リハビリヤンデレ集   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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ちょっと続きます。

これじゃあただのasmr好きっていうね。ヤンデレ要素が足りないなぁと思ったので足しつつ、asmr的な文章を頑張ってひねり出してます。

ちなみにですが、作者はまともな人間をお出しできないヒューマンです。この話に限らずこれからの話に出てくる人間は何かしらネジが外れてるものと思ってくださいな。


asmrオタクはセルフ敗北に余念がない(百合)

Autonomous Sensory Meridian Response…略してASMR…日本語で自律感覚絶頂反応…なんだか卑猥なように聞こえるがそんなことはない。ただこれを聞く人間は、耳が弱い雑魚こと音フェチを指す。

 

その中でも私のように行き過ぎたasmrのオタクは音声だけでは飽き足らず現実でも気持ちがいい音を探し始める。探求者である。言い換えるならば、もっと耳が弱い雑魚である。

 

asmrを聞く人間は音にある程度耐性が付くと思われるかもしれないがそれは間違い…!聞けば聞くほど耐性というのは下がっていく。asmrにおいて慣れというのは、耳の受け入れ態勢が整っているということ…!初めて聞く音にびっくりして集中できないのではなく、もう慣れてしまったがためにその音を聞くだけでリラックスしてしまう…聞けば聞くほど、雑魚になるのである。

 

話を戻そう。

 

行き過ぎた耳雑魚こと私は、現実でもより良い音を求めるために、アルバイトやらネットでのサイト運営等でせこせこお金を稼ぎ、お高いヘッドホンやイヤホン、耳かき棒や綿棒といった基本道具から、中国式耳かきで扱う音叉や炭酸綿棒…スライム、はけ、馬の尾、小さいハサミ、ピンセットにタッピング用に厳選したキーボードや各種いい音がなるもの、ダミーヘッドマイクにイヤースコープ…耳かき棒にもこだわりがある。みんな大好き「匠の技」の竹製やチタン製耳かき棒に…ブラシ付きや耳垢を吸引できる電動、マニアックなところでたわしの耳かき棒だったりを揃えている。

 

囁きやオノマトペだって調べに調べた。見てくれこの電子asmr単語帳を…!日本語のオノマトペはもちろん、英語や中国語の可愛い言葉だなと思うものなどをリストアップしている。シャッフル睡眠法のために単語がランダム表示されるモードも搭載だ!

 

つまり、何が言いたいのかと言うと私はasmrに一家言ネキであるということ。ちゃちな音を鼻で笑い飛ばして負けながらも、私が本物ってやつを見せてやりますよ…!と威勢の良い声で声高に叫び、ガチ勢としての集大成をぶつけるのである。

 

さっさと本題に入れだって?しょうがない。本題に入ろう。

 

 

私が言いたいこと…それは…!

 

 

asmrを知って1日2日の人間に負けるわけがねぇ!ということ…!

 

 

確かに、私はリアル囁きに敗北してしまったが、アレはシチュエーションあってのもの。シチュエーションを抜きにした純粋なasmrなら、ダミーヘッドマイクを触ったことすらない相手に後れを取ることなどありえない…!

 

良い音を出すというのは、一朝一夕でとうにかなるものではない…!ただマイクの近くで音を鳴らせばいい等という安直な考えは、asmrオタクはすぐに気づける…!

 

タッピングするために最適な距離感と音量、耳かきをするにしても飽きさせないように緩急や耳垢を掻く、こそぐ、擦る、めくると言った動作の違い…耳フーは近すぎても遠すぎてもダメ…!間の使い方は?音叉の使い方は?ちゃんと震わせられているか?余韻を大事にできているか?

 

シチュエーションというものは確かに良い。しかし、それがasmrを疎かにしていい理由にはならない…!シチュエーションにあったやり方もあるから、そこを蔑ろにしてしまえば没入感が損なわれてしまう。耳かき屋の店員が、耳かきが下手でどうする…!男や女を惑わすサキュバス、インキュバスといった種族が、囁き下手だったら、ダメだろう…!シチュにあったasmrが出来てこそ…一流!

 

そんな日進月歩な世界でたった今入り始めたぺーぺーに、この私が負けるはずがない。積み重ねてきた”モノ”が違うのだ…!

 

私はそんなasmrオタクとしての自信をもって、賽峰寺さんの付き合いを改めていくということを固く、固く決意したのだった。

 

私、負けない!

