ようこそ現役ホストのいる教室へ 作:カスのホスト
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テストまで残り3週間を切った金曜日の放課後。いくらテスト期間だからとはいえ、華金ともなれば気持ちも浮つくもの。教室の外からは他クラスの生徒の喧騒が聞こえて来る。
しかし、Cクラスの生徒は授業が終わったのにも関わらず、誰も席を立とうとしなかった。誰一人として声を上げない不気味な雰囲気の中、1人の生徒が壇上へと足を運ぶ。
「しっかり揃ってるみてぇだな。今からお前らにこれを渡す」
こちらを心底見下した様子で声を上げたのは龍園君。手に持ったプリントの束を前列に座る生徒に配るように命令する。
一番後ろに座る俺の手元にも届いた。隣に座るひよりちゃんは、左斜め上をホチキスで止めた数枚のプリントを不思議そうに捲っている。
「これは……テスト問題ですか」
内容を確認して呟くひよりちゃん。他の生徒も同様に問題に目を通している。
「坂上からの説明で、定期テストで赤点を取ったら即退学なのはお前らも分かっているはずだ。石崎を筆頭とした馬鹿にとってはさぞ死活問題だろう」
名前を上げられた石崎君が気まずそうに目を逸らしている。確か前回の小テストの点数は20点ほどで、全体的に成績が悪いCクラスの中でもワースト5に入る偉業を成し遂げていたはずだ。
他の成績の悪い生徒も、矛先が自分に向かないように視線を下に向けている。
「退学者が出るのは俺も困る。クラスにどんなペナルティが出るのか分かんねぇからな」
そんな生徒達を咎めるでもなく、龍園君は笑いながら語った。
「だが、坂上はこの理不尽なルールを押し付けながらもこう言った。俺たちが赤点を回避できる方法はあると確信している……とな。このクラスの成績を見てそう言えるほど、坂上も馬鹿じゃないだろう」
龍園君の言葉に疑問符を浮かべるクラスメイト達。
仕方がない話だ。Sシステムの本質が明かされた直後に、そこまで話を細かく聞くことが出来た生徒がどれだけいるだろうか。
「そこで少し調べてみたが、どうやら初回の定期試験は
滅茶苦茶嘘だけど全然それを表に出さない辺り、流石の性格の悪さだ。俺でも初見だと気づけるか微妙なレベルの演技力だな。
ともすれば、クラスでその嘘に気が付ける生徒は誰一人としていない。龍園君の言葉を聞いて、クラスメイトがざわざわと騒ぎ出した。
「おいおい……マジかよ!」
「じゃ、じゃあ、これでテスト勉強しなくても良いってこと……だよね?」
成績の悪い生徒からすると、天から垂らされた救いの糸のようなもの。舞い上がる気持ちも大いに分かる。
しかし、龍園君の動きが俺が想定していたものとは少し異なるものだった。
過去問は彼の好きなタイミングで配布していいと言ったものの、個人的にはテスト直前に渡した方が勉強する習慣もついて良いと思う。過去問と全く同じなのは、この最初のテストだけだというのはリサーチ済みだ。
それに、現3年生と2年生に出題された問題を渡したのに、彼が持っているのは2年生の過去問のみ。あえてもう一つを隠したのには何かしらの糸があるのだろう。
「舞い上がるのも別に構わねえが、もちろんタダで渡すって訳にもいかねえ。今から言う条件を飲めない奴にはそれを没収させてもらう」
「条件……?」
物騒な文言にクラスに緊張感が走った。
そんな彼からほぼ確実に退学を阻止できる過去問というカードが与えられたのだ。一体どんな大きな対価を払わされるのか気が気じゃないはずだ。
「全ての科目で最低80点以上をとる。それがこの過去問を使う条件だ」
「80点……」
「過去問もあるんだし簡単な話だろう? まあ安心しろ。これで仮に過去問と問題が全く違う結果になった場合、情状酌量の余地は与えてやる」
「ち、ちなみに余地なしと判断された場合って……」
遠慮がちに手を上げる石崎君。
「これから2週間以上、過去問を覚えるだけの簡単な仕事すらできない奴がいるとは思えないが……」
そう前置きをして、龍園君は俺の方にあごを指して小さく笑った。
「そんな怠惰な奴には罰を与えないとな? 勿論俺の大好きなやり方でだ」
