最弱の転生者   作:ファイネス1

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ラーの翼神竜 レベル10 幻神獣族 神属性
ATK ??? DEF ???
このモンスターを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならず、特殊召喚されたターンのエンドフェイズに墓地に送られる。
①このカードの召喚は無効化されない。
②このカードの召喚成功時にお互いはカードの効果を発動することができない。
③このモンスターは罠カードの効果を受けず、魔法カードの効果を発動ターンしか受けない。
④このカードの攻撃力、守備力は、リリースしたモンスターのそれぞれの数値の合計分となる。
⑤1000ライフを払って発動する。
 場のモンスターを1体を選んで破壊する。
⑥ライフポイントを100になるように支払って発動する。
 このカードの攻撃力に、払ったライフを加える。
⑦このカードをリリースして発動する。
 このカードの攻撃力分、ライフポイントを回復する。
 この効果は相手ターンでも発動することができる。


第28話 闇のゲーム

3人の決闘者について─────転生者、イシズに語る

「武藤遊戯、城之内克也、海馬瀬戸か。

 彼等伝説の決闘者について一言で言い表すとするなら『欠落』だね。

 王として、真の決闘者として、そして支配者として、彼等には素養こそあれども決定的な欠落を抱えている。

 城之内に関しては前にも言ったが、更に敢えて言えば『自覚』というものか。

 凡人に果たし得ない偉業を成し遂げる英雄というものは、自己に対する盛大な『錯覚』を持つ。神のカードや闇のゲーム、人外である遊戯や全米チャンピオンのキース、トッププレイヤーである海馬瀬戸にも渡り合おうという意志は一般人の保身や常識といったものによるブレーキが壊れていなければ待ち得ないだろう。

 だが、一番の錯覚は彼自身が自分を『凡人』と定義していること。

 自分の成し遂げたことが、決して才覚ではなく、友情や努力、勇気といった一般人レベルのことで成し遂げられると思っている。

 故に彼の中での、そしてそれによる周囲に対する「凡才」のアベレージを否が応でも馬鹿げたものにしてしまい、それについてこれない本物の凡人にとっての絶望となる、実に厄介極まりない存在だ。

 彼が決闘者として歩むなら遊戯の物語において語られることがなかった彼自身の正体やその才覚により他人を傷つけ、負担を負わせていることに向き合わされ、苦悩する日が来るだろう。

 遊戯に欠けているのは「王」への意志だ。

 「浮浪雲」という漫画に「散歩気分で富士山に登った者はいない」という言葉があるが、彼はルフィとかナルトとかガッシュ・ベルのようにな王や頂点を目指す少年漫画主人公達と違い、成し遂げたいものやなりたいものといった明確なビジョンに基づいた成長によるものではなく、友情や約束の為に動いて、その結果王になったに過ぎない。

 だから彼には、海馬瀬戸のような、凡人のスケールを超えた度量や展望といった、人々を惹きつけて動かすものが決定的に欠けていた。ごく普通の強さと優しさを持つ人間としての器以上のものは見出せなかったな。

 言葉を選ばずに言えばだが、羽蛾やキースの例でも見たように、第三者からみて納得しかねる者達でも結果によって頂点の称号を得てしまう、ある意味では非常にリアリティある遊戯王世界の有り様を考えるとさもありなんだな。

 そして海馬瀬戸。ある意味では彼が一番どうしようもない。

 弟との絆や自分の夢といった、作中に於ける変化はあれども根本的には遊戯による罰ゲームを受ける前と実はそれ程変化がない。

 思えばデュエルや作中の後の歴史において海馬コーポレーションが大きな役割を果たしたが彼の海馬ランドとやらが成功したという話は聞かない。

 彼には、自分の本来の夢である子ども達に真の夢を与える為に大切なものが決定的に欠けていたんだよ。

 剛三郎という父親の呪縛は、アニメ版のあれだけでは断ち切れるものではなかったようだな。

 3者3様に欠落を抱えているが、それ自体は蔑むようなことではない。

 完璧ならざる人間は欠落を抱えて生きるものであるし、そもそも彼等はまだ10代の少年だ。

 むしろそれを作中のその先の人生や冒険を通して向き合うことこそが、人生というゲームといえる。

 自分自身の命運をもう1人の自分に委ね続けてしまい、自分本来の王としての器を作り上げることを怠ってた武藤遊戯は、あの時、試練に必要とされる強さが足りずにゲームオーバーとなった。

