メカゴジラ機龍VSガイガン=レクス ~魔女と呼ばれた女~ 作:よよよーよ・だーだだ
わたし:ヤシロ=ハルカの目の前で突然起こった、ボローディン氏の急死。
そしてわたしは、ロシア警察に殺人容疑の現行犯で緊急逮捕されてしまった。
けれどその後の捜査が進んだところ、わたしが罪に問われることは無かった。
突如頭から血を流して死んだボローディン氏と、銃を所持していたわたし。たしかに、傍目ではわたしがボローディン氏を射殺したようにしか思えない状況ではある。
しかし実際にわたしが発砲した瞬間を目撃した者がいなかったことをはじめ、その他いくつかの状況が重なった末に証拠不十分で不起訴。結局わたしはすぐに釈放となったのだった。
つまり『疑わしきは罰せず』、ロシア司法がちゃんとまともに機能している証拠だ。いやぁ、おかげで助かったわ~。下手すれば国際問題になるところだった。
とはいえ、なんら御咎めなし、というわけにもいかないのである。
釈放されたわたしは即座にGフォースの本部へ呼び戻され、国連G対策センター上層部から召喚を受けることになってしまった。
呼び出された場所は、会議室の一室。わたしが軽く深呼吸してからドアをノックすると、中から声が返ってきた。
「入りたまえ」
はい、失礼します。
そうして会議室に入ると、テーブルの椅子に一人の男性が座っていた。恰幅は良く、頭には白いものが混じり、齢は初老を過ぎた頃。だが目つきは猛禽のように鋭く、その風格や覇気といったら往年からちっとも衰えていないどころか、老いてなおますます盛んなようだった。
目の前に座した彼に、わたしは頭を下げる。
「ご無沙汰しています、イガラシ長官」
今わたしの目の前に座っているのはGフォースの最高幹部、〈イガラシ=ハヤト長官〉である。
わたしとイガラシ長官は機龍隊発足からの古い付き合いだが、わたしが怪獣大戦争でずっと海外を飛び回っていたせいもあって、こうして顔を合わせるのは久方ぶりになる。
そして相変わらずの強面、まるで地獄の閻魔大王みたいだ……なんて言ったら怒られるか。まあ実際厳しい人だけどとても面倒見の良い人だし、かく言うわたしも若い頃は散々お世話になったんだけどね。
そんな巌のような顔つきをより一層厳しくしながら、イガラシ長官はわたしにこう告げた。
「……さて、ヤシロ少佐。なんで呼ばれたのか、ちゃんとわかっているだろうな?」
「……はい、長官」
イガラシ長官の詰問にわたしが応えて話を切り出そうとした、ちょうどそのときだ。
長官とわたしが話し合おうとしていた会議室に、アポなしで突撃してきたバカがいた。
「失礼しますッ!!」
そう声を張り上げながら、会議室のドアを蹴破らんばかりの勢いで怒鳴り込んできたのは機龍隊副長にしてわたしの十年来の腐れ縁、〈ハヤマ=ススム〉である。イガラシ長官を睨み付けるその形相はまさに怒り心頭、完全に頭に血が上っているようだ。
そんなハヤマを横目で見たわたしは、ひとりぼやいた。
「ったく、あのバカ……」
そうやってわたしが眉間を揉んでいるのを尻目に、ハヤマはずかずか堂々と会議室へ押し入ってきた。そしてドンとテーブルに両手を叩きつけたあと、イガラシ長官へ真正面から詰め寄る。
「イガラシ長官ッ!!」
「ハヤマ大尉、部屋に入るときはノックくらいしたまえ」
これだけの剣幕で迫られても身動ぎひとつしないイガラシ長官だったが、そんな冷静な反応にも気づかないままハヤマは声を荒げて吠えた。
「ヤシロ=ハルカが殺人罪ってどういうことですかッッ!? ヤシロがいくら後先考えない底抜け単純直情バカだからって、そんな人殺しなんてするわけないでしょうが!!」
後先考えない底抜け単純直情バカ、ねえ……当のわたしを目の前にしてなかなか失礼なこと言うわね。だいたいハヤマこそ、Gフォース長官相手に真っ正面から殴り込むようなマネしといて
ひたすら苦笑いするしかないわたしの隣で、ハヤマは雄叫びをあげるような勢いで怒鳴り声を挙げた。
「上の都合かなにか知りませんがね、ヤシロみたいな優秀な人材をそんな風に切り捨てるってんなら、此方にも『覚悟』ってもんがありますっ! おれたち機龍隊、いーや、ヤシロ抜きじゃあメカゴジラ機龍は動かせねえ! そんでもって、その次はGフォースの仲間集めて全員で抗議してやりますっ! そーなりゃいくらなんでも上だって……っ!!」
ハヤマがますますヒートアップする一方で、イガラシ長官は冷静に答えた。
「ああ、そうだろうとも。私も同意見だ」
「ええ、ええ、そうでしょうとも! しかしお言葉ですがね……って、え?」
勢い余って何か言い返そうとしたハヤマだったけれど、落ち着き払ったイガラシ長官の態度を前にして、自分がひどい思い違いをしていることにようやく気がついたらしい。
