序章
段々と春らしい暖かさを得始めた火の国の木の葉の里。第二次忍界大戦も終わり誰もが平和を謳歌していた。ただ、それが未来永劫続くなどと考えるものは少ない。それでも春の暖かい平和な休日。
「お前すごいな。カカシ。中忍試験に合格したんだって。お前、木の葉の最速記録更新だろ!」
ラーメン屋で久方ぶりに再開した二人が話していた。黒髪黒目の少年、おおやカガミが銀髪の少年、はたけカカシに熱く語りかける。興奮した様子のカガミと違いカカシは落ち着いていて、いつの間にか食べ終えたラーメンを横目に口を覆うマスクの微妙なずれを直していた。
「まぁ、今きな臭いからじゃないの。いろいろと。知ってるでしょ」
カカシは冷静にそう答える。幼いながらに天才と呼ばれ未来の木の葉を担うと将来を渇望されている少年は精神性も子供らしくない。
「まあ、そうだけどよ。ほんのちょっと前に第二次忍界大戦が終わったばっかじゃねぇか。そんなすぐに第三次忍界大戦です、とはならねぇだろ、とはいいたいけどな。三代目風影がいなくなってあそこら辺の国が暴走しそうだっていう話は聞くし周りの国も弱体化した風に攻めることも考えててもおかしくない状況だしな」
勢いよくラーメンをすすりながらカガミはカカシからの問いに齢六歳とは思えないほどの知識でそうまとめる。彼もカカシほどではないにせよ本来より一年早い五歳でアカデミーに入学し、今年には卒業できる見込みがある才能ある忍びだった。そもそもそのような制度が現在使われていることが近内に起こる戦争への備えとなっており、戦争を暗示しているようなものだ。
「もし戦争が始まってもオレが父さんみたいに活躍して立派な忍びって呼ばれるようになって、それで…、とにかく父さんみたいな立派な忍びになる!」
先ほどとは打って変わって興奮した様子でカカシが語り始めた。
「あー。わかった。わかった。お前がサクモさんのことが大好きだってことが」
「そういうわけじゃないわ!」
いつもとは違うカカシの一面。それは父のことが大好きな一人の少年だった。いつもはどこか違っているが。
いろいろと面白くなってきたカガミがカカシへと笑みをこぼすがカカシはそれを黙ってにらみつけて黙らせた。カガミはどこかあきれるように「はー」とため息をこぼすとあと少し残ったラーメンをすすり、一気にコップ一杯の水を飲み目の前の店主に皿とコップをだし、きちんと「ごちそうさまでした」といってから会計を始める。「子供割だ」といって本来よりかなり安い価格にしてくれたことに感謝しながらきちんと会計を済ませ二人で店の外へと出る。
「じゃあな」といって帰路に就こうとするカカシにそっけなさを感じながらカガミはカカシを呼び止める。
「なあカカシ」
「あ?」
「この後ちょっと修行しようぜ!」
二人は目の色を変える。この二人はいくら天才と呼ばれようとも、いくら大人びているといわれようとも、結局はまだ忍術が好きな少年たちでありそれぞれの憧れと夢を追いかける少年だ。
静けさに包まれた訓練場。あたりの木々のざわめきが普段よりも強く感じられる。そのざわめきが一段と大きくなった時、カガミが手裏剣を投げ彼らの「修行」が始まった。彼らにとっても修業とは実戦形式のもので戦いの中でそれぞれの持つ技術を練り上げていくためのものだった。
目の前へと飛んでくる手裏剣を冷静に左へのステップでよける。そして、そのまま前へとステップを踏んで一気に距離を詰める。それを見たカガミは近距離戦に備え雷遁による肉体強化を行い一気に距離を詰める。
カカシはその動きを見て素の体では不利と判断したのか瞬時にクナイを出し、カガミに切りかかることで彼を下がらせ距離を一定に保つ。カガミが横へと飛んで横からアップローチをかける一瞬の間にカカシは雷遁による肉体強化を終えカガミの攻撃をよけがら空きになった左半身を狙う。
しかしカガミはそれを蹴りを阻害し着地とともに後ろにステップを踏み距離を開け即座に印を結び始める。同様にカカシも距離をとるように後ろへ下がり、一瞬遅れて印をすさまじい速さで結び始める。
「火遁・豪火球の術」
「土遁・土流壁」
すさまじい熱気が訓練場を包みカカシのいた場所にめがけて巨大な炎の球体が飛んでくる。カカシは土流壁を何とか間に合わせたが押し切られると判断しすぐに横へと飛ぶ。それを見たカガミも前へと飛び豪火球の術で飛び散った岩を空中でけり方向をカカシの方向へと転換する。その勢いのままカカシに殴りかかるがあっけなくいなされ横へ投げ飛ばされる。カカシはすぐにカガミのもとへと飛び追い打ちをかける。着地したばかりで痛みも感じていたカガミは体勢が崩れた状態で攻撃を受けることになり大きく体制が崩れてしまう。しかし何とか倒れないように体全体を使ってバランスをとるために右足が浮いた状態になってしまった。それをカカシが見逃すはずもなく片足で着地するのと同時にもう片方の足で鏡の左足を蹴りカガミは宙に放り投げなれた。そのままなすすべなくもう一度蹴られカカシに背中を見せた状態になってしまい…
「木の葉隠れ秘伝体術奥義!! 千年殺し!!」
この修行一大きく気迫に満ち溢れた声が訓練場内に響く。カカシは指に全身全霊をかけて人生一の気合とともに奥義を繰り出す。
「があぁっーーーー」
この修行一情けない声ともいえないほどの悲鳴が響く。
カガミは肛門の痛さを通り越した何かさえ感じながら、もはや意識さえせずにのたうち回る。そのうち動きを止めたかと思えば尻を手で抱えたまま意識を失う。彼は口を大きく開けて顔は真っ蒼になっていた。カカシは彼に幾分かの罪悪感と大きな達成感を胸に彼を背負って帰路に就く。この後待ち受ける父からの説教など考えもせずに。
実はカカシ並みのポテンシャルがあったりもする