新規カットもあるよ!!
「「やっぱり、今日の台風のせいで私の友達もライブ来れないみたいです…‥‥」
「うちの親も、祖母がふたりを見ててくれるはずだったんですけど……」
「そっか〜こっちも似たようなものだよ」
嵐の影響で普段よりも客の集まりが悪く結束バンドの初のライブを前にこの状況を見て全員がライブまでに悪い方に向かっていた。
今も外で激しい雨が降っているこの状況で来てくれるお客さんはいるのだろうか?
「雨…これからどんどん強くなってくみたいです」
「うーん、これじゃあ思ってたよりお客さん来ないね」
「ううっ……‥‥」
こんな嵐の中ライブに来てくれる人はほんのわずかだと思い焦り出す俺や結束バンドのみんな。
「仕方ないよ! 切り替えて行こ!!」
「そう言ってもね~」
「リョ、リョウ先輩!?」
いつもマイペースな山田先輩ですらこんな状態じゃ‥‥‥‥
「だだだ、大丈夫ですっ!」
「!?」
後藤さんが突然大きな声を出して振り向くとそこには
「わ、私達の演奏を待っててくれる人がいるんだからー!」
ダンボールに手を通してハコダムみたいになった後藤さんがいた。
まさかその姿でライブ出るつもりか!?
「それ絶対やめてー!」
伊地知先輩にだめと言われハコダムは母艦に帰還してしまった。
てか、それいつの間に用意したの!?
「うわ〜、凄い雨〜! ぼっちちゃん来たよ〜!」
「んっ?」
階段からびしょ濡れ姿の女の人が降りてやってきた。
後藤さんの知り合いの人かな?
「あ、お姉さん。」
「ん? お前ぼっちちゃん目当てで来たのか?」
「そうだよ〜?」
「2人はお知り合い……?」
「大学時代の後輩でな……」
女の人は店長の大学の時の後輩さんだった。
「ねぇねぇ〜? 今日のライブ打ち上げするんでしょ〜?」
「酒臭……!」
「飲み会覚えたての大学生に通ずるウザさがありますね」
近くで匂い嗅いでみると確かに酒臭いな。
昼間から飲んでたのかこの人?なんか、凄い人来ちゃったな‥‥‥‥
「んっ?君もぼっちちゃんたちのライブ見に来たの~?」
「へっ?」
女の人が店長さんから離れ俺に近づいてきて話しかけてきた。
「いや、俺はここのスタッフですけど……‥‥」
「そうなんだ~でもライブは見れるんだし一緒に楽しもうね~!」
「は、はぁ…‥‥‥‥」
うわ~なんかぐいぐいくるなこの人。
そして酒臭くてちょっと嫌だな…‥‥‥‥
「あの」
「んっ?」
「彼困ってるんで離れてくれませんか?それにそんな濡れたままでうろつかれると床濡れて他のお客さんの迷惑になるのでこれで拭いてください」
喜多さんが笑顔なんだけどなんか圧をかけたオーラを放ちながら女の人にタオルを渡した。
「あ~ごめんね~。あとタオルありがとうね~」
女の人はタオルを受け取り頭や服を拭いて俺から離れていった。
「加門君、大丈夫だった?」
「うん、ありがとう喜多さん」
「いいえ、それにしても昼間からお酒飲んでくるなんて変な人ね」
「まぁ、確かに変わった人だね…‥‥」
「う〜、濡れちゃった〜」
「あ、ひとりちゃん!」
今度は女性二人組がやってきた。
また後藤さんの知り合いみたいだ。
「前の路上ライブの……!」
「私たち、ひとりちゃんのファンだもん!」
「台風吹っ飛ばすぐらいの演奏、期待してますね!」
「…!! へ、へへ…ファン……!」
後藤さんの様子がおかしいぞ!?なんか変なオーラが出てきてるし!