危うく一線を超えそうな土壇場で踏み止まったハヤマは、幾ばくか逡巡してから言った。
「……今なんて?」
恐る恐るイガラシ長官に訊ねるハヤマ。そんなハヤマに、イガラシ長官は半ば呆れたような表情で丁寧に言い聞かせるのだった。
「いいかね、ハヤマ大尉。私はヤシロ少佐が殺人犯だとは微塵も思っておらん」
「え、え? ですが……」
「人の話は最後まで聞きたまえ」
続けて、イガラシ長官はこうも言った。
「検死の結果、ほんの僅かだが、ボローディン博士の体内からは『爆薬の痕跡』が見つかっている。たしかに、周囲の証言によればあのときヤシロ少佐も銃を携行していた。しかしボローディン博士の死因は飽くまでも『延髄に埋め込まれた小型爆弾による爆殺』だ。肉体の損傷も体内から爆裂していて、外から傷つけられたものでは無かった。つまり射殺ではない」
……言われてみれば、たしかにイガラシ長官の言うとおりだった。あのときはわたしが銃を撃つよりも先に破裂音がして、その直後にボローディン氏は頭から血を流して倒れていた。まるで頭の中から破裂したかのように。
「えっと、つまり……?」
意外過ぎる展開で目を白黒させているハヤマに、イガラシ長官は穏やかな口調で告げた。
「ヤシロ少佐は無実ということだよ。君のかけがえのない戦友は殺人者などではない、だから安心しなさいハヤマ大尉」
「あ、そ、そうですか……」
そう言われて、ハヤマの奴ときたら肩の力がすっかり抜けてしまったようだった。つい先ほどまでのブチキレ猪突猛進ぶりはどこへやら、すっかり悄然とした様子で答えたあとはすごすごと引きさがってしまった。
そうやってハヤマを宥め終えてから、イガラシ長官は続いて厳しい口調でもって、わたしにこう言った。
「だが、それはそれとしてヤシロ少佐、君の行動は浅慮に過ぎる。いくら相手から口外しないように求められたとはいえ、目下われわれGフォースの主たる討伐対象である“紅い暴君”ガイガン=レクス、その重要情報を持った人物との接触を単身で行なうなんて軽率にもほどがある。ましてや今の君は機龍隊の隊長、チームの指揮官、リーダーだ。リーダー自らがチームワークを蔑ろにするような軽挙妄動は今後、厳に慎むように」
「……はい。肝に銘じておきます」
あまりにも正論すぎるイガラシ長官の言葉に、わたしはぐうの音も出やしなかった。
わたしの殺人容疑が晴れたにせよ、わたしとの接触がボローディン氏の死に何か関連があったのなら、それはわたしが殺したのと変わりはない。しかもわたしはもう機龍隊のハネッカエリ叛逆児ではない、隊長なのだ。わたしが迂闊なことをすればそれはわたしだけでなく機龍隊、ひいてはGフォース全体の問題になってしまう。
反省しきりのわたしに、イガラシ長官は溜息まじりに苦笑いを漏らしながら、こんなことを言うのだった。
「ついでに伝えておくが件の人物、ミハイル・アホートニク=ボローディン博士はモスクワ派のガイガン=レクス建造および再建計画を主導していた科学者として、インターポールから国際手配されていた。おかげでインターポールからは私のところに苦情が殺到しているよ。彼らが長年進めてたモスクワ派残党への内偵調査が、これで全て水の泡になったのだからな」
「本当に申し訳ありません……」
「まあ済んだことだがね、ヤシロ少佐。今回は戒告で済ませておくが、本当に申し訳ないと思うなら次から気に留めたまえ」
上司としてわたしたちに言うべきことを言ったあと、イガラシ長官は「ところで、」と話題を変えた。
「ヤシロ少佐、君の証言によればボローディンは何か言い遺したそうだな。誰か、人の名前を言ったと聞いたが?」
イガラシ長官の質問に、わたしは記憶を思い起こしながら正直に答えた。
「はい、あのときは誰かに赦しを請うような感じでした、たしか……『イリーナ』と」
「イリーナ、だと?」
わたしがその名前を口にしたとき、イガラシ長官はわずかに動揺した様子で身を乗り出してきた。
「ボローディンは本当にそう言ったのか、『イリーナ』と?」
念を押すように聞き返すイガラシ長官に、わたしははっきり答える。わたしの胸の中で抱えられ、血の気を失いながら死んでいったボローディン氏。その末期の言葉だ、忘れるものか。
「はい、たしかに言っていました。『ゆるしてくれ、イリーナ』と」
「イリーナか……そうか……」
『イリーナ』という名前に対して、意味深な反応を見せたイガラシ長官。思い当たる節でもあるのだろうか。
「なにか、心当たりでも?」
思いきってわたしが訊ねてみると、イガラシ長官は椅子に深々と掛けながらこんなことを語り出した。
