完結に向けて頑張ります。
城之内 LP7200
手札 2枚
場 ≪真紅眼の黒竜≫
≪魔導騎士ギルティアーソウル・スピア≫
魔法・罠 セット(悪魔のサイコロ) ≪早すぎた埋葬≫
エスパー驢馬 LP7950
手札 4枚
場 ≪人造人間サイコ・ショッカー≫
魔法・罠 ≪リビング・デッドの呼び声≫ セット
バタフライエフェクト。
蝶の羽ばたきの変化により、この世界に大きな変化をもたらすというカオス理論。
何万分の1もの微細な変化を把握し、予測する機器を用いて把握した大気の組成や動きなどによる予報も、それより遥か微細な億分の1ものゆらぎにより全く異なる結果をもたらすことから、計測による完璧な未来予測は不可能だとする論理。
この世界の物語に於いて、≪転生者≫はエスパー驢馬に会っていない。
もう一度言う。
≪転生者≫は、原作におけるエスパー驢馬という決闘者の存在、その有様は知っているのだが、表と裏両方において、両者の縁は全くないといっていい。
よって、≪転生者≫の存在、動きというバタフライがどのように驢馬の人生に波及してその運命を変えたのか、或いは初めから彼自身のバタフライに微細な狂いがあったのか、それはもはや当人たち、いや、この世界の誰にも分からない。
相手の手札が見える超能力決闘者として持てはやされた驢馬。
彼と弟達によるイカサマが、原作のバトルシティよりも早く、それも
後で考えるに手慰みレベルの決闘での成功による慢心から引きずり込まれた裏社会のヤバい奴ら相手の決闘で馬脚を現し、彼と弟達が命をも覚悟させられた時。
その無地の仮面の決闘者に、出会った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「≪人造人間―サイコ・ジャッカー≫を召喚。
このモンスターをリリースして、効果発動。
デッキから≪驚異の人造人間―サイコ・ショッカー≫を持ってきて、
君のセットカードを確認する。
そのカードは、≪悪魔のサイコロ≫だったよね。」
「ああ、お前が最初に使ったカード≪宇宙の法則≫で宣言したから知ってるだろ。
それがどうしたんだよ。」
「その罠カードの数だけ、僕は手札から『人造人間』モンスターを特殊召喚できる。」
「何ッ!?」
「手札から≪驚異の人造人間―サイコ・ショッカー≫を特殊召喚!」
ソリッドビジョン上空が不吉な雲に包まれゴロゴロゴロゴロ………と雷が鳴り、やがてピシャーン!という稲妻と共に
フィールドの≪人造人間―サイコ・ショッカー≫と瓜二つのモンスターが現れた。
≪驚異の人造人間―サイコ・ショッカー≫ ATK2400
城之内はそのモンスターに思わず鼻白んだ。
「何だそりゃ?
大仰に出てきた割には見た目もステータスも元のサイコ・ショッカーまんまじゃねぇか。」
「まず、≪人造人間―サイコ・ショッカー≫で≪真紅眼の黒竜≫を攻撃。
攻撃力は互角のため相打ちになり、この時お互いの蘇生カード、
≪リビングデッドの呼び声≫と≪早すぎた埋葬≫は破壊される。
バトルフェイズを終了し、≪驚異の人造人間―サイコ・ショッカー≫をリリースして効果発動!
墓地から≪人造人間―サイコ・ショッカー≫を蘇生させ、相手の魔法罠をセット含めて確認して罠カードを破壊!
もう一度聞くけどそのカードは≪悪魔のサイコロ≫だったね。」
「クッ!」
岡目八目状態のダイナゾー竜崎は、驢馬のプレイングの妙を理解した。
(成程な。
≪人造人間―サイコ・ショッカー≫が破壊されてしまったことで発動出来てしまった≪悪魔のサイコロ≫による前回のような番狂わせを阻止するために、
≪驚異の人造人間―サイコ・ショッカー≫による罠破壊を優先させたっちゅうことか。)
「ターンエンド」
「俺のターン。ドロー!
よし!カードをセットして、ターンエンド!」
「ドロー。
………≪人造人間―サイコ・ショッカー≫で、攻撃。」
「来たな!速攻魔法≪ルーレット・スパイダー≫!
