最弱の転生者   作:ファイネス1

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何に驚いたって縛りはあれども11期テーマなのに原作初期世界で渡り合えてしまうホーリーナイツの性能


第7話 でしょうね

 ≪聖夜に煌めく竜≫。

 基本なデザインとしては彼が遊戯との決闘で見せた≪ホーリー・ナイト・ドラゴン≫と同じ、全体的に角ばったシャープなデザインと吊り上がった眼で、かぎ爪が付けられた両手を掲げている。

 色合いとしては≪ホーリー・ナイト・ドラゴン≫が薄紫なのに対し全身が白く、

眼は星明りのように銀色に輝いていて、薄く白いオーラが立ち上る竜の全身からはキラキラと金色に瞬く星が飛び回っている。

 あくまで机上のソリッドビジョンに合わせたフィギュア並の大きさではあるのだが『勝利』を呼び込む青眼の白龍の強大な力を誇示するような圧倒的な威容に対し、こちらは戦いを忘れて見惚れてしまうような厳かさに満ちていた。

 やがてその空気に区切りをつけるように、小波が赤帽子のつばをピンと弾いて言った。

 

「≪聖夜に煌めく竜≫のモンスター効果発動。

 手札から召喚、特殊召喚された時、相手カードを破壊する。

 ≪フィールドバリア≫を破壊。」

 

 小波の宣言と共に「グオオオオオオ!!」と≪聖夜に煌めく竜≫の咆哮が響くや、

それまで気付かぬ内に机全体を覆っていた膜がバリン、と割れる演出が発生した。

 

「セットされていたフィールド魔法≪ガイアパワー≫を発動。」

 

 小波がフィールドゾーンにセットされていたカードを表にすると、

アマゾネス達がそこかしこにいた机上周囲のフィールドも割れ、辺りはよりうっそうと茂った森になった。

 新たに展開されたフィールドにより、地属性の≪アマゾネス≫達は、むしろ新たな力を得たかのようにその闘気を迸らせる。

 

「≪テラ・フォーミング≫で≪煌めく聖夜≫を持ってきて発動。」

 

 ≪ガイアパワー≫が僅か数秒で割られるやフィールドは一転して星が瞬く宇宙空間になった。

 キラキラと満点の星空が輝き、エメラルドブルーの天の川や星雲などが瞬く幻想的なフィールド。中でもひときわ金色に輝く7つの星々は≪聖夜に煌めく竜≫から放たれる星とマッチしている。

 城之内達が言葉を忘れて見入った竜やフィールドによって織りなされる荘厳な盤面に、果たしてどれ程に心を奪われていたのか、対峙するギャルは新たにフィールドが展開されて一拍置かれた後、カードを更にプレイしていった。

 

「≪メタバース≫発動!

 フィールドをデッキの≪アマゾネスの里≫に張り替える!」

 

 まるで一時の幻であったかのように煌めく幻想的な聖夜のフィールドは割られ再びフィールドはアマゾネス達が所々伺う密林に変化していく。

 と、城之内が大下の様子に気づいた。

 

「おい、あいつ、何かスマホ持っているぞ。」

「もしかして………さっきのフィールド魔法の効果調べているのかな?」

「何っ!?きたねーぞ!」

「ゲームの進行には問題ないため、許可とする」と、審判を務めるクロケッツの声が答え、城之内は煮え切らない様子でデュエルを見続けると、結局元に戻った盤面上でターンプレイヤーの小波のプレイが続く。

 

「≪ホーリーナイツ・フラムエル≫の効果。

墓地のこのカードを除外して、≪聖夜に煌めく竜≫を手札に戻す。」

 

「おい、あんなモンスター今迄いなかったよな?」

「≪天使の施し≫で捨てたんだよ。

思えば遊戯君との決闘でも、彼は≪ホーリーナイツ≫モンスターを捨てていた。

結局、使わなかったけど。」

「……遊戯との闘いでは、手を抜いてたっていうのか?」

「彼自身としては、あの場で最適なプレイングをしたはずなんだけれど、

結局はエースである≪聖夜に煌めく竜≫や≪ホーリーナイツ≫を使うことなく決めてしまったことになるね。」

「マジかよ……」

 

 自分の知る限りでは唯一ペガサスに勝ち得る、一決闘者として目標といっていい最強決闘者。

今迄数々のゲームで城之内が舌を巻く力量で相手を跳ね除けて友人達を救ってきて、時折人間を超越した印象すら抱いていた稀代のゲーマーである武藤遊戯ですら半人前とされているデュエルモンスターという嘗てないゲームの広さ、深さに、城之内は立ちすくんだ。

「リバースカード≪アマゾネス転生術≫!

 フィールドの≪アマゾネス王女≫≪アマゾネス戦士長≫を破壊して

 墓地から≪アマゾネス王女≫≪アマゾネス・スカウト≫を共に守備表示で特殊召喚!

 そして≪アマゾネス王女≫≪アマゾネスの里≫の効果をそれぞれ発動!