 

~~~~~

 

「じゃあ…囁いてくよ」

 

「負けるぅ~」

 

盛大な前振りからの即堕ちを果たした人間…そう私だ。だってぇ!?色んな事言ったけど、結局のところ背が高くて女子として敗北感に打ちのめされるスタイルで、声が低音ですごく好みで、運動も勉強もなんかもう色んな才能持ち合わせてる人に愛を囁かれて負けないなんて無理だってぇ…!

 

あれから数時間、眠りに眠りこけて盛大に寝顔を晒した私は夕方ごろに再起動を果たし、とりあえず賽峰寺さんのものになったのがどうのでひとしきり揉めに揉めた(私が圧に負けた)あと私はasmrを教授することになった…なんで?

 

賽峰寺さん曰く、好きな人の好きなものを知りたいし、それで自分のことをもっと好きになってくれるのならやらない理由がないとのこと。しまった…強すぎる…!輝きすぎて勝てない…!浄化される…!これが…恋愛強者…!

 

だが、前置きの通り、私は至極面倒臭いタイプのasmrオタクである。なんなら、行き過ぎてYoutubeのチャンネルで厳選したasmrを上げている。それくらいに面倒臭いオタクである。囁きは自分の声にまったくもって自信が持てなかったのと、自分の声を聴いて癒されるわけがないので、基本的に耳かきやタッピングといったものがメインとなる。自己顕示欲持ち合わせているタイプの厄介なオタクである。しかし、面倒臭いタイプであると同時に布教やライト層のために配慮が出来る女でもある。ガン〇ムって何から見ればいいの?という問いに対して、今やってるアニメをいったん見て自分の好みに合うかどうか確認すると良いよというヒヨった回答をする女…。asmrをやってみたいという初心者に、高速指耳かきや音叉を使ったものを提示する等言語道断…!

 

とりあえず、そうした難易度の高いものはひとまず置いておくとして、囁きからやってもらうことにしたのだ。生憎持ち合わせが簡易asmrセット(竹製、チタン製耳かき棒、綿棒、タオル、ローション、タッピング用の積み木、音を取るためのイヤホンや小っちゃいマイク等)しかなかったためである。今日はこれしか持ってきていないのが悔やまれる…。今度機材を家から持ってこようか…はっ!?

 

「ち、違う…!まだ…始まってすらいない…!負けていないぞ私…!勝負はこれからだ…私!」

 

勝負はココから…!試合が始まる前に負けていたらそれはもうただの無様敗北処刑ショーではないか…!再度心を強く持ち、今まで聞いてきたasmrの数々が脳裏によぎる…!お兄さん、お姉さん、弟に妹…パパにママ…サキュバス…魔王…勇者…ヤクザのお兄さん…ショタガキ…メスガキ…耳かき屋の店員さん…アニメのキャラ…生徒会長に先輩後輩同級生幼馴染にストーカー、アイドル、シスター、アンドロイド、メイド、宇宙人、アルラウネ、アラクネ、獣人、軍人、王子様、王女様、JK、JD、DK、DD…数多のシチュエーションが走馬灯のようにフラッシュバックして、私を強くしてくれる…!

 

今の私は…そう!無敵!

 

「えっと…オノマトペから囁いていけばいいのかな?」

 

「え、や、違いますね。賽峰寺さんは持っている属性からして頂点強者なので、自己紹介と内容について話してからやっていきましょう。声質的にブレスが多めになると思うのでなるべく耳に息がかからないようにして、耳の横から平行に声をかけて、囁きのときに余韻で息がかかるよう垂直か斜めに囁いてもらうとgoodだと思います。ハイ…(高速詠唱)」

 

ヴッ…声がいい…!

 

「じゃあ…自己紹介から始めていくよ…」

 

「アッ…」

 

ぞわぞわする…!

 

「僕の名前は、賽峰寺 鈴華。賽峰寺家の一人娘…お金持ちのお嬢様だよ」

 

「ヒョッ…ア、コジンジョウホウハナルベクナルベク…ショウサイハフセテ…リテラシーテキナ…」

 

生まれからして強い…!

 

「そう?…じゃあ、君のことがだーい好きなお金持ちのお嬢様がいっぱい愛を囁いてあげるからね…ふ~

 

「キョェー」

 

勝てないィ―!!!勝てないよ~!学習が早い!ちょっと声が遠いな~とか思ったらさらに接近してかつ、「いっぱい愛を」からもっと接近してそこに耳フーもしてきた…!階段を2段も3段もスッ飛ばしてきた…!圧倒的才…!

 