「……ヤシロ少佐、ハヤマ大尉。君たちはかつてオペレーション=ロングマーチで活躍した、試作型ガイガンの話を知っているかね?」
オペレーション=ロングマーチとは、メカゴジラ機龍を建造するための時間を捻出するために繰り広げられたGフォースの一大作戦のことだ。
世界を蹂躙した大怪獣ゴジラ、その猛威に対抗できる人類最後の希望として造られたメカゴジラ機龍。その建造するための猶予を確保するため、人類はゴジラを誘導してユーラシア大陸全土横断させるという手段に打って出た。『メカゴジラ建造の時間稼ぎのために、ゴジラをユーラシアの奥地へと誘導する』、ただそれだけのために子供まで駆り出して動員し、数億人近い人命と膨大な資源を使い潰して時間を稼ぐ。そんなオペレーション=ロングマーチの実態は、想像を絶するほど凄惨なものだったとわたしは聞いている。
そのオペレーション=ロングマーチにおける対ゴジラ誘導作戦で大活躍したのがサイボーグ怪獣、ガイガンだ。今じゃあもうメカゴジラ機龍の方が有名だが、当時を知る古参の兵士などは今でもガイガンをヒーローのように英雄視している者が多いらしい。
そんなことをわたしが頭に過ぎらせていると、今度は傍らにいたハヤマが口を挟んだ。
「ええ、サイボーグ怪獣ガイガンの運用はLTF構想の一部として行われたそうですね。ガイガンはもともとシベリアで発掘された古代怪獣をベースに改造したものだった、と聞いています。そして今、怪獣大戦争でキングギドラの手先として暴れているガイガン=レクスとガイガン=ミレースはその後継モデルだと」
……まったく、皮肉な話だ。
かつてのオペレーション=ロングマーチでは英雄として名を馳せたサイボーグ怪獣、ガイガン。その後継を務めるはずの存在だったガイガン=レクスとガイガン=ミレースは今や、先代とは打ってかわって恐ろしい侵略者の手先としてわたしたち人類に猛威を振るっている。
そんな感慨を抱くわたしたちに、イガラシ長官は「そう、そのとおりだ」と頷いた。
「で、その試作型ガイガンのサイボーグ改造を手掛けた科学者がいたんだが、その名前が……」
「イリーナ?」
「うむ」
ハヤマの相槌に頷いてから、イガラシ長官は説明を続けてくれた。
「イリーナ=マミーロヴァ博士、サイボーグの研究をしていたゲマトロン数学者で、かつてモスクワ派のLTF構想に携わった人物だ。私も小耳に挟んだ程度だが、とても優秀な科学者だったと聞いている。ああ、そういえば、」
と、ここでイガラシ長官はもうひとつ思い出したことがあったようだ。イガラシ長官は続けて、こんなことを言い出した。
「ボローディンも、オペレーション=ロングマーチでは試作型ガイガンの開発に携わっていたことがあったな」
「そうなんですか?」
今度はわたしから聞いてみると、イガラシ長官は思い返すように頷きながら答えた。
「ああ。インターポールの調査報告にもあったと思うが、ボローディンはもともとマミーロヴァ博士の共同研究者だったはずだ。オペレーション=ロングマーチにおける試作型ガイガンの成功を受けて、ボローディンはモスクワ派の設計局の局長になったと聞いている」
「なるほど……」
そこまでサイボーグ怪獣ガイガンに因縁深いボローディン博士であれば、ガイガン=レクスについて『表で明らかになっていない事実』なるものを知っていてもおかしくはないだろう。
得心するわたしに、「あるいは」とイガラシ長官はさらに付け加えた。
「ボローディンがガイガン=レクスを建造したのも、元を辿ればマミーロヴァ博士の影響だったのかもしれんな。かつての共同研究者であるマミーロヴァ博士の研究と構想、それをボローディンは引き継いだのかもしれん」
かつてサイボーグ怪獣を造り出した天才イリーナ=マミーロヴァ博士と、その後継機を造り上げた科学者ミハイル・アホートニク=ボローディン博士。その両者はかつて共同研究者で、しかも死に際のボローディン博士の口からマミーロヴァ博士の名前が出たのだ。どう考えても、なにかある。
そんなわたしの考えを読み取ったかのように、隣にいたハヤマが言った。
「それで彼女、イリーナ=マミーロヴァ博士は今どこに?」
「それが……」
わたしたちが身を乗り出して訊ねると、イガラシ長官は渋い顔で口を濁していた。いったいどうしたというのだろう。
逡巡した末、イガラシ長官は口を開いた。
「……彼女は既に亡くなっているんだよ。あのガイガン=レクス一号機の暴走が引き起こした『ガイガン=レクス事件』でね」
ゴジラ映画の主人公で好きな職業おしえて
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