ミシガン英雄伝記補遺:透き通る世界を地獄が歩く   作:柴猫

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この小説は勢いと作者の流行で出来ている……!


アビドス編:運命の結節点

 ヘルメット団の残党をぶちのめした翌々日、昼前のアビドス高校では廃校対策委員会による定例会議が始まろうとしていた。

 

 「……それでは、アビドス廃校対策委員会の定例会議を始めます。本日は先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な議論が出来ると思うのですが……」

 「は~い☆」

 「もちろん」

 「「何よ(だ)、いつもは不真面目みたいじゃない(だな)」」

 「あらら、セリカちゃんいつの間に先生とそんな急接近したのさー」

 「思った事言っただけよ!()()()()()()も同じこと言わないで!」「おい」

 

 流石にどう対応しろと言うのだ。いくら俺でもこの理不尽はどうしようもできん。

 ともかく始まった定例会議は、具体的に借金をどう減らすか、その方法に関して論議し合うというものだった。少し前まではこれもヘルメット団によって出来なかったと考えると、状況は確実に進展しているのだろう。

 

 

 さて利息だけで788万の借金をいったいどうやって返済していくか、全員分の意見をまとめた結果、

 

 セリカ:マルチ商ほ 拳骨

 

 「あだーっ!!?」

 「貴様ぁ!少し見直したと思ったらすぐこれか!それで学校の会計など握れるか阿呆め!!」

 「あ、頭にひび入った……」

 「今貴様に必要なのは経営学だ、ひびと言わず頭が割れるくらい叩き込んでやるから覚悟しておけ!」

 「な、なんで……」

 「……ちなみにですけど、セリカちゃんそのゲルマニウムブレスレットいくつ買ったんですか?」

 「に、二個」「ふん!」「ギャー!!」

 

 

 ホシノ:生徒数を増やして学校の基盤を上げ、入ってくるお金を増やす。

     →そのためにゲヘナのスクールバスを襲撃する

 

 ・・・

 

 「キヴォトス屈指のマンモス校に所属してる連中なら、意地でもハンコは押さんだろう」

 「えー。でもさ、なんだかんだ勢いで行けそうじゃない?」

 「ん、それには同意。ホシノ先輩の案を採用で―」

 「ゲヘナの風紀委員長は強盗団のアジトを木端微塵に出来る実力があるらしいぞ。生徒を増やすか校舎を叩き壊すかどっちかの賭けになるな?」「……やっぱゲヘナはなしで」「どこでもナシだばかもん!」

 

 

 シロコ:確実かつ簡単な方法として銀行強盗 手刀

 

 「ふっ……セリカのそれで学習済み―――ん”ッッ!!?」

 「その程度で俺の鉄拳制裁から逃げられると思ったか!」

 「あ、頭が真っ二つにされる……でももう覆面は作ってあ」

 「で、銀行をなんだって?」「なんでもない」

 「うーん、セリカちゃん中々起きませんね。先生どれだけ強くしたんですか?」

 

 

 ノノミ:クリーンな方法として、スクールアイドルをする。

 

 「却下」

 「あら……これも駄目なんですか?」

 「まぁ、ホシノには同意する。ヘルメット団以上に面倒な輩が湧いてきそうだ」

 「……なんか妙に説得力あるね。先生、心当たりでもあるの?」

 「詐欺師の調査に出向いた馬鹿どもが見事に釣られてな。おかげで2年も尻尾を追い続ける羽目になった」「あ、そっち?」

 

 

 

 果たして本当に真面目に議論する気があるのかどうか分からないろくでもない案ばっか出て来やがる。レッドガンでの「どうやったら上層部の口うるさい奴らを黙らせられるか」井戸端会議の方が少しはまともだったぞ。

 

 「あのう……議論が中々進まないんですけど、そろそろ結論を……」

 「アヤネ、お前からは何かないのか?」

 「わ、私ですか?」

 「こういうのは司会役の案で決まるもんだろう。まさか用意していないなんてことはないだろう?」

 「う、うぅぅ」

 

 頭を捻るアヤネが出した結論は―――「よし!」

 

 

 

 

 