明言こそしないが、その言葉の意味が分からない馬鹿はこのクラスには居ない。クラスのほぼ全員が身震いをすると同時に、大きな声を上げる勇気ある生徒がいた。
「滅茶苦茶だ! 勉強が苦手な生徒だって居るでしょ!?」
「そ、そうよ! そんな、無理やりやらされるなんて意味わかんないし……」
最初に声を荒げた伊吹さんに続き、俺と仲の良かった真鍋さんを筆頭とした女子生徒数人が抗議の声を上げる。
「ならこれを使わずに退学すればいい。ここで返したとしても文句は言わねえよ」
毅然とした態度を崩さない龍園君に対し、伊吹さんたちは苦し気な反応を見せた。
無理やり押し付けるなんてことはせず、あくまで選択肢を与えてくれただけ。クラスメイトにとってはメリットしかない話だ。それが分からない程彼女も馬鹿じゃない。
現に、龍園君の呼びかけに応えてプリントを返した者は誰一人として居なかった。
「俺からは以上だ。せいぜい制裁を加えられないように頑張れよ?」
そう言い残して、龍園君は教室を後にした。石崎君とアルベルト君もその後を追っていく
途端に緊張が解け、ざわざわと騒ぎ出すクラス。
「なんか、思ってたよりもしっかりしてるんだな」
そんな中で、近くの席からそんな声が聞こえてきた。聞こえないように小声で言ったのだろうが、過去問を貰って気分が舞い上がってるのだろう。その喜色が混じった声は教室にそれはそれはよく響き渡った。
「は? あんた、龍園君をリーダーとして認めるってことだよねそれ」
声を発した生徒……小宮君に対して、真鍋さんは信じられないといった様子で問い詰める。
「な、なんだよ。別にそんなこと言ってないだろ」
「言ってたじゃない! 信じられないんだけど、私は絶対認めないから」
「でも現に龍園は過去問を持ってきてくれただろ。俺にはそんな発想すらなかったぞ」
「何もしてない高辻君を殴るような奴なのよ!? これから何をされるか分かんないじゃない!」
俺を指さして叫ぶ真鍋さん。やめてくれ、あんまりこの状態で注目を浴びたくないんだから。
皆の目には、数か所の打撲によってできた青い痣や、切り傷を止血するためのガーゼを額と頬に止めた、悲惨な俺の姿が写っていることだろう。
これじゃあせっかくのイケメンが台無しだね。こうなることを望んで殴って貰ったんだけどさ。
「で、でも龍園は高辻が抵抗したからって……」
────何となく予想はついているだろうが、俺は龍園君に逆らった見せしめとして殴られた……という体になっている。
次の日に教室に入った瞬間の皆の驚きようといったら面白かった。伊吹さんやひよりちゃんなんて顔から血の気が引いているのが見て取れたほどだったからね。
罪悪感が無いと言えば嘘になるが、最終的には彼女たちのためになるのだから許してほしいところだ。まあ、女を騙すのは慣れっこだからどうってことはない。
「よくあいつの言うことを信じられるわね。過去問貰ったからってすぐ尻尾振るとか、男としてのプライドとかない訳?」
もちろん、クラスの中心人物だからと言って全ての生徒から好かれている訳なんてない。俺の様なキャラを毛嫌いする男子生徒も割と居る。そんな彼らからすると、顔だけのいけ好かない奴より、実際に過去問という手柄を持ってきた龍園君の方が魅力的に映るのも無理はない。
龍園君を支持している生徒は2から3割程度と言ったところだろうか。小宮君もそのうちの1人だ。
「は? お前だって貰ってた癖に何言ってんだよ。それが無かったら退学になって高辻に迷惑かけてたんじゃねえの? 小テストも酷かったじゃねえか」
「それは……!」
小宮君の火の玉ストレートが真鍋さんに突き刺さる。これを言われたら彼女も弱いだろう。
こういう対立が起こること自体は俺も龍園君も予想の通りだ。しばらくは俺優位でクラスが2分することになるだろうが、特別試験が始まる頃には龍園君を支持するという形で落ち着くだろう。
「真鍋さん、俺は大丈夫だよ。過去問貰ったんだし、退学になったらもう遊べないんだよ? そこは感謝しないと」
何故なら、俺が龍園君アンチの声を抑えることに尽力するからだ。
「……分かった。でも、やっぱり龍園君は嫌いよ」
悔し気にその顔を歪ませて、真鍋さんは席に戻って行った。
