読者の皆様ありがとうございます!色々と拙いところもあると思いますが、今作をよろしくおねがいいたします!
ルビコンで死んだはずだったが、突然訳の分からん学園都市にいて、なぜか先生として招待されていて、その学園都市の命運をかけた任務を請け負っている。
疑問がないわけではない、むしろ山のように聞きたいことがある。
だがそれを聞こうとしても事情を知っていそうな奴がいない。それに老いぼれの俺と違って、子どもの時間は短いもの。とりあえず目下の課題だけ終わらせて私事は後回しにするつもりだった。
だが何事にも限界というものはある。既に疑問が噴火しそうな勢いだが、これだけは聞かせてくれ。
「くううぅぅ……Zzzz」
「くううぅぅ……Zzzz」
「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……」
「くううぅぅ……Zzzzzzz」
……誰かこの状況を説明しろ。
起動できるかどうか分からないシッテムの箱だが、開錠はあっさりと行けた。
俺が手に取ると箱は勝手に起動した。パスワードを求められたのは意外というか、知らないはずなのに、指が勝手に動いていたのだ。七つの嘆きだかジェリコの古則だかいう、この発展した都市には似合わない宗教めいた言葉は気にかかるが、この際いいと放っておいたのだ。
「えへっ……まだたくさんありますよぉ……」
そしたらなんだ。突然知らない教室にいたかと思えば、明らかに小学生のガキが机で寝ているという訳の分からんところに飛ばされた。
ここにきて初めてのため息をつきながら、ひとまず俺はそのガキを起こすことにした。
「おい、起きろ」
「うにゃ……まだですよぉ……しっかり嚙まないと……」
「……起きろ」
「あぅん、でもぉ……」
「とっとと起きんか!おやつの時間はとっくに過ぎているぞ!!」
「ふ、ふわぁぁぁ!!?」
ガターン、と椅子を転げさせ、ようやく目の前の空色の女子は目を覚ました。
「随分とおねむだったようだな、ちびっ子」
「ありゃりゃ?え、あれ?せ、先生!?この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさかミシガン先生……?!」
「正解だ。寝起きにしては随分と頭が回るじゃないか、お前は?」
「う、うわああ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?」
あたふたとふためく子どもが落ち着くのを待ってから、彼女の名乗りを待った。
「私はアロナ!この「シッテムの箱」に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、
そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
とてつもないカミングアウトを聞かされた俺は、もう驚く体力すら使うことは無くアロナの指紋認証を受ける。とりあえずこいつがベイラム・アーキバスはおろか惑星封鎖機構のAIすら超えるただの人間とほぼ同じ人工知能だということはなんとなく分かった。今はもうそれ以外の情報は頭に入れたくない。
「……はい!確認終わりました♪」
「今のでいいのか?」
「ええ、何か問題がありましたか?」
「いや……指切りなど随分久しぶりだと思ってな。やはりこういうアナログはいいもんだ」
ガキの頃はよくそこらで知り合った近所の奴らとよくやったもんだ。明日も
「それって、私がなんか古いって思ってます?ちょっと心外なんですけど!」
「何を言うか。旧式の方が使いやすいことなんて社会じゃごまんとある。大体新型新型と騒がれてる奴なんて、旧式にちょっと機能を足したくらいのもんだ。あんまり最新に囚われるのはカッコ悪いぞ?」
「う、ふぐぅ……」
口ごもるアロナを見ながら、俺はこのシッテムの箱に入ってきた理由を説明する。
「なるほど……先生の事情は大体分かりました。連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった……」
「おまけに俺を呼んでおいて挨拶にすら来ないはた迷惑な輩だ。アロナ、お前の中に連邦生徒会長の情報は入っているか」
「私はキヴォトスの情報の多くを知っていますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……」
「……そうか。なら分かった。話は奴をぶん殴ってから聞くとしよう」
「お、お役に立てずすみません。あはは……」
このアロナとかいうAIは、性格はともかく性能は間違いないだろう。にも関わらず彼女の情報は入っていない……だとすれば攫われた、と言うよりは自分から立ち去った可能性が高いな。ここまで自身の情報を隠蔽する理由とそもそもの動機は分からんが、出れない事情があるなら深くは突っ込まないほうがいいだろう。
「で、ですが、サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです」
「出来るか。なら頼むぞ、アロナ」
しばし後、
「……サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収出来ました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。
今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」
「そうか。なら連邦生徒会に返してやれ」
「……大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても?」
アロナの発言に、俺はキヴォトスで初めて会った七神リンの眼を思い出す。やつれてはいたが、あの目は利潤にまみれた連中には逆立ちしてもできない目だ。
「構わんやれ。俺はここを支配するために左遷させられたわけじゃない」
「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」