うぐぐ…強い…強いよぉ…。

 

今からオノマトペだったりを囁いていくんだけど…あんまり慣れてないから最初はお話しから距離感を掴んでいこうかな

 

「オ、オハナシ…」

 

今の状況。いつの間にかあった座椅子に座らされ、背後から囁かれている…オノマトペ参考のためにスマホのasmr単語帳を起動して渡しておいたが…ここまでリアルのが破壊力抜群なのは驚きだ。リアルに囁かれるとか不快じゃない?やっぱ音声作品でしょとかイキっていた私が馬鹿みたいだ…。そして…

 

「ア、エット…不意打ちで息を吹きかけるのはすごい良いです…囁くときに左右に揺らす感じで交互に囁くと緩急が付いていいと思います…」

 

自ら墓穴を掘って埋まりに行っている状況…!なんだこれ?私どうすればいい!?なんかもう教授してなんて言われたからにはちゃんとやるけど、それで追い詰められてるの私なんだが!?カモがネギ背負って、鍋まで人間を案内してるんだが!?ゆるさないかーんな!?(錯乱)許さねぇのは自分自身やろがい!

 

おっと…be cool…確かに私は初手から無様を晒し、ほとんど私とくっころ女騎士が異音同義語となってしまったが、その前に一人のasmrオタク…。迷える子羊を導いてやらねばオタクの名折れ…!それがたとえ自らの首を絞め、自らに卵とパン粉をまぶして油の引いた鍋にダイブする調理済み豚肉であろうとも…!布教をやめるという選択肢はない…!

 

そっかこうかなじゃあ話してくことだけど…あ、君のことを好きになった理由が途中だったし…話していこっか。

僕がね。君を選んだ理由、君を好きになった理由…まず、連れてくる前にも言ったけど君はとても不思議な存在だったんだ。

 

コショバユ…チカ…

 

僕は成績が優秀で身体能力も抜きんでたものがある。人を従わせる…カリスマかな?言ってしまえば人の上に立つ才がある。ふふっ自慢でも何でもなく事実さ。

 

甘く脳髄の奥にまで響くような低音。心を震わす音。今まで聞いてきた中で一番いい声…!逸材!この人逸材だ…!

 

お金も権力も才も…うん、すべてを持ち合わせた人間。完璧な存在…だったが正しいかな

僕の周りには僕のイエスマンしか存在しなかった。それがたとえ、どんなに頭がよくても才があっても…魅力、というのかな。僕はとりわけそうした才に秀でていた。

 

すごい、聞いてること全部嘘に聞こえないってことあるの?言ってることほぼなろう系じゃん…でもこの人なら…って思わせられるの強い…実体験に基づく自信がこの人を強固なものにしている…カリスマモンスター…!ほぼ竜王だよ…!私勇者ほど強くないから、世界の半分貰っちゃう…というか世界の半分要らないから側に居させてとか言いそう。くっ…やばい女騎士になっちゃう…!(動詞)

 

でも、でもね。君は僕に見向きもしなかった。いや、僕を認知はしていたけど、僕に全くの興味も示さなかった。学校生活で何度か話す機会があったにもかかわらず…

 

「おひゅっ…」

 

でもの二連で畳みかけられてダメージボイス漏れちゃった…。だって~、二回目のでもで、耳に息掛かってるくらいで相手の体温が感じられる近さでふわっと香る匂いがなんかもう…なんかもう…!ダメ!尊い!

 

僕は最初訳が分からなかった。いままで少し微笑めば誰でもコロッといってしまうのに、君はただ僕のことを只の人だと扱った。

 

いやめちゃくちゃ美人で勉強も運動も出来てみんなに囲まれて金も権力も持っていることを除けば人間じゃん!私なんかには恐れ多い…って感じだけど。

 

その時の僕は嬉しいやら憤りやらで頭がどうにかなってしまいそうだったよ。初めての僕に従わない人間、初めての異常…だから、僕は嬉しい反面とても怖かった

 

こ、怖い…?怖くないよ…プルプル…私悪い女子高生じゃないよ…ホントダヨ…

 

「だって僕の才が通じない人間がいるなんて思っても居なかったから。当たり前だと思っていた常識が君に壊されてしまったんだ。」

 

そ、そんなにぃ?あぁでも拉致られる時私がいると完璧じゃなくなるって言ってたな…。

 

