ようこそ現役ホストのいる教室へ   作:カスのホスト

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第4話 おいたが過ぎる

 

 

 

「で、一体どういう要件かな? 目を付けられるようなことをした記憶はないんだけど」

 

 万が一の展開を警戒して相手の目を見ながら問いかける。

 俺は慣れていたから気づけたが、彼……龍園君の尾行の腕はただの高校生のソレじゃない。素人が見よう見まねで出来る事じゃないし、こうやって監視の目が無い状態で姿を現した時点で、荒事になる可能性は結構高い。

 

「そう警戒するなよ。お前と友達になりたいだけって可能性もあるかもしれないぜ?」

 

「引っ込み思案がそんな堂々と喋るかよ。まあ、確かに敵意は感じないね。君から感じるのは興味と好奇心かな? 大方さっきの質問のことが気になる……そんなところじゃないかな」

 

「正解だ。あのバカ共の中でこの学校のキナ臭いところに気が付いてそうなのはお前だけだったからな」

 

 龍園君もどうやらデスゲーム説を推しているようだ。

 

「入学する前から思ってた。この学校は情報が少なすぎる。国の税金で運営しているくせにどこに金が使われているかも全然出てこねぇ上、卒業生がこの学校について言及しているネットの投稿は全て消されてやがる」

 

 へぇ……それは初耳だ。確かに掲示板やSNSでもこの学校については憶測でしか語られていない。それも消されている、となると学校側は執拗に隠したい事実があるのだろう。

 

「進学実績を謳っている割に年度の卒業生の人数すら記載されてないからね。希望する進学・就職先に100%で応えるって文言も怪しいにも程がある。……現に、2年生は現時点で20人近くが退学している」

 

 3年生はそれほどでもなかったが、彼らもまたAクラスからDクラスになるにつれ、比例するように退学者の数が増えている。

 2年生はAクラスを除いてほぼ団子のような状態だったため、参考にならないとして3年生の教室を確認させてもらった。

 

「ククク……そして極めつけは敢えて穴を残した監視カメラだな。校舎以外の様々な場所を見たが、厳重な監視の割に穴が多かった」

 

「凄いな。いつそんな時間あったんだよ」

 

「全員が体育館に集まってる間にな。やりやすくて助かるぜ」

 

 こいつ入学式すっぽかしたのか……根っからの不良だなマジで。

 

「入学早々監視の穴を突こうとする辺り筋金入りだね。でもカツアゲは厳しいんじゃないかな? 仮にポイントを奪われたとして、学校側に報告すれば一発だ」

 

「おいおい。これだけ話しておいてまだ俺の目的がカツアゲだと思ってんのか? それに、チクられずに金を奪うことなんてそう難しいことじゃないんだぜ」

 

 ニヤニヤと笑いながらこちらに向かって歩いて来る龍園君。身長差はほとんどないため互いに見合う形となる。

 ────その瞬間、龍園君は俺の胸倉を掴んで背後にある樹木に押し付けてきた。

 

「簡単な話だ。チクられる前に暴力で屈服させちまえばいいんだからな。俺は今までそうやって生きてきた」

 

「っ……」

 

 多少息苦しさを感じるが、身動きも取れるし追撃をしてくる様子はない。彼にとってはほぼデモンストレーションの様なものだろう。

 元気が良いのは良いことだが……すこしおいたがすぎるかな。

 

「理にかなってるね。確かに、君の動きには迷いがない」

 

 人間同士の争いは、最終的にはどちらが暴力で優るかで決着がつく。それならば最初から暴力で圧倒してしまえばいいというのには俺も賛成だ。だが、それは時として大きなリスクを伴う。

 胸ぐらを右手で掴んでくる龍園君。そんな彼に対し、俺は左から腕を回して背中を掴み上げ、そのまま大きく内側に捻って龍園君を投げ飛ばした。

 

「っ!」

 

 入れ違いになる形で体勢を崩す龍園君だが、空いた手を地面に置くことで体勢を立て直す。

 そしてそのまま振り返って下から拳を放ってきた。

 

「っぶね」

 

 避けることもできるが、ここはあえてそのまま手のひらで受け止める。手のひらに伝わる衝撃で、急所に食らえば一発で意識を失ってしまうだろう威力だと分かった。不安定な体制から顔面を狙って来る辺り流石と言ったところだろう。

 防がれたと悟った龍園君だったが、距離を取って見えた顔には喜色が浮かんでいた。

 