 残り2人も、少なくとも原作レベルのデュエルの腕と器ではゲームオーバーだろう。

 さて、彼等のゲームの結末はどのようなものになるのかな。」

─────────────────────

「あぁ?提案だぁ?」

「そうだ。

 これから行われるお前との闇のゲーム。

 そこに、ルールを追加させてもらいたい。」

「………」

 何も言ってこず、睨みつけてくるマリクの返事を肯定と受け取ったNo.3は、改めて

転生者が前もって言ってきたシナリオを思い出しながら、慎重に言葉を選んだ。

「『このゲーム中、相手に危害を加えることを禁ずる』というものだ。」

 No.3の言葉を聞いたマリクは、思わず吹き出した。

「プッ…フハハハハハ!!

 おいおい、随分なもんじゃねぇか。

 これじゃこの善良を絵にかいたような俺様がゲームに負けかけたことでお前に手を掛けようとでもいうみたいだねぇ。」

「…お前にとっても悪くない、いや、むしろそっちの為にこそなるルールだと思うがな。」

「何だと?」

「これを突っ撥ねるということは、このゲームにおける暴力行為は禁止されていないということ。

 つまり、お前が神のカードを出すかこっちに不利になった途端、お前をぶちのめして無力化し、ゲーム続行不可能にするというやり方も『あり』という訳だ。」

 あまりの暴論に審判を務める磯野が声を荒げた。

「そんな…」

「勿論、大会の規約では一発でアウトだ。

 だが、闇のゲームでの敗北と比べたらどちらがましだろうな。」

「・・・・・・・・・」

 フードの人物達どころか参加者の中で最も偉丈夫なNo.3は、体格ではその肉体が少年に過ぎないマリクを圧倒するだろう。

 海馬瀬戸の本戦出場決闘者達への無意識の信頼感の表れ故か、思ってみればこの艇に入るにあたってボディチェックなどをされた覚えはなく、拳銃よりもっと恐ろしい千年アイテムの持ち込みさえ許されている。

 こちらの能力を把握し、警戒した重装備ぶりからしてみたら、相手に武道の心得などがある場合どさくさに紛れて千年杖で支配してしまう公算も薄い。

 何より人々の身体も魂も闇の力で弄んできた(専らそれは表マリクの方なのだが)記憶からしてみたら、闇のゲームの敗北を、なりふり構わず回避しようとするのは十分過ぎるほど当然のことだ。

「…いいだろう。

 決闘者同士、正々堂々デュエルで決着つけようじゃねぇか。

 ただ。

 そっちからの勝手な申し込みを寛大にも認めたんだ。

 俺からの『提案』も聞いてもらうのが筋ってもんだろう?」

「………」

「聞いた所じゃあ、お前は『転生者』とかいう奴の犬として来てるんだよなぁ。

 この期に及んでそのボスは高みの見物にしゃれこもうとは、随分な了見じゃねぇか。

 そこでだ…」

 マリクが杖を対戦相手のNo.3の横の方向に持っていた杖を差し向けた。 

────────────────────────

モニタールーム

 ガタン。

 座っていた椅子をひっくり返し、まるで死体のように何の抵抗もなく倒れた『転生者』に、側のイシズが駆け寄り、そしてBIG5達も声を荒げた。

「おい、一体どうした!」

 崩れ落ちた『転生者』を介抱しながら画面に向き直ったイシズは、褐色の顔を青ざめさせた。

「まさか…マリク…!?」

 その時、『転生者』のフードが落ちた。

────────────────────────

「何やってんだあいつ?」

 ギャラリーの城之内どころか側で審判を勤めている磯野にすら、現在のマリクが杖を翳したことによる変化は見受けられなかった。

 だが、漠良だけはその光景を見て目を細めた。

『千年アイテムの所有者であるお前には、見えているようだな。』

「うん・・・・・・・・・」

────────────────────────

「ほぅ、お前が『転生者』様って訳か。」

 No.3の脇に、闇夜の中であるにも関わらず更なる闇の禍々しい存在感によって巨大な十字架が表れ、やがてその十字架に磔られる形で纏わり付いた人型の闇が形と明暗と色彩を明確にさせてきた。

 年は高く見積もって30代だろうか。

 膝まで届く濃い青紫色の長い髪、黒いスーツの上下と黒いシューズのビジネスマンスタイル、170センチほどの背丈で東洋人にしては色白の肌ですらりと伸びた手足。

 その「白」の部分が周囲の闇の中で発光するように浮かび上がった女性は、まるでそこにずっと前から囚われ、闇と共に寝入っている者としてそのまま名作の絵画として陳列されてもおかしくないような荘厳な美しさを醸し出していた。