辞書に書いてあることすべて暗記したはずなのに、知らない単語を出された気分だった。全てを知った気になって、横を通り過ぎる人の手に持っていたものが何なのかわからなかった。クイズ番組で優勝できると確信していたのに、最初に出された一問目に詰まってしまった。

僕にも悔しいって思う心があったんだなぁって思ったよ。自信を持っていたのに傷つけられて、悔しくて、それが当たり前のことなのにね?

 

そんな!?いやでも…

 

だって君はきっとそんな人間いくらでも居ると思うだろう。あぁそうさ、たかだか一人で出来る範囲なんてたかが知れている。僕に魅了されない人間なんて世界を探せば居るだろうね。

 

さ、先読みされた…。エスパー…?って思ったけどたぶん私が分かりやすいだけねコレ…。

 

でも、君が初めてだったんだ。最初に出会ったのが君だったんだ。これから先、僕に魅了されない人間に出会うこともあるだろうけど、それが初めて出会った人を忘れる理由にはならないよ。もしかしたら、君以外に居ないかもしれないという恐怖もあったからね。

 

それは…まぁわかる。分かるよ…。好きなasmrを見つけた時も、次作とか類似作品が出ると思ってないから買っちゃうわけだし…。シチュエーションボイスとか特にね…。次作、待ってます。(電波送信)

 

「君は運命で、恐怖で、天敵でもあって…希望だった。初めて見たまともな人間。初めて見た異常な人間。僕を否定できる人間。僕が知らなかった人間

 

……僕を殺せる人間

 

「ほひょっ!?」

 

耳に…!耳に!!舌が!舌が耳に!殺せるとか聞こえてそれに疑問を抱く間もなく耳舐めで持ってかれた!

 

火傷したと感じるほどの熱を持ち、唾液たっぷり湿り気を帯びた舌は先ほどまで囁いていた左の耳に、ぬろっとまるで蛇が自身の巣穴に戻るみたいに、這い擦り、手入れをするように舌先で耳の溝を舐りこすり、息を吹き込む。

 

全身から力は抜けて、まるで毒でも注入されたみたいに…いや注入されたんだ。囁きでどのくらい耐えられるかを確認して、話しの最中に最も相手が興味を持つところを理解して、最も思考を巡らせ耳に集中したその瞬間に、一気に毒を流し込む。抵抗できないように、一切の反論を許さないように。

 

ぬらり、てらりとひとしきり耳に唾液をまぶした彼女が再度口を開く。私はもう快楽の耐性が0にされたもんだから、彼女に背中を預け肩で息をする。荒げる息と上気する頬が私自身この状態にすごく興奮してることに羞恥心が湧き上がり…続く言葉で肝が冷えた。

 

だから、君を調べに調べた。家族関係、友人関係、人となりから好きなものや嫌いなもの、金銭面や現在に影響を与えた過去、そのすべてに至るまで調べ上げた。

 

それで、ようやく君のことが分かったんだ。

 

うぐ…それ以上は本当にヤバイ…ヤバイというか…絶対ドン引きされることだ。私にはわかるというかそのことをバラされたら私の高校生活が終わってしまう…。

 

君、人を見ていなかったんだ

 

ほらー…

 

私が隠していたことを言われてしまった。バラされた。弱みを握られた。もう私は諦めてそのままずるずると座椅子を滑り落ちる。

 

「びっくりしたよ。君は人でなしだったんだ。人を人として見るのではなく、音を出す機械とでも見ていたんだ。本質的に人を見ていない。だから、僕を何とも思わなかった。」

「それを完璧に隠蔽していた。擬態していた。まともなフリをしていた。」

 

刺さる、刺さる。隠していたこと、社会から爪弾きにされるからずっと押し黙っていたこと。そう、私は…まったくもって人間に興味がない。

 

「声…いや音に異様な執着を見せる君だから、僕のこともただの音質が良いレコードとしか見ていなかった。でもそれが社会的に不味いことだと理解していたから、周りが考える普通に擬態した。僕をただの有名人としてみるようにしていた。」

「僕が君に気づけたのは普通に擬態しすぎていたんだ。何処にいても何をしても普通に生活できている人間がまともなワケないだろう?」

「人間ってのはもっと複雑で同じことなんてほとんどない。一人の人間でさえ、朝見せる顔と昼見せる顔は違っている。十人十色どころじゃない。正しく千差万別の顔や心を持っている。」

 

