メカゴジラ機龍VSガイガン=レクス ~魔女と呼ばれた女~   作:よよよーよ・だーだだ

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3、彼女がオペレーション=ロングマーチに至るまで

 小さな寒村で生まれ育った私は、幼い頃から数学に魅了されていた。

 よく母親が、このようにこぼしていたのを覚えている。

 

「イリーナ、またそんな難しい本を読んで……」

 

 母親が呆れるのも無理はない。私が読んでいるのは数学の専門書、それもこの田舎の村には不釣り合いなほど難解なものだ。

 母親の言うとおり、私は本が好きだった。特に数学の本を読んでいると、私はまるで魔法使いの弟子になったかのような気分になる。

 そんな私を見ながら、母が心配そうに溜め息をついた。

 

「この子は将来、いったいどんな人になるんだろうねぇ……」

 

 魔法使い、それは私の憧れだった。本を読んで知識を蓄え、いつかは魔法使いになって、この寒村を出て世界中の人たちを助けたい。

 そんな夢見がちな少女だった。

 

 

 大人になった私が『あのサイボーグ怪獣』、そして『あの男』と関わりを持つようになったのは今から15年以上前、オペレーション=ロングマーチが始まるよりも前のことだ。

 

「やあ、初めまして!」

 

 大学の片隅、私の研究室を訪れた男は開口一番、溌溂とした表情で名乗りを上げた。

 

「僕は〈ミハイル・アホートニク=ボローディン〉だ。よろしく頼むよ、イリーナ」

 

 そうやって手を差し伸べてきた男に、私も答える。

 

「……よろしく。イリーナ=マミーロヴァだ」

 

 そして固く握手を交わし合う私たち。彼の名前を聞いた時、私は真っ先に気になったことを口にしたのを覚えている。

 

「ミハイル、君の名前は複合姓か。珍しいな」

 

 ミハイル・アホートニク=ボローディン。

 その名乗りが正しいのなら彼はアホートニクとボローディン、二つの苗字を名乗っていることになる。スペインやポルトガル、あとラテンアメリカではこうした複数の苗字を持つ複合姓が一般的だと聞いたことがある。私の祖国ロシアでも一応法的には効力を持つというが、実際にお目にかかるのはなかなか珍しい。

 私の率直な感想に対し、ミハイルは「よく言われるよ」と恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

「アホートニクは曾祖父の苗字でね。ソヴィエト・ロシア時代にウチの曽祖父(ひいじい)さんが兵器開発でレーニン勲章を貰って以来、僕の家ではアホートニクの苗字も名乗るのが伝統なのさ。まったく時代錯誤、ナンセンスだよね」

 

 そうやって肩を竦めながら語るミハイルの気取らない姿に、私は正直なところ好感を覚えた。如何にも着なれていないスーツ姿、人前に出るため慌てて剃ったのか剃り残しのあるヒゲ、全体的に垢ぬけない風貌。少々オタク青年っぽい雰囲気はあるが、少なくとも悪人ではないだろう。

 私がそんな感慨を抱いていると、今度はミハイルが言った。

 

「そんなことよりイリーナ=マミーロヴァ博士、君のことは色々と噂を聞いているよ」

「……噂?」

 

 私が聞き返すと、ミハイルはにこやかに微笑みながら言った。

 

「イルクーツク地方から突如として現れた、期待の新星。ゲマトロン演算を用いた義手義足の設計、画期的な人体神経系統信号処理とデコーディング。そして才色兼備、あまりに優秀すぎてついた渾名が『バイカルの魔女』……だろ?」

 

 ……『バイカルの魔女』か。私は答えた。

 

「その渾名はあまり好きではないのだがな」

「そうなのかい? 箔がついてカッコいいじゃないか」

 

 苦々しげな私の答えに、ミハイルは酷く驚いた様子だった。

 なにを無邪気なことを……そう思いつつ私は答える。

 

「そうでもないな。周りからはむしろ引かれるだけで、それほど良いことは無い。魔女だ何だと言ったところで、実際のところはこんな辺鄙な片隅の研究室をあてがわれるだけの日陰者に過ぎん」

 

