

 

 俺の言葉に苦笑いを浮かべるのは桔梗ちゃん。

 嘘つけ。お前が一番の大女優だろうが腹黒女。

 

「私が言えることじゃないかもだけど、あなたまともな死に方しないわよ」

 

「ふふっ。……そうかもね」

 

 中々手厳しい意見だ。堀北さんも同意の上での作戦だっただろうに。

 

「じゃあ、そういうことだから。今後ともご贔屓のことよろしくっ」

 

 席を立ち、堀北さんたちに手を振ってその場を後にする。

 正直ひよりちゃんを連れてみんなの視線を浴びながら、勝者のランウェイを歩きたいところではあったが、行かなきゃいけないところがあるため自重しておく。

 

「ふー……久しぶりに働いたかな」

 

 それにしても、まさかここまで臨時収入が入るとは思わなかったな。

 元から持ってた13万に、夏休みで暇してるであろう先輩たちのカジノの利益20万くらいかな。龍園君無人島試験で50万はくれるって言ってたからそれも足して……

 

「83に今回の150……8月の小遣いが10」

 

 わーお。大体240万prか。こりゃしばらく使うお金には困らないね。

 カジノに新しい設備導入してもいいし、職員用の寮をポイントで買い取ったっていい。これで知恵先生のところに行きやすくなる。

 

 因みに今回の試験で得たポイントに関しては、俺が桔梗ちゃんを指名して得た150万以外はクラスメイト全員に小遣いとして渡すらしい。90万÷40人で一人2万prちょっとかな。

 Cクラスの子たちからすれば、無人島試験、優待者試験と遊び惚けてただけでこの結果だから、アンチ龍園派閥も大人しくなるだろうね。

 

 ちなみにアンチ龍園派閥とは、大半が女子で構成された10人ちょっとの派閥である。

 俺を殴らせる作戦はちょっとやり過ぎだったかもね。まさかここまで引きずるとは思わなかった。その派閥筆頭の俺が、実は龍園君とズブズブなのだから笑える話なんだけど。

 そろそろこれも解体した方が良いかな。こと今回に関しては俺が動くなって言ったから大人しかったけど、それもいつまで続くか分からないし。軽井沢さんの件もあったし、真鍋さんたちとは気まずくなりそうだ。

 

「高辻君!」

 

 そんなことを考えながらカフェの一角を抜けると声をかけられた。

 振り向くと、端正な顔を苦し気に歪めた帆波ちゃんの姿があった。

 

「……全部、嘘だったの?」

 

「何が?」

 

 その言葉が何を意味するか分からない程鈍感ではないが、あえてこちらから口にすることはしない。

 

「無人島試験で過ごした時間も、皆で船でご飯を食べたのも……全部、嘘だったの?」

 

 見てるだけで胸が痛くなりそうな、悲痛な様子でこちらを見る帆波ちゃん。

 ……チョロそうとは思ってたけど、まさかここまでとは思わなかったな。

 

「いいや。楽しかったよ」

 

 無視して帰ろうと思ったけど予定変更。流石にこの状態の帆波ちゃんをそのままにする程人道を外れたつもりはない。

 

「現に、俺は本当にBクラスのリーダーを当ててないしね」

 

 Aクラスに情報を横流ししたことはあえて隠して伝える。どのみちすぐにばれることだけど、ここで開き直るかで後の印象は大きく変わる。

 

「じゃあ……っ」

 

 距離を詰め、体の前で行き場を探している両の手を上からそっと包み、顔の前まで持っていく。

 

「でも、俺たちは本当の意味で仲間にはなれないんだよ。俺と帆波ちゃんが別のクラスに居る限りはね」

 

「……そっか」

 

 瞳を潤わせ、上目遣いでこちらを見る帆波ちゃんは実に可愛らしい。

 普段は女子ながら、Bクラスを率いるリーダーとして凛とした彼女の、俺にだけ見せる素の姿は何ともそそるものがあるね。

 

「俺は、ポイントを使ってAクラスに行こうと思ってるんだ。Aクラスの特権でいい大学に行って、今まで育ててくれた親に恩返しがしたい」

 

 帆波ちゃんの家庭の事情は、彼女の口から聞いたことがある。

 貧しい母子家庭にお母さんと妹と3人暮らし。その語り口から家族の繋がりを大事にしているのは明白。だから、これは帆波ちゃんにかなり刺さっただろう。

 

「! ……そう、なんだ」

 

 現に、まるでテスト直前の朝、全く勉強をしていない友達を見つけたかのように、彼女の瞳は暗がりから一転光が差し込んだ。

 実際のところはテストなんて勉強しなくても点数とれるし、金持ちの家で何不自由なく育ってるんだけどね。

 

「だから、Aクラスに上がって待っててよ。そうしたら、帆波ちゃんの為に戦えるかもしれないからさ」

 

 誰かに言った覚えのある、死ぬほどクサいセリフを吐いてみる。

 豪華客船という非日常で、試験による精神の疲労が積み重なった帆波ちゃんなら、こんな言葉も受け入れてくれるだろう。

 

「……ありがとう」

 

 ほら。顔真っ赤にして俯いちゃった。かわいい。

 言ってることは今月のNo.1の為に貢いでほしいと言ってるホストそのもの。マジで将来引っかかりそうだなこの子。

 

「他の人には言わないでね。帆波ちゃんにしか言ってないからさ」

 

「……うん」

 

「ありがと。じゃあ、また今度遊ぼうね」

 

 しおらしく俯く帆波ちゃんの頭をポンポンと撫でる。……マジでロクな死に方しないだろうな俺。

 堀北さんの言葉を思い出しながら、暗がりの中を歩くのであった。

 

 

 





 高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!

どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。