 その切れ長の瞼がゆっくり開かれ、闇の中で白と黒と暗色で彩られたその有り様の中で際立ち、キラキラと輝いて見る人を惹きつける黄金のような金眼が、対戦相手のマリクを捉えた。

 そして彼女自身と対になる形でマリクの脇にも現れた十字架にもまた闇が纏わりつき、やがてマリクと同様の服と姿をした男の姿が現れた。

 

【やあ、そっちの人格とは初めて会うね。

 マリク。】

 

 よく通る高い声の割には性別や見た目の年齢に不相応な口調もそうなのだが何よりもいくら千年アイテムの闇の力についての知識や備えがあるとはいえその力により理不尽に巻き込まれた状況に全く驚きを示さず、道端で挨拶でもするかよような何て事のない期待外れの様子に、マリクは舌打ちした。

 

「ケッ、どうやら理解できてないようだな。

 このゲーム、両者のLPは磔にされた生贄に直結している。

 ライフと共に、生贄の魂も削られ、それが0になった時…ああ、恐ろしい、永遠の闇に呑まれてしまう訳だ。

 安心しな、ゲームのルールは公平だ。

 この俺も、主人格様の魂を生贄に捧げさせて貰うぜ。

 ほう、そのフードからも分かる慌てよう、No.3の奴は早くも状況を飲み込めたようだな。」

「!!!!!!」

【私の魂が掛かってるなら余計落ち着きなさい。

 もう一つ確認するが、闇のゲームに関する事以外の細かい裁定は、審判を務めている彼の判断に委ねるということでいいかい?】

「ああ、そうしよう。

 おい、審判しっかり頼むぜ。」

「えっ、ええっと…それでは、両者準備は宜しいので?」

「ああ、こっちは早く始めたくてうずうずしているのさ。

 そっちもそうだろ?No.3とやら。」

「う、うう…」

【平常心、勝つことに集中しなさい。】

「あ、ああ、準備はいい。」

「そ、それでは両者、決闘開始─!!

 先攻は、マリク・イシュタールから!」

「クックックッ…(フードで覆い隠してても、平常心が失われているのが分かるぜ。

 肝心のあの女のすましずらが気に食わないが、このデュエルがすすめば、それも苦痛に歪むだろうさ。)

 俺のターン、ドロー。

 永続魔法<<怨霊の湿地帯>>。

 <<ギル・ガース>>を召喚。

 カードを2枚セットして、ターンエンドだ。」

『No.3のターン。

 ドロー。

 モンスターをセット。

 カードを4枚セットして、ターンエンド』

「……(チラ)」

【まあ、良いんじゃないかな】

「俺のターン。

 ドロー。

 …フッ…クハハハハ!!」

 ドローカードを見た次の瞬間、マリクは腹を抱えて大笑いした。

「最早このターンで神を召喚する手筈は整った!」

「!」

 その言葉に、No.3は勿論のことギャラリーの者達も色めき立った。

「何っ!生贄が3体必要だって言う神を、たった2ターンで!!」

「こうも神を素早く引き寄せ、使いこなすとは…

 これが、神のカードの真の所有者か。」

「クックックッ…俺としてももっとじっくりと楽しみたかったが…所詮は凡人相手では、神も早々にご退場願いたいみたいだ。」

【ほう、では見せてくれ、その手筈とやらを】

「フハハハハ!!

 その澄まし面が歪むのが楽しみだぜ!

 リバースカードオープン!<<メタル・リフレクト・スライム>>!」

【あっ。分かった。

 <<神・スライム>>でしょ。】

「ッチ。

 このモンスターをリリースして<<神・スライム>>を融合デッキから特殊召喚。」

 城之内は目の前の光景に思わず声を上げた。

「な、何だ!

 場に出たメタルなスライムが、オベリスクの巨神兵に!?」

【<<神・スライム>>は、アドバンス召喚する際にはモンスター3体分に出来る。

 つまり、実質<<メタル・リフレクト・スライム>>1枚から神召喚の生贄が揃う訳だ。

 そしてドローフェイズで君が引いてきたのが、その神という訳か。】

「…ふん。

 <<神・スライム>>をリリースして顕現せよ!

 <<ラーの翼神竜>>!」

GUAAAAAA!!!

ラーの翼神竜 ATK3000

「クッ!