語られた言葉はすべて事実。衝撃の事実ー!なんて茶化してもしょうがないのでそのまま真犯人が探偵の推理(事実)を言い終わるまで大人しく待つ。

 

「君は同じすぎたんだ。昨日や一昨日、いや僕が君を見つけたときからずっと変わらなかった。」

「晴れの日も雨の日も雪の日も、春も夏も秋も冬も、登校時間や下校時間、昼休憩の時間でさえ」

よく見てるなぁ…まぁそんなポンポン変わってたら疲れるってのもあるんだけど。

「君は人間が変わらなかった。僕は人を魅了するにあたってどんな人間が魅了されやすいのかを熟知しているつもりだ。その延長線には人の機微があるからね。万人に好かれるためには、まず万人を知らなければいけないだろう?」

「その知恵をもってしても、君は普通過ぎて…異常だった」

「僕と同じだった。人の枠組みから外れた人。君は音に関することにおいて僕に比肩する存在だった」

 

「ね…だってこんなに耳が良いんだもんね」

 

耳に指を入れられる。くすぐったくて思わず身体をよじれば、頭を撫でられる。恥ずかしくて両手で顔を隠せば、腋に手を入れられ、後ろから抱かれる…なんて言うんだっけ。あすなろ抱き?

 

「聴覚過敏…昔はそれに苦しんでいたけどなんとか慣らしたんだよね。常人の数倍…十数倍かな?耳が良いから、どうしたって音に反応してしまう」

「人には聞こえない音。超音波。イルカとか蝙蝠が出す人間には聞き取ることができないはずの可聴域まで聞こえてしまう」

 

抱かれたまま、髪に頭を埋められる。されるがままだ。なんてったって…ね。

 

「誰にも共感できない人間。孤立した生物。天才、鬼才…いろいろあるけどそういう存在」

「後天性のものではなく先天性の化け物。生まれた時から視座が常人から外れている真性の化け物。」

「生きづらいよね。苦しいよね。だって君は誰にも共感できない。君が好きだと言うasmrでさえ、君は周りには聞こえない音まで拾ってしまう。」

 

言われたくないことぜーんぶ言われるのキツイよ~。そうですよ~。私は耳がよすぎて、人を見ている余裕がない人でなしですよ~。心の中でやさぐれながら溜息を吐く。

 

「細かな差異、音の波長、環境音に至るまでを理解できてしまうから、誰よりも音にこだわることができて、それを理解されることはない。」

「だって君以外聞こえないから。だって君以外には聞き取れないから。」

 

 

「でももう大丈夫。僕もおんなじだから。」

 

 

「別方向だけどね。僕もそうなんだ。人の機微、人の感情、そういうものを理解できる。たかだか人間が理解してはいけない領域、誰もが言語化できない奥深くのあやふやなもの。それを明確に知覚し理解できる。」

「普通の人って相手のことを理解できないんだってね。例えば相手の今考えていることを先読みしたり、相手が真に求めているものを提供することはできないって…初めて聞いたとき、まるで別の世界の生き物の話をしているのかと思ったよ。」

「君とおんなじ。生まれた時からそうだったから。それがおかしなことに気づけなかった。成熟して、精神がようやく固形になって初めて認識した。」

「君よりかは遅いと思うけど…だって君は音っていうありふれたものだ。生まれた時から工事現場に居るようなものだろう?それがたとえ世界の普通だとしても、あまりのうるささに発狂してもおかしくないし耳を塞ぎたがるだろう。でもそんな素振りをする人は周りを見てもどこにもいないから、じゃあ自分がおかしいんだと気づく。僕の場合、人の感情っていう曖昧で目に見えないものだったから気づくのに遅れたんだ。」

「君や僕は社会に理解されない存在だ。そして、それは僕たち同士にも言える」

「僕も君を真に理解することができない。僕よりも下の人間ならいくらでも理解できるんだけどね。さすがに僕と同レベルは初めて出会ったから勝手がわからない。君も僕を理解することはできないだろう。君にとって、僕は音ができる機械なんだから。」

 

つらつらと言われたことを理解していくが、私そんな非人間的な感じじゃないよ!?ただ、音が気になり過ぎて周りを気にしてる余裕がないってだけだし…

 