 ≪アマゾネスの叫声≫をサーチして≪アマゾネス霊術師≫を特殊召喚して

≪アマゾネス霊術師≫で≪融合≫をサーチ!」

「墓地の≪ホーリーナイツ・シエル≫を除外して効果発動。」

「チェーンして≪アマゾネス・スカウト≫をリリース!」

「≪聖夜に煌めく竜≫を特殊召喚して≪アマゾネスの里≫を破壊。」

 

「なんかフィールドがゴチャゴチャ変わって目まぐるしいわね。」

「現在、フィールドには守備表示の≪アマゾネス女王≫と≪アマゾネス霊術師≫。

 攻撃表示の≪聖夜に煌めく竜≫の3体のみ。

 フィールドゾーン、魔法・罠ゾーンにカードはなし、か。」

「結局魔法罠使いきって真っさらになっちまったな。」

「うん。勝負は、まだ、これからだろうね。」

 

 舞達が各々の感想を述べている一方、黙ってデュエルの成り行きを見ていたキースは思わず欄干を握って脂汗を滲ませていた。

 

(馬鹿野郎……何呑気なこと言ってやがる。

 今のやりとり、分からなかったのかよ。)

 

 ≪煌めく聖夜≫は、条件に合っている聖夜竜が手札に戻った時、手札アドを更に広げられるフィールド魔法。

 SNSを使って初手に小波が≪天使の施し≫で捨てた2枚のカード≪ホーリーナイツ・シエル≫≪ホーリーナイツ・フラムエル≫と共にその効果を把握した大下は

フラムエルとのコンボによるアドを直前で阻止。

 そして≪ホーリーナイツ・シエル≫の効果でターン1がない聖夜竜の効果を再び使われることで里を破壊される前に≪アマゾネス転生術≫でその旨味を先取りしてモンスターと手札の補強を行い、更に≪アマゾネス・スカウト≫によって≪アマゾネス≫モンスター達を聖夜竜による破壊から守り、戦略の要とはいえ被害を里1枚のみで済ませてこのターンのライフも死守した。

 例え効果を咄嗟に調べて理解したとしても、それによる最適なタイミングを計るのはプロでも至難の業だ。

 キース以外の観戦者達にしてみたら単にゴチャゴチャした魔法・モンスターの打ち合いにしか見えないが、デュエルに精通した彼からしてみたら、互いに絶妙なタイミングで相手の上手を取り続けた丁々発止の息詰まるやり取りだった。

 強いて言うのなら初手の聖夜竜召喚の際、≪フィールドバリア≫の効果を逆手にとって≪メタバース≫の方を先に破壊しておくべきであったがそれはあくまで結果論。

 彼等は自分の見えている範囲でお互いの魂まで撫でさするようなやり取りを、この1ターンで繰り広げていた。

 どっちが負けたとしても、2人の力量は間違いなく飛び入り参加である自分を除いたこの大会の正規参加者の中で勝った相手に次ぐナンバー2だといっていいだろう。

 キースの知る限りで並び立つ者と言ったら現在全米チャンピオンに君臨する「あの女」か、自分に代わってその地位に就いていてもおかしくなかったという「奴」くらいだろう。

 トーナメント形式である以上一回戦から強者同士が食い合ってくれることは十分ありえるし、2人を別々に相手にする最悪に比べたら望ましいことであるのは確かではあるのだが、キースは2人の単純な強さとは更に別の面を苦慮していた。

 

(≪アマゾネス≫も≪聖夜竜≫も、共にテーマにフィールドカードがあること自体は運だろうが、このフィールド魔法を巡るやり取り見るに、≪トゥーン・キングダム≫というフィールド魔法に依拠しているペガサスの戦法への対処もこいつらはそのテーマの中で独自に構えているはずだ。)

 

 自身が打ち倒して雪辱を晴らさねばならないペガサスに、自分以外の者が辿り着いて超えかねないという危機に眉根を寄せる中、2人の戦いはいよいよバトルフェイズに移行した。

 

「≪聖夜に煌めく竜≫で≪アマゾネス王女≫を攻撃。

 『ホーリー・フレイム』」

 

ギャオオオオオオオ!

キャアアアアア!

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

「アタシんたーん……ドロー!

 さってっと……アタシも、エースモンスター出しますか。」

 

「おおっ大下の奴もエース出すのか!」

「やっぱり……わざわざサーチしてきた『融合』を使わなかったってことは、

あの時の私相手の勝負じゃ……」

 

「≪戦士の生還≫で、墓地の≪アマゾネス王女≫を回収。

 ≪アマゾネス王女≫を召喚して効果発動。

 ≪アマゾネスの里≫を持ってきて発動。

 ≪融合≫!

 ≪アマゾネス女王≫として扱う≪アマゾネス王女≫と≪アマゾネス霊術師≫で、融合召喚!

 黒き戦乙女の長、その勇猛と慈愛で同胞を守れ!

 ≪アマゾネス女帝≫!」

 

ハアアアアアア!!

