戦争は時間とともに段々と激しさを増していった。木の葉の位置する火の国の土地が直接戦闘に巻き込まれることはないものの段々と規模が大きくなっていっていることは誰の目から見ても明らかなほどだった。
「まあ、まずは上忍昇格おめでとう」
上忍昇格を伝える辞令を持ったカガミたち三人の前でキョウナはその昇格を祝う。三人とも十二歳での上忍昇格であり戦時中であることを差し置いてもかなりの速さでの昇格である。
中忍に昇格してからかなりの数の任務をこなしてきており時間の経過とともに危険な任務も段々と多くなっていた。しかしそれは中忍レベルの危険度の任務である。もちろん通常時における中忍レベルとは異なるがそれでも死を意識することはあまりないほどのレベルの危険度であった。しかし、キョウナ班は現在三人全員が上忍となった。それは後方支援や簡単な敵地での工作といった任務を超えた難易度の任務が振り分けられるということである。
故にキョウナ班の三人はキョウナが次に続けるであろう次なる任務を真剣な表情で待っていた。
「ごほんっ。それで次の任務だが… 湯の国への支援として戦地での任務となる。気持ちを入れ替えて臨むように」
湯の国への派遣、つまり霧隠れとの戦いに投入されるということである。霧隠れは開戦から一年ほどたったころに飛び地――霧隠れの今回の湯の国への侵攻における本拠地である――の背後に位置していた雲隠れと同盟を結び岩隠れも湯の国の戦線へと表れている。最近は比較的前線は安定しているがそれが嵐の前の静けさであるかもしれない。
「集合は明日の朝五時に門の前で。今日は解散とするから各々準備を整えるように」
まだ見たことのない土地での戦争に覚悟を決めながらキョウナ班の三人はそれぞれが準備を整えるために各々の行くべき場所へと飛んでいく。
キョウナは彼らの顔にこれまで以上に真剣さを感じる。その原因を考えてみるとやはり戦争に行きつく。これからの世代が戦争を経験しないようになってほしいと願いながらキョウナも帰路へとついてった。
「なあ、ミズナ」
深夜の巡回から帰り二人だけの暗い食堂として利用されているテントの中で荷物を整理しながらカガミはミズナの名前を呼ぶ。
「どうした?」
ミズナは普段通りを装っているがその声はどこかトーンが低く落ち込んでいるようだった。
「大丈夫か? オビトのことは… つらいのは分かるしオレもそうだが…」
「あぁ。わかってる。任務には集中する」
「できてないぞ」
いつもなら突っかかってくるミズナもカガミの言葉に何も反応せず顔をうつむける。
このようになってしまったのはミズナが一族の中で姉を除くと唯一仲が良かったうちはオビトが岩隠れとの戦闘の中で戦死したためである。彼は仲間を守るために犠牲となって岩の下敷きなって圧死してしまったとされている。壮絶な最期であったそうだ。
「お前、取り合えずちょっと休め。気持ちが落ち着かない状態で任務に出ても死ぬだけだぞ」
カガミが口調を強くしてミズナに休むように促す。実際戦場というのはそういった精神状態で生き抜けるほど甘くない。
「大丈夫だ。切り替える」
そうはいってもうつむいたままのその状態を見てそれが改善されるとは思えなかった。
「無理はするなよ。オレだってお前に死なれたくはない」
「それは私もだ」
顔を上げてカガミの目をじっと見つめるミズナの目には涙がたまっていた。
「泣き叫びたいなら泣き叫べ。だがオレたちは忍びだ。里のためには私情は切り捨てろよ」
再びうつむいてむせび泣くミズナを見てカガミの目にも涙がたまる。何とかこらえようとしても死んだ仲間の思い出が休む間もなくフラッシュバックしてきて感情があふれ出して涙もこらえられない。戦争が早く終わってほしい、カガミはそう願いながら今はただ気持ちに任せて感傷に浸っていたかった。
「こちらの戦線も停滞か…」
「木の葉の黄色い閃光」と呼ばれ木の葉における最高戦力の一人である波風ミナトが思案気にそうつぶやく。飛雷神の術を多用する彼は高い機動性を持っており前線における実情把握のために里の上層部から派遣されてくることも珍しくない。もちろん作戦の戦力として送られることもだ。
そして現在カガミたちが従軍している霧隠れ戦線は現在停滞していた。小競り合いは毎日起こっているが大規模な戦闘に至ることはなくなっている。小競り合いが起こったとしても霧は基本的にすぐに撤退しており、おそらく地形や拠点の位置を調べるために来ているのではないかといわれている。
「岩もそうですか?」
岩との間に大きな争いがあったという知らせはカガミたちのもとに入ってきていない。カガミは卓上の地図の岩隠れとの前線を見ながらどこか不安げに尋ねる。情報統制によって敗北が公のもとにさらされないことなどもはや普通のことである。故にそれが前線の者たちに伝わることが遅くなる、ということも多い。
「君のおかげもあって我々が前線を押し上げているよ。『木の葉の狂気』くん」
岩での活躍が原因となって最近呼ばれ始めたその二つ名を弄られカガミはムッとした顔つきでミナトをにらむ。ミナトは少し笑って次の言葉を続ける。
「岩との戦争はもうすぐ終わりそうだ。だが少しあっちが渋ってる。あれだけの被害を出したのに、だ。何かしら戦局が打開する策があいつらにあるのか、もしくは…」
その続きはおのずと想像できるものだった。今の穏やかな戦場はすぐに変わってしまうだろうことを改めて感じたその場の全員が顔を険しくさせる。
「何か情報はつかんでいるのか?」
この戦線において指揮を執っている奈良一族の次期当主奈良シカクがミナトに尋ねる。
「何も掴んでないよ。でも警戒は怠るな」
シカクはその答えに眉間にしわを寄せ顎を撫でながら考え始める。その可能性はかなり前から考えられていたことだ。だがそもそもの戦力差があり抑えきれない可能性も高い。
「何か増援はあるのか?」
「申し訳ないがまず岩をつぶすために戦力が割かれることになるだろう。増援も送るがそこまで頼りにしないでほしい。最悪前線を下げていなすことも考えていい」
なかなか厳しい状況に置かれていることを改めて思い知らされる。
「偵察部隊を増やし状況をより詳細に知れるようにしよう。地形的に考えて大規模な軍団による攻撃を考えるとこの拠点近くかより北東からの侵攻となるだろう。そこを中心に索敵により一層力を入れるようにしろ。だがこの辺りは森が多いゲリラ戦を仕掛けて進軍を遅らせるようにしろ。そうすればミナト、増援は期待してもいいんだな?」
「もちろんだ」
シカクが部下たちに作戦の指示を飛ばしミナトに尋ねる。そして回答に満足したのか「頼むぞ」といってテントから出ていった。
「カガミ」
それに続いて退出しようとしていたカガミをミナトは呼び止める。なんだ、と振り返ってその場で止まりミナトの言葉を待つ。
「気をつけろよ。君の名前は思っている以上にとどろいている。あいつらはそれを脅威と見てる。だから…」
言葉はそれで終わったが内容を理解したカガミはミナトに「気を付けます」とだけ言い残し退出しようとする。そして最後にハッとしたように立ち止まってミナトに尋ねる。
「カカシは元気にしてますか」
「そうとも言えないかもしれないけどカカシのことは任せてほしい」
その答えを聞いてカガミはテントから出ていく。それでも彼の不安は取り除かれはしなかった。
自来也の二つ名をパクっちゃったけど許してください
自来也くんはただのガマ仙人です