ようこそ現役ホストのいる教室へ 作:カスのホスト
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「とまあ、今頃そんな話をしてる最中だろうな」
「なるほどね。だからわざわざ無理に葛城君たちと喋ってたんだ。おかしいとおもったもん」
遠くに見える生徒たちの姿を尻目に、オレは松下にCクラスと交わした取引の内容を説明していた。
「でも凄いね堀北さん。そういうのあんまりやらないタイプだと思ってたからびっくり」
普段の真面目で堅実な作戦を好む堀北が、裏でCクラスと結託して相手を騙していたことに驚きを隠せないようだ。
確かにどちらかと言えば葛城タイプの人間だからな。龍園や高辻のような嵌め手を使う相手にはめっぽう弱いタイプ。
「だからこちらから仕掛けさせたんだ。受けに回ると負けるのは目に見えていたからな」
「……仕掛けさせた?」
「ここまでが
わざわざ2人でこんな話をする理由はない。放っておけば自然と耳に入って来るからな。
ここから先は、松下をこちら側に引き込むための話。
「松下は、今のDクラスが卒業までAクラスに上がれると思うか?」
その前に、クラス間闘争に対しての松下の意向を確認しておく必要がある。今までの言動から予想は出来るが、万が一ってこともあり得るからな。
「不可能な話じゃないと思う。最初はちょっとあれだったけど、無人島試験、今回の試験って十分戦えるのが分かったから」
「松下自身はどうだ。上がりたいか」
「そりゃあ、やっぱり私もAクラスの特権は欲しいよ」
「そうか」
予想通りの返答を受けながら、短い時間で目の前の相手を評価する。
松下千秋。軽井沢を筆頭としたグループに所属していて、クラスでの立ち位置は中位ほど。仲の良い生徒は篠原、佐藤だが、彼女たちと違ってかなりの現実主義者。
Dクラスの平均と比較して、高い水準の思考能力を有しているのは言動からみて取れる。上昇志向が強い性格であると同時に、自身の能力にある程度の自信を持っているが、平田や堀北のように一番手に立つほどのものではない。
特筆すべき能力は他者への観察眼。恐らくCクラスの人間に次いで高辻の本性を見抜いている。
ざっと並べてみた限りでもこんなものか。改めて見ると、ここまでおあつらえ向きな人材は居ないだろうな。
積極的に先頭に立ちたがらないのも、堀北と衝突する可能性が低くなるからむしろありがたいくらいだ。
「今回の試験、堀北の裏で指示を出していたのはオレだ」
「……やっぱりね」
その返答からは驚きや疑いといった感情は見られない。
まるで100点を取ったテストの答え合わせをするような、喉の奥に刺さった小骨が取れたような落ち着いた様子だった。
「予想はしてたか」
「うん。仮に堀北さんがこの作戦を思いついたのなら、それを綾小路君にわざわざ伝えるメリットないもん」
兎グループには一之瀬も居たからな。オレから情報が漏れる可能性もある中、知っている時点で作戦の根幹に関与しているのは確実。
だが、この状況で答えを導き出すのは容易ではない。やはり思考能力には目を見張るものがある。
「この話を知っているのは堀北と松下だけだ。平田や櫛田も、この作戦は堀北が考えたものだと思っている。それを踏まえて、オレがどういう考えでこの試験に臨んでいたかを聞いてほしい」
オレの言葉に無意識にグラス口につけて潤す松下。こちらの緊張感が伝わってしまったのだろう。
そんなに気張らなくても大丈夫だ。と前置きをして話を始める。
「まず、自身が優待者じゃ無かった時点で、オレは他クラスと協力をする方向で考えを固めていた。グループの優待者を指名できたところで、普段喋らないオレが生き残るのは余りに無謀だからな」
「疑われる行動しなくても、適当に吊られるかもしれないしね」
そこで変に喋ったらそれこそ裏切り者だと思われかねないし、失敗した場合のリスクが大きすぎる。
「ああ。試験のルール的に、優待者を教え合う談合がかなり強い。ほぼノーリスクで他クラスを蹴落とすことができる。最初はBクラスあたりに協力を持ち掛けるつもりだったが、ここで一つイレギュラーが生じた」
「櫛田さんの指名?」
「ああ。これによって、クラス間の警戒度が大きく上がってしまった。初回の話し合いに比べて一之瀬も目に見えて警戒してたし、葛城も試験参入の意志を見せた。他のクラスに手の内をさらけ出して、互いに協力するのが困難になったわけだな」
こちらが相手に差し出せる優待者が2人に減ってしまったのもかなり痛いダメージだった。