……ということで、俺の計画はほとんど完璧に進行していると言っていいだろう。……
真鍋さんが引いたことで喧嘩は収まったが、静まり返った教室は居心地が悪い。さっさと帰るとしよう。
鞄を持って教室を出る。扉を閉めて歩き出したタイミングで、後ろから手を引っ張られた。
「行きましょう。高辻君」
振り向くと、そこにはこちらを見上げるひよりちゃんの姿があった。心なしかその青みがかった宝石の様な瞳も淀んで見える。
「……いや、もう大丈夫だよ。ほら、周りの視線もあるしさ」
授業が終わってからある程度の時間が経ったとはいえ、まだ廊下にはそこそこの生徒が残っている。中には友人の姿も見えるため非常に気まずい。
「行きましょう」
「あっ、はい」
しかし、そんな状況でもひよりちゃんが足を止めることは無かった。
そのまま引っ張られる形で校門を抜け、通学路へと足を運ぶ。
「あのー……ひよりちゃん?」
「……」
ずっと無言でいられるのも気まずいため、声をかけてみるも反応は一切見られない。俺の前を歩くひよりちゃんは、今は一体どんな表情を浮かべているのだろうか。
この一か月間で慣れた寮までの道を歩き、ひよりちゃんの部屋まで連れてこられた。
「お邪魔します」
もうどうこう言ってられない雰囲気のため、靴を脱いで部屋へと上がると、そのままリビングのクッションの上に座らされる。
「傷、見せてください」
消毒液やガーゼの入ったプラスチックの道具箱を膝の上に置き、正座で俺の前に座るひよりちゃん。
「剥がすので動かないでくださいね」
日和ちゃんはそう言って左手で俺の頬を支え、右手の指先でテープを剥がす。
上下のテープが剥がされて取れたガーゼには、まだまだ赤い血が滲んでいる。
「ちゃんと私の言う通りに処置しましたか?」
「……昨日交換したって」
「昨日私が貼った状態と変わってませんでしたよ。入浴後も交換しないと駄目だと言いましたよね?」
速攻バレた……ってかバレてた。洞察力の無駄使いはやめてくれ。
同い年の女の子に世話を焼かれている状況に恥ずかしさを感じていると、ひよりちゃんはため息を吐いて道具箱から軟膏を取り出した。
「傷が膿んだらどうするんですか。高辻君はもう少し自分を大事にしないと駄目ですよ? 痛かったら言ってください」
人差し指で半透明の軟膏を指に取ると、そのまま傷に優しく塗り込んだ。色白で細い指がゆっくりと頬をなぞるように動く。
「別に自分でできるのに」
くすぐったいのか痛いのか、そんな絶妙な感触に目を細めながら呟くと、ひよりちゃんは端正な顔を悲痛に歪ませた。
「……これくらいしか、私には出来ませんから。……あそこで私が止めていれば、高辻君が怪我を負うことは無かったかもしれませんし」
今にも泣き出しそうな顔で、ぎゅっとスカートの裾を握り込む。
「おかしいですよ……! 龍園君を糾弾することはおろか、そのやり方に賛同する生徒がいるなんて」
「被害者の俺が良いって言ったんだから、それで退学になっても困るのは皆だし」
これで龍園君が無能だったら切り捨てる方が長期的に見ていいのだろうが、生憎と彼のリーダーとしての適性は学年でも類を見ない程だ。
「でも、私は今のCクラスの雰囲気が好きではありません」
そう呟くひよりちゃんから伺えるのは後悔と軽蔑。後者に関してはクラスメイトだけでなく彼女自身に対する念も混じっているだろう。
感情としては今すぐにでも龍園君を追い出したいのだろうが、ペナルティを恐れるあまり踏み切れずにいる。そんな自分に対する蔑視が。
────そう。想定外の事態というのは、俺が殴られたことによってひよりちゃんが病んでしまったことだ。
そんなに気にしなくても良いのに~なんて気軽に言えたら良いのだが、そんなことを言ったら龍園君との作戦が台無しになってしまうので出来ない。これが例えば店の女の子とかだったら全然いい。だが彼女に関しては流石に少し心が痛む。
等身大で接してくれるところとか、こうやって世話を焼いてくれるところとか理由はあるのだろうが、俺はひよりちゃんには弱いのだ。
「……ごめんなさい。私が言えたことじゃないですよね」
そんな最低な思考を巡らせている間にも、ひよりちゃんは今にも泣きだしそうな声で呟いた。