「いい動きだな。まさか投げ飛ばされるとは。追撃の対応も完璧、暴力まで一級品とは恐れ入ったぜ」

 

「勘弁してくれよ。これからひよりちゃんと図書館デートだってのに」

 

 制服を脱いで背中に着いた汚れを手で払う。これから3年間共に過ごす相棒だってのに、こんな初っ端から汚したら目も当てられない。

 

「おいおい。この状況から背中を向けるのか? 俺はお前を逃がすつもりは無いんだが」

 

「冗談。俺とこうして話をした時点で、君の目的は達成されているはずだ」

 

 そもそも最初から敵意が無いのは分かり切ったこと。大方俺の話を聞いて俺の実力を見極めたかったのだろう。その真意までは流石に分からないが、彼にとってはいい結果となったはずだ。

 

「最初にクラスの面々を見た時には失望したが、お前が居るなら少しは楽しめそうだ」

 

「野郎の好感度なんて望んでないんだよ。ほら、帰った帰った」

 

 シッシと手を払う様にして追い返す。舐め腐った態度だが、目の前の男は気にせず笑ったままだ。

 

「また来るぜ」

 

 すれ違いざま、そんな嫌なことを言い残して、龍園君は立ち去って行った。

 

「……はぁ。面倒だ」

 

 俺はただ女の子とイチャイチャしたいだけなのに、一体どうしてこうなってしまったんだか。

 端末を取り出し、メッセージアプリからひよりちゃんに通話を掛ける。

 

『もしもし。着きましたか?』

 

 着信に入ってから程なくして、ひよりちゃんの綺麗な声が聞こえてくる。……うーむいい声だ。耳かきとかして貰えたら幸せになれそう。

 

「ごめん、もうちょっと待ってて。意外とトイレ遠くてさ」

 

『分かりました。焦らず、気を付けて帰ってきてくださいね』

 

「はーい」

 

 胸倉を掴まれてアッパーカットを入れられたのに、気を付けて帰るとはこれ如何に。

 笑いそうになるのを堪えながら、俺は返事をして寮へ向かうのだった。

 

 

 

 そして、無事自分の部屋へとたどり着くことに成功し、ひよりちゃんと買い出し&図書館デートを楽しんだ。

 

「凄い貯蔵量でしたねっ。3年間通っても読み切れる気がしません」

 

 穏やかな口調ながらも興奮をかくせないひよりちゃん。普段の大人しい様子から一転、本のことになると年相応の無邪気さを見せるギャップが可愛らしい。

 

「そうだね。でも2人なら何とか読めるかもよ?」

 

 両手に本がパンパンに詰め込まれた鞄を持ちながら冗談を言ってみる。それにしても、買い出しが終わった段階で荷物を寮に置いてきて正解だったな。まさか5冊も借りることになるとは思わなかった。返却期限は再来週とのことだが、読み切れるだろうか。

 それぞれ中々の厚みがある為か、腕に伝わる重量は結構大きい。

 

「そうですね。一緒に頑張りましょう」

 

 両手を合わせて上品に微笑むひよりちゃん。龍園君に絡まれて荒んだ心が癒されていくのを感じる。

 それにしても今日一日で随分打ち解けたな。もっとも、読書友達という俺が望んだ関係性とは少し異なるベクトルでだが、これも学生の青春って感じがして悪くない。

 

「遅くまでやっているのはありがたいです。そのおかげでこんな時間になってしまいましたが」

 

 腕時計で時間を確認すると19時を回っていた。4月になって日が長くなってきたとはいえ外はもう真っ暗だ。

 普通の学校の図書館だと17時とか、いい所で18時までなのだがこの学校は21時までやっている。蔵書量や机の数も相当だし、図書館デートも捗りそうだ。

 そうして、5分ほど話した後寮にたどり着いた。重い本を持って長い距離を歩かなくていいのも1つの魅力だろう。

 

「はい。重いから気を付けて」

 

 ひよりちゃんの部屋にたどり着いたため、右手に持ったひよりちゃんの鞄を手渡す。

 

「ありがとうございます……確かに、重いですね。運動は苦手なのですが、流石に少しは頑張る必要がありそうです」

 

 重そうに両手で持ち手を掴むひよりちゃん。確か彼女はもっとページ数の多い本を借りていたはずだ。読み切れると断言して借りている辺り、暇があればずっと本を読んでいるのだろう。

 

「ははは。まあ、困ったときはいつでも呼んでよ。重いもの運んで怪我でもしたら大変だからね」

 

