ミシガン英雄伝記補遺:透き通る世界を地獄が歩く   作:柴猫

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4月忙しい……でもアニメが俺の熱に火をつけてくれる…ありがたや……


アビドス編:泣きっ面に鬼が来る

 

 「おはようございます、先生!」

 「アロナ、今日も無駄にでかい声量だな!」

 「えへへ、そうですか?」

 

 ドタバタとした赴任劇から数日後、シャーレの仕事も軌道に乗り、キヴォトスに一応の平和が戻った。ルビコンでも無かった中々に濃い数日間だったが、おかげでシャーレの存在感も浮き出てきている。これに関しては素直に嬉しい評価だろう。連邦生徒会の補佐機関として、顔は覚えてられるみたいだ。

 アロナからの連絡はもう一つ、シャーレに届く生徒からの助けを求める無数の手紙の中から、一つ不穏な手紙が見つかったという。

 

 内容は、アビドス高等学校から支援を求める要請だった。これだけならアドバイスや専門家へ任せればいい内容だが、問題は当の学校が地域の暴力組織から繰り返し襲撃を受けているということ。食い止めようにも弾薬などの物資が足らず、学校が占領されかねないほど追い詰まっており、どうにかシャーレの力を借りたい、とのことだった。

 

 「アビドス高等学校か……この辺りでは聞かん名だな」

 「昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました。どれほど大きいかというと、町のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです!」

 

 棚の資料からキヴォトス全域を示した古い地図帳を取り出し、アビドス高等学校の自治区を印をつけてみる。

 

 「ゲヘナの三倍近くか。あながち誇張でもないかもしれんな」

 

 それほど広大な自治区を有しているはずの巨大校が、地域のチンピラもどきに襲われている……これは、初出張にしては随分愉快になりそうだ。

 

 「アロナ、支援要請書を用意しろ。間に合わせの支援物資も積み込んでアビドスに向かう」

 「すぐに出発ですか!?さすが、大人の行動力!」

 「遠足の準備は迅速にだ。よーく覚えておけ」

 

 ガレージに向かい、俺は遠足の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、俺は一面砂だらけの道路を地図を片手に走らせていた。ちなみに俺以外に走っている車はない。

 

 「……この地図も役に立たんか」

 

 辺りにあるのは一面の砂漠と、それに呑まれかけたコンクリートジャングルの廃墟。どうやらここは砂漠化が進み、放棄された地区のようだ。砂によって地図はほとんど役に立たず、学校らしき場所も見えない。人に聞きたいところだが、周囲に人は誰もいない。

 

 (……初めてルビコンに来た時を思い出す)

 

 アイビスの火によって日光が届かず、常に身を刺す冷気に覆われていたルビコンと、この景色は日が届くかどうかという一点を除いて、よく似た土地だった。滅びかけた場所、と例えるのが最適なのだろうか。木星とはまた違った廃れ具合だ。

 

 ともあれ八方塞がりの状況に置かれているのは事実、いったん出直そうかと考え前方に視線を向ける。

 地平線の向こうから、銀色の反射光が目に入った。金属、ではない。

 

 

 それはロードバイクで道路を駆ける制服姿の少女だった。狼の耳を揺らしながら、少女はこちらに視線をやった。

 

 「そこの自転車!道に迷ったんだが、アビドス高校への道は分かるか?」

 

 少女はこちらに近寄って止まる。よく見ると両目で違う、珍しい瞳孔だ。

 

 「ん……アビドスはあっち。こっちは砂漠の方へ出る道だよ」

 

 全く正反対の道を行っていたらしい。あとでこの地図作った奴には苦情を入れておくか。

 

 「そうか……その校章はアビドスの生徒か」

 「そうだよ。アビドスに用があるの?」

 「ああ、支援要請を受けてな。これから間に合わせの物資と継続支援の誓約書を渡しに行くんだが、なにか聞いているか」

 「!うん。……受理されたんだ、支援要請」

 

 少女は嬉しさと、なぜか驚きを混ぜた表情をしている。期待していなかったというのか?