「もう本番直前ですけど、やっぱりお客さん少ないですね」
やはり台風のせいでお客さんの入りは少なかった。
「でも、他のバンドのファンの人もいるし、みんな聴いてくれるよ!」
伊地知先輩は明るくみんなを励ましてくれる。
この人はこういうところ本当に尊敬できるよ。
「ねぇ、一番目の結束バンドって知ってる?」
「知らなーい。興味ない。」
「見るのたるいね」
お客さんたちのそんな会話を聞いてしまいまた意気消沈してしまう結束バンドの面々。
「……‥‥あはは、結成したばっかだから知られてないんだね〜」
「は、はい……」
「よ、よーし! 皆ライブ頑張るぞ〜!!」
「お、おぉ〜!!」
気持ちを切り替えてライブの準備をし始めるみんな。
「皆、頑張って!」
「は、はい‥‥‥‥!」
「頑張ってくるね加門君!」
「ゴウ、楽しみにしてて」
少し不安の顔が見えるけどきっと大丈夫と信じ会場の方へ向かおうとしたその時
「加門君!」
「んっ?なに、喜多さん?」
喜多さんに声をかけられて足を止めて振り向く。
「‥‥‥‥見ててね!私たちの演奏!」
「ああ!」
俺は笑顔で喜多さんにサムズアップして今度こそ会場の方へ向かった。
「おっ、来たか」
「やっほ~、バイト君」
「店長、それと…‥‥‥」
「私は廣井きくり!SICk HACkってインディーズバンドのボカール&ベーシストしてるんだ~」
店長と酔っ払いの女の人改め廣井きくりさんと合流しライブを見ることにした。
「廣井さんもバンドやってたんですね。あっ、俺は加門豪っていいます」
「豪くんだね~よろしく~」
「こちらこそよろしく」
相変わらず酒臭いがもう鼻が慣れてそこまで気にならなくなった。
「二人とも、そろそろ始まるぞ」
「あっ、はい」
「楽しみだね~ぼっちちゃんたちのライブ」
ステージの方を見ると結束バンドのみんなが立っていた。
「初めまして結束バンドです、本日は足元が悪い中お越しいただき、誠にありがとうございます」
「あはは、喜多ちゃんロックバンドなのに礼儀正しすぎ〜……」
緊張しているのかMCが上手く伝わってなくお客さんの反応も悪い。
だ、大丈夫かな……‥‥?
「じゃあ早速聴いてください。私たちのオリジナル曲、ギターと孤独と蒼い惑星」
そして演奏が始まる。
しかし俺はある違和感に気づいた。
「(なんかズレているような気がする…‥‥‥‥)」
音楽にあまり詳しくない素人の俺にもわかるくらいみんなの演奏が合っていないことに気づいた。
伊地知先輩のドラムはもたついていて山田先輩も伊地知先輩と息が合ってないし喜多さんも緊張と不安でか歌声が震えているような気がする。
後藤さんだけがブレずに演奏できているが全体がまとまっていないとバンド演奏として意味がない。
「(お客さんさっきより少なくなってきた気がするな……)」
さっきまでいたお客さんがいつの間にかいなくなっていてまだ残っているお客さんも演奏をまともに聞いていない。
彼女たちの演奏をまともに聞いているのは俺と店長と廣井さんだけだった。
「ギターと孤独と蒼い惑星でした……」
一曲目の演奏が終わり喜多さんの不安そうな声が聞こえてきた。
「やっぱ全然パッとしないわ」
「早く来るんじゃなかったね〜」
近くにいたお客さんの会話を聞いて俺まで不安になった。
このままこんな感じで初ライブ終わっちゃうのか……‥‥?