 俺の時と違って今度はホントの、全力の神って訳か!」

「その通り!

 今見せてやる!

 神の力を!

 1000ライフを支払い、場のモンスターを破壊する!

 何体壁モンスターを出そうが、太陽神の威光で焼き払われるのだ!

 やれ、ラー!

 敵のセットモンスターを破壊!」

GYAOOOOO!!

ジュウウウウウウ…

「む?何だ?」

 神がその口をセットモンスターに向けた時、中空から現れた盃から注がれた液体が神にかかり、神の体から煙が立ち上がった。

ラーの翼神竜 ATK3000→400

「ど、どうした、ラー!」

『ラーの効果にチェーンして、リバースカード<<禁じられた聖杯>>を発動。

 これにより、ラーの効果は無効。』

【おやおや、せっかくの神も棒立ちだな。

 まあ、安心しなよ。

 神は魔法効果の効果を発動ターンにしか受けないから、このターンの終わりに聖杯の効果から自由になる。

 もっとも、攻撃力は0のままけどね。

 ああ、そうそう。

 ラーに付いていた耐性も打ち消されたから

<<怨霊の湿地帯>>の制約を受けてアタックもこのターン出来ないか。】

(こいつ…っ!)

「ならバトルだ!

 <<ギル・ガース>>でセットモンスターを攻撃!」

【リバースモンスターは<<メタモル・ポット>>。

 両者手札を捨てて5枚ドロー。】

「俺様は、カードを2枚セットして、ターンエンド。」

【ふむ、攻撃力0のラーを攻撃表示で残したままということは、そのセットカードは攻撃反応系。

 ミラーフォースあたりか。】

「ッ…!」

【図星、のようだな。

 分かりやすすぎだ。】

「貴様…」

【そして君のデュエルの様も分かった。

 いくら神の出現自体は阻害されないとしても、ああも浅はかに切り札たる神のカードを出してしまうあたり、君の慢心ぶりと恐らくは城之内にすら劣るデュエルの腕がな。】

「何?この俺が城之内にすら劣るだと?」

【そう。

 君のデュエルスタイルは、恐らく表マリクのそれと同様、千年アイテムや神のカードの圧で相手に恐怖を与えるか実質相手だけにリスクを負わせる心理的プレッシャーにつけこむもの。

 それにばかり頼り切ったことと神のカードを自分だけが使える特権を実力と勘違いするあまり肝心のデュエルの腕自体がお粗末になってしまった。】

「黙れ!!」

【予選突破を部下に任せきりだったのも、表向きは自分の手や正体を隠蔽するというもなだろうが、本当は気づいていたんだろう。

 自分本来の実力では、予選突破すら敵わぬと。】

「黙れ黙れ!

 あくまでそれは、矮小な主人格のことだ!」

【そうさ。

 そして君はそんな主人格に押さえつけられ、目を背けられ続けてきた更に矮小な…】

「黙れえええええ!」

「マリク・イシュタール。

 これ以上、デュエルの進行を徒に妨害するようなら、君を失格にする。

 デュエル中の言動には、注意したまえ。」

「ッチ!」

 マリクとしてはこの女を杖を使うか、それよりも直接首を絞めてでも黙らせたいが、それは出来ない。

 何故ならこれが闇のゲームだからだ。

 彼女、【転生者】の魂は現在、ライフポイントとして捧げられていて、デュエルの行く末に左右されている絶体絶命といっていい状態だ。

 しかしそれは、裏を返せば現在の彼女の魂はこの闇のデュエルによるものでしか侵せないことになる。

 ライフを削るか、闇のゲームの敗北かペナルティといった正当なものでない限り、彼が普段している(主に主人格の方がだが)ように千年アイテムで操ったり苦痛を与えたりといったことはできない、ある意味無敵といっていい状態だった。

(畜生、邪魔だ。

 邪魔だ邪魔だ邪魔だこの女。

 部外者の分際でゴチャコチャ口を挟みこんできやがって。

 このままでは俺が集中できず、デュエルに支障を来たしかねない。

 まずは、No.3なんかよりも、こいつの方をどうにかしなきゃな。)

「おい、No.3。

 俺はこの戦いの前に、お前の要求を寛大にも聞き届けたよなぁ?

 だったら、こちらからのルール変更も受け入れるのが道理というもんじゃねぇか?」

【おや?君そのセリフ前にも言ってなかったっけ?