 ……いや。ここの廃れ具合を見るに、連邦生徒会は大した援助はよこさなかったんだろう。そりゃ、今更来るわけないと思っても不思議ではないか。

 

 「なら案内してくれ。そろそろガソリンが切れそうだ」

 「分かった。ついてきて」

 

 軽やかに走るロードバイクの後を追い、遠方に見える小さな建物の群れを目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく走ると、こじんまりとしたアビドスの校舎へたどり着く。車を止めるところは裏手にあるらしいが、しかし、随分と砂を被ってしまっている。廃ビルに比べればまだマシとはいえ、いかんせんゲヘナやトリニティを見てからだと寂しく感じる。

 まぁうちの生家に比べれば高級マンションだがな。

 

 「ようこそ、アビドス高等学校へ。ちょっと汚れてるけど、人手が足りなくて」

 「いや、たった五人で校舎を管理しているなら悪くないだろう。味が出ている」

 「そうかな……うん、そうかも」

 

 シロコに案内された先、『アビドス廃校対策委員会』の紙が貼られた教室へ着く。

 

 「ただいま」

 「おかえり、シロコせんぱ……い?」

 

 最初に出迎えた黒い猫耳の少女が、俺を見るなり硬直する。

 

 「うわっ!?何っ!?そのごつい大人誰!?」

 「人を見るなり失礼とは思わんのかお前」

 「わぁ、シロコちゃんのお父さんでしょうか?」

 「も、もしかしてシロコ先輩傭兵を雇ったんですか!?駄目ですよもうギリギリなのに!」

 「まずいじゃないの!とにかく今すぐ帰ってもらわないと……!」

 

 女三人寄れば姦しいとはいうが、随分と元気のある奴らだ。うちの奴らにも見習ってほしいもんだが。

 

 「……お父さんじゃないけど」

 「それ見れば分かるから!シロコ先輩のお父さんなわけはないでしょ!?」

 「でも、シロコちゃんってアウトドア派じゃないですか?」

 「アウトドアってレベルですかこの人!?」

 「……そろそろ要件を言っていいか」

 

 話を中断させる。これはこれで愉快なもんだが、いつまで経っても本題に入れなさそうな気がする。

 

 「うん。この人はアビドスに来たお客さん。雇ったわけでもお父さんでもないから」

 「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね」

 「そ、それもそうですね……でも来客の予定ってありましたっけ……」

 「予定も何も呼んだのはお前たちだろうが」

 

 キョトンとする三人に、俺は持ってきたバックを机に載せる。

 

 「連邦捜査部「シャーレ」の顧問、ミシガンだ。お前たちの支援要請を受けてきてやった!」

 「え、ええっ!?まさか!?」

 「連邦捜査部「シャーレ」の先生!?」

 「うん。支援要請が受理されたってこと」

 「わあ☆良かったですね、アヤネちゃん!」

 「はい!これで……弾薬や補給品の補助が受けられます」

 

 手紙を書いた本人であろうメガネの少女、アヤネはホッとしたように息をつく。……少し濁したな。

 

 「あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ?ホシノ先輩は?」

 「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる」

 

 随分と怠けっぷりの激しい委員長だが、日常茶飯事なのだろう。猫耳の生徒が教室を出ていく。

 と、同時に。

 

 『ひゃーっはははは!』『攻撃、攻撃だ!!奴らは既に弾薬の補給を絶たれている!襲撃せよ!!学校を占拠するのだ!』

 

 五月蠅い銃声と共に校庭内にズカズカと入り込んできたヘルメットを被った不良ども。あの格好は確かヘルメット団だったか。まさかこんなところにまで幅を利かせているとは、随分と活動領域が広いらしい。

 

 「武装集団……!カタカタヘルメット団のようです!」

 「あいつら……!!性懲りもなく!」

 「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」

 

 突然の襲撃にもこの対応の速さ。これも彼女らにとっては日常で、悩まさせられる問題なのだろう。

 

 「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー」

 「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方はシャーレの先生です」

 

 連れてこられたのはこの中で一番背の低い、桃色の長髪をした子どもだった。背丈と髪の長さがアンバランス過ぎるが、足を引っかけないのか。

 

 「ありゃ~そりゃ大変だね……あ、先生?よろしくー、むにゃ」

 「委員長。随分とおねむのようだが、俺が目覚ましでも鳴らしてやろうか」

 「んーん、平気だよ。これが終わったらまたお昼寝するからね~」

 

 寝ぼけ眼でこちらを射る視線は……見た目に反して、妙に慣れている。

 

 「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」

 「はーい、みんなで出撃です☆」

 

 バックから弾薬を漁り、即座に装備を揃えて外に出ていくアビドスの生徒たち。

 