 たしかにバイカル湖畔の豊かで美しい自然には思い入れがあるが、生まれ故郷のイルクーツク、特に私が育った村は昔ながらのド田舎だった。男尊女卑も強かったし、そんな中でゲマトロン数学にばかり打ち込んで育った私にとって、そこでの暮らしはあまり良い思い出がない。

 それに、と私は続けた。

 

「魔女なんてそれこそ時代錯誤、非論理的だろう。どうせなら『バイカルのコヴァレフスカヤ』とかの方が良い」

「コヴァレフスカヤ? 誰だい、それは?」

 

 ミハイルが本気で不思議そうな顔をして聞き返してきたので、私もついつい説明してしまう。

 

「知らんのか? まったく物を知らん男だな、君は……」

 

 ソフィア=コヴァレフスカヤ、ソヴィエト・ロシア時代に実在したソヴィエト史上初の女性教授だ。とても優秀な数学者で、偏微分方程式にまつわる研究で重要な功績があった人物だと言われている。しかもコヴァレフスカヤ博士は才色兼備、社交界の花としても活躍し、おまけに素晴らしい小説家としても評価されているという逸話の持ち主である。

 そのことを説明してやると、ミハイルは、

 

「……ぷふっw」

 

 途端に噴き出した。そしてあっはっはっはと、声を立てて爆笑した。

 ……何が可笑しいんだ。その場で笑い転げているミハイルを私が精一杯睨みつけてやると、ミハイルは笑い過ぎて涙の浮かんだ目元をこすりながらこう答えた。

 

「いやあ、『バイカルの魔女』だなんて呼ばれているからいったいどんな人かと思ってたら、意外と可愛いところがあるなあと思ってね」

「か、可愛い……?」

 

 初めて耳にする評価だった。女を捨てたガリ勉、数学にいかれた変人、そしてバイカルの魔女……これまでわたしの人生においてそんなふうに爪弾きされることは多かったが、『可愛い』だなんて言われるのは生まれて初めてである。

 そのことを伝えると、ミハイルは腑に落ちない様子でこう言うのだった。

 

「ふむ……だとしたらイリーナ、君の周りの人は相当に見る目が無いか、でなければその素晴らしい才能に嫉妬してたんだろうね。こんな美人で、しかもこんなチャーミングで素敵な人を『魔女』呼ばわりするだなんて」

「ちゃ、チャーミングで素敵……っ!?」

 

 可愛い、美人、チャーミングで素敵。私の人生において最も縁遠かった言葉たちが続々と出てきて、流石の私も思わず面食らってしまう。なんだこの天然タラシ男は。何が狙いなんだ。そんなにおだてても何も出やしないぞ。

 そんな私の困惑など露ほども知らず、ミハイルの方は何やら安堵したかのように胸を撫でおろしながら言った。

 

「でもまあ、安心したよ。てっきり魔女らしくヤバイ人なのかと思ったけど、これなら共同研究者として上手くやっていけそうだ」

「共同研究?」

 

 私が聞き返すとミハイルは得意気に胸を張って言った。

 

「そうさ。僕も例のプロジェクトに呼ばれていてね。君も呼ばれているんだろう、『ガイガン計画』にさ」

 

 『ガイガン計画』。

 世界中で怪獣が暴れ回る『怪獣黙示録』の時代。しがないサイボーグ研究者に過ぎなかった私に、地球連合政府から御呼びが掛かったのは数日前のことだ。

 地球連合政府は現在、怪獣王ゴジラの猛威に対抗できる『最終兵器』を建造しているという。『人類最後の希望』と呼ばれるその最終兵器、しかしその完成までには時間があまりにも足りていなかった。

 そこで地球連合政府は、時間稼ぎを行なう作戦を立案した。長征作戦、オペレーション=ロングマーチ。ゴジラをユーラシア大陸の中央にまで誘導する遠大な計画だ。

 その遠大な作戦を遂行するため、『ゴジラの囮になってくれる新兵器』を地球連合政府は欲していた。ゴジラに勝つまで至らなくてもよい。一時的にゴジラの気を惹き、闘い続けることさえ出来ればいい。そんな間に合わせの新兵器が。