サイコロでこのバトルの結果が決まるぜ!」
「やはり速攻魔法………」
ギルティアに攻撃を仕掛けたサイコ・ショッカーは盤面に現れた1~6の的の巨大なルーレットの真ん中の穴に囚われ、蜘蛛に目隠しをされた状態でグルグルと回転し「ぐごおおおおおおお」と、うめき声を上げた。
そしてその場の皆が固唾を飲む中、やがてルーレットが止まった目は……
「よっしゃ6!
≪サイコ・ショッカー≫は破壊だぜ!」
ドゴーン!と、〈6〉の目に仕掛けられた爆弾が爆発し、サイコショッカーの姿がかき消された。
「いや、僕にとっても『当たり』だよ、それは」
「何だと?」
「〈5〉の目が一番質悪かった。
けど、《サイコ・ショッカー》が破壊されたことで、むしろこのカードを使えるようになった。
≪洗脳-ブレイン·コントロール≫で君の≪ギルティアーソウル・スピア≫のコントロールを得て(コストでLP7950→7150)
≪宇宙との交信≫を発動!
元々の持ち主が君のモンスター≪魔導騎士ギルティアーソウル・スピア≫を墓地に送り、墓地から≪人造人間―サイコ・ショッカー≫を復活!」
「ク!何度も戻って来やがる!」
「僕はこれで、ターンエンド。」
(上手いのうこいつ。
悔しいが全国大会の時代にこいつがデビューしとったらわいや羽蛾まで危うかったやろな)
「俺のターン、ドロー。」
「≪宇宙との交信≫の効果!
フィールドに≪人造人間―サイコ・ショッカー≫がいる場合、
相手の通常ドローの種類(モンスター・魔法・罠)を言い当てて正解だったらこのカードを墓地に送って1ドロー。
………モンスター。」
「な、何で分かった?超能力か?」
「いや、勘。
クッ。」
「ん?当たってドロー出来たってーのに嬉しくなさそうだな。」
(そりゃろうやろ。
あのカードは、むしろ相手のドローを確認して戦法を丸裸にし続けるために残しとった方がいいからな。
ホンマ、妙に運がいい奴や。)
「見えちまったってんなら仕方ねえ。
≪時の魔術師≫を召喚!
『タイム・ルーレット』で……」
「セットカード≪電脳エナジーショック≫で≪時の魔術師≫を破壊!
更に≪サイコ・ショッカー≫の攻撃力を800ポイントアップ。」
「ターン、エンドだ。」(つええ、こいつ。)
未だ城之内のライフは削れていない。
だが、盤面と手札を徐々に削られつつある城之内は、この決闘の長期化に本能的危機を抱いていた。
「僕のターン、ドロー。
ダイレクトアタック!」
「グワッ!」
城之内 LP7200→4000
「ターンエンド」
「諦めて···たまるかよっ!
ドロー!
よし!これに賭けるぜ!
《強欲で金満な壺》!
融合デッキを6枚除外して2枚ドロー。
《融合徴兵》で《炎の剣士》から《炎を操る者》をデッキから持ってきてMASAKI と《融合》!《炎の剣士》!」
「「「何っ!?」」」
驢馬、竜崎、獏良の3人が驚いたのは、融合をなしえる札を引き当てた城之内の運ではなく。
融合モンスターを主体として戦うコンセプトでありながら≪強欲で金満な壺≫などというカードを入れていた、まともな決闘者であるならばしないような城之内のデッキ編成だった。
「《炎の剣士》で攻撃する時速攻魔法《決闘融合-バトル·フュージョン》発動!
《炎の剣士》の攻撃力が3200上がるぜ!
《闘気炎斬剣》!」
ガアアアア!
「うわああああ!!!」
驢馬 LP 7150→5350
城之内 手札0枚
「ターンエンド」
「僕の、ターン···ドロー···
モンスターをセット···ターンエンド···」
「このままいくぜ!
俺のターン、ドロー!
《炎の剣士》で攻撃!」
「破壊されたのは、《人造人間 サイコ·リターナー》。
このカードが墓地に送られた時、墓地の《人造人間 サイコ·ショッカー》を特殊召喚する···」
「クッ、ターンエンドだ。」
「ドロー。
《人造人間 サイコ·ショッカー》で攻撃!」
「《炎の剣士》が、破壊されたことで
手札から《幻炎の剣士-ミラージュ·ソードマン》を特殊召喚!」
(しくじった!