「き、喜多ちゃん!次の曲紹介しないと!」
「あっ、えっ、そ、そうですねっ!えっと、次も私達のオリジナル曲でつい先日できたばかりで‥‥‥‥!」
次の曲に行こうとしている。
けど、会場内はかなりしらけちゃってるしこのまま演奏しても同じ空気のままだ……‥‥
<ギュイイイインンンンッッ!!>
「!?」
不安な空気と沈黙を打ち破ったのは後藤さんのギターの音色でそのままソロでフレーズを奏で始める。
今までまともに聞いていなかったお客さんたちも注目しステージの方を見ている。
「(後藤さんすげぇ……‥‥‥!)」
俺も後藤さんの演奏に釘付けになり彼女の方を見る。
上手く言葉にできないがプロ並みって言ってもいいくらいに後藤さんの演奏は凄くてかっこいい。
「(お、俺もなにかしてやらないと……‥‥‥)」
俺はふと喜多さんと目が合いその瞬間俺はこう叫んだ。
「が、頑張れ!結束バンド!!」
「ギターと孤独と蒼い惑星でした……」
一曲目の演奏が終わり私は曲名をそう言った。
リハーサルの時は上手くいっていたのに演奏も歌も全然だめだめだわ…‥‥‥みんなもリズムが合わさってないし…‥‥‥‥お客さんたちもなんだかしらけちゃっているしこのままこんな感じで初ライブ終わっちゃうの……‥‥?
加門君もなんだか不安そうに周囲見ていて彼に恥ずかしいところ見せて申し訳ないって思えてきたわ……‥‥。
「き、喜多ちゃん!次の曲紹介しないと!」
「あっ、えっ、そ、そうですねっ!」
伊地知先輩に次の曲紹介をお願いされ無理やり気持ちを切り替えた。
「えっと、次も私達のオリジナル曲でつい先日できたばかりで‥‥‥‥!」
<ギュイイイインンンンッッ!!>
「!?」
曲名を言おうとしたその時、突然後藤さんがソロでギターの演奏を始めた。
その演奏がさっきまで淀んでいた空気を消し一瞬で流れが変えていったのを感じた。
「(後藤さん、すごい……‥‥‥!)」
後藤さんのギターソロでお客さん全員がステージに釘付けになりステージ上にいる私たちも後藤さんに目が行く。
「(みんな後藤さんの演奏に夢中になっている……‥‥‥あっ)」
ふと、フロアの奥の方を見ると加門君が何かを言っているのが見えた。
ギターの音で何て言ってるか聞こえないが彼の口の動きを見て私には何て言ってるのかがわかった。
「(が ん ば れ け っ そ く バ ン ド……‥‥‥‥!)」
彼が私たちを応援してくれている!
そうよ、まだライブは終わってない!私たちの演奏はこれからよ!
「っ!!」
伊地知先輩が目で合図して私たちも演奏に加わり始める。
次のは新曲である『あのバンド』
<ギュイイイインンンッ!!>
<ダダダダダダンンンッ!!>
いいわ!音がまとまってきてる!!
後藤さんを筆頭に結束バンドの演奏がまとまりさっきまでの不安や緊張はもうすでに無くなっていた。
加門君!見ててね!今の私たちにできる全力の演奏を!!
「演奏よくなりましたね~」
「そうだな」
二曲目の曲が終わり結束バンドの演奏が良くなったことを気づいて店長と廣井さんがそう言った。
後藤さんのギターソロから他のみんなも演奏を始めそこからだんだんと音が合っていき最初の曲の時とはまったく別のものとなった。
「なんかいいじゃん」
「ね‥‥‥」
さっきまで興味なかった女性客二人も結束バンドの演奏に興味を持ったようだ。
「店長、みんな演奏よくなってよかったですね」
「そうだな。まぁ、私は最初からあいつらならできるって信じてたからな」
そう、ドヤ顔で言う店長。
しかも廣井さんがスマホのカメラでその顔を撮ってるし……‥‥
「じゃあ次、ラストの曲です!」
喜多さんがラストの曲のタイトルを言って今日のライブ最後の演奏を始めた。
こうして結束バンドの初ライブは色々とあったが無事成功したのであった。
珍しく暴走行為控えめの喜多ちゃんでした。
次回からまた通常運転に戻ります。