最弱の転生者   作:ファイネス1

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遅れを取り戻すために今月中にあと1話投稿したい
ある人物のキャラ崩壊がありますのでファンはご容赦願います


第20話 バグ

「きゃー!弁護士先生、かっこいいー!」

「いやあ、それほどでも。」

 カラオケボックスの一室では、浅黒い肌の女性が眼鏡を掛けた男性相手にかなり露骨な接待を施していた。

「大岡さーん、私とぉ、ゲームしません?」

「ん?ゲーム?」

「そうですよぉ、もし大岡さんが勝ったらぁ、この後のアフターとかと付き合っちゃいますよぉ。」

「ほ、本当かねっ!?」

「ええ、本当でーす。」

 整った顔立ちな女性のかなり薄手の服とそこから伺えるスタイルの良さに元来女性好きなKC幹部、大岡筑前は思わずゴクリと唾を飲んだ。

「そ、それで、どんなゲームをするというのだね?」

 女性は懐から小さい砂時計を取り出した。

「簡単ですよぉ、この砂時計をひっくり返して落ち切る3分の間、この部屋を出なければいいんですよぉ。」

「な、何だ、そんな簡単なルールなのかい?」

「それじゃあ、ゲームスタート!」

 そう言って砂時計をひっくり返すや、女性は先程までのキャヒキャピした様子から打って変わって真剣な表情でじっと砂を見続けた。

「おいおい、そんなにじっと、して、ないで···」

 当初は確信した自らの勝利の先に鼻を伸ばしていた大岡も、彼女から放たれる気迫と心なしか重くなり続ける部屋の空気に、思わず沈黙した。

 やがてまるで息を止めているかのように長く重苦しい1分間が過ぎたころ、部屋のドアがドンドンドンと叩かれ、男性の声がした。

「大岡様、大岡筑前様。」

「だ、誰だね、今、私はプライベートで···」

「いえ、この間大岡様が担当なさった政治家の林原先生が、是非、先生に会いたいと···」

「だから、今度に···」

「ここに相応しい手土産もご用意しているといいます。」

「何?」

「更により良い案件が、どうしても今回、今日中に受けていただかないといけないそうで...」

(林原先生といったら私の顧客の中でもトップクラスの信頼と力を持ち、更に毎回豪勢な接待をしてくれていたビップ。

 ここでゲームで面会を断って信頼関係をふいにしたら···)

「今行く。

 ああ、残念だがゲームは私の敗けでいい。

 急だが大切なお客様が来ているのでね、

 また今度にでも···」

ガチャ

「あれ?」

 ドアを開けると、先程まで声を掛けた男がどこにもおらず、狐につままれた気分で大岡は部屋の外に1歩踏み出した。

 その瞬間、背後から

「ゲームは、あなたの敗けですね。」

 部屋の中には女性しかおらず、聞こえた声自体も彼女のものだった。

 だが、そこに込められたこの辺りの気温を一気に下げるような冷厳な口調に、別人ではと大岡が振り返ると、

服や姿は同じもののやはり先程までとは別人かと見紛うくらいの凛とした立ち居振舞いと、氷のような冷たい、汚物でも見るかのような眼をした女性が人差し指を突き付けた。

「身勝手な正義と欲で人々を貶め続けた罪人よ。

 今、真実の裁きを受けるがいい!

 罰ゲーム!」

「な、何を···」

「せんせぇー」

「なっ、何だっ!?」

 後ろからの弱々しく、それでいながら何処か力を込められた声に振り向くと、みすぼらしい風体の女性がこちらに迫ってきた。

「な、何だお前は!」

「忘れましたか先生、主人の工場をKCへの弁護の果てに潰して···」

 女性が言い終わらない内にガチャ、ガチャ、と通路のカラオケボックスの扉が次々開き、生気のない顔の人々が次々と現れてきた。

「私の息子は、KC幹部の運転にはねられて···」

「ブラック環境を訴えようと···」

「あれは間違いなく私達のものでしたよね?ねえ?」

「くっ、来るなあ!

 ···な、何だここは!」

 思わず扉を閉めて部屋に戻ると、そこはカラオケボックス何かではなく、巨大な裁判所。

 大岡は気付いたら全身を縛られて証言台に立たされていて、周囲には自分が陥れた亡者達、

 そして前面上空には顔が見えない、巨大な木槌を持った人物が座っていて、その木槌をガンガン、と振り下ろした。

 

「ギャアアアアアアアアア!!」

 絶叫を上げて悶える大岡をゴミを見るような目で見下ろした女性は、やがてバックからスマホを取り出した。

 スマホの色は何の装飾もないブラックで、先程までのゴテゴテデコったスマホでも使いそうな彼女のイメージからはかけはなれた、しかし逆に今の彼女にはこの上なく似合いそうなものだった。