 

「うまくやれそう……か」

 

 だが残念、生憎だったな。私は告げた。

 

「期待してくれたところ悪いが、私はこの研究は断ろうと思っているんだ」

「え、そうなのかい!? なんで!?」

 

 驚くミハイルに、私は答える。

 

「当然だ。断るに決まってるだろう、『サイボーグ怪獣を造る研究』だなんて」

 

 風雲急を告げるオペレーション=ロングマーチ、その戦線へすぐに投入できる間に合わせの兵器。だが、今からゼロベースで新兵器を開発するのでは間に合わない。

 そこで白羽の矢が立ったのが、私が進めていたサイボーグの研究だ。

 既存の怪獣をサイボーグ怪獣へ改造しコントロールしてゴジラと戦わせる。Let Them Fight:LTF構想の一環として、私の研究が目を付けられたのだ。

 しかしサイボーグ怪獣、それも単なる時間稼ぎのために命ある生き物を使い潰す。そんな残酷なことに加担したくて、私は科学者になったわけじゃあない。私は言った。

 

「私の専攻は障碍者福祉、手足や視覚聴覚といった五感、体の一部を失った人たちがそれらを取り戻すための研究だ。サイボーグ怪獣を造るだなんておぞましい所業に加担するのは真っ平、御免被りたいね」

 

 そうはっきり言い切った私に、ミハイルはひどく残念そうな顔をしていた。

 

「そうか……イリーナ、君は優しいんだな」

 

 

 

 

 しかし結局、私は例の『ガイガン開発計画』に参加することになった。

 

 理由は簡単、報酬が良かったからだ。当時、私の障碍者福祉のための研究は資金繰りが苦しくて行き詰まっていた。ミハイルには随分と志の高い御立派なことものたまってしまったが、結局のところ私も金に目がくらんだ俗物に過ぎなかったというわけである。

 のちにガイガンを設計することになる設計局OKB-1972を初めて訪れたとき、私は盛大な歓待を受けることになった。

 

「ようこそ、マミーロヴァ博士!」

 

 そう言って鷹揚に私を出迎えたのは、身形の良いスーツ姿の壮年の男。

 俗世間に疎く社会性にも乏しい私だが、しかるべき場で愛想良くするくらいのTPOは流石に弁えている。

 

「こちらこそ丁重に出迎えていただき恐縮です、パヴロフ議員」

 

 男の名は〈イワン=イリイチ・パヴロフ〉。怪獣黙示録以降のロシア政界で頭角を現し始めた新進気鋭の政治家で、巷ではかなりの野心家として知られている。

 そして私が愛想良くしたので気を良くしたのだろう、パヴロフはニコニコ笑いを浮かべながら私を出迎えた。

 

「マミーロヴァ博士、あなたの祖国への貢献、大変痛み入ります。地球の、そして人類の未来のため、ひいては我らが偉大な祖国ロシアのため! 共に力を尽くそうではありませんか……!」

 

 ……これは私もあとで知った話だが、当時の地球連合政府にはいくつかの派閥があった。私たちのガイガン建造計画を主導したのはユーラシア、特に『モスクワ派』と呼ばれるロシアの実力者が集まった政治グループの一派だ。そしてイワン=イリイチ・パヴロフはその筆頭格だったという。

 まあ、そんなことはさておき、次に案内されたのは設計局の主幹となる研究棟。そこにはやはり思ったとおり、あの男がいた。

 

「やあ、やっぱり来てくれたんだね、イリーナ! よろしく頼むよ!」

 

 そう言って固く握手したまま、私の手をぶんぶんと振るうミハイル・アホートニク=ボローディン。

 ミハイル自身はそこまで屈強な大男というわけではないのだが、小柄な女性である私よりはやはり背が高く、特に掌などは私の手を包み込んでしまうほど大きかった。

 そんなミハイルに手を握られて、私の方はというと、

 

「……相変わらず気ままな男だな、君は」

 

 そんな風に独り言ちつつも、内心まんざらでも無かった。いや、別に他意はない。断じてないのだが、私の手を握るミハイルの手はとても力強くて、温かくて、そしてなんだか心地よかったのである。

