最弱の転生者   作:ファイネス1

27 / 31
第26話 盗賊

「獏良!大丈夫か?」

「負けちゃったや。

 城之内くん。」

「お前、神のカードなんかよく手に入れられたな。」

「たまたま、持ってる人に当たってね。

 ごめん、さっきのデュエルの疲れが残ってるから部屋で休ませてもらうね。」

「ああ······」

 獏良を見送った後、城之内は他のフードと共に佇むNo.2の方を見やった。

「何者だ?あいつ···

 やっぱ俺が倒して化けの皮を剥ぐしかなさそうだな。」

 

 城之内を体よくあしらって獏良が個室に戻ると、見計らったかのように彼のスマホが鳴った。

 相手は「イシズ」となっているのを確認すると、それまでの雰囲気を大きく変えて応じた。

 

『よくやり遂げてくれました。』

『ッチ!

 不本意な結果だが、あれでよかったってのか。』

『はい。神のカードを掛けたデュエルでその役割を果たしてくださった以上、期待通りといっていいでしょう。

 報酬としてまずは千年アイテムの条件についてお話しします。』

───────────────

『つまり、神様気取りのお前の弟さんの背中とやらのみにその秘密があるっつーわけか。』

『ええ、ですが今、マリクに力ずくで挑むのはよすべきです。

 私の力で今見えている未来は計り知れない暗雲。

 神ですらも予測不可能は運命はこの闘いに委ねられています。

 この流れに介入するより、流れた末を見極めた上での方が望みを得られる公算が大きいでしょう。』

『わーったよ。

 今は大人しくしといてやる。

 だが、約束通りこの大会後に残る千年アイテムは全て渡してもらうぜ。』

──────────────

「戻ってきたか獏良!

 丁度次の対戦の組み合わせが決まってな!

 俺とマリクの野郎が戦うことになったぜ!」

「マリクって、あの···」

「ああ!あのフードの刺青の奴!

 カードを不正に刷ったり盗んだりしている悪党の親玉さ!

 この大会、どうもきな臭いんだよな。

 本命であるはずの遊戯の奴も姿が見えないっていうし、絶対奴が絡んでいるはずだ。

 デュエルで叩きのめして、聞き出してやる!」

「城之内くん、マリクは千年アイテムと神のカードの使い手らしいよ。

 気をつけて。」

「言っちゃあなんだが、さっきの試合のように、お前の神のカードだってあのフードの奴のカードで攻略出来たんだろ?

 俺のカードのコンボと腕でだって、神のカードなんか打ち破ってやるから見てみなって!」

(ふぅん、奴がデッキに神のカードを入れている本物のマリクかどうか。

 せいぜいいい実験ネズミになるがいい、城之内)

「それでは両者使用ディスクはKC製のため、デッキシャッフルを···おい、城之内!もう、それくらいでいいだろう!ガンつけてないで所定の位置につけ!

 それでは第二回戦、決闘開始!」

「クッ!突風でカードが飛び散る。

 俺もユニゾン製にすればよかったかな···

 先攻いただき!

 ドロー!

 <<鋼鉄の騎士 ギア·フリード>>召喚!

 ターンエンド。」

「私のターン。

 ドロー。

 <<王家の神殿>>発動。

 カードを3枚セットして、ターンエンド。

 王の遺宝を侵す者には、様々な罠が待ち受ける。

 貴様に、この領域に踏み込む勇気はあるかな?」

「俺のターン、ドロー!

 たんまりセットしてくれたなカードを。

 お陰でこれを使って一気に吹き飛ばせるってもんだぜ!

 <<大嵐>>!

 これで場の罠なんか綺麗に一掃だ!」

「早速、罠に掛かったようだな。」

「何っ!」

「カウンター罠<<マジック·ジャマー>>!

 手札コストでそのカードを無効!」

「クッ!<<大嵐>>は一枚しか入れられない制限カード。

 早速やられたか。」

───────────────

 時間は少し遡り、イシズが獏良との連絡を終えて二回戦の組み合わせが決まった頃。

 モニター室の扉が開き、新たな人物がやってきた。

「驢馬···」

「少し仕事がありまして遅れました。

 一回戦は既に見ました。

 次は、城之内くんの闘い。

 あなたにとっても楽しみのはずでしょう。師匠。」

 エスパー驢馬がノーフェイスの側に来てモニターに見入ったとき、『転生者』はイシズに何やら不可解な呪文のような言葉で話しかけた。

「?????」

「驢馬、あれはエジプトの公用語であるアラビア語です。」

「師匠、分かるんですか?」

「私の耳のよさはよく知っているでしょう。

 ある程度聞き慣れたら大抵の言語はおおよそ掴めます。」

「凄い。

 それで、何と言っているのです?」

「·········」

「先生?」

 