「ありがとうございます。……あ、そうだ。渡したいものがあるので、待っててください」

 

 思い出したように呟いたひよりちゃんは、そのまま玄関の扉を開けっぱなしにして部屋の奥へと入っていった。

 余りにも不用心すぎると苦笑いを浮かべていると、ひよりちゃんはトテトテと足音を鳴らしながら戻ってくる。右手には数枚のしおりが握られていた。

 

「こんなもので申し訳ないのですが、今日のお礼として受け取ってください」

 

 差し出されたしおりは、それぞれ控えめに花びらの絵柄が書かれている可愛らしいものだった。

 

「いいの?」

 

「はい。どうせ使いきれない程持っているので。手作りなのでクオリティは低いかもしれませんが」

 

 両手のひらにちょこんと乗せて差し出してくる。

 確かによく見ると角のところがいびつな形になっているが全然気にならない。むしろ不器用ながらに頑張って作っている光景が浮かんでくる。

 

 ……1時間で10万稼ぐ俺が、丸一日付き合った報酬が手作りのしおりか。ほぼタダ働きと言っても過言じゃないね。

 

「ありがとう。大事に使うね」

 

「はい。使ってあげてください。その方がこの子たちも喜ぶと思うので」

 

 ────だが、不思議と悪い気分ではなかった。

 

「じゃ、また明日。おやすみひよりちゃん」

 

「おやすみなさい」

 

 別れ際に小さく手を振って、俺は自室へと戻るのだった。

 入るのこそ二度目だが、最初は荷物を置いてきただけなのでほとんど初めましてだ。玄関の電気をつけると、通路左手沿いにキッチンと2ドアの冷蔵庫。右手には内開きの扉があり、その奥には風呂とトイレ別に配置されていた。

 

「必要最低限って感じだな」

 

 俺ユニットバス嫌いだから良かった。決して広いとは言えないが、隅々まで清掃が行き届いている。そして通路奥にあるのが大きさ9畳ほどの寝室。通称1kと呼ばれる間取りだ。

 クローゼットもちゃんと備え付けられているが、大した量の服は入らないだろう。……おしゃれはしばらく後回しか。

 

 マジで服どうしようかな。最低限のシャンプーとか化粧水とかは、一応ひよりちゃんに選んでもらいながら揃えることに成功したが、服に関してはしばらく使う予定が無いということで後回しになったのだ。

 まだ月曜日だし、放課後遊ぶとかは制服でいいだろうけど、土日とかになったら話は別だ。……とりあえず先輩とかに聞いてみるか。多分もっと貰えているだろうし参考にはならなさそうだけど。

 

「あ、そういえば」

 

 適当に食堂とかでナンパしようと考えていたが、有栖ちゃんがメールアドレスで俺を友だち追加したことを思い出した。

 橘茜と、堀北……堀北学っと。よし、追加完了だ。

 

『こんばんは、高辻です! 勝手ながら追加させていただきました。よろしくお願いします!』

 

 とりあえず無難な内容をコピペして2人に送信する。

 次に開いたのは堀北さんのトーク画面。入学式の演説格好良かったですよ……はいいや、あんまり言われても嬉しくなさそうだし。……そうだな。

 

『やっぱり面白い学校ですねここは。生徒の実力がそのままお小遣いになるなんて。……Cクラスに配属されたことは不満ですけど』

 

 最後にスタンプを送り付けて……よし、こんなもんでいいでしょう。流石に下級生に対する緘口令は敷かれていると思うが、何かしらのリアクションはしてくれるはずだ。

 

 次に橘さんの画面を開く。聞きたいことは洋服含む生活用品はどこで買っているかについて。

 服のことだけ聞いてもキモいだろうから、ここは新入生として生活のアドバイスを貰うスタンスで行こう。ワンチャン一緒に買いに行くきっかけになれれば120点だ。

 

「ん?」

 

 そこで、端末が振動と共に通知を知らせてきた。どうやらメッセージが送られて来たらしい。

 

『高辻君の部屋は何号室でしょうか?』

 

「えっ、怖っ」

 

 思わず口からそんな声が漏れ出た。単刀直入にも程があるし、せめて用件を伝えてくれ。

 

『えっと……何で?』

 

『友人の家を知りたいと思うのは不思議な事ではないと思います』

 

 秒でメッセージが返ってきた。……まあ、確かにそうか。

 ホストの感覚に完全に入り浸っていたようだ。そりゃ友達の家に遊びに行きたいとか普通思うよな。明日はクラスの子と遊びに行く約束をしてしまったため厳しいが、それ以降だったら全然ウェルカムだ。