視界がフェードアウトしていくと同時に、俺は明かりのついたシャーレの地下室へと戻っていた。まるで白昼夢を見るような感覚だ。
何事もなかったように電話をかけ終えたリンがこちらに向き直り、現況の報告を行う。
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね」
「ああ、爺の補助は大変だったろう。ご苦労だった、七神リン」
「いえ、先生こそ、ありがとうございます。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。
ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく」
「……面倒ごとは増やすなよ」
俺の一言にリンは思わせぶりな笑みを浮かべながら、その場を去ろうとする。
「……あ、もう一つありました。ついてきてください。連邦捜査部「シャーレ」をご紹介いたします」
連れられたのは、近々始業予定の張り紙が張られた、シャーレのメインロビーだった。
「長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね」
扉を開けると、そこはシャーレの部室。ある程度清掃は行き届いているようで、まるですぐ前まで人がいたかのようだった。
「ここが俺の仕事場になるわけか。……直近でやるべきことはあるか?」
「……シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません。キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です」
「捜査部のわりに随分と腑抜けた組織だな。おまけに権限まで至れり尽くせりか。連邦生徒会長はなぜこんな組織を作ったんだ」
「すみません、それに関しては私も聞いてはおらず……本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のままです」
連邦生徒会としては彼女の捜索に手一杯、ゆえにキヴォトスの問題には十分な対応が出来ない。現に今も連邦生徒会には山のような苦情が寄せられている、と。
「もしかしたら、時間が有り余っている「シャーレ」なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」
「……流石代行を任される
「ご謙遜を」
俺からすればまだまだ青いガキだというのに、どこでこんな腹芸を身に着けてきたんだか。
部室から出ていく七神の背中を見送りながら、ひとまず俺は部室前に待機させた即席部隊の元へ向かった。
近未来的な施設や機械が立ち並び、モノレールやロボットが忙しなく動き回るのは、キヴォトスの最先端を独占するミレニアムサイエンススクール。
そのセミナー(生徒会)の部室に一人、扉を開けて入る少女がいた。
「あ、お帰りなさいユウカちゃん」
「ただいまノア。あ、風力発電所、もう直ったかしら」
「ええ。エンジニア部に依頼して直してもらいました。犯人は既にC&Cがお掃除しましたよ」
ノアと呼ばれた長い白髪の生徒が、連邦生徒会へ出向いていたユウカを迎えた。
「それで?どうでしたか、シャーレの先生は」
「うーん……なんて言ったらいいのかしら」
小首をかしげるノアに、ユウカは言葉を探しながら答えていく。
「報告書にも書いたけど、やっぱり指示が的確だった。他校の生徒と戦闘するなんて初めてのはずだったんだけど、驚くぐらいスムーズだった」
「あら。ユウカちゃんがそんな素直に褒めるなんて珍しいですね?もしかしてタイプでした?」
「なっ、ノア!からかわないでよ!」
ノアがからかいユウカがそれに反応する。いつもの光景である。
「そ、そんなことより、あの先生のこと、何か分かったことはある?」
「ああ、それなんですが……」
ノアが見せたパソコンの画面には、キヴォトス中のあらゆる組織の情報が集められたリストが表示されており、その上には、『該当項目:0件』と書かれた文字が。
「[ベイラム]、[AC]、[レッドガン]……どれも引っかかりませんでした。先生はキヴォトスの外から来られたらしい方なので、当然と言えば当然ですが…」
「まぁ、何となくは分かってたけどね。とりあえず、直接会ってみて話してみるしかなさそうね。
どう見ても軍人なのは分かる……でもどこの所属なのか分からないと、後が不安だわ」
その頃、キヴォトスの別地域。
格式高い建築物が立ち並ぶ、トリニティ総合学園において。
「――以上が、今回の報告になります」
「ご苦労様です、ハスミ副委員長。今回はお疲れさまでした」
恭しく頭を下げたハスミが、ティーパーティーのその場を後にする。
「シャーレの先生、ですか。エデン条約も近いというのに、まだまだ休めそうにありませんね」
「でも、面白そうな人じゃない?『G1ミシガン』って、カッコいい名前だよねー。近いうちに会いに行こうよー、この三人でさ!」
「ミカ。この場合その先生を迎える、だろ?ティーパーティーも暇じゃないというのは、一応君も分かっているとは思うが」
「もー、分かってるよセイアちゃん。だから出来たらいいなーって願望だよ願望」
傍目から見ればただお茶会を嗜んでいるようにしか見えない、三人の生徒たち。しかし実態はトリニティのトップに立つ生徒会であるのだ。
「ですが、会って話をするというのはいい案です。まぁ私たちは出られそうにないので、他の方に行ってもらうしかなさそうですが」
「ちぇー、結局缶詰め状態には変わりないじゃん」
「お行儀が悪いですよ、ミカさん。ここがティーパーティーということはわきまえてくださいね?」
はいはーい、といつも通りの態度で返すミカに、ナギサは笑みを浮かべ、それを見たミカが椅子に座り直す。
その間、セイアは手を組み合わせ、何かを思案する様に目を閉じていた。
「……いずれにせよ、事が大きく動くのは間違いない。備えておくに越したことはないだろう」
ナギサとミカも頷き、今日のティーパーティーがお開きとなる中、セイアの脳裏にはある光景がこびりついていた。
(キヴォトスが赤く染まり、火に包まれる……あの夢は何を表しているんだ?)
