バトルシティ開催が発表されるかなり前。
とある廊下で2人の青年が受験勉強さながらに手に本を持って愚痴っていた。
「エム イシュト ネウ……」
「イシュトじゃなくてイシュアだぜそこは。」
「あ、ほんとだ。
こんなんで試験間に合うかな。
ちっくしょう!何でデュエルの大会に参加するためにこんなことしなきゃならねえんだよ!」
「仕方ねえだろ。
ユニゾンのバトルシティ参加者選抜試験においては、神のカードに書かれたヒエラティックテキストを
読み込むことが必須ってことで古代エジプト語の習得がまず第一関門になってるんだからよ。
俺達ペガサス様の遺志を継ぐ旧I2が急KC派を見返して返り咲くには、この大会がラストチャンスなんだ。」
KCから来た【転生者】達による、実質乗っ取りといっていい形で発足した合同企業【ユニゾン】。
しかし当然のことながらペガサスを追い落とした形でしかも玩具産業とは全く相容れない軍事産業であるKCと
ペガサスミニオンズを中心としたI2の溝は大きく、発足直後から前途多難が伺えた。
ペガサスの英才教育を受け、彼の補佐すら担う者もいたミニオンズ達も常人の粋を超えた英才達ではあったのだが
海場瀬戸という規格外の存在に追い落とされたとはいえ幾多の修羅場を潜り抜けた海千山千の妖怪達である
旧KC幹部達に経営や金融などにおいてイニシアチブを握られがちであり、歯がゆい思いをしていたのだが
旧KC派と現KCトップとして復活した海場瀬戸の対談の後に開催が決定されたデュエル大会、バトルシティにより、
カードゲーム大会におけるI2派の優位性とこの大会の景品であるKCからの援助による大チャンスが巡ってきた。
こうして王国編同様、大企業の行く末がカードゲームの行く末により左右されることとなった。
「
「やっぱりI2からは夜行さんと月行さんが本命かな。
パーフェクトデュエリストと、邪神使いなんか、どうすればいいのやら。」
「馬鹿野郎、例え参加資格枠3つの内2つが実質あの2人で埋まったとしても、残り1つで俺達が入ってあの女を予選ででも落とせば
実質居I2の天下じゃねぇか。
経営やマネーゲームではまだあっちが上かもしれんが
デュエル・モンスターズの創始者、ペガサス様の意思を継ぐ俺達がデュエルであいつらに負けるはずがねえ!
だから今は癪だが何としてもこの古代エジプト語の試験を突破するぞ。」
「イシズ先生に目をかけてもらえると思ってモチベーション上げるか。」
「そりゃあ………ありだな。」
古代エジプト語講師として赴任してきて若きペガサスユニオン達のマドンナとしてしばしばネタにされているミステリアスな褐色美女を思い浮かべ、
思わず二人は鼻の下を伸ばした。
やがて当日。
古代エジプト語に関する筆記及び神のカードそれぞれの呪文暗唱という1次試験を突破した者達に課されたデュエルの裁定や知識に関する筆記の2次試験。
神のカードを想定したデッキ相手の模擬戦の第3試験、そして最終選抜を経て。
覆面を被った「1」から「3」がバトルシティに参加するに至った。
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決闘艇
デュエル直前の最終調整や気持ちの整理といった重要な時間を迎えるために自室に籠ろうとする海馬瀬戸に対し、モクバは思わず確認した。
「兄さま、いいの?
マリクの奴は、もう判明して倒されちゃったし、
千年杖もユニゾンに回収されてもう、あいつらが顔を隠す理由なんかないんだから正体を明かさせても……」
「それはこのバトルシティでの奴らの敗北の姿と共にだ。」
有無を言わさぬ断言。
それ以上は一切の問答を交わすことなく自室にこもった海馬の部屋を前にしたモクバは拳を握りしめた。
「【1】……強い巡に番号が振られるってことは、次の奴は【2】や【3】以上の……”あいつ”に次ぐ強さの奴……
気を付けて兄さま……何としても勝たないと……」
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決闘場
城之内、モクバ、獏良は勿論、【2】と【3】の決闘者達も集まって固唾を呑んで見守る中、
リング吹きすさぶリングに海馬瀬戸がコートをはためかせて堂々とあらわれたその対岸で、160センチはあろうかという小柄な【1】の人物が
強風にその体を煽られまいと必死な様子でぴょこぴょこと登壇してきて、対戦相手の海場にペコリと頭を下げ、腕時計のようなデジタルデュエルディスクを前に掲げた。
城之内はその光景を見て、首をかしげてぽりぽりと顎をかいた。
「なあ、聞いた話じゃあの【1】の奴って、ここのフードの連中の中では一番強いってんだろ?