 

『402号室だよ。エレベーター降りてすぐのところ』

 

『分かりました』

 

 メッセージを送ってトーク画面を閉じる。……少し肌寒いな。4月と言えど夜はやっぱりそこそこ冷え込むみたいだ。電気代無料みたいだし、甘んじてエアコンを使わせてもらおう。

 部屋が暖まるまで買ってきた食材や飲み物などを冷蔵庫に入れ、洗剤や化粧品も適当に配置する。

 

 そこで、手を洗い忘れた事に気が付いたため、ひよりちゃんにオススメされた格安のハンドソープを使ってみる。……思ったより悪くないな。香りもどこか安心する穏やかなものだ。

 泡を洗い流して買ってきたタオルで手を拭く。……これはダメだな。なんかゴワゴワして気持ち悪い。

 

 ────手のひらに伝わる感触に眉をひそめていると、ピンポンという来客を知らせるチャイムが鳴った。

 寝室にあるモニターを見てみると、そこには制服姿にベレー帽をかぶり、杖を持った女子生徒の姿があった。……そんな知り合いは1人しかいない。そう、有栖ちゃんである。

 

「えっ、何で来たの?」

 

『メッセージを送ったじゃないですか。この学校について意見交換がしたいと』

 

「えぇ……」

 

 ベッドの上に置いた端末を見ると、そこには確かに彼女からの通知を知らせるアイコンが表示されていた。

 

『とりあえず入れてください。意外と外は寒いです』

 

「……分かった。開けたよ」

 

 肌寒い中、女性を長時間外に立たせられるような教育は受けていなかったため、玄関の鍵を開ける。

 有栖ちゃんは遠慮という言葉を忘れたのか、自分の部屋の様にスタスタと寝室に入ってきた。

 

「お邪魔します高辻君。今日一日お疲れさまでした」

 

「……お疲れ様」

 

 ひよりちゃんもそうだが、この学校にはマイペースな女の子しかいないのか? ……いや、サンプルが悪い説も大いにある。橘さんとかは真面目そうだし。

 部屋の中には机とベッドしかないためベッドの方に座らせ、俺は買ってきた電気ポッドに水を入れる。

 

「紅茶とコーヒーどっちがいい?」

 

「気が利きますね。紅茶でお願いします」

 

 ベッドに座ると足が床に着かないのか、有栖ちゃんはしたり顔で細い足をプラプラと揺らしている。可愛い。

 程なくしてカチッという音と共にお湯が沸く。新品のマグカップをさっと水で洗い、ティーバッグを入れてお湯を注ぐ。

 

「はい。熱いからやけどしないでね」

 

「ありがとうございます。すみません、押しかけるような形になってしまって」

 

「大丈夫。どうせやること何も無いし」

 

『ホントだよ』という言葉が喉から出かかったが抑えることに成功した。可愛いから許してあげよう。

 

「本当は放課後お邪魔する予定でしたが、高辻君は忙しそうだったので」

 

 嫌味を込めてそう語った有栖ちゃんは、右手に持った端末の写真を見せてくる。

 

「っ! おいおい……」

 

 そこに映っていたのは、2人並んで楽しげに学校から出ていく俺とひよりちゃんの姿だった。こいつ普通に盗撮してやがる。

 

「口調が崩れていますよ? 随分と楽し気なご様子だったので、つい写真に収めてしまいたくなって」

 

「はぁ……まあいいや。ってか、俺部屋にいなかったらどうするつもりだったの?」

 

 既読されていない状態で来るか? 普通。

 19時という時間帯とはいえ、ファミレスとか行ってる人多そうだったぞ。

 

「それについてはご心配なく。どうやら便利な機能がこのアプリにはあるそうなので」

 

「便利な機能?」

 

「はい。友だち追加した人の位置情報が分かるんですよ。ほら」

 

 有栖ちゃんは2,3回画面をタップすると、再度端末の画面を見せてきた。

 そこには彼女の端末を中心としたマップが表示されており、よく見たら赤い点がすぐ隣に表示されている。

 

「怖いんだけど!? デフォルトで付ける機能じゃねえだろ常識的に考えて!? あと使いこなしてんじゃねえ!?」

 

 思わず口調が荒れてしまったが許してほしい。だって頭おかしいもん。プライバシーのプの字もない。

 

「オフにしとこ……」

 