 確か、私と主人格の魂を犠牲にするというルール追加の時に・・・・・・・・・】

「あれは、そもそも最初から・・・・・・・・・」

【ん?】

「い、いや・・・・・・・・・クソッ!

 おい、No.3。

 いいのか?このままこの女からの口出しに頼ってこの場を切り抜けて。

 自分の実力ではなく人任せで戦いを切り抜ける有様では、先程そいつが言ったような矮小で実力に自信がない、

決闘者として恥ずべき姿ではないか?

 お前にもし、決闘者としての誇りとやらがあるのなら、【ゲーム中、生贄は口を出さない】というルール追加を

受け入れて然るべきだろうああ?」

【ルールということは、それを破ったらルール違反で敗北、ということか?】

「その通りだ。

 決闘者とやらにとっては、全く気にする必要がないルールだろうなぁ。」

【皮肉だな。

 今の君には、最もかけ離れ、弄んできた決闘者の魂や誇りといったものを除いては、交渉のカードがないとは。】

「グッ…ッ。

 おい、No.3!俺はお前に聞いているんだ。

 どうだ?受けるか?受けないか?決闘者。」

「………受けよう。」

【!………(コクン)】

(よし!これでいい。

 この女はともかく、No.3の方はこの闇のゲームといったオカルトには完全に適応出来ていないのは確か。

 なら、この闇のゲームでこれから先待ち受ける本当の恐怖で、こいつの心を壊していけば…)

『No.3のターン。ドロー。

 モンスターをセット。

 カードをセット。

 ターンエンド。』

「フハハハハ!!

 どうしたどうした、せっかく棒立ちの神を倒すチャンスだっていうのに未だに守備表示かぁ?

 ああ、<<怨霊の湿地帯>>が場にある以上、モンスターは出せても攻撃が出来ないんだったなあ。

 ヒャハハハハ!

 それは残念。

 こっちは両方とも攻撃態勢に移れるってのによう。

 俺のターン、ドロー!

 じゃあ、俺もたっぷり潤ったこの手札で…」

【…ねえ…】

「あぁ?」

 No.3の方からではない。

 マリクは、思わず声の元である傍の十字架に顔を向けた。

【このターン、ラーの効果を無闇に使うのは、避けた方がいいんじゃないかな。】

「やかましい!

 生贄は黙って…ん?」

 その瞬間。

 場を覆う闇の空気が変わり、2人の場を満遍なく覆っていた闇が自分の方に向けて向かってくるような息苦しさを覚えた。

 場を見ると、カードをプレイしていないにも関わらず<<ラーの翼神竜>>が、反転してマリクの方を向いた。

 マリクは相手と場を見渡したが、No.3は何かカードをプレイした様子はない。

「な、何だ。何が起こっている!」

【[ゲーム終了。

 貴様の負けだ。マリク。]】

「何だと?

 …お、お前は…!」

『転生者』の方を向いたマリクは、彼女の異変にギョッとした。

 彼女が発する声。

 それ自体は先程までのものと変わらない。

 だが、その目には光がなく、人を食ったようだった表情は機械のような無機質な顔立ちとなり、その額には千年アイテムに刻印されていたウィジャトの眼が浮かんでいた。

【[お前が追加したルールと、それについて言った言葉を思い出してみろ]】

 

『ゲーム中、生贄は口を出さない。』

『それを破ったら、ルール違反で敗北。』

「あっ………あああああああああああ!

 畜生!畜生!ちくしょうがあああああああああ!!!

 この野郎!!」

 

【[そしてルール違反を犯したプレイヤーには、罰ゲームが待っている。

 それが闇のゲームだ。]】

─────────────────────

血走った眼で磔られた自らの生贄を睨むマリクに、漠良は呆れた声を上げた。

「自分の作ったルールに振り回されて負けちゃうなんて。」

『ここまで無様な敗北も、逆に珍しいな。』

「今にして思うと【転生者】もこれを見越して、敢えて彼を挑発するような言葉を繰り返して煽ったり、言質を取ったり向こうの生贄への視線で訴えかけていたりした面はあるけど。

 デュエルで勝とうとせず、彼女をこの場に引き摺り出してしまったのが、彼の最大の失敗だったね。」

(いくら何でもこんなの、彼女自身にも想定しているはずがない。

 自らの魂がまな板に乗せられた状態で、マリクの精神性を見抜いてこんな罠を張り巡らせていたというのか)

 その策略ぶりもそうだが、もはや常人の域を超えた精神性に、漠良了は戦慄を覚えざるを得なかった。

「気づくべきだったね。

 闇のゲームで本当に怖いのは、僕らアイテムの所有者何かじゃない。

 ゲームマスターの所有者達も含めて、人間の本性や格を浮き彫りにしてしまう、闇のゲームそのものだということを。」

─────────────────────

【[まずは、敗者への死の宣告だ。

 『ゴッド・ブレイズ・キャノン』]】

 

 ラーの翼神竜の口が開き、その口からボワーと生み出される卵のように出た巨大な火球が、対戦相手のマリクを飲み込む。

 まるで、じわじわとその熱で苦しめようとするかなように。

 

「よせ、やめろラー!