 「このまま悩んでいても仕方ないのでご飯食べに行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アヤネの逃亡策により柴関ラーメンへ向かった対策委員会は、いつも通りラーメンを堪能していた。

 

 「……なんでもいいんだけどさ。なんでまたウチに来たの?」

 「この店以外美味いところを俺は知らん。アヤネに聞けば分かるんじゃないか?」

 「うっ、そ、それは……」

 

 何とも気まずそうに肩を竦めるアヤネに視線を向けるが、申し訳なさそうに視線を下げるばかりだ。まぁ、要はさっきの会議もここでの日常なんだろう。あれで真面目にやってるなんて言ったら俺は何も信じられん。

 特盛の豚骨を啜っていると、ガラガラと店の扉が開く音が聞こえてきた。

 

 「あ……あのう……」

 「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 「……こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」

 「一番安いのは……580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」

 「あ、ありがとうございます!」

 

 ?ただ一人で店に食いに来たにしては出ない質問だが、何だ。

 

 「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」

 「ふふふ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」

 「そ、そうでしたか、さすが社長、何でもご存知ですね……」

 「はぁ……」

 

 店に入った来たのはさっきの奴も含め四人。このあたりでは見ない服装だが、確かあれは……

 すぐに出てこないボケ始めた頭をフル回転させる。耳に入ってくる話曰く、どうやら600円以下のラーメンを四人で分け合う困窮ぶりらしいが。

 

 「えっ?4膳ですか?ま、まさか1杯を4人で分け合うつもり?」

 「ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!!お金が無くてすみません!!」

 「あ、い、いや……!その、別にそう謝らなくても……」

 「いいえ!お金が無いのは首がないのも同じ!生きる資格なんてないんです!虫けらにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません……!」

 

 珍しい、このキヴォトスでこんなマイナス方向に突っ切った奴がいるとは。それでいて得物は近距離仕様のショットガンか、奇特な奴だな。

 随分しごきがいがありそうな奴を見ていると、パーカーを来た一人と目線が合う。

 

 「ちょっと声デカいよ、ハルカ。周りに迷惑……」

 「そんな!お金が無いのは罪じゃないよ!胸を張って!」

 「へ?……はい!?」

 「お金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし!それでも小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大事なんだよ!」

 

 「もう少し待っててね。すぐ持ってくるから」と言って厨房に駆けだしたセリカは、柴大将に何か言うと、二人揃ってニヤリと笑った。見ていて気持ちがいい顔だ、ラーメンが旨くなる。

 

 「まぁ、私たちはいつもはそんなに貧乏ってわけじゃないんだけどね。しいて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし」

 「「アルちゃん」じゃなくて社長でしょ?ムツキ室長、肩書はちゃんと付けてよ」

 「ん?だってもう仕事終わった後じゃん?ところで、社長のクセに社員にラーメン一杯奢れないなんて」

 「だから斡旋人から前金でもいいから受け取っておいたらって言ったのに……」

 「ぶっちゃけ、忘れたんでしょ?ねぇ、アルちゃん。夕飯代取っておくの、忘れたんでしょ?」

 「…………ふふふ。私が何の考えなしにあんな大金を払ったと思って?」

 

 キョトンとする二人(と慣れない店内と対策委員会の視線におどおどしている一人)に、集団のリーダーと思しき少女が口を開く。……思い出した。あのスカートは確かゲヘナの制服だ。アビドスからは随分と離れているはずだが、何の用だ?

 

 「あれほどの大金を迷いなく出せるというわが社の力を見せることで、相手が何かしでかさないようにする……財力で以て、相手の行動を制限する。前金を貰ったってことは、そういうことなのよ」

 「ふーん?」

 「まぁ、社長にしては考えているみたいだけど。でもそんなことしてまで事に当たらないといけない程、アビドスは危険な連中なの?」

 

 ピクリ、先のパーカーの発言に漏れた単語を、俺は気づかないふりをしてラーメンを啜る。

 

(ヘルメット団以外の連中がアビドスを……セリカを襲った連中の装備と言い、裏に手を引いている奴がいるようだな)

 

 

 

