最弱の転生者   作:ファイネス1

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第27話 今行く

ガチャン・ガチャン・ガチャン…

 「ドラゴン」の名称が含まれているにも関わらず機械音を響かせて城之内のフィールドに君臨する、銃弾の頭を持つ異形のモンスターを

眺めて、「転生者」は独りごちた。

「城之内との闘いの後、デッキを確認したが<<時の機械-タイム・マシーン>>と<<リボルバー・ドラゴン>>のカードは、デッキにも、周囲の床にも無かった。

 やはり彼に盗られていたか………」

 その時の声音には、気のせいかどこか冷たい響きを伴っていた。

───────────────

「まだ、そのようなカードを……」

「さあ、今度はルーレットだぜ!

 3つの銃口の内2つが決まれば、お前のセルケトは撃破される!

 いくぜ!

 <<銃砲撃(ガン・キャノン・ショット)>>!!」

 

 リボルバー・ドラゴンの銃口3つから放たれた銃弾が、セルケト目指して襲い来て、そして……

 ×××

 

「くっ!ここで全弾外れかよ!」

───────────────

モニター室

「あの小僧の運も、ここで尽きたか。」

 大下の言葉に続いて、「転生者」は呟いた。

「あるいは、<<リボルバー・ドラゴン>>がまだ、城之内を主と認めていないか……」

──────────────

(だが、セルケトの攻撃力が<<モンスター・BOX>>によってリセットされて元来の2500になった今、

<<リボルバー・ドラゴン>>の2600もの攻撃力で、マリクの場のモンスターは全て破壊できる。

 どれをやるか……

 一番苦しめられたのはセルケトだが、ここは……)

「<<オオアリクイクイアリ>>を攻撃!」

マリク LP 7700→7100

(<<聖獣セルケト>>は攻撃力を変えられない限り後でも破壊できる。

 今、俺にとって守りの要である<<モンスターBOX>>を破壊されないことが大事。)

「俺はこれで、ターンエンド。」

 

マリク LP 7100 手札0枚

王家の神殿

セットカード1枚

聖獣セルケト アポピスの化神

 

城之内 LP 6400 手札2枚

リボルバー・ドラゴン

モンスターBOX

子羊トークン×3

 

「私のターン、ドロー(1枚)

 !!これは…!!」

「お、引いたな!出してもらおうじゃねぇか!」

「私は……ドローした<<寄生虫 パラサイド>>を、特殊召喚。」

「よしっ!!これで新たに罠をセットすることもできないぜ!」

「……リバースカード<<アポピスの化神>>」

「これでお前の場、手札の罠は全て明らかになった!

 罠地獄突破だ!」

「……城之内。

 さっきのターン、お前が<<オオアリクイクイアリ>>の方を破壊した理由は分かっている。

 それは、一見すると理のある判断だっただろう。」

「ん?」

「だが、結果的にお前は判断を誤った。

 あの時お前が破壊すべきは、<<アポピスの化神>>だったのだ。」

「はあ?何言ってんだ?

 仮に<<リボルバー・ドラゴン>>のコイントスが成功していたとしても、セルケトとオオアリクイクイアリの方を……

 !!まさか、さっきのように、墓地のトラップを……」

「<<オオアリクイクイアリ>>のコストで墓地に送った罠カードは<<スキル・サクセサー>>。

 確かに墓地効果により攻撃力を800上げるが、本命はこれではない。

 侵入者を仕留める罠は、その認識の隙を突く不可視の領域からのものこそが真髄。

 見えている罠を、踏み越えて突破してきた勇気は、見事だった。

 だが、このターン、お前は真の罠の恐ろしさを思い知る。

 フィールドの二体の<<アポピスの化神>>をリリースし、融合デッキから特殊召喚!」

「何っ!<<融合>>を使わずに融合デッキから!?」

「<<聖神蛇アポピス>>特殊召喚!」

ジャガアアアア!!

 マリクの場に、両脇に大蛇の頭、下半身は蛇、4つの腕を持つ、紫の巨大な

モンスターが現れた。

「攻撃力2800……<<リボルバー・ドラゴン>>の上」

「<<聖神蛇アポピス>>の特殊能力。

 墓地の「アポピス」罠カード3種類をセット。

 <<王家の神殿>>の効果で、セットした<<アポピスの化神>>を特殊召喚!

 この時、<<聖神蛇アポピス>>は、相手フィールドのカードを破壊する!」

「何ッ」

「<<モンスターBOX>>破壊!」

 <<聖神蛇アポピス>>の脇の蛇がシュルルルル……と、<<モンスターBOX>>に向かって伸びてきて、バックリと食い尽くした。

「グウッ」

「バトル!