 私はいつになく穏やかな気持ちでミハイルに答えた。

 

「よろしく頼む、ミハイル」

「よろしく、イリーナ!」

 

 設計局OKB-1972に来て早々、私は驚くべきものを目にした。

 むろん最新鋭の設備を備えたOKB-1972の研究所施設も素晴らしかったが、それらの案内の道すがら、ミハイルは私にこんなことを訊ねてきた。

 

「……なあイリーナ。君は『ゲマトロン演算結晶体』という名前を聞いたことはあるかい?」

「ゲマトロン演算結晶体?」

 

 おいおい、私はゲマトロン数学者だぞ。ミハイルの言い様がやけに揶揄うような態度だったのもあって、私は思わずむきになって答えてしまった。

 

「ゲマトロン演算結晶体、ゲマトロン数学の理論計算上において存在が仮定されている物質だな。存在すれば完璧なゲマトロン演算を無限に、ひいては未来予測さえもが可能になるとかいう……」

 

 ゲマトロン演算結晶体は、ゲマトロン数学を志した者であれば誰もが空想する夢の物質だ。

 ゲマトロン演算に最適な多次元の結晶格子構造を有し、その高度な対称性と量子的性質により演算を制限無く実行することが可能とされている。

 もしゲマトロン演算結晶体が存在するとすれば、それは「意味の数値化」を実現できるガジェットだと考えられている。たとえば従来のTransformer型AIはパターンと確率論から「次に来るパターン」を予測しているだけで意味は捉えていないのに対し、ゲマトロン数学が理想とする「意味の数値化」が実現できればより高精度な推論と計算、ひいては未来の事象に関する情報までもを計算に組み込むことが可能になる。

 フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスは『もしも全ての力学的・物理的な状態を完全に把握して解析できる能力を持つ者がいれば、それは未来さえも予測できるだろう』と述べ、そのような存在のことを物理学者たちは『ラプラスの悪魔』と呼んだという。ゲマトロン数学の極致であるゲマトロン演算結晶体こそ、まさにラプラスの悪魔を実現できるテクノロジーなのだ。

 

「……ま、実在すればの話だがな」

 

 『理論計算上は有り得る』とされるゲマトロン演算結晶体だが、その実在性については科学的根拠に乏しく、現代科学の実験や観測では実物が確認されていない。実際、私が専攻していたゲマトロン数学においても、主に理論物理学や形而上学の領域における仮説上の存在として扱われるにとどまっていた。

 ゲマトロン演算結晶体は、いわば数学界におけるダークマターだ。天文学においては計算上存在するとされるだけでその実在を観測されたことがないダークマターと同様、ゲマトロン演算結晶体もまた『理論上は有り得る』というだけで実物を手にした者はもちろん、目にした者さえ一人もいない。つまるところ都市伝説、オカルト、与太話の類いである。

 そんな私の態度に、ミハイルはどこか得意そうに笑って言った。

 

「だが、もしもそれが『実在する』としたら?」

「……なんだと?」

 

 そうこう話し込みながら歩いているうちに、辿り着いたのは研究所の奥の院、最重要機密が保管されている保管庫だ。

 ミハイルは厳重なロックを解除、奥の院の台座に据えられているものを私に指し示した。

 

 あったのは、鮮緑の光を帯びた結晶体。

 

 大きさは数十センチほど、巨大な人の頭ほどもある大きな塊で、濁り一つなく透き通り美しい劈開(へきかい)を持つ結晶体だった。ただし内部クラックにおける光の加減か、あるいは何らかの化学作用によるものか、内側では稲妻のような輝きが迸り、まるで生きているかのように蠢いて見える。

 

「ひょっとして、これが……?」

 

 私が恐る恐る訊ねると、ミハイルは得意気に頷いた。

 

「ああ、これが『理論上存在する』とだけされたゲマトロン数学における賢者の石、ゲマトロン演算結晶体そのものさ。ゲマトロン数学者と物理学者の鑑定と検証は済んでいる、十人中十人が断定したよ、『本物』だと」

 