ライフをケチらず、手札が0枚の前のターンの内に《サイコ·リターナー》で突撃して《サイコ·ショッカー》を呼び出して破壊しておくべきだった!)
「ターンエンド
エンドフェイズに、《サイコ·リターナー》で呼び出された《サイコ·ショッカー》は破壊される···」
「よし!俺のターン!ドロー!
≪ワイバーンの戦士≫を召喚!
≪幻炎の剣士-ミラージュ·ソードマン≫と共に攻撃!」
「グアアアアア!!」
驢馬 LP 5350→850
(流れを掴まれた。
だがまだだ!
≪幻炎の剣士-ミラージュ·ソードマン≫にはデメリット効果がある。
特殊召喚できる高攻撃力モンスターだが、モンスターとバトルするとき共に破壊されてしまうというデメリット。
つまり次のターン、他のモンスターの攻撃を耐えられる高守備力モンスターでも引ければ、まだ勝機はある!)
ディスクのカードに手をかけた時。
驢馬は確かに感じた。
例え距離的、物理的には遠く隔たっていても、あの白塗りの仮面を透かして自分達のデュエルを、そして、このドローに注視している視線を。
(師匠………)
その視線が期待しているのは、自分の唯一の弟子の勝利か。
それとも。
「ドロー!
………ターン、エンド」
「俺のターン。ドロー。
強かったぜ。エスパー驢馬。
≪幻炎の剣士-ミラージュ·ソードマン≫で、ダイレクトアタック!」
このデュエルで驢馬が犯した唯一のプレイングミス。
≪人造人間―サイコ・リターナー≫で特攻させることで≪人造人間―サイコ・ショッカー≫を呼び出せたとしても、モンスターをここまで引けなかった引きの弱さでは
1ターン長引かせるくらいしか出来なかったろう。
本来主役どころかレギュラーキャラにすらなれない彼の決闘者としての『設定』を考えると、城之内のデッキやプレイングにおいて繰り返し続けたミスを補って余りある途方もない運に対抗出来たかは怪しい。
だが驢馬には、例えそれが結果的には足掻きによる時間稼ぎに過ぎなかったとしても、その諦めない1ターンが、砂漠で乾ききった者が求める1杯の水の如き途方もない渇望として彼の生涯に刻まれることとなった。
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バトルシティのデュエルは、ネット回線を通じてその戦局、勝敗を自由に閲覧できるようになっている。
その室内ではそれによる驢馬と城之内によるデュエルの有様が具に再現されていて、
『≪幻炎の剣士-ミラージュ·ソードマン≫によるダイレクトアタック。
エスパー驢馬、ライフ0
勝者、城之内克也』と無機質な機械音声が響いた。
だが、それとは別に。
設えられたテレビには、一体どこから撮ったのか二人の決闘者のデュエルの映像と音声が、リアルタイムで映し出されていた。
ネット画面を脇で聞きつつ映像の前に陣取る白仮面のギャンブラー、『ノーフェイス』は、デュエルの後言葉を交わしてチップと驢馬のエースカード≪人造人間―サイコ・ショッカー≫のやり取りを交わす画面に手を伸ばし、そっとその表面を撫で、
やがてその仮面の下の、変声機かヘリウムガスでも使った性別、年齢の判明できない声を漏らした。
「城之内克也。
やはりこの程度では倒れないか。
一体、どこまで進めるかな。
『馬の骨の決闘者』
フフフフフ………」
自分の弟子がやられたというのに、『ノーフェイス』はむしろ愉悦の響きに体を震わせすらして笑い声を響かせた。
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とある室内
照明は華やかながら、そこの住人の有様は、光当たる者達のものではなく、
彼等が見下ろしている同じ顔立ちの子供たちは、最年長の者でさえ、まだ中学すら出ていないような者達であったが、その態度はとても庇護する子供を見るものではなく、むしろ目障りな害虫を今すぐにでも踏みつぶしかねているという有様だった。
縮こまった子供達が、とうとうたまりかねたようにぐずついて年長の少年に縋りついた。
「兄ちゃん、俺達どうなっちゃうのかな。」
「殺されたりするのかな。」
「や、やっぱりイカサマなんかするんじゃなかった。」
「うわぁぁぁん!」