新しいガーゼにテープを張り付けようとするひよりちゃんだが、手が震えてしまっているのか上手く出来ていない。……よし。腕の見せ所だな。
そんな彼女の手を両手で包み、優しく握りしめる。
「えっ」
驚いたように体を一度震わせこちらを見上げるひよりちゃん。俯いていたため分からなかったが、その瞳には涙がにじんでいる。
「大丈夫。こうして俺のことを思ってくれる人が居るってだけで、俺は嬉しいんだ」
「でもっ、私はあのとき何も……!」
それはクラスメイト全員に言える事なんだけどな。真鍋さんとか何故か被害者ヅラしてるし。
確かに俺を好意的に見ているのももちろんあるのだろうが、あの子に関しては俺と仲良くすることによってクラス内でのカーストを上げようとしているのが見え見えだ。だからあんまり好きじゃないし、下の名前でも呼んでいない。……顔がそこまでタイプじゃないってのもあるけど。
そんなことはさておき、今は目の前の可愛い友人を慰めなくては。
ということで、もはや泣いていることを隠そうともせずしゃくり上げるひよりちゃんの背中に手を回し、そっと抱き寄せる。
「っ! た、高辻くん?」
「泣かないで。俺はひよりちゃんにそんな表情させるために頑張ったわけじゃないんだよ?」
抱き寄せながら甘いセリフを吐くという、今時流行らないクサいムーブをかましているがモーマンタイ。この時のために今まで好感度を稼いできたと言っても過言じゃないからね。
内向的な性格の割に他人とのパーソナルスペースが狭いひよりちゃんだが、流石にこの距離は効くだろう。
「いや……そ、そういうことじゃなくて……ええっと」
ほらこの通り。さっきまでの姿は何処へやら、見つめ合った瞳は右へ左へ動き回り、真っ白な頬も朱に染まっていた。
目尻に溜まった涙を親指で拭い。そのまま手の甲で頬をさすってみる。
「ごめんね。嫌だった?」
聞いておいて何だが、絶対嫌じゃないと確信しての行動なんだよね。
「……いえ。その、ちょっと驚いただけです。……嫌では、なかったです」
気まずそうに膝に手を置いてもじもじと動くひよりちゃん。可愛い。
「そっか。ならよかった」
ほっと息を吐く俺に対し、ひよりちゃんはほんのりと頬を朱に染めて俯いている。
「じゃあこれ、貼って貰ってもいい?」
「……! はいっ」
軟膏でくっ付いているだけのガーゼに指を指してお願いすると、ひよりちゃんは嬉しそうに頬を緩ませて返事をしてくれた。今まで拒否され続けてきた直後に頼られるのはさぞ嬉しいだろう。
丁寧に四辺をテープで張ると、
「終わりました。ちゃんと忘れずに取り換えるんですよ?」
先ほどの悲しそうな表情よりもずっと似合っている。やっぱりひよりちゃんは笑っている顔が一番似合うね。
ちなみに有栖ちゃんに関してはムッとした顔が一番似合っている。気高い性格とのギャップが可愛いからついいじめたくなるのだ。
「分かってるよ。ありがとねひよりちゃん」
そんな微笑ましい空気の中、俺は感謝の言葉を告げてひよりちゃんの部屋を後にした。
時刻は19時。この時間帯ならいつもはクラス学年問わず友達と遊び歩いている俺だが、龍園君からしばらく大人しくしてろとのお達しがあったため本を読んでいる。
ひよりちゃんに貸してもらった本を消化しないといけないからね。次々に新作が机の上に積まれていっているから置く場所も大変だ。そろそろ大きめの本棚を買いたいが金がない。
ベッドの上で壁にクッションを置き、足を伸ばした体制でページをめくっていると、ふとチャイムの音が部屋に響き渡った。
「ん?」
この時間帯に来客とは珍しい。というよりそもそも遊ぶときは基本外なので、俺の部屋番号すら知っている人はそう多くない。あんまり友達を部屋に招いて遊ぶの好きじゃないんだよね。
それこそ部屋に上げたことがあるのはひよりちゃんとか、有栖ちゃんとか……あとは隣人の清隆君くらいか。ひよりちゃんに関してはちょくちょく本を持ってくる位だし、後者二人に関しては最近は話すことすらほとんどない。クラス間闘争の存在を公表された時点で気まずくなるのは仕方のない話だが、寂しくないかと言ったら嘘になる。
そんな俺の部屋に来客とは珍しい。ひよりちゃんの部屋に忘れ物でもしたかな?