顔なんかは分かんねえけど、何かイメージっつーか……オーラとか感じなくて調子狂いそうだな。」
「ふん、どんな奴だろうと、青眼と神の力を持つ兄さまの敵じゃないぜ。」
例によって交換シャッフルは海場瀬戸の方からのみ成され、両者の準備が整ったところで審判の磯野の、この大会における最後となる開始宣言が響いた。
「それでは、デュエル開始!!」
「先攻は私っすね。」
「!!!」
リングに響いたその少女の声に、対戦相手の海馬は勿論、観客の城之内やモクバ、獏良すらも耳を疑った。
「しゃべった……こいつ……」
今迄のフードの人物たちは、デュエルの進行などはディスクの機能に任せ、また、その発言もどこか決闘者としての厳かさに満ちていた。
だが、この【1】は、そういったデュエルの進行をデジタルではなく自身で、そしてまるで友達との決闘でも楽しむような軽い口調で行った。
そして城之内はその声に何かを感じた。
(女……ガキか……?
いや、それより、こいつの声と口調、どっかで………)
「ドロー!
<<ドラゴンメイド・チェイム>>を召喚!」
うふ♡
【1】の操作と共にその場に雪のような真っ白な肌と髪、それを引き立たたせる黒いドレスに豊満な体を包み、手には淡くエメラルド色に輝くはたきを持ち、
所々エメラルド色に輝く長くて黒い尻尾と胴体を包むように覆う装飾、先端もまた同じ色に輝く根元が黒い角を持った女性が緩やかに笑んで登場した。
神のカードや決闘王の称号がかかった大会の天空決闘場での真剣勝負にあまりにそぐわぬ見た目のモンスターの登場に、モクバはあっけに取られた。
「あいつ………舐めてんのか………?」
「<<チェイム>>の効果でデッキから<<ドラゴンメイドのお見送り>>をサーチして発動。
手札から<<ドラゴンメイド・ラドリー>>を特殊召喚!(守備表示)」
紫を基調としたフリフリのメイド服の上に白いエプロンを着て、角と服の色に合う紫色の大きな尻尾を持った
青い髪の少女がどやあ!という感じで登場した。
「<<ラドリー>>の効果!
デッキの上からカードを3枚墓地に送るっす!」
中空から現れた洗濯物が山ほど入った籠をよっこらせと持ったラドリーが、不安気に主を眺めた。
その視線を受けた【1】の脳裏には、【転生者】からの評価がちらついた。
『<<ラドリー>>か……確かに君の<<ドラゴンメイド>>は墓地ギミックを利用するものだが
正直な話そのモンスターはエルドリッチとかワイトのような墓地ギミックをより活用する別のテーマでの方が使い勝手がいいくらいなんだがな。』
「ええ、確かにあなたのそのドジっ子な効果は足を引っ張りかねないことはよーく知ってるっす。
でも、貴方も立派な<<ドラゴンメイド>>。
そして、安定しないからこそ、時としてこういう重要な場において他のメイド以上の思わぬ働きをする、やる時はやる子だって信じてるっす。
だから……いっちゃって!」
主人からの励ましにうん!と応じた<<ラドリー>>は、思いっきりその洗濯物の中身をぶちまけた。
「スピル・スプラッシュ!!」
エイヤー!