整然とした校舎に、所々破壊の痕が残るミスマッチな威容を残すゲヘナ学園。
その中で傷一つない校舎で、火宮チナツは報告書を読み上げていた。
「……確認しますけど、それは事実なんですよね?」
「ええ。私も信じがたいですけど……」
ゲヘナの風紀委員会。混沌と自由のもと暴れまくるゲヘナの治安を一手に担う治安維持組織。
「キヴォトスの外から来た貧弱な大人が、銃も持たずに一人で戦車をジャックしたなんて信じられます?」
「タンクジャックなんて聞いたことないですけど……正直に言って、あの時は先生が少し怖く思いました」
行政官のアコと先生の脅威について話す中、黙して報告を聞いていた風紀委員長のヒナが口を開いた。
「報告については分かったわ、チナツ。それで、貴方はどう?」
「どう、とは?」
「ミシガン先生は信頼できる?」
チナツは一旦考え、答えを出す。
「……できると、思います。実はあの後、気絶した不良の治療を手伝って頂きました。たぶん、攻撃するだけの人には出来ないような、丁寧な治療でした」
「チナツの感覚を否定するわけではありませんが、元軍人という肩書きがある以上、迂闊に信頼するのは危険だと思います、委員長」
「それはそう。でもそれはこれから見定めていけばいい」
「いずれにせよ、あの人はこれから大きな台風の目になる……きっと」
「う、いてて……」
見知らぬ部屋のソファで、スケバンのような恰好をした生徒が一人、目を覚ました。
「ここ、どこだ?」
見ると、近くには彼女とよくつるむ二人のスケバンが包帯だらけの状態で寝ている。
「確か、災厄の狐に誘われて、連邦生徒会の建物に戦車で突っ込んで、それから――」
「随分と遅いお目覚めだなならず者ども!」
耳朶を叩くような大声に、反射的に後ろを振り返る。眠っていたスケバン二人も飛び跳ねるように起きた。
「あ、お、お前は!?」
「ふむ、全員記憶力に問題はないようだな。
「は?お前何言って……」
困惑するスケバンたちに、ミシガンは一枚の紙を突き付けた。
「お前たちは所属している学園から匙を投げられたらしいな」
「そ、それがどうしたってんだ!」
「いいか、音読してこの紙をしっかり読んでやる!要は貴様らは貧乏くじを引かされた!ここにいる面々の矯正は、この俺に任されたということだ!」
声を失くし、呆然とする三人にミシガンは更に捲し立てる。
「これから貴様らには最低限生きる知識とそれの活用方法を叩きこむ。ついでにその腐った根性も根っこから引きちぎってやる、怠ける猶予があると思うな!」
「そ、そんな無茶苦茶な……」
「そこの一番の早起き!まだ舌が回ってしょうがないようだな、安心しろ。これから一週間のしごきで、貴様の舌はサイドブレーキを覚えることになる」
「40秒で支度しろ!愉快な特別講習の始まりだ!」
ちなみにイオリは持っていなくて解像度粗すぎたので登場させられませんでした。申し訳ナスビ…
すり抜けでいいからきてくれよぉ!キャラの解像度が一段くらい下がるんじゃぁ!ミネはともかくチェリノとかどこで活かすんだよぉ!?