だとしたらわざわざ持ってこなくても良いのにと思いつつモニターを確認するが、その予想はどうやら外れだったようだ。
「あれ、有栖ちゃん。どうしたの突然」
そこにいたのはAクラスの有栖ちゃん。見慣れた制服を身にまとって廊下に立っている。
『こんばんは高辻君。今お時間よろしかったですか?』
こちらの質問には答えず、暗に部屋に入れろと言う有栖ちゃん。
「いいよ。今鍵開けるから」
相変わらずだと苦笑いをしながら答える。こういう所も彼女の魅力だが、せめて連絡の一つは欲しいものだ。
部屋の扉を開けて玄関に向かう。既に入っている有栖ちゃんは片手を玄関の手すりに置いてローファーを脱いでいる。因みに玄関に置かれたこの手すり、実は俺が学校に許可を取って設置したものである。
有栖ちゃんの部屋には予め付いていたそうだが、それは学校が配慮して急遽設置したものだろう。来るたびに靴を脱ぎ辛そうにしてたし、あって困るものでもないためサプライズで設置したのだ。
今の経済状況からは決して安い値段ではなかったが、これで好感度が稼げるなら安いものだ。
それに、初めてお披露目したときの、憎まれ口をたたきつつも喜びが隠せない有栖ちゃんの反応は大層可愛らしかった。
「お邪魔します。すみません突然お邪魔してしまって。どうしても高辻君にお伝えしたいことがありまして」
「電話じゃダメだったの?」
「ええ。大事なお話なので」
仰々しく語る有栖ちゃん。1か月という短い付き合いだが、ロクな話じゃないことは容易に想像がつく。
「立ち話もなんだし、とりあえず中入ろうよ」
「いえ、すぐに済む話です。また悪い高辻君に襲われでもしたらたまりませんから」
随分と昔の話を引っ張ってくる子だ。それから10回以上遊びに来てる癖に。
「はいはい。ごめんなさいね悪い男で」
「ふふふ。……でも、もしかしたら私と
うんざりした様子で呟く俺に対し、サラッと凄いことを言い放つ有栖ちゃん。
右手で握った手すりを上下にゆるゆるとさすりながら、有栖ちゃんは一歩近づいて上目遣いで俺を見つめる。あえてやっているのかは知らないが、それはそれは蠱惑的な雰囲気を醸し出していた。
「中々意味深なことを言うね。どういうことなのかな?」
疑問符を浮かべる俺に対し、有栖ちゃんは余裕そうに笑みを浮かべながら言い放った。
「Cクラスを捨てて、Aクラスのスパイになってください。報酬は……私とのお付き合いなんてどうでしょうか?」
次で1巻の内容は終わりかな。
高評価、感想頂けると作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
どこを重点的に見たいですか?(ヒロインは1章ごとに1,2人増やす予定です)
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主人公とヒロインの絡み
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主人公と龍園、綾小路等との絡み
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バチバチのクラス間闘争