 「私がオペレーターを担当します。先生はこちらでサポートをお願いします!」

 「ふむ……アヤネ、敵の数は分かるか」

 「はい?ええと……おおよそ24人です!」

 「そうか!ならば俺は援護射撃を行う、こそこそ隠れてるつもりのネズミどもの位置を教えろ!」

 「え!?先生自ら戦闘に参加されるのですか!?」

 

 いや、と断りを入れ俺は腰にさしてある銃に手をかける。ここが木星なら相手がMTだろうが生身で出ていったが、キヴォトスでは少々刺激が強すぎるからな。かといって、黙っているのは軍人ミシガンではない。

 

 

 「こいつで奴らの華奢な顔面に穴を空けてやるのさ」

 

 

 それはパッと見は普通のリボルバー、しかしその大きさはアヤネが腰に差しているものとは倍以上の差がある。

 

 

 中庭では既に交戦を始めており、アビドスの面々がヘルメット団を迎撃しているが、物量の差によるものか少なくない被弾を重ねている。

 その中で一人、ARをシロコへ向けているヘルメットの頭に照準を合わせ、発砲。

 

 ズガァン!という重すぎる音と共にヘルメットが砕け、中庭に転がる。

 

 「な!ど、どこから撃たれた!?」

 「あそこだ!三階の教室から、ギャッ!!」

 

 障害物から身を乗り出しやがった素人に、もう一発ぶち込んでやる。何発か反撃が来るが、柱の陰に隠れてやり過ごす。その隙にアビドスの面々がヘルメット団をやっていく。

 

 「すごっ……い、今の何?狙撃銃でも持ってたの?」

 『い、いえ。先生が持っているのは拳銃、です』

 「拳銃でその威力……まさかプファイファー・ツェリスカでは?」

 「ん、何それ」

 「ええと、私もガラスケース越しにしか見たことないんですが……象を狩る用の弾を発射できる、キヴォトス最強の拳銃だとか……」

 「うへぇー、先生そんな銃どこで手に入れたのさー」

 「うちのコンビニで埃を被っているのを貰って来ただけだ。だが防蟻工事には少し威力が高すぎたらしいな!」

 

 

 

 その後は同じ作業を続け、気づけばカタカタヘルメット団は砕けたヘルメットを捨てて逃げ出していき、アビドスの防衛は無事終了した。

 

 「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」

 「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」

 「先生の指揮と支援が良かったね。私たちだけの時とは全然違った

 これが大人の力……すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮と支援まで。大人ってすごい」

 「キヴォトスの大人が貧弱なだけだろう。俺の古巣じゃあ大人全員がミサイルをぶっ放せるぞ」

 「あれ?外ってそんな世紀末でしたっけ?」

 

 銃のない世界を平和と言うのなら、外も大して変わらんだろうが。

 

 「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」

 「そのいじりはさっきやったよ、ホシノ先輩」

 「ありゃ、そうなの。まー確かに似てるもんね二人とも」

 「「どこが?」」

 「ッ……へ、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!それにホシノ先輩はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」

 「おい今笑っただろ貴様」

 

 そんなにシロコとの親子コントが面白いかこいつら。視線をやればアヤネとミニガンの生徒までこらえていやがる。ここがレッドガンだったら5メートルパンチの刑だぞ。

 

 その後、そういえばまだ受けてなかったアビドスの面々の自己紹介を受け、ヘルメット団への防衛線をどうしようかと考えていた時、

  

 「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」

 「えっ!?ホシノ先輩が!?」「うそっ……!?」

 「……念のため聞くが、お前が本当に委員長なんだな?」

 「そうだけどー、まさか二人にこんな反応されるなんてねー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」

 

 俺の前だから気を抜いているわけではなく、常日頃からこんな調子なのかこいつは。

 ……いや。だからこそ問題でもある、か。

 

 「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いているからねー。だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」

 

 ようは追撃戦か。やはり人は見た目で判断するものではない、こいつは中々の切れ者だな。

 

 「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」

 「ホシノ。ちょうど今俺も同じことを考えていたところだ」

 「……へぇ?」

 

 怪訝な視線で俺を射るホシノだが、気にはせず俺は言い張る。

 

 「お前たちにシャーレの流儀を教えてやる。

 

 

 泣きを入れたらもう一発だ!」




ミシガン先生の使った拳銃は実際にある銃です。ウィキ漁ってたらこれが出てきたんで採用、まぁ総長ならこれくらいは撃てそうだなって……
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