「でもね、それでもね」

 

「君に寄り添うことはできる。一緒にいることはできる。共感は出来なくても、相手を理解できなくても、相手の孤独を埋めることはできる。」

「僕は君の変わらない部分に惹かれた。君は僕の心地よい音に惹かれた。互いに人を見ていない破綻した関係だけど、利害の一致はしているんだよ。」

「君が望む音を出すよ。君だけのレコーダーになるよ。だから、僕だけの絵画になってよ。変わらない、変わることがない不変的なものに」

「いつまでも色褪せない絵画になってよ。いつだって、自ら変わることはない絵画に。誰にも手を加えられない美術品に。」

「君が好きだよ。君を手に入れれば僕は完璧なままでいられると言ったのは、君と出会ったことで気づいてしまった不完全性を埋めるためでもある……単純に君に自由に動かれてしまうと、僕が対応できない事態になって今まで通りにいかなくなるというのもあるけどね。」

 

「僕は改めて完璧な人間になる。知ることさえできなかった孤独という穴に気づけたから、その穴を埋めて穴一つない人間になる。」

 

ぎゅうっと抱きしめられる。ワタシソンナヒトデナシジャナイヨーと言ったところでもう聞かないだろう。もう諦めるしかない。ここはポジティブに考えよう。やったねたえちゃん、私だけのasmr声優ゲットしたよ!()そんなヤツ…。うん、そう考えた方が精神衛生的によろしい。たぶんきっと…

 

遠い目をしながら天井を見上げる。知らない天井だぁ。でもこれ、たぶん監禁とかされるやつだから見慣れた天井になるんだろうなぁ。たはーと苦笑うしかなかった。

 

「だから…絶対に離さないよ」




登場人物紹介
賽峰寺 鈴華
性別:女 年齢:17歳

ボクっ娘で黒髪ロングで姫カット、身長が181cmと高く恵体。美貌とだいなまいとぼでー、低音ボイスと人柄から男も女も堕とすヒューマンキラー。

花も恥じらう女子高生。運動も勉強も出来て、容姿端麗で、先生や同級生からの評判もいい。金持ちのお家で権力もある。完璧ウーマン。
人を惹きつける才に優れており、大体微笑みかけただけでノックアウトすることが出来る。そのため、幼少期の頃から不自由ない生活と、自分以外の人間は命令を聞く人形と思っていた。そのため、後述の主人公に出会い、その常識を破壊される。
好きな人に自分を好きになってほしいタイプ。だから、持てる全てを使って篭絡しようとした。カワイイネ。才能によって人をちゃんと人として見たのは主人公が初めてであり、人を好きになるという感情を知ったピュアピュア。故に重い。


主人公(本名:音鐘(おとがね) (ひびき)
性別:女 年齢:17歳

茶髪でボブカット。身体は細く、ぺったんこ。どことは言わない。常日頃からヘッドホンやイヤホンをしているが、社交性はそれなりにある。

asmr大好き女子高生。周りからの評価としてはasmrオタクであること以外は普通。だがその実態は、先天性のものを持つがゆえに人を人として見ることが出来ない欠陥人間。
生まれた時から異常なほど耳がよく、人間の可聴域を超えた音も聞き取ることが出来る。そのため、生まれた瞬間から周りが工事現場のど真ん中にいるのと変わらない環境と認識しており、高熱にうなされたり眠ることが出来なかったりと、生命の危機だった。耳栓等を付けることで、どうにか人並みに生活できるようになったが、周囲が馬鹿ほどうるさいため、いちいち相手のことを気にしてられないからという理由で人を見ていない。音に反応して音を返しているだけ。
asmrにのめり込んだ理由として、こんな五月蠅い世界の中で少しでも心地よい音を聞いていたいという切実な想いから。心の安寧のために無音室を作ったり高性能ノイズキャンセリングヘッドホン購入したりと周りとの本気度が違う。

音ガチ勢になるしかなかったというかなるべくしてなったという女。ただ、そんなのが周りに知れたら、腫物扱いされたりするというのも理解していたため、必死に一般人のフリしていた。そんな中、ヤベェ女に目を付けられた。
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