 墓地の<<スキル・サクセサー>>を除外し、<<聖獣セルケト>>の攻撃力を800上げて<<リボルバー・ドラゴン>>を粉砕!」

 バリバリバリ

「<<聖神蛇アポピス>>と<<アポピスの化神>>によって、トークンを攻撃!!

 ターンエンド。」

 

マリク LP 7100 手札0枚

王家の神殿

セットカード2枚

聖獣セルケト 聖神蛇アポピス アポピスの化神 寄生虫 パラサイド

 

城之内 LP 6200 手札2枚

 

子羊トークン×1

 

「俺の、ターン。

 ドロー。(3枚)

 ……何もできねえ……ターンエンド。」

「私のターン、ドロー。」

「……なあ、二つ、いいか。」

「どうした。」

「サレンダーはしねえ。

 決闘者として、最後まで戦い抜くが、もう、このデュエル、俺の勝ち目はねえ。

 でもよう。

 見えるけど、見えないもの。

 必死で戦って、戦い抜いて、もう、勝利を諦めて、勝敗のことがすっぱり抜け落ちた時に、気づいちまった。

 マリクって奴は、決闘者の魂であるカードを踏みにじる、薄汚い悪党だ。

 だが、お前は、戦い方こそいやらしいが、俺に決闘者として正々堂々と向き合って、敬意すら表してくれた。

 俺は馬鹿だからいっちょ前に推理なんか出来る奴じゃねぇが、

決闘者ってのは、戦ってぶつかった奴のことは、そんじょそこらの会話よりずっと理解し合え、信じれる。

 だから断言できる。

 お前はマリクなんかじゃ……犯罪組織【グールズ】のボスなんかじゃねえ!」

「………<<寄生虫 パラサイド>>を攻撃表示。

 バト……」

(待て、リシド。)

(マリク様!?)

(どうせ勝つのなら、神のカードを使え。

 万が一にでも奴の妄言で、僕への疑いがかかるようなことがあってはならない。

 お前ほどの忠臣なら、神を扱いこなせるだろうし、その時父も認めてくださるはずだ。)

(………)

「城之内。

 私を偽りとぬかすなら、紛れもない証拠を見せよう。

 選ばれし者にしか使いこなせぬ、神のカードを。」

「何っ!?」

「<<王家の神殿>>と<<聖獣セルケト>>を墓地に送り、神殿に守られし神を呼び出す!

 君臨せよ!最上級神!

 <<ラーの翼神竜>>!!」

GUAAAAAAAAA!!!

「こ、これが、神……」

「<<ラーの翼神竜>>は、己のライフを極限まで削ることにより、その攻撃力を得る!

 私のライフを7000支払うことで、<<ラーの翼神竜>>の攻撃力は7000!

 バトルフェイズ!

 <<寄生虫 パラサイド>>で、残りのトークンを攻撃!

 そして、<<ラーの翼神竜>>で……グウッ!!」

 

 攻撃宣言をしようとしたマリクが苦しみ始め、場に出ている荘厳な翼神竜の姿もまた、変化していった。

 

「マリクの様子が変だぜ!」

「ラーが、黒い霧状に……」

「あれは、本当にラーなのか?」

 

(移し身を使われたことによる、神の怒りが……

 両プレイヤーに降りかかる……)

(私は……やはり、一族の者では……)

 

 黒い禍々しい霧状となったラーが、飛行艇上空に暗雲となり、その暗雲の渦の中央から

ビカー!!と、降り注いだ光線が、両決闘者を直撃した。

 

「い、磯野!二人を……」

「し、しかしモクバ様。

 まだ決闘は……」

「馬鹿野郎!二人とも、命が……」

「磯野。この場合、決闘の決着はどうなる。

 貴様の、審判としての判断を聞かせろ。」

「は、はい!

 残り90秒で立ち上がった者を勝者。

 二人とも立ち上がらなかった場合、両者を失格とします。」

「医療班を待機させておけ。

 90秒後にすぐに突入できるようにな。」

「グッ…ウウウ…」

 

 海場兄弟が場の二人のことに目を向けられている中、

獏良了は、不思議な程冷静に場を見渡し、リシドの昏倒と共に呻いて様子を変化させたマリクに関心を向けた。

────────────────

「城之内!!」

「おい!起きろ!城之内!」

「城之内くん!」

「…んあ?おお、お前ら、今、何時だ?」

「馬鹿野郎!もう放課後だぞ!」

「全く、午後の授業中ずっと居眠りして!」

「あ?ああ、そういえば教室には、もう、お前らしかいねえな。」

「ほら、城之内くん!早く!

 今日はこの後、デュエル・モンスターズの大会の準決勝が始まるんだよ!」

「ああっ!そうだった~~~!」

「もう、今度こそ優勝するぞーって張り切ってたでしょ。」

「こんなとこで寝過ごして失格なんて、洒落になんねえぞ!」

「お、おう!持ち物確認!