 

「はい、仕事は果たしました。

 『転生者』。」

『ご苦労、イシズ。

 原作では君だけはやっている描写はなかったけどやはり出来たんだね。

 依頼通りお手柔らかに抑えてくれたね。』

「···正直、調べて直面させられた彼の所業と被害者達の無念を思うと加減にかなり躊躇いましたが···あなたが言うようにやり直せるだけの若さと能力、そして今後の利用価値を考慮し、まあ、そこそこの精神力で再起は可能なレベルです。」

『私がどれだけ【予言】や早熟ぶりを示したとしても、詰まる所それが私一人の狂気や妄想の類いとされるであろう主観の域を出ないからね。

 今後彼等が我々の駒としてKCと渡り合う精鋭足り得るには、どうしても【大人】である彼等に、漫画かアニメか御伽噺のような【オカルト】を受け入れて貰わなくてはならない。

 それにはどうしても疑いようがない体験が、百聞を越える一見が必要になる。

 原作のBIG5の中でも大岡は典型的なエリートインテリでオカルトといったものを冗談でもまともに相手にするような奴てはない。

 そして貴方のような千年アイテム所有者に裁かれるに相応しい業を積んでいる、最適な人材だ。

 彼が無理矢理にでもオカルトを信じさせられたなら、他の老人達の石頭を穿つ蟻の一穴としては十分過ぎる。

 よくやってくれたよ。』

「では、これより私も表のエジプト考古局の仕事に戻ります。

 支給されたバックや装飾の類いは全て置いておきます。

 後の始末は、全てお任せします。」

『やっぱり色々キツかったかい?

 【イシズちゃん】』

「···これもまた、私に課せられた罰と試練だと思えば、何てことありません。」

 

───────────────────────

 

「残念ですが、このデュエルはここで中断せざるを得なくなります。」

「勝手にでしゃばって何を言うイシズ、まだライフは···」

 

 海馬が乱入してきたイシズに露骨に不快を示し文句を言うや否やそのスマホがピピピピピと鳴り渡り、応じた海馬の耳に低い声ながら妙な女口調のイントネーションが響いてきた。

 

「社長、ちょっと大変なことになったわよ。」

「……渡良瀬、何だ。」

「この大会のレギュレーションで禁止されていたバーン系カード、見逃しが判明したわ。

 <<寄生虫パラサイド>>。

 このカード、効果に1000ポイントバーンが付いているでしょう。

 あまりにマイナーなカードだから見逃されていたけど、この大会の注目選手であったインセクター羽蛾との戦いに続いて今行われている『凡骨』君のデュエルでもたった今使われてね。

 大会ウォッチャーや選手から問い合わせやクレームが殺到しているのよ。

 バーン効果の削除かレギュレーション変更と共に現在行われているデュエルの中断という所でまとまりかけているけれど、何れにせよ、主催者であるあなたの権限と声明が不可欠なのよ。

 主催者特権の使用には貴方達兄弟のみが知るパスワードが必要だし。

 というわけで、下手に引かれてバーンが再び発生してしまう前に早急に対応お願い出来る?」

(こんな時にか。あの『凡骨』と虫けらめが···)

「ここはマリクがサレンダーという形で中断。

 マリク(正確にはプレイヤーである人形)に続いて私がスターチップを更に1つ、計2つ貴方に献上するということで手打ちにしません?

 そして。」

 

 イシズは人形に近づき、彼のデッキから『オシリスの天空竜』と『生け贄人形』の2枚のカードを抜き取った。

 

「あなたへのレアカードはこちらの『生け贄人形』の方にしていただけませんか?

 オシリスは、今はより相応しい相手に献上する予定ですので。」

 

 大会の運営を担っていたモクバが思わず声を上げた。

 

「おい、おばさん。勝手なこと言うなよ。

 大会の運営は、俺達海馬コーポレーションの裁量に……」

「マリクは、その気になれば貴方の社員達をどうとでも出来る立場にいます。

 そして先程、タッグデュエルの勝敗がつき、迷宮兄弟の敗北が知らされました。」

 

────────────────

 

 少し時は遡り、迷宮兄弟と仮面タッグによるタッグデュエルが行われたビル屋上。

 

「ワハハハハ!

 仮面魔獣マスクド·ヘルゲイザーでアタック!」

 

グオオオオオオ!

 

「グワアアアアア!」

 

 迷宮弟 LP 0

 ピー

 

「弟よー!」

「ガハハハハ、我らの連携は無敵!」

「罰ゲーム!なんだな!」

 

 チビの光の仮面がパチンと指を鳴らすと、ドカン!という爆音と共に迷宮兄弟の床のガラスが割れ、二人が真っ逆さまに落ちていった。

 

「「ギャアアアアアアアアア!!!!!」」

 

 ボスン!