 そうであろうことは、言われなくてもすぐにわかった。神秘的ながらも数学における美を体現したようにも思える規則正しいパターンの輝き、外からエネルギーが加わらずとも内部で蠢き続ける叡智の光。間違いない、本物だ。

 流石の私もこれには興奮を隠せなかった。

 

「こ、こんなものをいったい、どこで……!?」

「……イリーナ、君は『ツングースカ大爆発』という事件を知っているかい?」

 

 問い質す私に対し、ミハイルから返ってきたのは唐突な問い掛けだった。なぜ今ここでそんな話を? 怪訝に思いつつも、私は知っていることを答えた。

 

「ああ。ツングースカ大爆発と言えば今から100年近く前、シベリア地方ツングースカ川の上流で確認された爆発事故だな。原因は隕石だと聞いたが……」

「ああ、『表向き』はね」

「表向き?」

 

 含みのある表現に私は思わず食いついてしまうのだが、ミハイルは如何にも楽しげに語り続けた。

 

「当時、世界大戦や日露戦争直後の政情不安もあって事故調査はしばらく行われなかったんだが、爆発から十数年後、ロシア革命でロシア帝国が倒れたあとになってソヴィエトが本格的に調査したんだ。そしてそのときに見つかったのが……」

「まさか……っ」

 

 如何にも暗示的な言葉から察した私、その予感をミハイルは首肯する。

 

「ああ。これはそのツングースカ大爆発の現場で回収されたものだ。発見したソヴィエトの科学者たちはこれを『未確認飛行物体:UFOの破片』と同定し、以来ソヴィエトが、そしてソヴィエト崩壊した後はロシア政府が継いでずっと保管し続けていたらしい……まあUFO説については僕も眉唾だと思ってるけどね。たしかに人知を超えた物質ではあるが、いくらなんでもUFOの破片だなんて」

 

 ま、なにはともあれ。ミハイルは言った。

 

「サイボーグ怪獣を造る技術的な関門、これでいくつか突破できるんじゃないか? たとえば制御系生体電気信号の処理、これを使った電子頭脳を開発したらどうだろう?」

「たしかにそれなら制御系の問題はクリアできそうだが……」

 

 私はそこまで言って、考え込んだ。

 確かにミハイルの『ゲマトロン演算結晶体』、これさえあればサイボーグ怪獣を造る技術的なハードルが幾つかクリアできるというのは事実である。たとえばブレイン・マシン・インタフェースという概念があるが、これまではそれを実現できる計算力を持ったハードが存在しなかったのに対し、ゲマトロン演算結晶体がもたらす無限の計算力はその技術的課題に対するアンサーとなり得るだろう。

 また、ゲマトロン演算結晶体は電子頭脳だけでなく、そこから出る指令をバイパスする神経系としても理想的な素材だ。ゲマトロン演算結晶体は優れた伝送特性を持ち、脳細胞のみならず人工筋肉やバイオマテリアルといったサイボーグ怪獣に不可欠な生体部品の神経系をも代替しうる。もしゲマトロン演算結晶体を解析した神経系ファイバーを開発できれば、私たちのサイボーグ怪獣はより素早く、より精密な挙動が可能になるだろう。

 そしてそれはサイボーグ怪獣だけじゃあない。私は思いつくままに喋った。

 

「サイボーグ怪獣で実証試験が出来れば、障碍者福祉にだって役立つ。それこそより精密で、より軽量で、より優れた義手や義足、現在の科学ではまだ進んでいない感覚器の復元だって可能になるだろう……!」

 

 夢は広がる、それこそ無限大に。

 がぜん乗り気になってきた私を満足げに見つめながら、ミハイルが張り切って言った。

 

「さて、これから忙しくなるぞお。『理論上実現し得る』とされたものを、今度は実際に解析し、さらにそれを実装した装置を作ろうというのだからね」

 

 そしてミハイルは言う。

 

「やろう、イリーナ」

 

 そして差し伸べられた手を、私もまた固く握る。

 

「ああ、やろう、ミハイル」

 

 そしてイリーナ=マミーロヴァと、ミハイル・アホートニク=ボローディン。私たち二人の共同研究『ガイガン計画』が始まった。

ゴジラ映画の主人公で好きな職業おしえて

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