 この俺が…ラーによって滅びるというのか!

 そんなことを、受け入れろというのか!

 ギャアアアアアアアアアアア!」

 

 やがてウィジャド眼を額に宿した【転生者】は、その次には磔にされたマリクにその無機質な顔を向けて告げた。

 

【[お前は最早死ねない。

その苦しみは、永遠に続くぞ。

 罰ゲーム!]】

【グアアアアアアアア!!】

─────────────────────

 磯野は、言葉を失った。

 例え目の前で精神ダメージや神のカードによる怒りが降りかかる状態でも、冷徹に審判に徹していた彼でも、この現実離れした状況はあまりに理解を超えていた。

 マリクが突如絶叫し、苦しみ悶えたかと思うや、魚が水分を抜けて干物になっていくのを早送りで見るように、マリク・イシュタールの体から水分が抜けてカラカラに干からびていった。

 全身が骨と皮だけのミイラみたいになったマリクがバタリと倒れて、夜風が吹き渡り、幾ばくが経っただろうか。

 磯野の喉は、やがて何かに動かされる機械のように、自身の意思を無視して自らの役目の言葉を発した。

「勝者…No.3。

 <<ラーの翼神竜>>のカードが、マリクよりNo.3に献上される。」

【悪く思わないでくれよNo.3。

 私も命を賭けさせられたんだ。

 なりふり構わず勝とうとするのは当然だろう。】

 その言葉を最後に、生贄である彼女のビジョンと闇は掻き消えた。

 手袋をつけた指先で、汚物でも掴むように神のカードの端を挟み持ったNo.3の手先は、震えていた。

 

 マリク・イシュタールの体の細胞は、水分を抜けきって干からびた状態でありながらコーティング加工が施されたように一切の水を弾く構造になっており、

例え水の中に入れても、タルタロスのようにその渇きが癒されることがなく、そして通常なら生存不可能なその状態に於いても尚その意識は健在で肉体が最低限の

生命維持を続けていたという。

 神の怒りにより果てしない苦痛に悶え続けるその体がその後どうなったのかは分からない。

 一つ言えることはどうやらバクラがその背中の文様を確認し、解読を果たしたのは確かなようである。

────────────────

モニタールーム

「ふああああ……ただいま。」

「どうだったね。」

「貴重な体験だったよ。」

 まるでお出かけから帰ってきたみたいに意識を取り戻し、幹部達と何気ない会話を繰り広げて観戦に戻る【転生者】。

 その脇で、イシズは顔を覆い嘆いていた。

(気づくべきでした。あの時。)

 バトルシティの開催数日前。

 誠実な働きぶりを評価されていた「ユニゾン」幹部候補の若手社員が、

【グールズ】により、大切なカードを奪われたどころか実家まで蹂躙されたことで

心中を果たしたという知らせを受けた件。

 その訃報と詳細を眺めた【転生者】は、いつもの柔和な笑みを崩さずに「ふうん」と応じた。

 だが、イシズは身内を害された彼女のその笑みを見た時、寒気を感じた。

(【転生者】は、マリクを救う気は、許す気などなかった。

 だから、名もなき王の魂を宿すあの者こそが、私達にとっての希望だったのです。

 ですが………)

────────────────────────

「ええ、第4回。最終試合は。

 海場瀬戸VSNo.1!」 




裏設定
当初提示された『このゲーム中、相手に危害を加えることを禁ずる』というルールは、プレイヤーを原作でのラーの攻撃などによる精神ダメージから守り、城之内のような結果になるのを防ぐためであり、このルールが適用された時点でプレイヤーに対する精神攻撃は無効になっていた。
そのためもし、あのままデュエルが続行されたら、ラーの攻撃や効果で精神を焼き尽くそうというマリクの思惑が完全にあてが外れてマリクが屈辱の顔芸を披露する予定だった。
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