デッキから墓地に落ちたカード
ドラゴンメイドのお片付け
ドラゴンメイド・パルラ
コドモドラゴン
「墓地に落ちた<<コドモドラゴン>>の効果で<<ドラゴンメイド・ティルル>>を手札から特殊召喚!(守備表示)」
<<ラドリー>>と並び、長く赤い髪と青い角とワインレッドの服が特徴の、お菓子作りのようなボウルを持ったメイドが
登場してきた。
「<<ティルル>>の効果で
<<ドラゴンメイド・フランメ>>をデッキから墓地に送る。
カードを1枚セットして、ターンエンドっす。」
「………ふん。
とんだ期待外れだな。
攻撃力が500しかなく、気高さも猛々しさも感じられないドラゴンを2体出すのが精一杯とは。」
「確かに……ちょい、ショボい盤面だな。」
海場が失望の念を露わにし、城之内も1回戦最終戦の盤面としては物足りなさを示した。
だが、獏良は別の方面に興味を向けていた。
「いいや。彼女、今までの奴らとは決定的に違う所がある。」
「何だ?獏良。」
「決闘者たるもの、自分が使役し、共に戦うカード……モンスターに思い入れがあるのは当然だ。
でも、<<ラドリー>>に対したように彼女は他の覆面達に比べても自分のモンスターへの愛着と信頼がひとしおだ。
海場君も自分の青眼に対するこだわりが並大抵じゃないけれど、彼女のはどっちかというと遊戯君のそれに近い。
そんな彼女のモンスター達も、きっと彼女のために全力を尽くすはず。」
「確かに……何か得体が知れねえが……悪い奴、じゃなさそうだな。」
「見せてやる!究極至極の、本物のドラゴンの力を!
俺のターン!ドロー!
手札の<<青眼の白龍>>を見せることで、<<青眼の亜白龍>>を特殊召喚する!
見よ!これが強靭なる本物のドラゴンだ!」
ギャオオオオオ!!
「何だ!開始早々青眼っぽいドラゴン出してきたぞ!」
「城之内、あれは場と墓地では<<青眼の白龍>>として扱うから実質<<青眼の白龍>>だぜい。」
「何!あんな簡単に青眼を召喚できるのか!?」
「<<青眼の亜白龍>>は、バトルの代わりに効果で相手モンスターを破壊する!」
「<<お見送り>>で出した<<ラドリー>>は、このターンの終わりまで戦闘、効果で破壊されないっす!」
「なら<<ティルル>>の方を破壊!
バーストショット!」
「<<ドラゴンメイド・リラクゼーション>>!
<<ティルル>>を手札に戻し、デッキから<<ドラゴンメイドのお召し替え>>をサーチ。
戻って!<<ティルル>>!」
<<青眼の亜白龍>>の口から出た電撃が襲い掛かった<<ティルル>>がふわりと消え、
彼女がいた位置に電撃が飛来した。
「場のモンスターが<<ラドリー>>だけになっちまったぜ!」
「でも<<お見送り>>によって破壊されないラドリーじゃ、青眼の攻撃でも突破できないよ。
あの子は今、主を守る鉄壁のモンスターになっている。」
「ふん、それしきで青眼から無事で済むと思うな!手札の2体の<<青眼の白龍>>を<<融合>>!!
来い!
<<青眼の双爆裂龍>>!!」
グオオオオオオ!!
「2体融合で攻撃力が変わらず3000?」
「バトル!
<<青眼の双爆裂龍>>で、<<ドラゴンメイド・ラドリー>>を攻撃!
この戦闘で破壊されなかったモンスターは除外される!
ディメンジョン・バースト!」
<<双爆裂龍>>の攻撃を凌いだラドリーではあるが、空間に空いた穴に「わー」と、吸い込まれた。
「破壊以外の除去も使うなんて。
海場君も王国の時から格段に進歩しているようだね。」
「青眼の猛攻はこれで終わりではないぞ!
速攻魔法<<融合解除>>!
<<双爆裂龍>>を2体の<<青眼の白龍>>に戻して特殊召喚!」
「<<青眼の白龍>>が、場に3体!?」
「2体の<<青眼の白龍>>で攻撃!!
滅びの爆裂疾風弾!」
「グッ!」
No.1 LP8000→2000
「ふぅん、ライフポイントが4000だったらここで終わっていたのだが、そうあっさり終わるのも、やはりつまらんな。
第一回戦最後を飾る神のカードを、貴様たちに拝ませてやる!
俺は場の3体のブルーアイズをリリースし、召喚!
破壊神オベリスク!
我が絶対の僕となりて、我が領域に降臨せよ!」
ゴゴゴゴゴ……ドーン!