『イシズ、この際聞いておきたいことがある。』

『何でしょう。』

『城之内克也とは、何者だ?』

『それは、どういうことでしょう?』

『神のカードを持つ者や千年アイテム所有者とああも深く関わり、渡り合い、ドーマ編では3騎士の1人のモチーフにまでなった。

 それほどの人物が、千年アイテムの因縁に何の関係もないだなんてことあるのかい?

 当人も知らない、凡人の皮を被った彼の正体は、何だ?』

『···あなたは、彼をどう見ますか?』

(はざま)だな』

『間?』

『彼と闘った相手は大抵デュエリストとして風上に置けないような奴等だったが、城之内は···何とか風上に置けるレベル。

 卑劣やイカサマなどの一戦は越えていない代わりに決闘者として大事なものに今一つ欠けている。

 彼が戦績に反して作中ではそれほどに評価されていないのは、そういう面があると思う。

 原作では彼の周りの『友情』に多少溺れていた面があったり武藤遊戯という指針によって保たれていたが、それを削ぎ落とされたこの世界では、やじろべうのように、ともすれば転落しかねない状態で揺れている不安定な存在。

 ···そういえば、作者は彼が将来の進路などでプロ決闘者になるかは明言していなかったな。

 ただ、例えそうなったとしても、変な話彼はどれだけ決闘者として成長してもトッププロ決闘者として華々しく活躍するのはあまり似合わないな。

 トラックの運ちゃんでもしながら町内大会に精を出すくらいが相応しい気がする。

 それで、こっちの質問に答えて貰うが、果たして彼の正体は何だ?』

『王家の、千年アイテムの3000年前の真実は、私達墓守の一族にすら、詳細は分かりません。

 それを知る資格のある、王の魂を持つ者にその鍵を託すことこそが、我等の使命。

 ですが···アイテムによる予知ではなく墓守の者としての勘ですが···彼のルーツの鍵があるとするなら·········

 歴史に葬られた墓泥棒達の村、クル·エルナ村···』

『そうか···どうして気付かなかった。

 相手のモンスターやカードを盗み、利用するデュエルスタイル。

 相手の物をちゃっかり自分のものとして借用したり対戦した相手の力を糧として取り込んで成長していくスタイル。

 彼の有り様はまるで盗賊のそれ。

 名もなき王の物語では語られなかったその真実。

 もし、盗賊王がその資格を受け継いだとするならば···』

 

 彼等の会話の内容を聞き、理解しているはずのノーフェイスは、モニターの中で決闘場に向かう決闘者を眺め、呟く。

「城之内···克也···」

 漏らされたその言葉に込められた感情。

 それは、その素顔や正体を知る数少ない人物であるエスパー驢馬にも分からなかった。

────────────

「クッ!だが、ギア·フリードはまだ残ってやがる!

 ここは攻撃だ!」

(そうだ城之内くん、ここは踏み込むべき。

 ミラーフォースのような攻撃反応系の逆転の罠は、むしろ序盤の内に使い潰させた方がいい。)

「こうなったらテメエの罠を踏み込いてひっぺがしてやる!

 モンスターが少なく、バーンも入れれない責め手に欠けるお前のデッキだとその内勝ちの芽が尽きるはず!」

「もし、私の罠が、そのモンスター不足を補うものだったら?」

「何だと?」

「罠カード<<アポピスの蛇神>>!

 通常モンスター(爬虫類族、地、星4、攻撃力1600、守備力1800)として特殊召喚され、更にデッキから<<澱神アポピス>>をセットする!」

「罠モンスターだと!!」

「ギア·フリードの攻撃力では、守備表示のアポピスは倒せない。」

「だが、お前のセット罠カード残り2枚の内、1枚が罠モンスターであることまでは分かった!

 なら、通常召喚権を行使して、このモンスターを召喚!

 <<人造人間 サイコ·ショッカー>>」

「何っ!?」

「罠使いのお前ならよく知っているはずだ!

 こいつは罠無効効果を持つ天敵カードにして俺と闘った決闘者から譲り受けた、魂のカード!!

 <<アポピスの蛇神>>は意味のない永続罠カードとして魔法罠に置かれる。

 そしてお前の罠は封じたぜ!