 その後は特盛の柴関ラーメンに舌鼓を打つゲヘナの四人組と、まだ気づいていない対策委員会の仲睦まじい交流によりその場は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ものものしい雰囲気に包まれたアビドス高校に、先ほどの四人組が来校した。銃を構え、側にはいくつか傭兵も混じっている。支援に来たわけではないのは、明らかだった。

 

 「前方に傭兵を率いている集団を確認!」

 「見れば分かるアヤネ。やはり来たか、便()()()()()

 「わ、私たちの名前を……?」

 「誰かと思えばあんたたちだったのね!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」

 

 激昂するセリカにリーダーの陸八魔は居心地が悪そうに怯むが、隣のガキが笑って返す。

 

 「あははは、その件はありがと。それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」

 「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」

 「その年で公私の判断ができるとは大したものだ。セリカ、お前も少しはあれを見習っておけ」

 「なんで!?あいつら特盛ラーメンの恩を仇で返す連中だよ!見習えるわけないじゃん!」

 「お前は恩を売るつもりでわざわざ大将に迷惑かけたのか!?貸した恩は半分は仇として返ってくるもんだ。これを機会に社会勉強をしておけ!」

 

 そうして双方が突撃を始め、キヴォトスの日常が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦況は膠着していた。

 一定距離からの撃ち合いを続ける傭兵と便利屋68に、アビドス高校の面々が抵抗し、戦線を押し返さんとする。時折便利屋から爆弾などが投擲されるが、セリカとシロコが躱し、ノノミとホシノが撃ち返しているため大ダメージには至っていない。

 このまま行けばこちらが押し勝つ。アビドスはそう思っているだろう、隣で指揮をとるアヤネにも不安は見られない。

 

 ()()()()()()()()()()()()に、俺はアヤネに指示を出す。

 

 「アヤネ!いったん支援を中止して索敵をしろ!」

 「え?今、ですか?」

 「()()()()()()()()()()。これは罠かもしれん」

 「わ、罠!?」

 

 アヤネがパソコンを開いて周辺を確認。やはりというべきか、今この場所を包囲する様に赤点が並んでいた。

 

 『ふ、伏兵です!校舎内に侵入してきています!』

 「うへ~、道理で数が少ないと思ったら、そういうことか」

 「まずいじゃない……アヤネ!今すぐ校舎から逃げて!」

 『無理だよセリカちゃん、あと20秒でこの教室に来ちゃう!』

 「あらー、これはちょっと、まずいですね」

 

 飛び降りて逃げたところで挟み撃ちされるだけだ。正面に実力のある便利屋を置き、支援陣地を奇襲する。よくできた作戦だ。

 

 「アヤネ!貴様はバリケードを扉に設置しろ、連中は俺が叩いてやる!」

 「先生、相手は10人以上はいます!ヘルメット団の時とは違います、もし先生に当たったら……」

 「まるで新婚したての見送りの妻だなアヤネ!」「は、はい!?」「シロコ、そこの傭兵共に俺が倒せると思うか?」

 「……多分無理。ヘルメット団よりかは少し強いけど、問題はないと思う」

 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?先生は強いけど外から来た人なんだから、弾丸一発で……」

 「腹に穴を空けたことなどそこらのスケバンのタトゥーより多い俺に随分と下手だなセリカ。貴様らは正面だけ見て居ろ、尻ぬぐいは俺がやってやる!」

 

 通信を切り、階段を上ってきた傭兵どもへプファイファーの弾丸を入校祝いにプレゼントしてやる。

 

 「がっ!?」

 「なにっ!?」

 

 猪共の鼻っ面にぶち当て動きを止めさせ、俺はアヤネのいる教室へ後退する。机で出来た簡易バリケードは出来ており、そこを遮蔽として撃ち続ける。相手も遮蔽は使っているようだが、支援系統を潰せば勝ちと焦っているのが見て取れる、いい的だ。訓練生の奴の方がもう少し実戦的な的になったぞ。

 

 「クソッ、このままじゃ埒が明かない!」

 「どけお前ら!これでこじ開けてやる!」

 

 一人の傭兵が盾を構えながら遮蔽へと突っ込んでくる。プファイファーの銃弾でも抜ききれないが……それならやりようはある。

 