「こ、この威圧感……4度目でも慣れないぜ。」
「これで、この大会で3体の神が全て現れたね。」
「ターンエンドだ。」
「エンドフェイズ、墓地の<<ドラゴンメイドのお片付け>>を除外して手札から<<ドラゴンメイド・チェイム>>を特殊召喚。
効果でデッキから<<ドラゴンメイドのお心尽くし>>をサーチして、<<チェイム>>を手札に戻すっす。」
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モニタールーム
フードを外した【転生者】は盤面を見て、その美貌をやや傾げた。
「手札を使い切って場にオベリスクを出したか。
彼の初手はドローカードも含めて
<<青眼の白龍>>×2
<<青眼の亜白龍>>
<<オベリスクの巨神兵>>
<<融合>>
<<融合解除>>。
この世界の基準でいったら青眼3体融合すら出来る、モンスターに愛されている手札といえるんだろうけれど……
正直、私にとっては青眼はあまりそう手札に来てもらいたくないんだよね。
初手として理想なのは、そう、こんな感じ。」
<<青眼の白龍>>
<<トレード・イン>>
<<仮面竜>>
<<貪欲な壺>>
<<死者蘇生>>
<<ドラゴン・目覚めの旋律>>
「<<仮面竜>>をコストに<<目覚めの旋律>>で残りの青眼を持ってきてからの<<トレード・イン>>での更なるドロー。
幅広い展開と柔軟性でデッキのポテンシャルを活かせるかどうかが、盤面のモンスターのパワーよりも決闘者の腕と器量の見せ所。
瀬戸君のデッキの青眼もまた、彼の偏愛とも言える想いに応えすぎた結果やたらと出しゃばってくる。
むしろそれこそが彼の最大の弱点だね。
そしてこの世界の<<オベリスクの巨神兵>>の効果。」
オベリスクの巨神兵 レベル10 幻神獣族 神属性
ATK 4000 DEF 4000
このモンスターを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならず、特殊召喚されたターンのエンドフェイズに墓地に送られる。
このカード名の⑤の効果は、デュエル中に一度しか使用できない
①このカードの召喚は無効化されない。
②このカードの召喚成功時にお互いはカードの効果を発動することができない。
③このモンスターは罠カードの効果を受けず、魔法カードの効果を発動ターンしか受けない。
④自分フィールドの他のモンスター2体をリリースして発動できる。(この効果を発動するターン、このカードは攻撃宣言できない。)
相手フィールドのモンスターを全て破壊する。
⑤自分フィールドの他のモンスター2体をリリースして発動できる。
相手に4000ダメージを与える。
この効果を使用するターンバトルフェイズを行うことは出来ず、カードをセットすることは出来ず、このカードの効果以外でダメージを与えることは出来ない。
*バーンカードの特例としてこの大会での⑤の効果の使用は禁止されている
「ソウルエナジーMAXを使えるのはいいんだけど……耐性マイナスされているから使い勝手としてはやはり私の世界のとは、むしろ下位互換的かな。
大丈夫かな彼。」
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「私のターン。ドロー。
手札の<<焔征竜ーブラスター>>と<<ドラゴンメイド・ティルル>>をコストに<<オベリスクの巨神兵>>を破壊っす。」
「何っ!?」
ドカーン!
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モニタールーム
「ありゃ、初手から除去されたよ。」
────────────────────────
「<<ドラゴンメイドのお心尽くし>>で墓地の<<ドラゴンメイド・パルラ>>を特殊召喚して<<ドラゴンメイド・ルフト>>を墓地へ。」
とう!
緑色の髪と尻尾とツノを持った、ティーポットを持った活発な印象のメイドが登場してきた。
「<<ドラゴンメイド・パルラ>>の効果で<<ドラゴンメイド・フルス>>を墓地へ。
<<ドラゴンメイド・リラクゼーション>>で<<パルラ>>を戻して<<ドラゴンメイドのお片付け>>を手札に。
<<ドラゴンメイド・チェイム>>を召喚して<<ドラゴンメイドのお出迎え>>を手札に。
<<ドラゴンメイドのお召し替え>>。
<<チェイム>>と手札の<<パルラ>>で融合!
奉仕の竜達の長よ。
その威容と忠誠を満を持して主に示せ。
融合召喚!
<<ドラゴンメイド・ハスキー>>!!」
ハアア!!