 幸いこちらから表示する相手を選べるようなので、これから追加する人も含めて全員切っておく。

 

「感謝してくださいね。高辻君みたいな女性の敵は、いつ刺されてもおかしくありませんから」

 

 ふふんと鼻を鳴らし、してやったりといった様子の有栖ちゃん。……なんかムカつくな。ありがたいのはそうなんだけどさ。

 

「へぇ……で、有栖ちゃんは俺の他に友達はできたのかな? その画面に赤い点は1個しかないようだけど」

 

 入学早々そんな機能に気が付く生徒の方が少ないだろう。他に誰も表示されていないということは、つまり友だち登録登録している人が俺しかいないということ。

 

「あのような女子特有のノリは好きではないので。心配せずとも、友人の1人や2人すぐ出来ますよ」

 

「ふーん。じゃあ、今のところ友達は俺しかいないと」

 

「……何が言いたいんですか?」

 

 うんうんと頷く俺に対し、有栖ちゃんは機嫌を損ねたのか怖い顔で聞いて来る。しかし、ここで引くような男じゃないんだな俺は。

 

「いいや。可愛いなと思って。……クラスで気の合いそうな人が居なかったから俺と帰ろうとしたけど先客が居て、仕方がないから俺が帰宅するまで待ってて帰ってきた瞬間家に乗り込んでくる有栖ちゃんが……すごい可愛いなーと思っただけだよ(早口)」

 

「……」

 

 お、怒ってる怒ってる……怒ると黙るタイプの女の子か。怖いねぇ。

 

「だからといって、出会って一日目の男の家にほいほい入ってくるのはいただけないな。この部屋が完全防音なことくらい、君なら分かっているだろう?」

 

 扉ガン開きで部屋に入って行くひよりちゃん、君にも言ってるんだからね。

 

「あら? これは意外でした。高辻君にそんな勇気があるとは思えなかったので」

 

 ここぞとばかりに煽り返す有栖ちゃんだが、そんな舐めた態度を取っていいのだろうか? 完全に油断しているみたいだし、ここで男の怖さを少し知ってもらう必要がありそうだ。

 怪我をしないように気を使いながらも、素早く有栖ちゃんの上体を押してベッドに倒れ込ませる。

 

「ひゃっ、何するんですか!」

 

 中身を飲み干したコップが鈍い音を立てて掛け布団に落下し、ベッドサイドに立てかけた杖が甲高い音を立てて転がる。……ってか、こいつ外で使った杖で入ってきたのかよ。流石に拭いただろうけど汚いな。

 抵抗しようとする左手を押さえつけながら、耳元で囁くように呟いた。

 

「勇気があるとか、無いように見えるとか関係ないの。男の性欲を甘く見過ぎ。分かった?」

 

 右手で頬をさわさわと撫で、耳を軽くつまんでみると、有栖ちゃんはくすぐったそうに身をよじらせた。

 

「っ……分かりました。分かったので、早くどいてください」

 

 余裕そうな表情を見せてはいるが、頬に朱が混じっている様子が照明に照らされてよく見える。……ちょっと意地悪したくなってきた。

 

「反省してないだろ? ……悪い子にはお仕置きしないとね」

 

「ちょ、ちょっと待っ、やめっ」

 

 鼻がくっつく位の距離で小さく笑うと、有栖ちゃんは本格的に身の危険を感じたのか、もじもじと小さく抵抗する。

 しかしそれが無意味だと分かると、覚悟を決めたように息を吐いて目を閉じた。

 

 ……正直やり過ぎたな。性欲に負けた。

 

「いたっ」

 

 お仕置きの弱いデコピンをすると、有栖ちゃんはびくっと体を震わせて恐る恐る目を開いた。

 

「あと盗撮は犯罪。一発出禁だからね?」

 

「……本当に女の敵ですね。最低です」

 

 からかわれたことをやっと理解したのか、ジト目でボソッと呟く有栖ちゃん。

 そんなに褒めるなよ~。

 

「ほら。分かったら帰った帰った。可愛いんだから自分で身を守らないとダメだよ?」

 

 不機嫌なのか照れ隠しなのか、そっぽを向いて頬を膨らませる有栖ちゃんに、俺はそう語り掛けるのであった。

 

 

 

 





一番わからせが似合う女でした。現場からは以上です。



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どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)

  • 主人公とヒロインの絡み
  • 主人公と龍園、綾小路等との絡み
  • バチバチのクラス間闘争
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