 「アヤネ!貴様も猪狩りに参加しろ!ボスは教室で罠にかけるぞ」

 「り、了解です!」

 

 自動拳銃を手に遮蔽から乗り出した傭兵を狙撃し、俺もSMGを使いながら撃ちまくる。

 気づけばもう、盾持ち以外はほぼいなくなっていた。

 

 「指揮さえ潰せば、あたしらの勝ちだ!」

 

 そう発破をかけながら教室に突貫してくる傭兵の盾を、その縁を掴んで停止させた。

 

 「!?う、動かない……!」

 「キヴォトスの傭兵はその程度か、うちの寝坊助ならこの程度の衝撃、ダンクシュートではじき返せるぞ!」

 「く、くそ……」

 

 俺は傭兵を盾ごと持ち上げ180度転回、そのまま教室の窓までダッシュする。

 

 「先生!?」

 「貴様は残りのウリ坊どもを片付けておけ!」

 

 悲鳴を上げるアヤネを背に、俺と傭兵は窓を突き破り、アビドス高校校舎の3階から自由落下する。そしてそのまま傭兵を下敷きにしながら砂の大地が近づき、

 

 ズドーン!

 

 砂塵が収まるころ、前線のホシノたちと目を合わせ、ニヤリと口元を歪めた。

 

 「うへぇ~……先生、無茶しすぎじゃない?」

 「抜かせホシノ。貴様より腰は30倍頑丈だ」

 

 呆然とする便利屋と傭兵に、俺は発破をかける。

 

 「自己紹介がまだだったな、便利屋68。俺はシャーレの顧問をしている、レッドガンのG1ミシガンだ!支援要請を受けて、このどこにでもありそうなアビドスの面倒を見てやっている。

 どうやら貴様らも少数精鋭のようだが……ちょうどいい!数合わせのヘルメット共に慣れてきたアビドスの補習授業の相手になってもらうぞ!!」

 

 リーダーであろう陸八魔アルは気圧される……だがかぶりを振って弱気を打ち払う。

 

 「ず、随分と私たちをなめてくれるわね!金さえ貰えば何でもやる、それが便利屋68よ!アウトローの流儀ってものを見せてやるわ!」

 「抜かした口を利いてくれるな陸八魔アル!なら口八丁の凡夫だけではないことを証明して見せろ!」

 

 アビドスと俺、便利屋と傭兵が銃を構え、双方の火花が再び散る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『総員銃を下ろせ』

 

 

 

 決して大声ではない、だが確とした重みをもった言葉が、戦場に静寂を与えた。

 

 「だ、だれ!?」

 「斡旋人……どういうこと?」

 『詳しい話は今は出来ない。俺が直接出よう。傭兵たちも発砲はするな、これは依頼主としての命令だ』

 

 その言葉に脅されたのか、傭兵は突然の命令にも渋々従い、警戒しながらも銃を下ろした。

 

 「依頼主ということは……便利屋の方ではない?」

 「傭兵は別口で依頼を受けていた、ってことか。でもなんでこんな……」

 

 突然の状況に情報を整理しようとする中、こちらに向かう人影が一人。

 シロコたちは銃を構えるが、人影はまるで意に介せずこちらへ歩む速度を変えない。

 

 

 「な、なにあいつ……」

 

 病人のような白で統一された格好だった。ホシノよりも小さな背丈の長めの白髪、無理やり合わせたのであろうスーツからは包帯がたなびき、杖を片手に歩くさまは余りにもキヴォトスでは似合わず弱弱しく見えた。

 だが。包帯に覆われていない手や顔についた火傷のような傷跡に、こちらを見透かすような青い瞳が、その印象を帳消しにする。

 あれは、生き残りだ。証拠があるわけない、軍人の直感がそう、告げていた。

 

 斡旋人は便利屋たちの前に立つとこちらを……俺の眼を真っ直ぐに見、口を開いた。

 

 

 

 

 

 「お久しぶりです―――ミシガン()()

 

 奴の胸元に付けられていたのは、赤のラインが拳銃の形になった、13のナンバーだった。

 

 

 「貴様は、G13(ガンズサーティーン)か…!?」

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