No.1のフィールドに降り立った、大柄で褐色の肌。
眼鏡をかけて笑みを浮かべた、所々紅色が交った黒い角と尻尾のメイド服の女性が登場した。
ドラゴンメイド・ハスキー ATK3000 DEF2500
「なん、だと……青眼と同じステータスだと!?」
あからさまに戦闘向けどころかドラゴンとすら思えない容姿でありながら、自分の強靭無敵最強のドラゴンと同じステータスのモンスターの登場に海馬が
面食らっていると、No.1は更に画面を操作してもう一枚のカードを発動しようとした。
「本来……私はここにいるべきじゃないっす。」
「何だと?」
「【2】や【3】のような原作キャラと違って、私は本来、こんなステージに立てる女じゃなかった。
ここまで来れたのは、BIG5、イシズ先生、戦ってきた皆、そしてお姉さま……多くの人々に支えられてきて、何より
ドラゴンメイド達やデッキのモンスターやカード達が共に戦ってきてくれたことによるものっす。
だから……このカードで、そんな皆の力を束ねて、勝利するっす!
魔法カード<<龍の鏡>>!!
墓地の
火属性の<<焔征竜ーブラスター>>
水属性の<<ドラゴンメイド・フルス>>
地属性の<<コドモドラゴン>>
風属性の<<ドラゴンメイド・ルフト>>
闇属性の<<ドラゴンメイド・チェイム>>を除外して融合召喚!!
<<
<<双爆裂龍>>の時同様空中に空いた穴に向かって墓地から5体のドラゴンが吸い込まれたかと思うと、
場に5つの首を持つ巨大なドラゴンが姿を現した。
グオオオオオオオオオ!!!
F・G・D ATK 5000 DEF 5000
「か、神と同様、いや、それ以上の威圧……このモンスターは……!?」
「すっげえ……青眼どころか究極竜以上の攻撃力じゃねえか。」
「現在デュエルモンスターズのモンスターの内最大の攻撃力を持つ幻のドラゴン……こんなのまで持ってるなんて………」
「<<ブラスター>>の効果で<<ティルル>>をサーチ。
バトル!
<<F・G・D>>
アブソリュート・デストロイ!!」
バアアアアアア!!!
5つのドラゴンから出た黒、赤、青、黄色、緑色の光線が、丸腰の海馬に降りそそいた。
「グアアアアアア!!」
海場 LP 8000→3000
「兄さま!」
「<<ドラゴンメイド・ハスキー>>!!
ロイヤリティー・スパーク!!」
眼鏡メイドが祈りを捧げるような仕草をするや彼女の目の前に現れた光輝く弾を海馬に向けて押し出した。
ピカー!!
「うわあああああ!!」
海場 LP 3000→0
ピー
「しょ………勝者、No.1!!
アンティカード、<<オベリスクの巨神兵>>が進呈されます。」
「兄さま、大丈夫!?」
「く…判断を誤った…神のカードなどに目を眩まされず、究極竜の更なる進化の方を出していれば、こんなことには…これが……No.1の力……成程…だが、一つ、納得しかねることがある。
何故………こいつの更に上の奴……No.0は、予選で負けたのだ……それもあいつ……
インセクター羽蛾ごときに………」
────────────────────────
数時間前
バトルシティが開催されて間もなく、童見野町のとある路地裏にて。
No.0 LP0
「負けた……私が……?」
現実を受け入れられない様でいる【0】のフードを被った人物に、相対した眼鏡の少年は意気揚々と告げた。
「ウヒョヒョヒョヒョ!
さあ、とっととレアカードとチップを渡しな雑魚が!!」
そして間もなく。
『そんな……あなたが負けるなど……』
電話口からの当惑に反し、【転生者】は、どこか夢見心地毛に、楽し気に言葉を紡いだ。
「ふふふ……この世界に生まれて久々に……面白いものが見られたよ。」
それは、何十年に一回の不運とマグレだったのかもしれない。
神のカードや主人公達にばかり目を向けていた彼女の、些細な油断だったかもしれない。
いずれにせよ。
転生者を、大勝負における実力で倒す。
知らず知らずこの世界の歴史においてただ一人成し得てしまったその行為が、彼女とインセクター羽蛾の因縁の始まりとなり、
彼の人生、そしてこの世界の行く末を大きく狂わせていくこととなったのだった。