 まだ幼さが残る≪アマゾネス王女≫と直接戦闘向きとは思えない≪アマゾネス霊術師≫が交わると、動物の骨を象った冠を被り、豊満でしなやかな肢体と歴戦を経た戦士の風格を備え持つ褐色の肌の女性が自身の肩くらいまである長剣を掲げて降臨してきた。

 

アマゾネス女帝

 ATK 2800→3000 DEF 2400

 

「あれが………大下の奴のエースモンスター………」

「ビジュアルではハーピィーの優雅さには及ばないけれど………なんて攻撃力なのよ。

 里のバンアップで、今や青眼と互角じゃない。」

 

「そしてそして、≪アマゾネスの叫声≫で≪アマゾネス戦士長≫を持ってきて特殊召喚。」

 

アマゾネス戦士長

 ATK 1900→2100

 

「これで総攻撃量は………やりー、5100。

聖夜竜のクッションついててもきっちり2600ダメージでアタシの勝ちー。

バトル!

 ≪アマゾネス女帝≫の攻撃!

 ヒッポリュテ・スラッシュ!!」

 

 アマゾネス女帝が、竜すら切り刻む長剣を掲げ、聖夜竜に切りかかってきた。

 

「≪オネスト≫。

 ≪アマゾネス女帝≫を破壊し、2500ダメージを与える。」

「!!」

 

 大下 LP4000→1500

 

(しまった!

 ≪クリッター≫で加えていたこと忘れてた!

 こんなこっなら≪叫声≫や≪王女≫で≪アマゾネスの秘宝≫とか≪剣士≫の方持ってくるんだった!)

 

 どんなに悔やんでも後の祭り。

 同胞を守る≪アマゾネス女帝≫は、裏を返せば犠牲にする自身は守れない。

 天使の加護により輝きを増した白い竜のブレスにより、誇り高い女帝はあっさりとその身を灰にした。

 前ターンの攻防を凌いだことと例えミラーフォースを発動されたとしても≪里≫でリカバリー出来てしまう万全の態勢、ライフを削り切れてしまう高攻撃力が、大下由美子という天才少女の弱点である『油断』を誘った。

 

「破壊された≪アマゾネス女帝≫の効果。

 デッキから≪アマゾネス女王≫を特殊召喚。

 更に≪里≫によって≪アマゾネスの戦士長≫を特殊召喚(守備表示)。

 その効果で≪アマゾネスの急襲≫をセット。

 ……ターンエンド」

 

(小娘が、単純なミスしやがって)

 

 お墨付きを与えた程の天才決闘少女の単純なミスに、キースはユダヤの聖典「タルムード」の言葉を思わず呟いた。

 

「『知者が間違う時は、恐ろしいほど単純に間違う』……か。」

 

「俺のターン、ドロー。

 ≪聖なる篝火≫で≪ホーリーナイツ・レイエル≫をサーチして召喚。

 デッキから≪煌めく聖夜≫をサーチしてきて発動。

 ≪異次元からの埋葬≫で≪ホーリーナイト・フラムエル≫と≪ホーリーナイツ・シエル≫を墓地に戻す。

 墓地の≪ホーリーナイツ・フラムエル≫を除外して≪聖夜に煌めく竜≫を手札に戻した時、≪煌めく聖夜≫の効果でドロー。

リバースカードオープン≪聖夜の降臨≫。

 効果で手札から≪聖夜に煌めく竜≫を特殊召喚して≪アマゾネス女王≫を破壊。

 墓地の≪クリッター≫と≪オネスト≫を除外し、≪カオス・ソーサラー≫を特殊召喚し、

効果で≪アマゾネスの戦士長≫を除外。

 ………俺の勝ちだね。」

「………でしょうね。」

 

 大下は、流れが完全に相手の方に傾いていることを知った。

 正直、≪アマゾネスの急襲≫を使えば粘れないこともない。

 だが。

 万一ここから粘って勝ったとしても、その時の自分は決して笑ってはいないだろう。

 慢心によるつまらないミスでエースモンスターを自ら失うという大プレイングミスをやらかした時点で。

 相手以前に自分自身に負けてしまった時点で。

 この先このデュエルでどのように振舞おうと、彼女に真の勝利など、存在しえない。

 例えば城之内だったら、その過程にミスや運頼み、ルールの不理解などによるものが差し挟まれた、一流とは言い難い、泥臭いものだとしても、

それを『勝利』として堂々と誇れる故に、最後まで諦めようとしなかったろう。

 だが、挫折というものをそれまで知らなかった彼女に、そんな泥に塗れた強さはまだ、持ちえなかった。

 

「≪聖夜に煌めく竜≫。

 『ホーリー・フレイム』」

 

ゴオオオオオオ

 

大下 LP1500→0

 

「勝者!小波遊一!」

「……チェッ。」

 

 とだけ言い残して大下由美子は挨拶もせずに片手で顔を抑えて去っていき、やがて廊下で「ああ、くやしー。」と残念がる姿をカメラで見ていた祖父は、ご満悦な表情で「いい薬じゃな。」と呟いた。

 




マスデュエでとんでもないポカやらかした時、早々に切っちゃうか勝敗度外視して早く終わらせたいと思ってしまったりするメンタル弱者絶対いるよね
大下と城之内闘ったらデュエルの腕では大下が圧勝だけれど現在は彼女自身のメンタルの弱さや隙が大きいため実は勝機がないこともなかったりします
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