 ターンエンド!」

 

マリク LP 8000 手札1枚

王家の神殿

セットカード2枚(澱神アポピス) アポピスの蛇神

 

城之内 LP 8000 手札4枚

人造人間 サイコ·ショッカー

 

「私のターン、ドロー。(2枚)

 見事だ、このような二段構えで私の罠を封じるとは。」

「·········」

「だが、私がそのような天敵に対する備えを怠っているとでも思うか?」

「何?」

「サイコ·ショッカーにより封じられているのは、あくまで場の罠カード及び罠カードの発動。

 墓地からの罠の効果の発動には対応していない。」

「墓地の罠···まさか!」

「そう、<<マジック·ジャマー>>でコストにした<<ブレイクスルー·スキル>>の効果。

 このカードを除外することで、サイコ·ショッカーの効果を封じる。

 これにより、罠カードは有効になった。

 罠モンスター<<澱神アポピス>>を特殊召喚。

 そして<<澱神アポピス>>をリリースして、現れよ。

 聖域を守護する獣、<<聖獣セルケト>>を召喚!」

グギャギャギャギャ!!

「せ、聖なる···?(蠍みたいにグロい奴だぜ。)」

「<<聖獣セルケト>>で<<人造人間 サイコ·ショッカー>>を攻撃!」

バリバリバリバリ!!

城之内 LP 8000→7900

「喰ってやがる···」

「そしてセルケトのモンスター効果!

 攻撃力を500アップする!」

グオオオオオ!!

ATK 2500→3000

「グウウ···」

「ターンエンド。

 最早戦意を失ったか。

 ここまでよく闘ってきた。

 グールズにお前を狙う理由はない。

 今降伏すれば、レアカードを取ることも危害を加えることもなく終わらせよう。」

(所詮運頼みの凡骨では、ここまでか)

「···ふざけんじゃねぇ。

 ここで投げ出したら、今迄闘ってきた奴に言い訳が立たねえ。

 例え暗闇の中でも、光を、希望を信じて前を進むぜ!

 ドロー!」

「·········」

「カードを2枚セットして、

モンスターをセットして、ターンエンド。」

 

マリク LP 8000 手札1枚

王家の神殿

セットカード1枚 アポピスの蛇神

聖獣セルケト

 

城之内 LP 7900 手札3枚

カード2枚セット

モンスターセット

 

「私のターン。

 ドロー。(2枚)

 フィールドの<<アポピスの邪神>>とセットカードを墓地へ送り、<<オオアリクイクイアリ>>を特殊召喚。

 墓地に送られた<<アポピスの邪神>>の効果でデッキから<<アポピスの化神>>を加える。

 <<オオアリクイクイアリ>>の効果。

 攻撃を放棄する代わりに、お前の魔法·罠カード1枚を破壊する。」

「セットカード<<スケープ·ゴート>>発動!

 トークン4体で凌ぐぜ!」

「<<アポピスの化神>>をセットし、<<王家の神殿>>の効果で特殊召喚。

 バトル。

 セットモンスターを攻撃。」

「こっちの方を破壊されなくてよかったぜ!

 <<モンスターBOX>>!

 表!よし!当たり!

 300ダメージと共にセットモンスター<<寄生虫パラサイド>>のリバース効果!

 お前にプレゼントだ!」

「トークンを攻撃。(モンスターBOX ハズレ)

 カードをセットして、ターンエンド。」

 

マリク LP 7700 手札0枚

王家の神殿

セットカード1枚

聖獣セルケト オオアリクイクイアリ アポピスの化神

 

城之内 LP 7900 手札3枚

モンスターBOX

子羊トークン×3

 

(ええい!何を手こずっているのだリシド!

 神のカードもアイテムも持たない部外者の脇役など、とっとと蹴散らせ!)

 

「俺のターン。ドロー(4枚)

 !!

 スタンバイフェイズ、<<モンスターBOX>>の維持コスト500ライフを支払うぜ。(7900→7400)

 このカードに賭ける!

 <<サモン·ダイス>>!

 ライフを1000支払い(7400→6400)、サイコロの目によって効果を適用する。」

「まだ、逆転の目を···」

 

 空中に巨大なサイコロが現れ、グルグルと回転し、やがて···

 

「出た!5!

 これでレベル5以上の上級モンスターを特殊召喚する!

 出ろ!

 <<リボルバー·ドラゴン>>!!」

 

ガチャン!

ガチャン!

ジャガーン!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。