「だが、オレ達には他のクラスにはない特徴がある。それがクラスポイントだ」
無人島試験後のクラスポイントは以下の通り。
Aクラス:1024CPt
Bクラス:913CPt
Cクラス:770CPt
Dクラス:192CPt
「D以外のクラスが団子になっている状況、今回に関してはこれが味方してくれた」
オレの言いたいことを理解したのか、松下は手を合わせて声を上げた。
「あ、そっか。Dクラスのポイントが上がっても、上のクラスには大して影響ないもんね」
「そういうことだ。Dクラスのポイントを多少上げてでも、ライバルのポイントを減らしたい。上のクラスはそう思ってる」
「Cクラスにしたのは何で? 一番ポイントが低かったから?」
「葛城、一之瀬、龍園の中だったら龍園が一番興味を示すと思ったからだ。その分裏でオレが指示を出していることまで、嗅ぎつけられるリスクもあったけどな」
実際、龍園は最後まで堀北が作戦を考えたという事に疑問を持っていた。そして、高辻経由でオレが怪しいこともバレている筈だ。
これに関しては仕方がない。どのクラスと協力していても気づかれるからな。それが遅いか早いかの違いだけで。
「高辻君が裏切り者だっていうのにはいつ気が付いたの?」
「堀北が話を持ち掛けたときに自分から言った。そうだろうと当たりは付けていたんだがな」
本当に見ただけで櫛田が優待者だと確信できたのかは疑問が残るが、これに関しては本筋から外れるため後回しだ。
「結果的にこちらが多く指名する分のポイントを、Cクラスに支払うという形で落ち着いた」
「無人島試験の分も含めると、凄いたくさんポイント貰ってそうだよね」
「Cクラスが何をやったのか知ってるのか?」
「うん。高辻君に教えて貰った」
思っているよりも高辻との関係性は深いようだ。このタイミングで引き込んでおいたのは正解だったな。
まあAクラスに上がりたいと思っている以上、ポイントなどを条件に裏切ったりはしないだろうが。
「それを踏まえて、龍園と高辻の関係性についてはどうだ。周りが言うように仲が悪いと思うか?」
「全然。絶対仲良しだよあの二人。方向性は違うけど似た者同士って感じ?」
「そうだな。オレもそう思う」
むしろ騙されている生徒が大半という事に驚きだが、二人とも深い関係性の友人はそれほど多くないからだろうか。
龍園はもちろん、高辻も色々な所で引っ張りだこな分、友人とは広くて浅い関係性を築いている印象だ。
「今の話をして分かった。Dクラスが上に上がるためには、松下の協力が不可欠だとオレは思ってる」
「そうかな? 自分で言うのもなんだけど、私普通の女の子だよ」
「
学力もDクラスで上位5番付近を取り続けているし、特に目立った問題行動も見当たらない。Dクラスに所属されたのが不思議なくらいだ。
「綾小路君も同じでしょ? 目立つのは好きじゃないの」
「ああ。だから松下に望むのはリーダーじゃない。オレと同じ黒子の役割だ」
無人島試験、優待者試験で一人で出来る事には限界があることを知った。『あの場所』では教わらなかった方法で、オレは高辻に苦汁を飲まされ続けた。
だからこそ軽井沢を協力者にしようと思ったのだが、それも見事逆手に取られた。高辻が本気を出せば、すぐにでも高いカーストを持ったDクラスのスパイが誕生するだろう。
そう言い切れるほどの能力をあいつは持っている。
「堀北も入学直後に比べたら見違えるほど成長している。今もDクラスの男女間の不和を消そうと、平田に話を持ち掛ける程にまでなった」
軽井沢の弱みに付け込むやり方は失敗に終わった。だから、今度は別のアプローチを試してみることにした。
「今のDクラスなら、本当にAクラスに上がるポテンシャルを秘めていると思う」
それは、相手に対してある程度の誠意を持つこと。
堀北ばかりのことを言ったが、オレもこの数か月で大概変わってしまったのかもしれない。
皮肉にも、その変化は倒すべき敵である高辻によってもたらされたものだった。
「だから、オレ達に協力してくれないか? 松下の力が必要なんだ」
静かに話を聞く松下に頭を下げる。
Aクラスに……少なくとも、茶柱先生の発言の裏を取るまでは、オレはこのクラスを上へ導かないといけない。隠すべきところを隠しつつも、オレは間違いなく本心を吐露していた。
「ちょ、ちょっと褒めすぎだって……恥ずかしいから頭上げて」
焦りから言葉を詰まらせる松下。地面に映る影から、両手を忙しなく動かしているのが見えた。
「お前が良いと言うまで上げるつもりはない」