 デッキもディスクもよし!」

「頑張って城之内くん!」

「ああ?遊戯、お前も一緒に戦うんじゃねえのか?」

「あはは、僕、途中で負けちゃって……」

「何ッ!お前が負けたっていうのか遊戯!」

「うん、僕もまだまだだったよ……」

「だからよお、お前には猶更頑張ってもらわなきゃならないんだよ。」

「次の相手は海馬君かもね。」

「あいつは残ってんのか。

 だが、今日の俺は絶好調!

 海馬だろうが、負ける気がしないぜ!」

「さあ、急いで。城之内くん。」

「私達は後で来るから、先に行ってらっしゃい!」

「思いっきり行ってこい!城之内!」

「ああ!

 今行くぜ!」

────────────

「た…立った!

 城之内が立ったぜい!」

「勝者!

 城之内克也!」

「俺は……何、を……

 遊戯、杏子、本田は?」

「雑草のような生命力でおこぼれの勝ちを拾ったか。

 くだらん。」

「お、おい!お前!

 大丈夫か?

 しっかりしろ!」

「じょ……城之内……

 お前のような決闘者と、戦えたことを、誇りに……」

「お前誰だよ!

 マリクじゃねぇんだろ!」

「止めてくれ…あの方の…もうひとつの……」

「おい!

 ……くそっ!

 こいつじゃねえってなると……一体マリクって奴は……」

「そいつはマリク。

 ただし、影としてのマリクだ。」

 

 場に、城之内がそれまで聞いたことがない声音の声が響いた。

 

「ナム……まさか、お前が……」

「そう……影が仕える主……オレがマリクだ。」

「ヒャハハハハハ!!

 ようやくお出ましって奴か!!

 俺の求める千年アイテムの力、その最後の鍵を握る墓守は!」

「そいつは影として、このオレ、もう一人の人格であるオレを押さえつけていた。

 だが、ようやく解放された。

 所詮は影。

 神のカードを操ることができるのは、千年アイテムとの縁が深い者のみだ。」

「くだらん。貴様らのオカルトグッズなどに興味はない。

 そんなものがなくとも、オベリスクは俺のしもべだ。」

「海場瀬戸……お前と千年の記憶の因縁……まあ、いずれ答えは出る……

 俺は闇から生まれ、闇が大好きでねえ。

 この決闘にこれからうずまく、一片の光も刺さない闇を、存分に堪能させてもらうぜ。

 ふふふふふ………」

「おい、待て。

 お前が本当のマリクっていうなら、聞きたいことがある。

 遊戯っていう俺のダチを知らねえか?」

「遊戯?ああ、あの負け犬か。」

「何だとテメエ!」

「何なら教えてやろうか?あいつが誰に負けて、どのように···」

「磯野ォ!!

 とっとと次の対戦の組み合わせを発表しろ!!」

「は、はい!

 ビンゴマシーンによれば···

 次回はそちらの···マリク·イシュタールvsNo.3」

「デュエルは5分後に開始される!

 各々自室で準備をしておけ!」

「お、おい、海馬···」

「ふふふ···まあ、いい。

 後にとっておこう。

 楽しみだぜ城之内。

 お前の顔が絶望の闇に沈むのが。」

「クソッ!

 テメェは俺がぶっ倒す!」

─────────────────

「…ああ···とうとう、マリクのあの人格が目覚めてしまった···」

 顔を覆い嘆くイシズに、「転生者」は冷ややかに問いかけた。

「イシズ、君の見える未来は、光差さない暗黒かい?」

「いえ···もはや闇すらその在り方を定められない混沌(カオス)

 次のデュエルでは···神の裁きが下されるのが見えます。

 それが降り掛かるのは、果たして···」

「カオスか。

 私はむしろ闇や光一辺倒よりそういった未知のカオスこそが、面白くて好みなんだがね。」

───────────────

「それではこれより、

第3回戦、No.3 vs マリク·イシュタールの

デュエルを開始します!」

(あの「3」の奴、グールズでないとしたら、

一体なにもんだ?)

(奴の手勢は自身の0を頂点として、その実力順に昇順になっているという。

 つまり、No.3は少なくとも参加者3人の中では一番格下ということ。

 そんな奴が<<ラーの翼神竜>>を···?)

「それでは、両者···」

「待った。」

「は?」

 準備をする段階で、参加者の中でニセマリクに継ぐ体躯のNo.3が声を掛けた。

「マリク·イシュタール。

 闇のアイテムを持つお前とのデュエル、即ちこれから行われる闇のゲームに対して、俺から1つ、提案がある。」

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