口々に弱音を吐く子供達の中、年長者の少年も顔を青ざめさせながら、それでも他の子供達を守るようにその身を前に出して目の前の男達を凝視していた。
やがて部屋の扉が開き、白塗りの仮面を被った人間が、その姿を現した。
その人物の体つきは、とても暴力を生業とするようなものとは思えなかったが、部屋にいた危険な香りを放つ男達は、むしろ恭しくその人物の方を向いて声をかけた。
「『ノーフェイス』。どうする、こいつら。」
「代打ちを任せられたあんたの判断で未だに生かしているが、
正直俺達としては手足の爪全部剝ぎ取って魚の餌にでもしてぇ気分だ。」
男達の訴えを聞いているのかいないのか。
やがてのっぺらぼうのような仮面から、一切の人物情報を伺い知れない声が出された。
「デュエリストとして、デュエルの汚名はデュエルで雪いでもらいます。
驢馬、ラストチャンスとして貴方には私ともう一度デュエルをして貰います。
そこでイカサマ抜きでの実力を示せたなら、貴方達は見逃しましょう。」
「ノーフェイス!そんな温情かける必要は……!」
「既に組長からの許可は得ています。」
「クッ…」
「『エスパー』驢馬。
それではプレイルームにご招待しましょう。」
ひとまずこの場での処刑は免れ、それどころか釈明の機会まで与えてもらえて一瞬安堵したが、しかしそれまで綿密に計画してバレなかったはずの不正を立ちどころに見抜いた、色んな意味で今迄見たことがないこの手練れの決闘者との決闘へと、歩む驢馬の足は、負けられない決闘に向かう戦士のものではなく、処刑台に向かう囚人のようであった。
数十分後。
「あ………あああ………」
「ダイレクトアタック」
「うわあああああああああ!!!」
エスパー驢馬 LP 0
「処罰するのは弟達だけにしなさい。」
「へ?首謀者のこいつはいいんですか?」
「イカサマに溺れ、その弱さで大切なものを守れない咎。
そして貴方達のような者を相手にする愚かさ。
それを伝える役目が残っています。」
「や……やめてくれ……僕は……どうなってもいい……だから……僕に従っていた弟達だけは………」
「今の貴方の命に、そんな価値は『見』い出せません。」
「やめてくれえええええ!!!」
エスパー驢馬が決闘者としての矜持を曲げてまで守り抜こうとした家族たちは、その純粋な想い故の愚行で、永遠に失われた。
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「はあ…はあ…はあ…!!」
バトルシティでチップ全てとレアカードを渡し、バトルシティでの脱落が決定した驢馬は人気がない裏路地に行くやそれまで城之内達に示したお互いを称え合う決闘者としての健全な態度から一転、まるで刑罰を言い渡される囚人のような青ざめた面持ちで過呼吸気味の呼気を整え、震える手でスマホを操作した。
自分でしておきながら永遠に繋がらないで欲しいと心から願い、しかし意図に反して3コール以内でその通話は繋がり、無言の声による催促に促されて彼は報告した。
「ご、ご覧になったように、城之内には負けました。」
「ええ、お疲れ様。」
「申し訳ありません、でした。」
「気にしてない。
『見』事なデュエルだった。」
長年の付き合いから、その労いが心からのもので、少なくとも彼のデュエルに業を煮やした訳ではないものであったことに、脱力と共に心からの安堵の息を漏らした驢馬。
その気配を察しているであろうノーフェイスは、しかしそれに頓着することなく「ところで」と、続けた。
「どうでした、彼とのデュエルは。」
「正直………負けたのに、あまり悔しい、という気持ちはありませんでした。」
「でしょうね。
『見』たところ今のデュエル、決闘者としての腕は明らかに貴方の方が上だった。
あなたが犯した些細なミスに対して、城之内は大きなミスをいくつも犯した。
プレイングも、そしてデッキ構築に於いても。
彼が勝てたのは、彼自身は気づいていないけれども殆どが運によるもので、
故に貴方の中でも、例え結果が全てだとしても半ば事故のようなこのデュエルで彼が自分より格上のデュエリストだという認識をどうしても持てない。」
「……………」
「そういう男なんですよ、彼は。
少なくとも、今はまだ。」
意図した訳ではないのだが
この作品では城之内はレッドアイズ使いというより
炎の剣士使いになってきている