「分かった、分かったから……協力するから!」
ついに観念したように、松下は声を荒げてオレの肩に手を置いた。
押されるがままに頭を上げると、松下はそっぽを向いてため息を吐いた。
「そういうキャラじゃないでしょ綾小路君って。びっくりしたんだけど」
「そうかもな。つい熱くなった」
「ふふっ。真顔でそれ言う?」
『高辻ならこうするだろう』という想像に従った結果だったが、思ったよりも感触は良いようで、松下は口元に手を置いて上品に笑った。
「じゃあ、改めてよろしくね。綾小路君」
「ああ。よろしく頼む」
嬉しそうに微笑む松下に答える。
よし。これでひとまずは動きやすくなるな。松下の交友関係や頭があれば、ある程度の
「早速ですまないが、学校に帰ったらやって欲しいことがあるんだ」
「いいよ。あんまり難しいことは期待しないで欲しいけど」
苦笑いを浮かべる松下に対し、オレは淡々と依頼の内容を伝えるのであった。
「────Dクラスの裏切り者を探してほしい」
────────────────
「いやぁ、清隆君も随分と見違えたな」
ちょっかいかけに行ったら松下さんと二人で喋ってるんだもん、ビックリしちゃったよ。遠かったから話の内容は聞けていないが、思っているよりもいい感じの雰囲気に見える。
親父の友人から教わった、尾行のやり方がここで功を奏するとはね。速攻で逃げて来たし、俺が居たのは多分バレてないはず。
……いやどうだろう。あいつ色々人間離れしてるからな。
「ふふっ。案外まともになってるかもね」
俺にこっぴどく叱られたのが堪えたのかな? これに懲りたなら、金輪際あんな方法はとらないでほしいものだ。
女の子に手を上げるなんてクズがやることだからね。それが間接的か、直接的かなんて些細な話だ。
龍園君? あいつがクズなのは最初から分かりきってるし今更かな。
「んー……タイミング逃したなぁ」
そんな一人芝居を心の中でやりながら、右手に持ったA4サイズの封筒から一枚の紙を取り出した。
デッキの手すりに寄りかかりながら、強くなって来た温い夜風を肌に浴びる。試験結果の開示が遅くなったからか、周りには誰一人として生徒の姿は見えなかった。
バサバサと音を立てるコピー用紙が飛んで行かないよう、封筒を脇の下に挟み、両手でしっかりと紙を持つ。
背後に取り付けられた暖色のライトが、真っ白な紙を淡く照らし上げる。
────DNA鑑定報告書────
依頼者
依頼者名: [高辻 清夜]
鑑定日: [7月○○日]
検査対象
対象A: [高辻 清夜]
対象B: [綾小路 清隆]
鑑定結果
検査結果により、以下の事実が確認されました。
対象Aと対象Bは、同一の母親を持ち、父親が異なる兄弟であることが証明されました。
血縁関係についてのDNA鑑定結果は、99.99%以上の確率で兄弟関係を示しています。本報告書は、法科学鑑定研究所による────
「────まあ、黙ってた方が良かったか」
こんなデカい、なおかつ友達だと思ってた奴が実は弟だったとか、清隆君も気まずだろうしね。
誰にしているのか分からない言い訳を心の中で言い、俺は自室へと戻るのだった。
クラスポイント(優待者試験後)
Aクラス:864CPt
Bクラス:753CPt
Cクラス:930CPt
Dクラス:352CPt
原作との変更点
・綾小路の誕生日が半年ほど早くなっており、それによって身体能力、知能が大幅に強化されている
・綾小路が櫛田の裏の顔を知らない
・須藤の暴力事件が発生していない
・Cクラスによる他クラスへの妨害行為が発生していない
・堀北の綾小路に対する不信感が少なくなっている
・佐倉のストーカー事件が解決していない
・綾小路父が学内に接触する方法を知っている
・DクラスとBクラスとの同盟関係が結ばれていない
・龍園が綾小路の実力の一端を知っている
・綾小路の協力者が松下になっている
・軽井沢が綾小路の協力者になっていない
・綾小路に弟がいる
高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)
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主人公とヒロインの絡み
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主人公と龍園、綾小路等との絡み
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バチバチのクラス間闘争