 

 下を覗き込んだ光の仮面は面白くなさそうに舌打ちした。

 

「チ。下に敷き詰められた巨大クッションで助かってやがるぜ。

 興醒めなことしてくれやがって。」

 

──────────────────────

 

『あの仮面タッグも、同条件とはいえパラシュートでも用意している以上、かなり無理をきかせてこのような保険をかけるのは少々失礼かと思ったんだけどね。』

「も、申し訳ありませぬ。」

「我等の未熟、慚愧の念に絶えませぬ。」

『うかつに予定外のタッグデュエルを了承してやらせた私の責任だ。

 今後この大会は警備も含めてKC主導で行われる。

 君達の出番はこれで終わりだ。

 医療班に診てもらいなさい。』

 

 白フードの人物達にリードされて退場する迷宮兄弟達は、さながら大罪を暴かれて連行されていく咎人のようであった。

 彼等に指示を出していたスマホからは転生者の呟きが小さく漏れた。

 

『私自身の敗退に、代理タッグデュエルの敗北。

 やはり原作知識程度では思い通りにとはいかないか。』

 

───────────────────

 

「これによって今後、この大会の運営は海馬コーポレーションによって為されることになりました。

 しかし、グールズは千年ロッドの魔の手を既に海馬コーポレーションに忍ばせています。

 彼等の手段の選らばなさを考えると、今後のバトルシティの公平性に支障が出ることは必定。

 よって今を以て私イシズ·イシュタールは、この身柄を海馬コーポレーションに預けることにします。」

『何っ!?』

 人形を通じたマリクの動揺に構うことなく、イシズは海馬瀬戸に頭を垂れた。

「グールズがどれ程デュエリスト達を弄ぼうと、私には手を出せません。

 もし、今後彼等の横暴が大会に影響を及ぼすようでしたなら、どうぞ、このわたくしめを好きにして下さいませ。

 主催者であられる貴方からしてみたら、目先の神のカード以上に価値があると思われますが。」

「·········いいだろう。

 モクバ、こいつを連れていくよう手配しろ。」

「分かったよ。

 チェ、せっかく2枚目の神のカードをてに入れられるかと思ったのに。」

「オシリスの天空竜は、じきにマリクの手を離れ、別の者の手元へと下るでしょう。

 オシリスの使い手としてセトに負けたマリクが今後彼に使役出来るのは、残る最後の神のカード、ラーの翼神竜だけです。」

『構わないよ。

 神にもランクがあってね。

 ラーの翼神竜は、3枚の神のカードの中でも最高ランクの神。

 ブルーアイズ如きで敵う相手ではない。』

「貴様···その言葉、後悔させてやる。」

 

 モクバから離れた場所で、タッグデュエル敗北に際し指示を出しながら眼下のやりとりを眺めていた『転生者』は、海馬兄弟と彼等に引き連れられていくイシズ、マリクの『人形』らに合わせてその場を離れながら尚も呟いた。

 

『コンピューター用語の不具合、【バグ】は、1947年のハーバード大学のコンピューター、Harvard Mark IIの蛾による故障が由来とされている。

 あの【虫野郎】の、恐らくは意図せず突いてしまった運営サイドの見落としが、巡りめぐって神のカードの行く末すら左右することになったか。

 やはり彼は···面白い』

 

────────────────

 

『運営からのお知らせです。

 今後この大会における<<寄生虫パラサイド>>の効果から、バーンダメージはなしとします。』

「あっ、そういえばそんな効果あったな···まあいいや。」

 

 暗室で行われた自分と骨塚のデュエルがどれ程の影響をもたらしかなど思いもよらず、ディスクに届いたバトルシティ運営からの緊急のお知らせを一瞥した城之内克也はフィールドと相手を堂々と見据えて言い張った。

 

「<<寄生虫パラサイド>>がフィールドに出たことで、以後お前の場のモンスターは全て昆虫属に上書きされる!」

「俺のゴースト達が────!!」

 

 ソリッドビジョンでは、骨塚の場の<<竜骨鬼>と<<真紅眼の不死竜>>と<<ゴースト姫-パンプリンセス>>の体の節々から生々しいミミズ状の触手が出てきて纏わりつき、元来の単なるゴースト状態以上のおぞましさを醸し出した。

 

「おれは···3体のモンスターで、残りの子羊トークンに攻撃して···ターンエンド…

 <<死霊の盾>>は···俺のフィールドに悪魔属、アンデットモンスターがいないエンドフェイズに、破壊される···」

「今のあいつのフィールドだと、<<奇跡のピラミッド>>の効果も適用されない。

 今の内に決めるぜ!」

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